捨てる神あらば、拾う世界あります

卯堂 成隆

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囁きの耳飾り 2

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 行商人の出会いから数ヵ月後。
 若い戦士は拠点となる街を買えて、別の街の冒険者ギルドで仕事をしていた。

 そんなある日のことである。

「なんだ新入り、おまえ片方だけイヤリングなんかしているのか? ダセェな」
 酒焼けした声で話しかけてきたのは、先輩である冒険者だった。
 余計なお世話だと喉元まで台詞がこみ上げてきたが、すんでのところでなんとか飲み込む。

 この街に来た頃、いろいろと助言を貰った相手だからだ。
 いささか上から目線がムカついたが、それでも恩人と呼ぶべき相手である。

「あははは、似合わないのはわかってるんですけど験担ぎみたいなものっすよ、先輩。
 コレを手に入れてからというもの、仕事に失敗したことが無いんで」
 そう、あの胡散臭い行商人からこのイヤリングを買って以降、なぜか全てにおいてめぐり合わせがいいのだ。
 もしかしたら、自分に必要だったのは強い武器でも化け物じみた身体能力でみなく、運だったのかもしれない。

「ちっ、験かつぎだなんて女々しいことしやがって……それよりも仕事の話だ。
 今から近くのダンジョンに稼ぎに行くんだが、何人か面子に空きがある。
 お前もこないか?」
 そう告げると、先輩冒険者はなれなれしく肩に手を置いて話しかけてくる。

「え? マジですか! 行き……」
 その時である。
 耳元で、誰かが『ダメよ』と小さく囁いた。
 ――いったい誰が?
 空耳か?
 それよりも、早く返事をしなくては。

「どうした?」
「いえ、なんでも無いっス。 そのダンジョン、俺も……」
『行ってはダメ』
 今度はハッキリと声が囁いた。
 聞いたことの無い、刃物のような冷たさを感じる女性の声である。

 いったい誰が?
 思わず振り返るが、それらしい人物はいない。

「おい、どうしたんだ? お前、なんか変だぞ」
「いや、さっきから空耳が聞こえて。 すいません、なんか今日は体の調子が悪いみたいです」
「……ちっ、体調管理ぐらいきっちりしておけ!」
 そう告げると、その先輩冒険者は興味を失ったかのように他の新人冒険者のほうへと立ち去ってしまった。

「……ったく、いったい何なんだよ!」
 テーブルの上でうつぶせになり、若い戦士は盛大に毒づいた。
 肝心なときにチャンスを台無しにするだなんて、巡り会わせとしては最悪である。
 やっぱり、このイヤリングは幸運のイヤリングなんかじゃなかったんだ。
 ――ちくしょう。
 彼は全ての責任をイヤリングに押し付けて、このまま八つ当たりとしてどこかに投げ捨てようとした……その時である。

「よく断ったな、お前。 念のために忠告はするが、もうあいつには近寄らないほうがいぞ」
 聞こえてきた声に驚いて横を見ると、いつの間にか別の先輩冒険者が彼の隣に座り、うまそうに蜂蜜酒を飲んでいた。

「お前も知っているだろうが、アレはあんまりいい噂聞かない奴だからな」
「うぇっ、マジですか!?」
 その言葉に、若い戦士は目を見開く。
 むしろ後輩の面倒見のいい、評判のいい冒険者だと思っていたからだ。
 同じようにあの先輩の世話になった者は多く、みんなそう思っていることだろう。

「なんだ、知らなかったのか?
 あいつは時々あんな感じで新人に声をかけて、しばらくすると一緒にダンジョンに潜るんだ。
 だが、俺が知る限り戻ってきたヤツはいない」
 呆れたようにそう告げると、先輩冒険者はニヤッと唇だけを笑みの形に吊り上げた。

 その意味を考えて、若い戦士は思わずブルリと身を震わせる。
 先輩の台詞の意味を明確に理解したわけではないが、そこにはたしかに濃厚な死の匂いがした。

「そ、それって……」
「知ってるか? 一緒にダンジョンに潜ったやつの遺品はな、遺族がなければ一緒にもぐったやつのものになるんだぜ?」
 ――次からは気をつけな。 こんなことをわざわざ教えてくれる奴なんか、ここには一人もいないからよ。
 一言そういいのこすと、その先輩冒険者は自分の仲間のところに戻っていった。

 なんでだよ! どうしてそんな大事なことをあらかじめ誰も教えてくれないんだ!
 おもわずそう叫びそうになったが、彼はすんでのところで気がつく。
 自分がまだ、冒険者と呼べる存在ではなかったことに。

 あぁ、そうか。 あれに引っかかるような間抜けは冒険者としてお呼びじゃないんだ。
 だからこそ、あの悪質な先輩冒険者の誘いから逃れた俺が、自分たちの本当に仲間としてふさわしい人物であるかどうかを確かめに来たのだろう。
 そして、たぶん自分はまだふさわしくないと判断されたのだ。

