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19章 魔法少女と創滅神

622話 魔法少女は萎縮する

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 闇の世界からこんにちは。こちら魔法少女です。

 重力に負けないスピードで遙か上空へ飛ばされている私。人間をボールみたいにぶん投げてくれたそこの使徒は、悠々と並走……並翔している。

「滑稽でしたよ、辿り着けもしない場所を懸命に探す姿は。創滅神様も、体操お喜びの様子で盃を傾けておりました。」
「神って酒呑むんだ。」
「必要はありませんが。嗜むことはしますよ。」
淡々と、そういう適当なことは返してくれる。どうやら、無駄話は時間稼ぎにすら入らないらしい。

 ……私も私でなんでこの状況に慣れてるんだろうね!うん!私も分からない!

 自分のことは自分が1番よく分かるという言い訳をする人がいるだろうが、そんなことを言う人間は大抵私のような分からない人間だ。
 聡い人間というのは、自分や他人を鵜呑みにせず人の評価を自分に取り入れるという行為をするのだ。

『つまり何が言いたいか分からない』
『分からな~い』

 どうやら私達には難しい話だったみたいだね。

 と言っているが、私達はニアリーイコール私。私も理解できていない。

「……私はどのくらい飛んでればいいの?」
「止まればそれが到着の合図です。しっかり、調節して投げましたから。」
「……おぅふ。」
「気色悪い……」
私はしれっと視線を逸らした。そんな、心の底から漏れたような言葉をかけてほしくはなかった。

 こんな態度、創滅神に殺されちゃうよ!

 半ば自暴自棄が混ざりながら、そう叫んだ。もちろん心で。

「創滅神様の御前では、極力失礼のないよう振る舞っていますので。」
「うん。創滅神の話する時だけちょっと丁寧になるの傷つく。」
心の声を読まれてる件についてはこの際無視する。

「私は、この名も、身体も、思考も、何もかも全てが創滅神様の御心のままにあります故。貴方のような方と会話しているだけマシと思ってほしいですね。」
氷のように冷たく言われてしまった。時々アイスピックのように鋭く、普段は氷塊のように冷たく固い。この悲しみはどこへ。

 あとどれだけこの精神攻撃を喰らえばいいんだろう。

 約1時間という、何もしないには長い時間が過ぎた。それは、言葉責めから解放される瞬間でもあった。

「到着ですね。」
なんの目標もないというのに、すげなく言ってみせた。

 うぉっ……体重っ……いや私の体重か。

 ずっと無重力化、それも逆側に力を加え続けられていたせいかめちゃくちゃ私の体重が重く感じる。
 説明するのは難しいけど、失速に伴って体にかかる圧がなくなり、とうとう背中を強打した。

「…………ったぁ。」
普通に強打していた。痛い。目を開けると、そこは変わらずの光なき暗闇。

 でも使徒さんの姿が目に映ってるってことは、光はあるはずで……
 もういいや。考えるだけ無駄だし。

「ようこそ。この先が正真正銘の『核盤』。創滅神様がお待ちになられております。」
「自ら殺されに行けって?そのつもりだけど。」
「逆を言えば、こちらは殺神者を招き入れているということですから、変わらないかと。」
綺麗なターン。ピシッと決まり、私をおいて歩いて行く。

 この使徒、私を案内する気が微塵もない!

 地面も何もない闇から背中を離し、座った状態で軽くジト目をぶつけておく。
 これが精一杯の仕返しだ。

 あれは、使うわけにはいかないし。

 唯一の対抗策は、まだまだ胸の奥に秘めておく。唯一なんだから、そりゃそうだ。

 不満たらたらのままでは仕方がないので、ついて行くことにした。


「なぁにこれぇ。」
縮こまって首をキョロキョロと動かす。私の網膜はどうやら麻痺ってるらしい。

「本物ですよ。」
「私の網膜、バグってなかったのかこれ。」
何度も目を擦り、半信半疑で現実を受け止める。

 左右をご覧ください。
 ズラーっと人間の形をしたナニかが並んでる。

 身長?でいいのかな。それぞれ違うし、顔も違う。性別も違う。でも生きてはいない。確実に。だって、呼吸もなければ目に光もない。

「これ、なに。」
「稼働不可能な人形です。」
「それ、説明になってない。」
「我々使徒と少し似た存在でしょうか。貴方が下界で戦闘した使徒もどきの、更に劣化版といったもの。」
「えぇ……」
ちょっと何言ってるか分かんない、といつもなら言うはずだ。そんなこと言う元気もないくらいには、ビビっている。

