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9章 魔法少女と天空の城

295話 魔法少女と戻ってきた日々

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「おはよ、ツララ……」
眠たげに私は挨拶をする。帰ってきてから翌日の朝のことだ。ツララは元気に「主、おはよう」と返す。

「ふぁ…………早くないです?」
眠たげにやってくる百合乃。

「いや、もっと早い人いるよ。ほら。」
キッチンに指を向ける。そこからはトントンという包丁の音、それにパンのいい匂い。私の(監修の下、テレスさんが)作った食パンもどきが焼き上がったみたいだ。

「クミルさん、わざわざごめんね。」
「ご馳走させてもらってますので、この程度は。」
「女子力……わたしも負けてませんからね!」
そう言って私の用意した適当寝巻きのまま料理の手伝いに行った。

 何気に百合乃、私より料理得意だしね。私なんてアニメとかの再現飯ばっかだからなぁ。家庭料理なんて無理よ無理。
 肉じゃがすら作れない始末だよ。レシピあればいけると思うけど。

「主、どうする?」
「取り敢えず着替えてきたら?……私は着替えとかないけど」
魔法少女服は汚れないため、寝巻きとかほんとに必要ない。

「百合乃ー!今日百合乃の冒険者登録するからね!」
「分かりましたー。」
軽い返事が飛んできて、私はとりあえず食器でも出しておく。

 んー、家主が暇。大黒柱がすることない。
 なんて情けないんだろう。

 そんな風に思いながら、私は暇を持て余す。料理ができ、軽いスープと食パンを齧って1日を始めた。

 クミルさんはそのまま外に出て、手入れを始めるらしい。水やりは多すぎるといけないらしいので、特にしないって言ってた。ほんとに手入れだけ。

 ツララはツララで庭を駆け回ってた。そんなツララに人神人形、死神さんをあげてみた。もちろん、鎌は危なくないものに変えておいてる。
 すると、楽しそうに戯れ始めた。どんな風にかは言わないけど。

「私、自分の仲間をこんな戦闘狂に仕立て上げまでいいのかな。」
ふと疑問になってしまった。

「まぁ、楽しければいいんじゃないです?」
「それもそうだね。」
これで暇は私達2人だけとなる。

 あとは冒険者ギルド行って……私は色々挨拶回りしないとなぁ……
 昨日ネルがしとけみたいなこと言ってた気がするし。

 やることを決め、いざ出発。百合乃は軍服を着直してレッツゴー。

 ちなみに、百合乃が私みたいに軍服のままで寝ない理由は「誰がゴワゴワスーツで寝たいんです?」ということらしい。呆れ目で言っていた。

 私の方は、ゴワゴワどころかペラッペラだけど。

 ギルドは目の前。すぐ着くけど、ゆっくり歩く。丘を下る最中に、百合乃が口を開いた。

「その左腕、本当にどうするんです?」
「そうだね……義手とかあるといいけど、やっぱないよね。実際見たことないし。」
「じゃあそのままで?」
「いや、流石にそれは色々面倒。自分で作るかなぁ。結局面倒だけど。」
傷跡は残っていない綺麗な肩先。結構な長さが持ってかれたなぁ、と感じる。

「これがギルドですか……」
ギルドの前まで着くと、感嘆の声を上げた。

 確かなこの世界の技術でこんなでかい建物作れるってすごいよね。頑張ってるんだろうね……この世界の人達も。

「あの村みたいなところとは違いますね。あっ、あの一際高いのは何です?」
「商業ギルドだよ。あの辺結構貴族とかいると思う。知らないけど。」
「ほへぇ~。」
そのまま百合乃を引きずって冒険者ギルドの中に入る。何故か知らないけど、視線が痛い。

 何でだろう。分かるけど、分からない。いや分かるよ?完っ璧に理解してる。超アンダースタンド。

 だけど、理解しない方が気楽なんだよ。表向きだけでもね。

「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「うぉぇっ!?」
「です?」
奇妙な声が3連続でギルド周辺に響いた。なんか聞いたことある声な気もしないでもない。

「でかい声出すんじゃねぇよ!迷惑だろうが。」
「ディッシュ、それは君もだ。」
男2人が現れ、声の主を引っ張り戻す。

「ソラちゃーん!久しぶりぃっ!」
「ルリィ……?」
「そう!ルリィはルリィ!」
橙色の髪の毛を乱雑に髪留めで留め、元気に喚く少女が引っ張られながらも手を伸ばす。

「ルリィ、心配したんだからね!ソラちゃんが突然消えたって、噂を、聞いて……ってベルク!邪~魔~!」
むぅっと眉間に皺を寄せ、小声で何か呟く。

「ルリィに火の加護を。」
「っ!……ルリィ!人に精霊術を使うなと……」
「やっだねぇ~だ!ルリィはルリィの好きにするから。」
そう言って脱出する。よく見えなかったけど、精霊術で何かしたんだと思う。

「空空、あの人達誰です?」
「昔お世話になった?した?冒険者仲間。あの真面目そうなのがベルク、見た目も態度もでかいのがディッシュ、あの子が精霊術師のルリィ。」

「あ?誰が態度のでかい獣だ?」
「そこまで言ってないし。」
そんな会話をしてると、ルリィのヘッドアタックが直撃!私のお腹にクリティカルヒット!

