BOX・FORCE

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第2章 七魔編-七魔団vsBOX・FORCE-

[第18話:Ad palmam manus tuae]

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葉坂は、辺りを見回すも矢島の姿を見つけられずにいた。

「…くそっ…どこだ…。」

そう呟く葉坂の頬に、雫が流れ落ちた。

「…雨…?」


「"猪突・猛進ラッシング・ボアード"っ!!!」

雫の正体が明らかになった。
葉坂の頭上に、先程と同じ渦巻く槍を持った矢島が現れた。

その槍は、真っ直ぐ葉坂目掛けて落ちてくる。

葉坂は少し慌てて、自身の周囲に暗黒のオーラを展開した。
間一髪で槍を防ぐも、オーラの壁が勢いに押されて地面に減り込んでいく。

(…くそっ…ここは避けるのが正だったか…。)

葉坂が諦めたように俯く。

「…沈めぇぇぇぇぇっ!!!!」

矢島は精一杯叫んだ。
しかしその瞬間、葉坂は笑みを浮かべた。

「…"大鎌乱舞おおがまらんぶ"っ!」

葉坂がそう呟く声が、矢島の耳に入る。
その時、矢島は素っ頓狂な声を出した。

「…何っ!?」

矢島は手遅れだった。
オーラの内側の葉坂の手には、"悪魔の大鎌サタン"が無かった。

そして矢島の周囲から、回転する大鎌が無数に飛んできていた。


(…まずい…っ!)


矢島が八つ裂きにされると思ったその瞬間…

「"フルフランベ"ぇぇぇぇぇっ!!!!」

熱波と共に、矢島の周囲に炎が現れた。
炎の輪は、矢島の周囲の大鎌を一瞬で排除した。
その正体は、抹梨である。

「…っ!…洸っ!?」

矢島が抹梨のいる方向に視線を向けたその時、
抹梨は勢いよくチャンのを食らった。


「…ぐはっ…。」


抹梨の吹き飛ばされた先には、大学の校舎があった。
抹梨の身体は、勢いそのまま校舎に叩き込まれた。

「…俺を目の前にして集中を欠くとは…舐められたものだな。」

その姿を、チャンは冷徹な視線で睨んでいた。

「…貴様の相手はぁぁぁぁ、この私だぁぁぁぁぁ!!!!!」

そう叫びながら、立ち尽くすチャン目掛けてスミレが襲いかかった。

「…はぁ。」

チャンは大きなため息を吐いた。
そして、向かい来るスミレの攻撃を
呆然と見ているだけであった。

「…お前が、俺に勝てるとでも?」

チャンはそう言うと、スミレに向かって右手を差し出した。
その瞬間、その手からは暗黒のオーラが砲撃状に放たれた。
禍々しいオーラは、スミレに避ける隙を与えず
スミレの姿を一閃に包み込んだ。


黒い閃光が晴れると、スミレは正気を失ったように項垂れていた。

「…所詮、元軍人もこの程度か。」

チャンはそう吐き捨てると、葉坂の姿を探した。

と、その時…。


「…"ボア・トライデント"っ!!!!」

巨大ミサイルのような渦巻くが、チャン目掛けて襲いかかってきた。

「…クソっ…。町ごと破壊する気か…?」

チャンはただ、呆然とそのを見つめるだけであった。

しかし、攻撃をまともに食らうはずはなく、
チャンは辺りを見渡して、回避方法を模索した。

「…上…か。」

そう呟くと、チャンは素早く上空に跳ね上がった。
しかし…


「" Va au diableヴァウ・ディアブル"っ!!!!」


叫び声と共に、鎖に繋がれたが、チャンの頭上に現れた。

「…なっ…。」

チャンは思わず驚きの表情を見せた。
決して油断してた訳ではないのであろうが、が自らの頭上に現れた事への理解が追いついていなかった。

を振りかぶったのはスミレであったからだ。


(…奴は先程…なぜだ…!)