 これ、アニメ的な展開だと急に全部動き出して襲ってくるのがセオリーだよね。
 いや、現実にセオリーとかないか。

 しかし、現実といえどこの世界は他者が管理している世界。セオリーが通用している可能性がある。

「稼働不可能と言いましたよ。」
「敵の言葉を信用しろと?」
「そうは言っていませんが。」
「結局そういうことじゃん。」
警戒心野良猫並になった私は、ガルルと使徒に言葉で噛み付く。

 何か怖さを紛らわすこと……この道に愛着でも持たせようかな。
 なら名前を作らないとね。

 名前……名前…………
 使徒ロードでいっか。

 そんな適当な命名に1ミリも愛着など湧かないのは知っていたことだ。じゃあ何故やったかと聞かれても、私は答えに窮するだろう。

「ねぇ……『核盤』にはこの人形しかないの?」
長く流れた沈黙を、その言葉で拓いた。少し間をおいて、答えが返ってくる。

「基本は。」
「使徒もいるって聞いたんだけど。」
「使徒は何か目的がない場合には稼働しません。どうやら、ウィリーは貴方に殺されてしまったようですが。」
軽く殺意が混じっているように思えるのは気のせいだ。気のせいということにしておこう。

「それは仕方ないじゃん。私も、殺されかけたんだし。」
「使徒とは創滅神様の御創りになられた至高の存在です。いい気はしません。」
「じゃあどうすればいい気になるの?」
「話の方向性を間違えてますが。」
淡々と答えていたから気にせずにプライバシーも引き摺り出そうとしたが、ばちばちなセキュリティが貼られている。

 会話してるようでしてない。というかしてる気分にならない。

 目の前の、言葉を解するだけの異次元の存在に少しばかりの恐怖を抱いてしまう。
 結局のところ、神は神、人は人。

 根源的なものを追い求める神。
 表面的なものを守り通そうとする人。

 どちらが正しいかなんて私ごときに分かろうはずもない。

 先へ先へと歩く彼女は既に口を噤んでしまった。質問をやめれば即座に口を閉ざす機械っぷり。

 使徒って心はあるのかな。創滅神に対して無礼を働けばキレるし。
 いや、あれは過剰な忠誠心か。

 つまり神版百合乃。

『私。ふざけすぎ』
『もうすぐボス戦なんだよ?』
『ふっ。神との一騎打ちがボス戦、か。なかなか面しr』
『しゅーちゅー!』
一部変なのが混ざっていたのを除いて、私達は私に説教をしてきた。

 分かってるよ。これが2度はないラストチャンスってことも、全てがかかった戦いってことも。

 下界を思い出す。
 百合乃に死なないでと泣かれた。記憶に刻まれた本気の叫び。本気の否定。
 ラビアには幸せを託された。渡された青色の羽は、想いの赤に塗り替えられて緋色に見えた。
 他にも、四神やロアやネル、街のみんなに王都にみんな。見てきた景色全てがこの双肩にのしかかっている。

 私は頬を叩いた。鼓舞するために。

「ここです。」
にわかに使徒さんの声が聞こえた。自主性のない彼女が声をあげたということは、だ。

「創滅神様がお待ちです。」
世界を変革する一歩が踏み出されようとしていた。

———————————————————————

 あの、はい。めっちゃ寝落ちしました。すみません。投稿時間ずれました……

 めちゃくちゃお休みしたので、前回のきっかけアニメの続きでもお話します?クッソつまんないですけど。
 この○ばですよこ○すば。私が千年かけても追いつけなさそうな名作ですね。大体の作品そうですけど。
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