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三毛猫や白黒金の夕焼け雲
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みけねこや しろくろきんの ゆやけぐも
今回の句は、三毛猫の色のことを詠んだ句です。
句の内容はそれだけ。情緒とかではなく、物理的な色の情報だけが題材です。
情報が非常に少ないので、俳句に詠める要素を探すのに苦労しました。
その中でようやく見つかったのが、三毛猫の3色は夕焼け雲の色に見立てられるということと、三毛猫の茶色は金色といえるのでは、ということ。
色の見立てについては、雲自体の色が白、雲の影がその雲自身に当たっている箇所が黒、あとは夕日が直接当たる箇所の色、ということで3色。
そして「金」については、ハムスターやレトリバーは同じ色で「ゴールデン」と呼ばれていることから結びつけました。
これで、句を読んだ人に、なるほど、と思ってもらえれば今回は及第点です。
情緒はありませんが、こうした「気づき」を示すのも詩の役割、と考えることにしました。
ただ、その条件でも俳句作りは難儀しました。推敲過程で出てきた候補作は、破調の上に17音に収まっていないものを含め、なんと40以上。
それが次のものです。ちなみに「夕」の字の読みは、ルビを振っていない個所はすべて「ゆ」です。
夕暮れか白黒茶色の三毛猫よ
夕暮れに雲の影空は三毛猫の色
夕暮れの雲に影三毛猫の色
雲纏う夕日三毛猫の三色
三毛猫や夕日と雲と影の色
三毛猫や夕暮れにかかる雲の色
三毛猫や夕暮れにかかる雲のごと
三毛猫や夕暮れにかかる雲しずか
三毛猫や夕暮れにかかる雲長く
三毛猫や夕暮れにかかる雲伸びて
三毛猫や夕暮れの雲の影長く
三毛猫や夕暮れの雲の陰と陽
三毛猫や夕暮れの雲の白黒金
夕暮れの金の雲のごと三毛猫よ
夕暮れの金の雲かな三毛猫よ
白黒金夕暮れの雲か三毛猫よ
三毛猫や夕暮れの金の雲のごと
三毛猫や夕暮れの雲に影長く
三毛猫や夕暮れの雲の白と黒
三毛猫やダイバーシティと夕焼け雲
夕焼け雲金継ぎ三毛猫影ひなた
夕焼け雲三毛猫金継ぎもんじゃ焼き
三毛猫の白黒琥珀夕焼け雲
三毛猫の白黒黄金夕焼け雲
三毛猫や雲立つ夕暮れの空のごと
三毛猫や雲立つ夕暮れの空まとい
三毛猫や金の夕焼けの雲まとう
三毛猫や纏うは金の夕焼け雲
三毛猫の夕焼け雲のごと金まだら
三毛猫の夕焼けのごとく金まだら
三毛猫の夕焼け雲のごと影まだら
三毛猫の夕焼け雲かな影まだら
夕焼け雲三毛猫のごと影まだら
夕焼け雲三毛猫のごと白黒金
三毛猫も白黒琥珀夕焼け雲
夕焼け雲の金まだら三毛猫も
夕焼けの雲の金まだら三毛猫も
金まだら夕焼けの雲か三毛猫や
三毛猫の夕焼けの雲かな金まだら
三毛猫や夕焼けの雲山の影
三毛猫や金夕焼けに雲山に影
三毛猫や白黒金の夕焼け雲
三毛猫や夕焼けにまだら白黒金
ここまで並べ、最後から2番目の「三毛猫や白黒金の夕焼け雲」が、今の形となったわけです。
さて、推敲過程の説明ですが、まず重要な点を2つほど。
1つめ、「夕暮れ」を含む候補作は、凡ミスをしてしまっています。「夕焼け」は季語でも「夕暮れ」は季語ではない、というミスです。ついやってしまうミスの一つ。
2つめ、候補作には、「~のようだ」という意味で「ごとく」や「ごと」を使っているものがありますが、この場合、夕日と三毛猫、どちらが他方「のようだ」なのかで、俳句としての意味が全然違ってきます。というのは、季語を何かの比喩として登場させる場合季語として扱えるのか、という議論があるからです。
そして、この点を気にしていたことで、今回は比喩の形は使わない、という方向性が決まりました。比喩にしなければ、猫を撫でながら遠くの夕日を眺めている、という状況にもできるからです。今の形を選んだのもそれが理由。
その2つ以外に気になった点としては、音数の問題と、「白」「黒」「茶」「金」という色を表す文字を使うかどうか、「まだら」を使えるかどうか、ということでした。
候補作の最初3つは情報が17音に収まるかどうかを確かめるために作ったものなのですが、この時点でかなり難しいことが分かります。できなくはないけど融通が利かない、というレベル。
色を表す文字に関しては、その文字を削っても色を連想してもらえるかどうか、という点が問題でした。音数節約の方法の一つですが、問題は今回の句でその方法を使えるかどうか。さすがに猫と雲から色の共通点を見出してもらうのは無茶ではないか、ということから、「白黒金」の6音は避けられないと判断しました。ちなみに、「影」「ひなた」「陰と陽」はこの点を悪あがきする中で出てきたものです。
一方で、「まだら」。これは実は使いたかった言葉です。三毛猫の模様は皆違っていて、その意味でも雲と共通するから。途中で「ダイバーシティ」が出てきたのもこれが理由です。が、音数の関係で断念。