チャンがそう思う内に、はチャンに打撃を加えた。

"ボア・トライデント"の軌道により激しく抉られた地面に、チャンは強く叩きつけられた。


「…軍仕込の執着、なめんなよ。」

スミレはそう呟いて、チャンの姿を見下ろした…。



一方、葉坂と対峙する抹梨は…。


「…チャン・リーフォン…、油断したな。」

相方の戦況を横目に、葉坂はそう呟いた。

「…お前の相手は、俺だぁぁぁぁ!!!」

その叫び声と共に、両手足に炎のオーラを纏った抹梨が、葉坂に襲いかかった。

炎による推進力で、抹梨のスピードは人間のを越えていた。

「…だから、なんだって言うんだ。」

葉坂はそう言うと、再び"分身サタン"を発動した。
無数に現れる葉坂の姿は、抹梨を囲い込むように陣を取った。

「…"フルフランベ"ぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

抹梨は右腕を引き、その腕にありったけの炎のオーラを纏った。
その大きさは、分身する葉坂の姿全てを覆い尽くす程に。

"フルフランベ"は、葉坂の分身体を次々に燃やし消していった。

ふと、沫梨は違和感を感じた。

(…俺が焼き消している…のか?…勝手に数が減っているようにも感じる…。)

その時、葉坂の姿は1人残らず消滅していた。

「…何…!?」

すると、沫梨のもとに矢島とスミレも駆け寄った。

「…チャン・リーフォンの姿を見失った…。」

スミレは俯きながら、右手の拳を力いっぱい握りしめて
そう呟いた。

「…まずいな…。俺たち、奴らの意のままに踊らされている気がする…。」

矢島は、柄にもなく弱音を漏らした。

「何を言っている矢島!隊長である貴様が弱気になってどうする!」

スミレは、矢島に喝を入れた。
矢島は、その言葉を噛みしめるように天を仰ぐ。


(…蒼松…。お前が生きているなら、お前の知恵を、俺に貸してくれないか…。)





_
駒場での戦闘を、少し離れた渋谷のビルの屋上から
観察している人影があった…。


「…こちら、コード:FW。
駒場での戦闘は、一旦静寂に入りました。どうぞ。」

双眼鏡を覗き込みながら、その人影はそう言った。
その人物は、緑がかった作業服に黒い帽子を被っていた。
髪と髭が長く伸びており、その姿はそのものであった。

『…現場の人物、割り出せるか?』

人影の耳元の通信機から、男の声がした。

「OK。…うーん、ありゃBF陣営は矢島、沫梨、スミレの3名。
相手方は…、さっき見た感じ、小柄な男と…チャン・リーフォンらしき人物ってところかな。」



所変わって、薄暗い作業部屋らしき場所では…。

その通信を受けっ取っている男は、薄暗いどこかの事務所らしき場所で
コンピューターのモニターを複数眺めながら、もう1人の男と会話していた。

「…チャン、ねぇ…。彼がにいるのか。こりゃ厄介だな。」

男は、そう言うとマグカップを手に取り、コーヒーを口に流した。

「彩科院邸での戦闘…、彩科院鬼介率いる白峰、咲波の部隊。
そして、矢島率いる沫梨、スミレの部隊…。」

もう1人の男はそう言うと、立ちながらコンピューターのキーボードを叩き、
何かを入力した。

「…となると、もう1組はリズ、迅雷寺…と、恐らくもう1人。
…その相手は…。」

男はマグカップを机に置き、素早くキーボードを叩きながらそう呟いた。
エンターキーを勢いよく押すと、モニターに1人の人物の映像を切り取った写真が出てきた。

「…樫間…紘紀…。」

もう1人の男は、そのモニターの画像を覗き込み
そう呟いた。


「…我々も、動き出すとしようか…。"SHOW・TIMEショー・タイム"の、始まりだ…。」




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