40 / 85
第1章:NAMELESS編-終焉-
[第40話:Nastatium]
しおりを挟む時は、"第2次NAMELESS大戦"から4ヶ月後…
とある田舎の墓地を迅雷寺は訪れた。
「…師匠。私達、勝ちました。師匠のおかげです。」
桂家と書かれたお墓に、迅雷寺は菊を供えた。
そして線香を上げ、手を合わせた。
「…師匠。どうか、行方不明の蒼松隊長、獅蘭くん、ジャックさん、そして、かっしーをお守りください。私達が再び平和な世界を手に入れられたのは、彼らのおかげです。師匠。そちらでも、どうかお元気で…。」
迅雷寺は、目に涙を浮かべながら、そう言った。
すると、1枚の葉が風に乗って、迅雷寺の頭に乗った。
(椎菜。どうか私の事は心配しないで。君は、これからの輝かしい未来を精一杯生きなさい。そして、私の弟子として、桂流を伝え続けなさい。)
迅雷寺の頭に、桂の声が響いた。
…気がした。
「洸~ご飯まだー?」
矢島は、リビングのソファーに座り、テレビを見ながら言った。
第2部隊のシェアハウスには今、蒼松に代わって矢島が住んでいた。
「はいはい。できましたよ~。」
沫梨は、両手に料理の乗った皿を持ちながら、台所から返事をした。
「ただいま~。」
そこへ咲波が帰宅し、2人のいるリビングに現れた。
「愛花お帰り…って、髪の毛!どうしたの!?」
沫梨は、咲波の姿を見るなり大声を出した。
咲波はロングヘアをバッサリ切り、ショートヘアになっていた。
「んー、切っちゃった!なんかさ、もう色々終わったし、心機一転って感じで。」
咲波がそう言うと、矢島がテレビを消してソファーから立ち上がった。
「さてはあれだな?失恋ってやつ?」
矢島はニヤニヤしながら、咲波を見て言った。
「うるさいですよ矢島さん。殴りますよ?」
咲波はそう言って、右手を上げて殴るフリをした。
「おいおい、髪切って性格も変わったか?じょーだん、じょーだんだって。」
矢島は苦笑いしながら言った。
「さ、冷めないうちに食べましょう。いただきまーす!」
咲波はそう言うと、椅子に座って食事を始めた。
3人は、これまでの激しい戦いを忘れたように、楽しく笑いながら食卓を囲んだ。
夜になり、所変わってそこは高層ビルの上階にある、高級レストランの窓側席。
菊野が窓の外の景色を眺めていると、トイレから戻った白峰が席に着いた。
2人は、それぞれお洒落なスーツとドレスに身を包んでいた。
「それにしても、渉さんがこんなお店用意してくれたなんて、意外だったなぁ~。」
菊野は、白峰の姿を見るとそう言った。
普段のサバサバした姿から一変、髪をお洒落に整え、メイクも落ち着いた感じに仕上げ、大人の女性になっていた。
一方の白峰も、髪型を変え、優しい目で菊野を見つめていた。
「知り合いが教えてくれた。
たまには、こういう店で食事もいいだろ?」
白峰は、微笑みながら菊野に言った。
食事もひと段落し、食後の紅茶を飲みながら2人は談笑している。
「それに…言ってたろ?こういう店で…。」
そう言うと、白峰は何やら足元に手を伸ばした。
すると両腕を後ろに隠し、再び立ち上がって菊野の近くに寄った。
「…き、菊の家の君に、この花は合ってないかもしれないけど…薔薇の部隊に所属していた君には、合ってるかもしれないね。これが君への俺からのメッセージだ。受け取ってくれるかい?」
そう言うと、両手を前に出し、
白峰は108本の薔薇の花束を菊野に差し出した。
「…えっ…ええっ?ええっと…これはその…。」
菊野は驚き、そして恥ずかしそうに赤面し慌てながら言った。
その様子を同じように頬を赤らめながら見つめていた白峰は、一呼吸置き深呼吸をすると、落ち着いた声で言った。
「里海、俺と結婚してください。」
白峰は、菊野に真っ直ぐ視線を向けた。
菊野は驚いた表情を見せ、2、3度視線を泳がせながら、混乱していた。
すっと息を吸い、落ち着きを取り戻した菊野が口を開くと、その目には少し涙が浮かんでいた。
「渉さん。私、人としても全然強くないし、刀の事になると周りの事見えなくなっちゃうけど…こんな私を、これからもよろしくお願いします。」
そう言って薔薇を受け取った。
花束を抱え、その胸に秘めた思いをやっと打ち明けられた菊野は、安心したように泣き出した。
白峰は、そんな菊野をそっと後ろから抱きしめた。