……そしてここまで書いてみて、「三毛猫やハムスターなら『ゴールデン』」という川柳にしても面白かったのでは、と思ってみたり。俳句という「媒体」に拘ったからこそ夕焼けの情景に結びつけられた、という利点もあるのですが、複雑な心境ですね……
今回の句は、三毛猫の色のことを詠んだ句です。
句の内容はそれだけ。情緒とかではなく、物理的な色の情報だけが題材です。
情報が非常に少ないので、俳句に詠める要素を探すのに苦労しました。
その中でようやく見つかったのが、三毛猫の3色は夕焼け雲の色に見立てられるということと、三毛猫の茶色は金色といえるのでは、ということ。
色の見立てについては、雲自体の色が白、雲の影がその雲自身に当たっている箇所が黒、あとは夕日が直接当たる箇所の色、ということで3色。
そして「金」については、ハムスターやレトリバーは同じ色で「ゴールデン」と呼ばれていることから結びつけました。
これで、句を読んだ人に、なるほど、と思ってもらえれば今回は及第点です。
情緒はありませんが、こうした「気づき」を示すのも詩の役割、と考えることにしました。
ただ、その条件でも俳句作りは難儀しました。推敲過程で出てきた候補作は、破調の上に17音に収まっていないものを含め、なんと40以上。
それが次のものです。ちなみに「夕」の字の読みは、ルビを振っていない個所はすべて「ゆ」です。
夕暮れか白黒茶色の三毛猫よ
夕暮れに雲の影空は三毛猫の色
夕暮れの雲に影三毛猫の色
雲纏う夕日三毛猫の三色
三毛猫や夕日と雲と影の色
三毛猫や夕暮れにかかる雲の色
三毛猫や夕暮れにかかる雲のごと
三毛猫や夕暮れにかかる雲しずか
三毛猫や夕暮れにかかる雲長く
三毛猫や夕暮れにかかる雲伸びて
三毛猫や夕暮れの雲の影長く
三毛猫や夕暮れの雲の陰と陽
三毛猫や夕暮れの雲の白黒金
夕暮れの金の雲のごと三毛猫よ
夕暮れの金の雲かな三毛猫よ
白黒金夕暮れの雲か三毛猫よ
三毛猫や夕暮れの金の雲のごと
三毛猫や夕暮れの雲に影長く
三毛猫や夕暮れの雲の白と黒
三毛猫やダイバーシティと夕焼け雲
夕焼け雲金継ぎ三毛猫影ひなた
夕焼け雲三毛猫金継ぎもんじゃ焼き
三毛猫の白黒琥珀夕焼け雲
三毛猫の白黒黄金夕焼け雲
三毛猫や雲立つ夕暮れの空のごと
三毛猫や雲立つ夕暮れの空まとい
三毛猫や金の夕焼けの雲まとう
三毛猫や纏うは金の夕焼け雲
三毛猫の夕焼け雲のごと金まだら
三毛猫の夕焼けのごとく金まだら
三毛猫の夕焼け雲のごと影まだら
三毛猫の夕焼け雲かな影まだら
夕焼け雲三毛猫のごと影まだら
夕焼け雲三毛猫のごと白黒金
三毛猫も白黒琥珀夕焼け雲
夕焼け雲の金まだら三毛猫も
夕焼けの雲の金まだら三毛猫も
金まだら夕焼けの雲か三毛猫や
三毛猫の夕焼けの雲かな金まだら
三毛猫や夕焼けの雲山の影
三毛猫や金夕焼けに雲山に影
三毛猫や白黒金の夕焼け雲
三毛猫や夕焼けにまだら白黒金
ここまで並べ、最後から2番目の「三毛猫や白黒金の夕焼け雲」が、今の形となったわけです。
さて、推敲過程の説明ですが、まず重要な点を2つほど。
1つめ、「夕暮れ」を含む候補作は、凡ミスをしてしまっています。「夕焼け」は季語でも「夕暮れ」は季語ではない、というミスです。ついやってしまうミスの一つ。
2つめ、候補作には、「~のようだ」という意味で「ごとく」や「ごと」を使っているものがありますが、この場合、夕日と三毛猫、どちらが他方「のようだ」なのかで、俳句としての意味が全然違ってきます。というのは、季語を何かの比喩として登場させる場合季語として扱えるのか、という議論があるからです。
そして、この点を気にしていたことで、今回は比喩の形は使わない、という方向性が決まりました。比喩にしなければ、猫を撫でながら遠くの夕日を眺めている、という状況にもできるからです。今の形を選んだのもそれが理由。
その2つ以外に気になった点としては、音数の問題と、「白」「黒」「茶」「金」という色を表す文字を使うかどうか、「まだら」を使えるかどうか、ということでした。
候補作の最初3つは情報が17音に収まるかどうかを確かめるために作ったものなのですが、この時点でかなり難しいことが分かります。できなくはないけど融通が利かない、というレベル。
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一方で、「まだら」。これは実は使いたかった言葉です。三毛猫の模様は皆違っていて、その意味でも雲と共通するから。途中で「ダイバーシティ」が出てきたのもこれが理由です。が、音数の関係で断念。
……そしてここまで書いてみて、「三毛猫やハムスターなら『ゴールデン』」という川柳にしても面白かったのでは、と思ってみたり。俳句という「媒体」に拘ったからこそ夕焼けの情景に結びつけられた、という利点もあるのですが、複雑な心境ですね……
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