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【序】
『2』
しおりを挟むここ【バスティリア】の首都『マシェリタ』にあるギルドで、俺たちは出会った。
《サンダーロックギルド》ってんだが、他のギルドの面々からは、《アンダードッグギルド》なんて蔑称されてる。ま、それだけ変人ぞろいで、社会から逸脱してる上、実績もないってことなんだがな。
大体、ギルドに在籍してる俺たちの顔ぶれを見ただけでも、なんとなくわかるだろ?
ギルドの中で、唯一マトモな俺としては、もう少し気の利いた連中と、手を組みたかったんだが……色々と、他人には言えん大人の事情ってヤツがあってな。
やむを得ず、こいつらとの腐れ縁を、切れずにいるってワケだ。
お前は、ギルドの前で、行き倒れになってたトコを、主人の《レナウス》に救われ、記憶だけでなく、口まで利けないお前を、憐れに思ったレナウスが、俺たちに押しつけた。
……っと、いけね。つい、口がすべった。すまねぇ……べつに、お前のことを、お荷物だなんて思ってねぇよ。その、なんつぅか……ま、忘れてくれ。
それより、先を続けるぜ。
「うわぁ! また敵襲だ!」
今、後ろで騒いでる連中が、パーティのメンバーで、黄金の髪を内巻きパーマにしてる、いかにも馬鹿そうな奴が(信じたくねぇけど)、バスティリア五大諸侯の一人、高家出身のボンボン《ダルティフ・バニスター侯爵》だ。見ての通り、メイスの使い手……らしい。
「畜生、懲りない奴だね! 微塵斬りにしてやる!」
そんで、大型のクレイモアを、片手でブンブンと振り回してる怪力が(これまた信じたくねぇけど)、〝女〟剣士《ラルゥ・フォス・エルヴェン》だ。雄々しくも重厚な鉄鎧で身をつつみ、赤毛を後ろで大雑把にまとめ、化粧っけもないけど、意外と美人なんだよな。
もっとも、本人に女としての自覚は皆無だけどな。見ての通りの乱暴者だ。
「若! 動かないでください! あなたの犠牲は、決して無駄にしません!」
「今度は侯爵を人身御供に……ですか。なんとまぁ、大した主従愛でありますこと」
それから、ランスをかまえ、ダルティフに突進して行く色黒壮年巨漢の髭男は、侯爵の従者で騎士《シャオンステン・ゴーネルス》だ。主人を主人とも思わぬ傲岸不遜な態度と、ワケのわからん諺まがいで人を喰う、とんでもないオッサンだから、なるべく関わるなよ。
もう一人、腰まで垂らした黒髪に片眼鏡、棘つきのウィップを持ち、ヤケに冷めた目つきと辛辣な口調で、他人を見下す慇懃無礼な長身の男は《タッシェル・バウアー神父》だ。
そう、神父なんだよ、こいつ……聖エンブリヨ教会は、完全に人選をミスったな。
ところで、振り返りもせず、後ろでドタバタやってる奴らの動作が、どうして逐一わかるのかって? そんな疑問を持っただろ、お前。そりゃあ、まぁ……出会ってから三年半、とかく出入りの激しいギルド内のメンバーにしては、俺たちの場合、長いつき合いの方だからな。それに大概、単純な奴らだし、見なくたって、なにしでかすかくらい、わかるさ。
あと、残ってるのは……、
「旦那さまぁ! あびゅな――い! でち!」
妖精の血を引く言霊使い《チェルチェム・ピアチェル》だ。推定年齢二百歳。見た目は銀髪をツインテールにした美少女だが、中身はババァ……おっと、お前も気をつけろよ。
うっかり歳の話をすると、怒り出すからな。案外、凶暴なんだぜ。クロスボウの名手でな。しかも言霊使いってことは……だ。呪詛を唱えられたら、なんでもその通りになっちまうってコトだろ。まぁ、聞いててわかるように、舌足らずだから、毎回噛むんだけどな。
お陰で、助かってるぜ……って、ん?
なにが危ないでちって? おい。どうして、お前まで青い顔して逃げる。
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