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第一章
第89話 知的財産の侵害
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そのあとも色々と施設を見たが、少なくとも図書館よりヤバいものはなかった。
まぁ、図書館ひとつがぶっちぎりでやばすぎて、判断基準がおかしくなっている可能性は高いけどな。
しかし、とんでもないものを作りやがって……。
司書というから引き受けた仕事だが、こんな核ミサイルのスイッチじみたものまで任されるなんて聞いてないぞ。
しかも、俺が何か判断を間違えたときに止めてくれる存在も無い。
それが一番恐ろしかった。
こんなもの、どう考えても司書と呼ばれる存在の仕事ではない。
だが、その時である。
俺は、今頃になって職務内容を詳しく聞かされていないことに気がついた。
職務規定をまとめた書面もないぞ。
「うわぁ、なんかやっちまったなぁ」
呟いてみても何かよくなるわけでもない。
もはや回りだした車輪は、目的地に着くか道を踏み外して崖に突っ込むかするまで止まらないのだろう。
「まずは、この船の施設を全て把握することが先決か」
俺は半ば現実から目をそらす為に、今できそうなことを適当に目標とした。
さもなくば、色々と嫌な想像をしすぎて欝になりそうだったからである。
それでまだ見ていない場所が無いかを入念にチェックし、残りの施設を丁寧に視察をしたのだが、まぁ、この船の広いこと広いこと。
結局、一日では全ての施設を回りきれなかったため、視察が終わったのは翌日の昼過ぎだった。
「とりあえず、施設を見て回るのも飽きたし……一度地上に降りるか」
昼食をとりながら、俺はおもむろにそう呟いた。
……というも、自分が昼飯の鳥のステーキにフォークを突き刺そうと躍起になっていたことに気付いたからである。
こんなどうでもいいことに固執しているところを見ると、俺の精神状態はかなりヤバいらしい。
すると、向かいの席に座っていたアドルフが疑問の声をあげた。
「降りる? なんでそんな必要あるんだ?」
「降りる必要があるからだよ。
俺のこの、暇人を通り越して独房に放り込まれた囚人のような行動見て、なんとも思わないか?
あと、町の人間に説明もしなきゃならない。
こんなものが空にあったら、町の人間は気が気じゃないだろ」
少なくとも、一度ジスベアードあたりには説明が必要だろう。
今頃はストレスで胃が痛くなっているに違いない。
「そんなものかねぇ」
アドルフは分かっていないようだが、近くで話しを聞いていたシェーナやフェリシアはウンウンと頷いている。
どうやら精霊の中にも人間の常識に詳しい奴と疎い奴がいるようだ。
アドルフが後者である事は疑いようが無い。
「じゃあ、ゴンドラを降ろすか。
ちょうどその町の真上にいることだし」
アドルフの口からなんでもないように漏れた言葉に、俺はまぶたが割けるかと思うほどに目を見開く。
「はぁっ、お前何してるの!?」
こんなものが町の建物の上にある?
なんて立ちの悪い冗談だ。
いや、ほぼ嫌がらせだろ。
だが、アドルフの口から訂正の言葉はいつまでたってもでてこない。
「いや、だってお前あの街にまだ用事あるだろ?
だったら、すぐに町に下りることができるようにって思って、昨日お前が船の中をうろついている間に移動させておいたんだぞ。
この船、推進力にまだ問題があって人が歩くよりちょっと早いぐらいしかスピードでないから、追い風でもないかぎり時間かかるんだよ」
こいつ……常識がないにもほどがあるだろ。
混乱している町の様子を想像して、俺は軽い頭痛をおぼえた。
「とりあえず、下の町の様子を確認しないと。
ゴンドラに乗って降りるから、昇降口に案内して!」
色々と手遅れって気はするが、だからといって何もしないわけにはゆかない。
アドルフはその行動が気に入らないらしく、頭に巻いたバンダナの上からガリガリと爪を立てる。
「あー、実際に下に降りるしかないか。
まだお前の記憶の中にあったドローンとやらは再現できてないんだよなぁ」
「お前ら、人の記憶をなに色々と流用しちゃってるの!」
いい加減、使用料か何かを取りたい気分である。
……というか、そんな異世界のアイディアをガツガツ取り入れてこの世界は大丈夫なのだろうか?
いや、俺が見る限り問題がありまくりである。
こんな歪な進化、すぐによくない事態を引き起こすぞ。
「細かいこと言うなよ。
俺とお前の仲だろ?」
そういってアドルフが肩に手を回してきたが、俺は平手で叩いて跳ね除ける。
「人のものを許可なく勝手に都合よく使う相手は、敵とか泥棒って言うんだけどな」
俺の持っている異世界の技術が、マッドサイエンティスト気質である精霊共のテンションを爆上げしているという展開がありありと理解できた。
今も俺の知識を元にいったいどんなものを研究しているのか……考えるだけで胃が痛い。
「……まぁ、それについては悪いと思ってるんだが、そこに異世界の知識があるかと思うと好奇心がうずいて……な。
い、いちおう智の神の許可はもらってるぞ。
お前の記憶にあったアニメとかいうメディアからこの天空城を再現するのも、船の底面に智の神の紋章を見えるように表示することで許可もらっているし」
「結局、あのアニメを元にしているのかよ!!」
上司の裏切りに、俺は思わず膝を付きそうになる。
たしかに神の威厳を高めるには格好のチャンスだろうが、俺の気持ちも考えてくれよ!