 怖い……
 その若い戦士は冒険者と呼ばれるようになって始めて恐怖を感じた。

 彼は気づいてしまったのだ。
 死がずっと……そして今も自分の隣にたたずんでいるという事に。
 命を切り売りして生活するという、本当の意味に。
 そして、自分のあまりにも無防備さに。

 人間の悪意と欲望は、魔物の爪や牙と同じぐらい危険で恐ろしいものなのだ。
 彼は初めてその言葉を現実として認識したのだった。

 しかし、あの警告の声はいったい誰だったのだろうか?
 もしもあの時あの声がなかったのなら、自分の命はなかっただろう。

 彼がその答えを知るのは、さらに数ヵ月後。
 自分の仲間となるべき相手にめぐり合い、彼らと一緒にダンジョンにもぐっていたときであった。

 『ダメよ』
 再び聞こえてきた声に、戦士は体をこわばらせる。
 それは、ダンジョンの浅い階層を通って、下の階層に続く階段を降りようとしたときであった。

「おい、どうした? はやく下に降りようぜ」
「いや、ちょっと待ってくれ」
 後ろから急かす仲間の声に、若い戦士は顔をこわばらせながら階段を一段だけ降りようとする。
 すると、再び彼の耳に『ダメよ』と女性の声が響き渡った。

 仲間は全員男である。
 そして周囲には、彼ら以外に人はいない。

 その時、若い戦士はふと思いついた。
 ――もしかして、この声はあの行商人から貰ったイヤリングから出ている?

 もう一度だけ足を前に踏み出そうとすると、その声はたしから右の耳につけたイヤリングから響いていた。
 しかも、どうやらこの声は自分にしか聞こえないらしい。

 その真実を理解した瞬間、彼の心は決まった。

「……すまん、今日はもう戻りたい」
「え? なんだよ、まだダンジョンに入ったばかりだろ」
 突然そんな事を言い出した若い戦士に、彼の四人の仲間たちはそろって怪訝な顔をむける。

「でも、ダメなんだ」
「おいおい、おまえ頭大丈夫か?
 ここで引き返したんじゃ、今日の晩飯分の稼ぎにすらなりゃしねぇだろうが」
 若い戦士の言い分に、盗賊の青年が責めるような言葉を口にした。
 そしてその台詞に、残りの面子も大きく頷く。
 彼らは冒険者。 魔物を狩らなければ食い扶持を稼ぐことも出来ないのだから。

「ダメだ。 お前らが行くというのなら、俺は一人でここから帰る」
「それこそ認められません。 危険すぎます」
 神に仕える僧侶の青年が心配そうに声をかけてきたが、若い戦士は迷うことなく首を横に振った。

「……んだよ、ふざけんな!」
「ふん、こんな気まぐれなヤツとはやってられんな。 この先のことについては、少し考えさせてもらおう」
 何があってもこの先には行こうとしない若い戦士に、残りの面子からも不満の声が噴きあがる。
 立場が同じであれば、若い戦士もまた同じような反応を示したに違いない。

「なぁ、せめて理由ぐらい教えてくれないか?」
 その険悪な雰囲気に、この面子の中でリーダーを務める聖騎士がそう尋ねてきた。
 だが、その理由がイヤリングから警告の声が聞こえたからだ……なんて言ったところで彼らが納得するとはとても思えない。

 しかし、このまま先に進めばおそらく死を覚悟しなくてはならない何かが待っている。
 それは嫌だ。 死ぬのは絶対に嫌だ。

「言えばきっとアンタは俺の言い分を認めない。
 でも、俺はここから先に行くつもりは無いんだ。
 ……俺のわがままでいい。 だから、頼むから引き返してくれ」
 リーダーの目が、じっと若い戦士を目を覗き込んだ。

 たぶんダメだな。
 こいつらのこと、けっこう気に入っていたんだが、こうなってはもう仕方がない。
 ここからは、一人で帰ろう。

「それが出来ないなら、すまないがお前たちとの付き合いはここまでだ。
 何があっても、この先に行く事は断る」
 若い戦士がそう言いきると、リーダーは溜息をついた。
 その後ろでは、盗賊の男と魔術師がまるで敵を見るような目で睨みつけてきている。
 ただひとり僧侶の青年は心配そうに神への祈りを呟いているが、あえて若い戦士の味方をしようとはしない。

「返事をくれ。 出来るだけ早くここから帰りたいんだ」
 耳元では、先ほどから女の声が早くここから出るようにと語りかけてきている。
 どうやら、危険のほうが勝手にこちらに近づいているようだ。
 若い戦士は焦った声でリーダーに返答を迫った。

 そして、リーダーの台詞は彼らが思いもよらぬ言葉を口にする。

「そうだな、俺も一緒に戻ることにしよう。 この先は、行きたい者だけが行けばいい」
 その言葉に、若い戦士のみならずその場の全員が目を見開いた。

「えぇっ? 正気かよ!?」
「あんたまで何を言いだすんだ! しっかりしてくれ!」
 たちまち盗賊と魔術師がリーダーに非難の声を浴びせる。
 だが、リーダーは溜息をつくと、若い戦士の顔を示してこう言ったのだ。