「ぬぉっ……」
なんとかチートステータスで防ぎ切り、ルリィの足を地につけさせる。半ば強引に。

「ソラちゃん、どこ行ってたの?みんな心配してたよ?」
「まぁ……色々と。言っても信じないだろうから言わないけど。」
「信頼薄ーい!」
ほっぺをひまわりの種を詰め込んだハムスターみたいに膨らませ、つい指で突っついた。ぷーっ、と可愛い音が鳴る。

「やらかっ。」
「そう?ルリィ凄い?」
「凄くはないね。うん、まったく。」
「えぇ!」

「ほら行くぞ。突っかかって悪かったな。」
「ボク達は依頼に行かないと。ほら、人に精霊術はくれぐれも使わないようにな。」
あ~れ~、と引っ張られていった。もう遠くに行って、見えなくなった。

「……嵐みたいな人ですね。」
「大災害と変わらないよ。」
もう行くよ、と今度こそ百合乃を連れてギルドに入る。

「おかえりなさい、ソラさん。」
ファーテルさんが開口一番で迎える。

「……出待ち?」
「外の声、ここまで漏れてましたよ。」
「まじ?」
「まじです。」
そう言って、受付まで案内される。

 あれだけ大声出してればそりゃあ聞こえるよね。考えたら分かるか。

 そう思っていると、では、とファーテルさんが切り出す。

「ソラさん。冒険者カードを出してください。」
「え?なんで?」

「あっ、ソラさんは知りませんでしたか。えーっと、ギルドカードとは、いわば個人情報を全国レベルで管理・共有するもの。つまり、ギルドカードを悪用されてはいけないので、本人が死亡したときに限り、その効果が失われるのです。」
「へ、へぇ?」
突然説明が始まる。チョットヨクワカンナイ。

「そしてソラさん。あなたが失踪した翌日、ギルドカードを検索してみても該当なしとなりました。」
「つまり?」
「ソラさんは、一般的に死亡認定を受けます。」
「おぅ……」
私のいない間にそんなヤバそうなことが起こってたと知り、気になるやら知るのが怖いやら。

「ソラさんの奴隷ちゃんが頑なに信じていましたから、私たちも信じていましたけど…………生きていたんですね、ソラさん……」
目が潤み、ファーテルさんは指で目元を拭う。

「ごめん、心配かけて。」
そう静かに言う。

「信じてたぜ!期待のエース候補さんよ!」
「あんたはやるやつだと思ってたぜ!」
「おう!」
「そうだそうだ!」
「チッ……」
三者三様、いろんな声が上がる。一部私に恨めしそうな目で見てた人もいたけど、まぁそこは見逃そう。

「おいおい。ただの魔法使いが期待のエースだと?笑わせんじゃねぇよ。」
若い男の声が響いた。空気は一瞬で静まり返り、ぱっと見大学生ぐらいの男を見る。

 うわ、なにあいつ……またいつもみたいに吹っ飛ばさないといけないの?私、今魔壊病発症中なんだけど?

 心でため息を吐く。ほんとにこう言う相手はめんどくさい。

「なに?悪い?」
「いやぁ、悪いとは言ってないよ。魔法使いがエースだなんて、このギルドは相当な雑魚しかいないみたいだな、っていってるだけさ。」
1人ケラケラと笑う。うざい。

「どうしてソラさんはこうも、事件に巻き込まれやすいんですか……」
こうして、いつも通りの日々が戻ってくる。めんどくさいことも、楽しいことも。生きてるからこそ味わえる。

 はいはい、私が対処しますよ。左腕ないけどそのくらいのハンデ、あってもなくても変わらないし。

 だから私は言う。

「じゃあ、その雑魚と戦ってみる?」
久々の日常に、笑みをこぼしながら。

———————————————————————

 ようやくいつも通りに戻りました。ツララのいる日常はまだあまり書けていないのでそこまで日常感ないですけど、まぁいつも通り書いていきます。

 次回はとりあえず閑話。閑話なので短いです。終わりか始まりに閑話を入れ込むのが私、coverクオリティ。ではまた次回。
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