時は経ち、"第2次NAMELESS大戦"から2年。
とある会議室に、残されたBOX・FORCEメンバーは集められた。
そこには、メンバー以外にも数人見慣れない人物も揃っていた。
2年ぶりの再会に、皆それぞれ驚きながらも笑顔を見せていた。
そこへ、1人の人物が現れた。
「みんな、久しぶり。元気にしてた?」
その人物は、クリスティーナ・パンダであった。
相変わらずパンダの被り物を被った頭に、服は白衣ではなく珍しくスーツ姿になっていた。
「ここに集まってもらったのは、
君達のこれからについて、正式に政府からの要請通達をする為だ。」
そう言うと、パンダは資料を全員に配り始めた。
その表紙には、『BOX・FORCE 国家特殊防衛軍 要請』と書かれていた。
「みんなにはこれまでNAMELESSと戦う為に、BOX・FORCEとして戦ってもらった。そして、その成果は各方面にかなり盛大な評価を頂いている。
その結果、今回正式にBOX・FORCEは国家特殊防衛軍として、国が認める組織としての活動できることになった。」
パンダが資料を見ながら説明を続けた。
「それに伴い、新生BOX・FORCEとして新しい部隊編成を勝手に選別させてもらった。資料の3ページ目を見てくれ。」
一同が資料の指定ページを開くと、そこには新たな部隊編成が書かれていた。
「まず"第1真隊"。隊長は彩科院 鬼介。君だ。」
パンダは彩科院を見てそう言った。
彩科院は、ふんと顔を背けたが不満そうな顔はしていなかった。
「鬼介に続いて、咲波と白峰。
3人で"第1真隊"として、皆を引っ張ってくれ。」
「「了解。」」
パンダがそう言うと、白峰と咲波が返事をした。
「そして、"第2真隊"。隊長は、矢島。」
パンダは、矢島を真っ直ぐ見てそう言った。
「えぇっ!?俺がっすか?」
矢島は驚いた表情で、自分を指差しそう言った。
周囲の視線が、一斉に矢島に集まった。
「第2次大戦の、ラスコ戦での活躍への評価は高い。矢島ならできるはずだ。」
パンダは動揺する矢島の背中を押すように、矢島にそう言った。
「…うっす。しゃーねー。ならやるしかないか。」
矢島は少し不安そうな表情を見せるも、決意に燃える目をして言った。
「そして、沫梨とスミレ。
君ら2人が矢島を支えてやってくれ。」
「了解!」
パンダがそう言うと、沫梨は返事をした。
スミレは何も言わずに黙って頷いた。
「そして…"第3真隊"。隊長は迅雷寺。」
「…は、はい!」
迅雷寺は、戸惑いながらも返事をした。
「これは…桂からの遺言だ。
誰に何を言われようと、桂が選んだのだ。間違い無いと信じているよ。」
パンダは、不安そうな迅雷寺に向けて安心させるような口調で言った。
「そしてメンバーは、リズと古織。」
パンダがそう言った。
「ほーい。仰せの通り。」
リズはどこかテキトーに返事をした。
その後、見慣れない顔の1人の女性が立ち上がった。
「皆様、初めましてになると思います。諜報員として活動していました、古織 芙美華です。以後お見知り置きを。」
そう言うと、古織は一礼して着席した。
「以上。新生BOX・FORCE改め、『日本特殊防衛組織BOX・FORCE』だ。」
パンダはそう言うと、彩科院を見た。
「んじゃ、新第1隊長の鬼介。最後一言。」
パンダがそう言うと、
彩科院は立ち上がるや否や机を一発叩いて言った。
「俺たちは、これ以上この日本に、そしてBOX・FORCEに、2度と大きな被害を与える事はしない。その為に存在する。いいな!」
彩科院は、気迫に溢れた表情で叫んだ。
「「「了解っ!!」」」
その夜、とある裏路地に7人の人影が集まっていた。
7人は何やら黒いローブに包まれ、そのローブのフードを全員が被っていた。
「…なるほどな。まさか、あの人が黒幕とはね…。」
1人の男はそう言うと、フードを外した。
その人物は、チャン・リーフォンであった。
「…要は、"BOX・FORCE"を叩いて、そいつを炙り出せばいいんだな?」
チャンの横に胡座を掻いて座っていた人影は、そう言った。
すると、7人の中心的な立ち位置にいる人物が立ち上がり、ローブを脱いで畳みながら言った。
「…"BOX・FORCE"を潰し、真の目的を食い止める。それが俺たち、"七魔団"のやるべき事だ。そしてその真の目的を実行しようとしている人物。…クリスティーナ・パンダを…殺す。」