「よく見ろ。 これがただの気まぐれで言っている奴の顔か?
 あとな、俺たちは仲間だ。 仲間の一人が人に知られたくない理由があって、それでこの先に行きたくないというのなら、そのぐらい認めてやれよ」
 そういわれると、盗賊と魔術師も口をつぐむしかない。

「……悪い。 どうしてもこの先に行くのはダメなんだ。 理由はいえない」
 若い戦士が気まずそうにそう告げると、彼らは肩を落としつつそのダンジョンを後にするのだった。

 その日の夜。
 若い戦士は独りになると、イヤリングをはずしてじっと見つめた。

「これで、二度目か」
 呟く声には、苦いものが混じる。
 彼はイヤリングを見つめながら、これをくれた露天商のことを思い出していた。

 たしかにこの耳飾りは、自分が強くなるために必要なものだ。
 どんなに強い魔剣があっても、どんなに凄まじい怪力があっても、それだけでは意味が無いという事を今だから理解できる。

「ようやくわかったよ。 最後まで生き残ったやつが一番強い。 死んだらそれで終わりなんだ」
 強さとは、相手を殺す力じゃない。
 それは生き残ること。
 すなわち、死を遠ざける力なのだ。

「もしも手に入れた道具が強い武器などであったなら、自分は今頃どこかで死んでいただろうな」
 自分に欠けていたのは、余裕でも運でもなかった。
 死の淵に足を突っ込まないための分別が欠けていたのである。
 ならば、この死の危険を警告する耳飾りは最高の相方ではないか。

 そして翌日。
 冒険者ギルドは騒然としていた。

 なぜなら、ダンジョンの浅い場所にキマイラという強力な魔物が現れたからである。
 なんでも、ダンジョンの奥で戦闘をしていたベテラン冒険者が、手違いをやらかしてダンジョンの浅い階層にキマイラを追いこんでしまったのが原因らしい。
 被害にあった若い冒険者は両手では数え切れないほど。
 問題のキマイラはすでに退治されたらしいが、なんとも痛ましい事件であった。

 もしもあのままダンジョンを進んでいたら、自分たちは確実に全滅していただろう。
 まさに、ギリギリのところで死の淵を回避できたのだ。

「なぁ、なんで判ったんだ? 教えろよ、仲間だろ?」
 一人で昼食をとっていると、盗賊の青年が隣に座ってそう訴えかけてくる。
 だが、話すつもりは無い。

 彼だけならまだしも、周囲の人間がこぞって聞き耳を立てているからだ。
 と言うのも、若い戦士がダンジョンに潜ることを拒否してこの事件を回避したという出来事を、この若い盗賊が酒場で吹聴したからである。

 その結果、どうやら……その逸話は冒険者たちの好奇心を刺激してしまったようだ。
 お陰で昨夜から見ず知らずの先輩を含めて大勢の人間から質問攻めである。

 この状態はしばらく続くだろうな――
 仲間である魔術師の青年も物言いげな視線をこっちに送ってきているが、今のところ彼の疑問に答えるつもりは無い。
 なぜなら、うっかり心がほだされそうになるたびにイヤリングから警告が響くからである。
 つまり、こいつらに話すのは危険だという事だ。
 仲間ですらうかつに信用できないとは――なんとも、世の中は世知辛いな。

「秘密なんてねぇよ。 あったとしても、俺の言葉を信じてくれない程度の仲間じゃな」
「ケチ!!」
 笑いながらそう告げると、盗賊の青年はすっかりむくれた顔で離れていった。

 まぁ、お前らが本当に仲間になったら教えてやるさ。
 心の中でそう言いながら、彼は一人で苦笑いする。

 ――そして思うのだ。
 かつての自分ならば、きっと大声でこの耳飾りのことをあの盗賊のように吹聴したに違いない。

 あぁ、俺は子供だった。
 子供だったから、綺麗で心地よいものばかりを追い求め、それ以外を拒絶した。
 だが、それではけっして強くはなれない事をこの数ヶ月で彼は学んだ。

 そして……彼は、自分が本当に冒険者になったことを自覚した。
 彼は『若い戦士』から、ただの『戦士』になったのだ。

 そこには、もはや甘えも驕りもない。
 今ならば、かつて隣に座って探りを入れてきた先輩冒険者にも仲間として受け入れてもらえるだろう。

 なぜなら、彼は"臆病さ"を手に入れたから。
 まさか彼がもっとも忌み嫌っていたものこそ、実はもっとも彼に必要なものであったとは……なんとも皮肉が利いているではないか。

 だが、そんな今の彼には一つ大きな悩みがある。

「……もしもあの行商人に再会したとき、いったいどれだけの料金を支払えばいいんだろうか?」
 そう呟きながら、戦士は溜息をつきつつ、ボソボソとした昼食のパンを一人で齧った。
 いつか、あの奇妙な露店商と再会できることを、心から感謝を告げることが出来る日が来ることを祈りながら。
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