その後、俺はまだ寝ていたポメリィさんを叩き起こしに行くことになったのだが、そのやり方が多少荒くなったのはしかたのないことだろう。
まぁ、図書館ひとつがぶっちぎりでやばすぎて、判断基準がおかしくなっている可能性は高いけどな。
しかし、とんでもないものを作りやがって……。
司書というから引き受けた仕事だが、こんな核ミサイルのスイッチじみたものまで任されるなんて聞いてないぞ。
しかも、俺が何か判断を間違えたときに止めてくれる存在も無い。
それが一番恐ろしかった。
こんなもの、どう考えても司書と呼ばれる存在の仕事ではない。
だが、その時である。
俺は、今頃になって職務内容を詳しく聞かされていないことに気がついた。
職務規定をまとめた書面もないぞ。
「うわぁ、なんかやっちまったなぁ」
呟いてみても何かよくなるわけでもない。
もはや回りだした車輪は、目的地に着くか道を踏み外して崖に突っ込むかするまで止まらないのだろう。
「まずは、この船の施設を全て把握することが先決か」
俺は半ば現実から目をそらす為に、今できそうなことを適当に目標とした。
さもなくば、色々と嫌な想像をしすぎて欝になりそうだったからである。
それでまだ見ていない場所が無いかを入念にチェックし、残りの施設を丁寧に視察をしたのだが、まぁ、この船の広いこと広いこと。
結局、一日では全ての施設を回りきれなかったため、視察が終わったのは翌日の昼過ぎだった。
「とりあえず、施設を見て回るのも飽きたし……一度地上に降りるか」
昼食をとりながら、俺はおもむろにそう呟いた。
……というも、自分が昼飯の鳥のステーキにフォークを突き刺そうと躍起になっていたことに気付いたからである。
こんなどうでもいいことに固執しているところを見ると、俺の精神状態はかなりヤバいらしい。
すると、向かいの席に座っていたアドルフが疑問の声をあげた。
「降りる? なんでそんな必要あるんだ?」
「降りる必要があるからだよ。
俺のこの、暇人を通り越して独房に放り込まれた囚人のような行動見て、なんとも思わないか?
あと、町の人間に説明もしなきゃならない。
こんなものが空にあったら、町の人間は気が気じゃないだろ」
少なくとも、一度ジスベアードあたりには説明が必要だろう。
今頃はストレスで胃が痛くなっているに違いない。
「そんなものかねぇ」
アドルフは分かっていないようだが、近くで話しを聞いていたシェーナやフェリシアはウンウンと頷いている。
どうやら精霊の中にも人間の常識に詳しい奴と疎い奴がいるようだ。
アドルフが後者である事は疑いようが無い。
「じゃあ、ゴンドラを降ろすか。
ちょうどその町の真上にいることだし」
アドルフの口からなんでもないように漏れた言葉に、俺はまぶたが割けるかと思うほどに目を見開く。
「はぁっ、お前何してるの!?」
こんなものが町の建物の上にある?
なんて立ちの悪い冗談だ。
いや、ほぼ嫌がらせだろ。
だが、アドルフの口から訂正の言葉はいつまでたってもでてこない。
「いや、だってお前あの街にまだ用事あるだろ?
だったら、すぐに町に下りることができるようにって思って、昨日お前が船の中をうろついている間に移動させておいたんだぞ。
この船、推進力にまだ問題があって人が歩くよりちょっと早いぐらいしかスピードでないから、追い風でもないかぎり時間かかるんだよ」
こいつ……常識がないにもほどがあるだろ。
混乱している町の様子を想像して、俺は軽い頭痛をおぼえた。
「とりあえず、下の町の様子を確認しないと。
ゴンドラに乗って降りるから、昇降口に案内して!」
色々と手遅れって気はするが、だからといって何もしないわけにはゆかない。
アドルフはその行動が気に入らないらしく、頭に巻いたバンダナの上からガリガリと爪を立てる。
「あー、実際に下に降りるしかないか。
まだお前の記憶の中にあったドローンとやらは再現できてないんだよなぁ」
「お前ら、人の記憶をなに色々と流用しちゃってるの!」
いい加減、使用料か何かを取りたい気分である。
……というか、そんな異世界のアイディアをガツガツ取り入れてこの世界は大丈夫なのだろうか?
いや、俺が見る限り問題がありまくりである。
こんな歪な進化、すぐによくない事態を引き起こすぞ。
「細かいこと言うなよ。
俺とお前の仲だろ?」
そういってアドルフが肩に手を回してきたが、俺は平手で叩いて跳ね除ける。
「人のものを許可なく勝手に都合よく使う相手は、敵とか泥棒って言うんだけどな」
俺の持っている異世界の技術が、マッドサイエンティスト気質である精霊共のテンションを爆上げしているという展開がありありと理解できた。
今も俺の知識を元にいったいどんなものを研究しているのか……考えるだけで胃が痛い。
「……まぁ、それについては悪いと思ってるんだが、そこに異世界の知識があるかと思うと好奇心がうずいて……な。
い、いちおう智の神の許可はもらってるぞ。
お前の記憶にあったアニメとかいうメディアからこの天空城を再現するのも、船の底面に智の神の紋章を見えるように表示することで許可もらっているし」
「結局、あのアニメを元にしているのかよ!!」
上司の裏切りに、俺は思わず膝を付きそうになる。
たしかに神の威厳を高めるには格好のチャンスだろうが、俺の気持ちも考えてくれよ!
その後、俺はまだ寝ていたポメリィさんを叩き起こしに行くことになったのだが、そのやり方が多少荒くなったのはしかたのないことだろう。
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