右腕に抱えたローブの端を、強く握りしめてその人物はそう言った。
その人物は…
「俺が…"BOX・FORCE"を潰すっ!」
【第1章:NAMELESS編 完結】
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
アラフォーリサの冒険 バズったSNSで退職からリスタート
MisakiNonagase
恋愛
堅実な会社員として働いてきた39歳のリサ。まだまだ現役の母親と二人暮らしで高望みしなければ生活に困ることはなく、それなりに好きなことを楽しんでいた。
周りが結婚したり子育てに追われる様子に焦りがあった時期もあるなか、交際中の彼氏と結婚の話しに発展した際は「この先、母を一人にできない」と心の中引っ掛かり、踏み込めないことが続いてきた。
ある日、うっかりモザイクをかけ忘れインスタグラムに写真を上げたとき、男性から反応が増え、下心と思える内容にも不快はなく、むしろ承認欲求が勝り、気に入った男性とは会い、複数の男性と同時に付き合うことも増え、今を楽しむことにした。
その行動がやがて、ネット界隈で噂となり、会社の同僚達にも伝わり…
リサは退職後、塞ぎ込んでいたが、同じような悩みを抱えていたカナリア(仮名)と話すようになり立ち上がった。ハローワーク経由で職業訓練を受講したり、就活したり、その間知り合ったり仲間と励まし合ったり、生きる活力を取り戻していく…
そして新たな就業先で、メール室に従事する生涯枠採用の翔太という男性と知り合い、リサの人生は変わる…
全20話を予定してます
背徳のミラールージュ(母と子 それぞれが年の差恋愛にのめり込んでいく鏡写し)
MisakiNonagase
恋愛
24歳の市役所職員・中村洋平には、自慢の恋人がいた。2歳年上の小学校教師、夏海。誰もが羨む「正解」の幸せの中にいたはずだった。
しかし、50歳になる母・美鈴が21歳の青年・翔吾と恋に落ちたとき、歯車は狂い出す。
母の恋路を「不潔だ」と蔑んでいた洋平だったが、気づけば自分もまた、抗えない引力に引き寄せられていた。
その相手は、母の恋人の母親であり、二回りも年上の柳田悦子。
純愛か、背徳か。4年付き合った恋人を捨ててまで、なぜ僕は「彼女」を求めてしまうのか。
交差する二組の親子。歪な四角関係の果てに、彼らが見つける愛の形とは――。
冴えない建築家いずれ巨匠へと至る
木工槍鉋
ファンタジー
「建築とは、単なる箱を作ることではない。そこに流れる『時』を設計することだ――」
かつてそう語り、伝説の巨匠と呼ばれることになる男も、かつては己の名前に怯えるだけの冴えない二級建築士だった。
安藤研吾、40代。独立したものの仕事はなく、下請けとして「情緒のない真四角な箱」の図面を引き続ける日々。そんな彼が恩師に教えられた座標の先で迷い込んだのは、昭和初期を彷彿とさせる、魔法のない異世界だった。
現代の建築知識、そして一釘一釘を大切にする頑固大工との出会い。 「便利さ」ではなく「住む人の幸せ」を求めて、研吾は廃村に時計台を建て、水路を拓き、人々の暮らしを再生していく。
異世界で「百年の計」を学んだ研吾が現実世界に戻ったとき、その設計は現代の建築界をも揺るがし始める。 これは、一人の男が仕事への誇りを取り戻し、本物の「巨匠」へと駆け上がるまでの、ひたむきな再建の記録。
女神の白刃
玉椿 沢
ファンタジー
どこかの世界の、いつかの時代。
その世界の戦争は、ある遺跡群から出現した剣により、大きく姿を変えた。
女の身体を鞘とする剣は、魔力を収束、発振する兵器。
剣は瞬く間に戦を大戦へ進歩させた。数々の大戦を経た世界は、権威を西の皇帝が、権力を東の大帝が握る世になり、終息した。
大戦より数年後、まだ治まったとはいえない世界で、未だ剣士は剣を求め、奪い合っていた。
魔物が出ようと、町も村も知った事かと剣を求める愚かな世界で、赤茶けた大地を畑や町に、煤けた顔を笑顔に変えたいという脳天気な一団が現れる。
*表紙絵は五月七日ヤマネコさん(@yamanekolynx_2)の作品です*
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる