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第1章:NAMELESS編-終焉-
[第39話:Sweetpea]
しおりを挟む「…樫間隊長、ジャック隊長両名の消息不明…。リズ、咲波両隊員は負傷も重体ではない…。これより、両隊長の捜索に当たる…。」
リズはそう言ったものの、疲労と喪失感から立っているのもやっとの状態で、全体通信を入れた。
通信を終えると、スッと両腕の力が抜けて俯いた。
一呼吸置いて、リズは上空を仰いだ。
「…終わった…んだよな…。」
新宿の空は次第に雨雲が晴れ、朝日の光が差し込んでいた。
その戦いの終わりにしては、何とも歯切れの悪い終わりを残して…。
その後、BOX・FORCEでは約1ヶ月に及ぶ復興が行われた。
残された、第1部隊改のリズ、咲波、第2部隊改の矢島、蓮田、スミレ、第3部隊改の白峰、沫梨、第4部隊改の彩科院、迅雷寺、菊野は、復興作業に追われながらも、戦闘中に行方不明となった樫間、ジャッキー、蒼松、獅蘭、チャンの捜索に当たった。
「…まだ、手掛かりの1つも見つからないのか…。」
諜報員や、BOX・FORCEのスタッフ達も総出で捜索活動を行ったが、一向に手掛かりが見つからない。
樫間、蒼松、獅蘭、ジャッキー不在の中、彩科院が全体の指揮をとっていた。
かつての彩科院なら、
「見つからない雑魚など、この組織に必要ない。」
などと言いそうだが、"四神"との戦闘を終えて心身共に深い傷を負っていた為か、どこか不安気な顔を見せた。
彩科院が捜索活動をしながら見ていたテレビのモニターには、環境大臣と肩書きの付いた楢迫 祠の姿が映っていた。
『…この度の"NAMELESS"の侵攻により、被害に遭われた国民の皆様に…』
BOX・FORCEの総本部長である楢迫は、表向きには環境研究局の局長であり、政府の副環境大臣を務めていた。
第2次NAMELESS大戦において、その被害の甚大さ、そして環境資源の関与が広く世間に知れ渡り、前任の環境大臣がその責任を問われ辞任。BOX・FORCEやNAMELESSについての知識が豊富である楢迫は、この度の件から大臣として今後の復興と再発防止の責任を負うこととなった。
「彩科院隊長。あまり詰め過ぎないでください。」
気を落としていた彩科院に、咲波が気を利かせてお茶を用意した。
「…悪ぃな。行方不明中とはいえ、6人の隊員を失った…。初代の時は7人。俺は…俺たちは13人もの仲間を犠牲にしたと思うと…な。」
彩科院は、珍しく弱気な姿勢を見せた。
「…きっと、聡ちゃん…蒼松隊長は犠牲だなんて思ってませんよ。他の隊長達だってそうです。誰よりも、必死に戦った。その結果、"NAMELESS"による侵攻をなんとか食い止められたんですから。」
咲波も、どこか途方に暮れた表情でそう言った。
「いや、どうかな。これで"NAMELESS"の侵攻が終わったとも限らない。次またいつどんな奴に攻められるか分からない。その時、今の俺たちは何処まで戦える?それまでに、どれだけの戦力を補填できて、残った俺たちは何処まで強くなれる?…まあ、そんな確証のない事言ってもしょうがないんだけどな。
今まで散々俺はそんな事を言ってきたが、結局あいつらが考える事の方が、よっぽど先の未来が見えていたと思う。…後悔しているよ。」
彩科院は、これまでの発言や行動を悔やんでいるように見えた。
「…もっと強く、もっと強い力を手にしなければ…。」
彩科院は、震える拳を握りしめて、そう呟いた。
_所変わって、暗い廃墟ビルの使われなくなった会議室のような場所に、コンピュータのモニターが数台展開され、そこに1人の人影が椅子に座ってそれを眺めていた。
その人物は、頭の大きな被り物をゆっくりと外して、徐に放り投げた。
「…ふっ、バキオラ、ウルセウス、ヴァリアル、そしてラスコ・ローム、テキーラ…。悪く思うなよ。お前たちも私の計画の"一部"に過ぎないのだからなぁ…」
そう言うと、その人物は羽織っていた白衣の内ポケットから葉巻のような物を取り出して、それに火をつけた。
「…ふぅー。…さて、これでまず"日本"の首都、"東京"は洗脳完了だ…。ここさえ攻撃すれば、その惨状は国内へ広がる。日本人に恐怖を植え付け、さらにその恐怖を根絶した"BOX・FORCE"は、この国の"ヒーロー"となった…。
…次は世界へと侵攻する準備をしよう…。そこで今度は、世界が"BOX・FORCE"のような力を持った軍事力を欲しがるだろう…。
そんな時、"箱装"を製造、提供できる人間は"私"しかいない…。
…なんと容易いことだ。世界征服など、強制的に物語を築いて終えば一瞬だ…。
…まるで絵本を描いているようだ…。
著者は…そう。」
その人物は、不気味な笑みを浮かべながら独り言を呟き、何かを言いかけたところで葉巻を握り潰した。
「…この私、"クリス・ハンター"が世界を征服し、この物語の神となるのだ…!はっはっはっはっ…。」
カラン…
クリス・ハンターと名乗る人物が高笑いをすると、誰もいないはずの廃墟ビルに音が響いた。
チャカッ…
クリスは両手に拳銃を構えた。
「…誰かいるのか…?」
クリスは横目で、コンピュータのモニターに映る"backup completion"の文字を見ると、メモリーを抜き取り、素早くポケットにしまい込んだ。
そして、両手の拳銃を周囲に乱発した。
最後の薬莢が転がり落ちると、クリスは笑みを浮かべて言った。
「…まあいい。…2年後。2年後にまた世の中は大きく動き出す。私の手によって…。」
そう言うと、クリスは暗闇に姿を消した。
数台あったコンピュータは、全て弾丸の跡が残され、ガラクタとなっていた…。
_所変わってそこは、山奥の古民家。
現代では物珍しい囲炉裏が家の中央に構えてあるその場所に、2人の人物がいた。
1人は、布団の中で静かに目を閉じて眠っていた。
もう1人は、囲炉裏で魚を焼きながらパイプ煙草を吸っていた。
「…ここは…」
眠っていた人物が、突然目を覚ましてそう呟いた。
「…おぉ、気づいたか。」
囲炉裏の側にいた人物は、パイプのカスを囲炉裏に捨て、ゆっくり横になる人物を見た。
「…あなたは…ってぇ…」
眠っていた人物が、ゆっくり身体を起こそうとしたが、なにやら怪我を負っているのか、痛みを堪える顔をした。
「…動くな。派手にやられてる。」
囲炉裏の側の人物は、落ち着いた口調でそう言った。
「…なんや。俺の事、アイツから聞いとらんのか。俺はな…。」
_その山奥の古民家から、もう少し山奥に進んだ場所に、黒く焼け焦げた一本の大木があった。
その幹に、不自然に作られた祠から
何やら黒く怪しい光が放たれていた…。
『…遂に現れたか…。余の力、預けてみるとするか…。』
不気味な声と共に、突然山風が辺り一面に吹き荒れた。
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