小物クズ領主の勘違い英雄譚 ~極悪非道な悪徳貴族……に勘違いされた小物貴族の成り上がり~

田島はる

文字の大きさ
11 / 51

第11話 極悪非道の噂

しおりを挟む
 シェフィが役人となってから、数日が経過した。

 モノマフ王立騎士学校に通っていただけあり、頭の回転も速く、教養もある。突如現れた即戦力の人材に、家臣たちからの評判も上々だ。

 おかげで、そんな彼女を発掘したライゼルの評価もまた上昇している。

 優秀な人材を獲得し、さらには自身の評判も上々。まさに一石二鳥である。

 そんな中、上機嫌で町を歩いてると、見覚えのある人影を見つけた。

(あれは……)

 シェフィだ。

 どうやら何かを探しているらしく、辺りをキョロキョロと見回している。

「よう」

「あっ、あの時の……」

こちらが挨拶をすると、シェフィがペコリと頭を下げる。

「仕事には慣れたか?」

「はい! おかげさまで、ライゼル様の元で役人になることができました! あなたには本当にお世話になりっぱなしで……一度お礼が言いたかったんですよ! 本当にありがとうございます!」

 シェフィの言い方がどうも引っかかる。

 と、そこであることに気がついた。

 そういえば、まだ自分がライゼルだと名乗っていなかった。

 雇う際は書類選考で通した上、下っ端のシェフィとライゼルとでは、用がなければ直接話すこともない。

 そう考えれば、自分こそがライゼルなのだと知らないのも無理はない。

(……言っちゃおうかな。ちやほやされたいし……)

 ライゼルがごほんと咳ばらいをする。

「そうそう、名乗り遅れたが……」

「そういえば、聞きました? ライゼル様の評判……」

「評判?」

「はい。なんでも、放蕩三昧で豪奢な生活をするために民に重税を課しているとか」

「それは……」

 ライゼルが前世の記憶を思い出す前の話だ。

 一応今は税率も軽くし、不要な物は売り払って資金繰りをした。

 とはいえ、耳の痛い話に違いないが。

「ほかにも、資金不足を解消するため、商人を脅してお金を出させているとか……!」

「いや……いやいやいや。そんなことはないだろ」

これに関しては本当に心当たりがない。

ポンドンとは友人となり円満に資金を融資してもらったし、他の商人に対しても似たような扱いをしている。

 多少こちらに有利な内容を提示したものの、それは向こうも承知の上での契約で、第一こちらの将来性を買ってくれているものだと思っていた。

「いったい、誰がそんなことを……」





バルタザール家の本拠地、グランバルトの一角に構えた支店で、とある噂を流すべくポンドンは部下を差配していた。

「よろしかったのですか? あのような噂を流して……」

「かまわん。これくらいしなくては、私の虫が収まらんしな」

 一度ならず二度までもライゼルの脅しに屈し、不利な契約を飲まされてしまった。

 ライゼルの評判を貶めるべく、悪評を流していた。

「それに、当商会の評判に関わることだ」

「評判、ですか……?」

「あのような不利な契約……。ワケあって吞まざるを得なかったのだとしておかなくては、同業者にナメられるからな……」

 一度あのような不利な契約を許してしまえば、つけあがった連中が同じような条件を出さないとも限らない。

 そこで、ポンドンは一計を案じた。

 “交渉の結果不利な契約を結んでしまった”ではなく、“脅された結果不利な契約を結ばざるを得なかった”としたのだ。

 そうすれば、自分は不利な契約を結んだ愚か者ではなく、脅されて契約を結ばされた被害者になれる。

 それでも同業者からは幾分か軽んじられるかもしれないが、同情も買うことができ、結果的には傷が浅くすむと考えたのだ。

「しかし、大丈夫なのでしょうか。もし、このことがライゼル様の耳に入れば……」

「心配するな。ライゼルは遠く開拓地に出張っている。……よほどこちらに密な情報網でも持っていない限り、やつの耳に入るのはずっと先だろう」





 言葉に窮するライゼルに、シェフィが鼻息を荒くする。

「ライゼル・アシュテント・バルタザール……。領民の生活を省みない悪徳領主と聞いていましたが、ここまで極悪非道とは……」

「……………………」

「そういえば、まだあなたのお名前を聞いていませんでしたね。何という方なんですか?」

 先ほどまでの悪評を聞かされ、いったいどんな顔で名乗れというのか。

 考えた末、ライゼルは声を絞り出した。

「俺は……ライ」

「そうでしたか! あらためてお礼を言わせてください。本当にありがとうございます、ライさん!」

笑顔で手を振りその場を後にするシェフィに、ライゼルは乾いた笑みを浮かべることしかできないのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

帝国の王子は無能だからと追放されたので僕はチートスキル【建築】で勝手に最強の国を作る!

雪奈 水無月
ファンタジー
帝国の第二王子として生まれたノルは15才を迎えた時、この世界では必ず『ギフト授与式』を教会で受けなくてはいけない。 ギフトは神からの祝福で様々な能力を与えてくれる。 観衆や皇帝の父、母、兄が見守る中… ノルは祝福を受けるのだが…手にしたのはハズレと言われているギフト…【建築】だった。 それを見た皇帝は激怒してノルを国外追放処分してしまう。 帝国から南西の最果ての森林地帯をノルは仲間と共に開拓していく… さぁ〜て今日も一日、街作りの始まりだ!!

町工場の専務が異世界に転生しました。辺境伯の嫡男として生きて行きます!

トリガー
ファンタジー
町工場の専務が女神の力で異世界に転生します。剣や魔法を使い成長していく異世界ファンタジー

処理中です...