らぶてぃ

古葉レイ

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らぶてぃ2

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 ○○○

「んぅっ」

 先生の冷たい唇が、あたしの経験不足な唇を塞いでくる。

 その度にいつも思う。
 いつも感じる先生の唇は、氷みたいに冷たい。
 柔らかい冷気に触れた瞬間、あたしの唇と胸は妬けどする。凍り付いて焼きついて、触れた唇同士がくっついたまま離れなくなればいいといつも願う。

「んぅ」

 あたしの声が先生の中に落ちていく。
 身体が凍り付きそうな先生の冷たさは、あたしの熱い吐息を急激に冷やして液体にして、止まらない好きがあたしの中で爆発しそうになる。

 何度唇を這わせても、何度キスを施されてもあたしの唇はこれを慣れてくれない。何度しても新鮮で、何度やっても素敵だった。
 ドキドキする。先生の腕を掴む手が汗を掻いていた。せんせに嫌われちゃう。慌てて先生から手を放そうと思うのに、離れたくないから放したくない。
 何回目かのキスを暗闇で感じる。
 そしてあたしの経験は、今日この瞬間も増していく。

「んぁ」

 先生の唇が一瞬離れて、また触れる。
 あたしの唇が熱い分、先生のが冷たいんだ。湧き出して止まらない泉みたいなあたしの好きの気持ちが、胸から喉を過ぎて唇へと溢れていく。

 股が疼く。
 胸が疼く。

 背中に熱い汗が浮く。
 あたしの気持ち全部が唇を過ぎて、先生の熱に混ざって溶けていく。

「んぐっ」

 上から被せられる先生の唇が、薄っすらと開かれるのを唇で感じた。あたしは身構えて、肩に力が入る。
 先生を、唇が拒んだ。

「……っ、どうした」
「あ、ううん」

 先生が笑って、あたしは先生の背中に手を伸ばして首を振った。
 違うよ、嫌じゃない。反射的にしたあたしの抵抗に、先生の舌は止まらない。寧ろ嬉しげに、意欲的に丁寧に、あたしの中にするりと滑り込んでくる。どうやったのかがわからない。先生の舌が、あたしに入ってくる。

 あわわ。
 自己防衛。もしくは自分がむちゃくちゃになるのを止めたくて、逃げようとするあたしの舌を、先生の丁寧さが問答無用で絡め取ってくる。い、息が、出来ない。

「んぷっ、ん」

 閉じた唇を開いて息を吸う。すぐに、塞がれた。先生のテクニックは、凄すぎる。息継ぎの仕方が分からない。

 必死にキスをしながら、想像する。
 あたしで何人目なんだろう、と。
 たまに、聞いてみたくなる。

 先生の舌があたしの上唇を、歯の裏を撫でてくる。擽ったくて気持ちいい。先生の舌は柔らかくて、少しざらざらしていて、やっぱり冷たい。そんな舌が、あたしは好きだ。凍りつきそうな緊張感が、先生から流れてきて喉元を過ぎてく。
 先生の唾液は、麻薬の一種。

「おい、苦しいぞ」

 少し低い声が、あたしを叱る。
 うーやばい、色っぽい声だった。気がつけば先生の首に、あたしは無我夢中でしがみ付いていた。

 慌てて手を退ける。先生が苦しげに咳き込みながら笑っていた。あたしは舌を絡め返して、謝る代わりをした。

 先生の唇が窄んで、あたしの舌を吸い上げる。
 先生の喉が鳴る。あたしの唾液が、先生の中に流れていく。

「おい」
「っ、うん」

 先生の声に、あたしは小さく頷いた。

「して、せんせ」

 あたしは言った。
 先生が笑って肩を竦めた。
 ふしだらでもかまわない。
 あたしは机の上に寝そべって、無様に足を開いていく。

「大胆だな」
「だって、邪魔、したくないし」

 あたしなりの気遣いを、先生に笑われた。身体が硬くなる。今すぐやめて、ごめんなさいと言って逃げたくなる。
 胸の奥に太陽があるみたいに熱い。
 恥ずかしくて苦しくて、胸が爆発しそうになる。くしゃくしゃな制服のボタンが、先生の指先に外されていく。

 あ。

 あたしの、心と緊張が先生の施しで解けていく。

「平気か?」
「……ぅん」

 あたしは胸の苦しさに耐え切れずに顔を背ける。
 先生の目をまともに見返せない自分が恨めしい。
 早く慣れたい、そう思う。

 美術室の奥にある準備室は狭くて、美術の材料や道具で敷き詰められていた。そんな中に入れるのは、ここの管理人の先生と、美術部の生徒だけだ。
 美術室が薄暗いのは、今日は部活がないからだ。
 あたしが体験学習で作り、プレゼントした出来損ないの蝋燭だけが、ゆらゆらと部屋の中を照らしていた。

 そして今、ここにはあたしと先生しかいない。誰も来ないこの部屋で、生徒のあたしは、先生に身を晒す。
 不真面目で不誠実な生徒だと、自分でもわかっている。

「せんせ、好き」

 あたしが呟く。自分の想いを、惜し気もなく晒す。
 と、先生の気配があたしから離れた。
 いや。胸が締め付けられる。どうしよ、怒られる。けれど先生の面持ちは、どこか不満顔だった。

「せんせ?」
「ったく、テスト期間中にいきなり来て勉強だとか言いやがって……何やってんだ俺も。終わったらお前、勉強しろよ」

 先生の語る現実に、あたしは頷く。しっかりと、わかりましたと心で告げる。
 そういう約束だもん。女に二言はない。
 あたしは寝そべったまま、近付き直してくれた先生のネクタイに手を伸ばす。緩めようとするけれど、うまく緩まなかった。そもそも体勢が悪い。
 先生がやっぱり苦しげに、あたしの手を解いた。

「お前にはまだ早い」
 
 先生が笑い、あたしの顎に指を添えてくる。おでこにキスされて、唇にもキスされる。やっぱり冷たい先生の唇が、あたしの熱い気持ちを静めて溶かしてくる。
 気持ちが、融解しそう。

「っ、はぁ、はあ」

 あたしは変わりに、先生のズボンに手を伸ばす。それも先生に止められた。指に力が入らない。

「どうした、今日は大胆だな」

 先生があたしから離れて、文字通り見下してくる。先生は立っていて、あたしは先生の前の机の上で仰向けに転がっている。

「恥ずかしい」
「……ふぅん」

 先生が目を伏せて、あたしの大事な部分に目を向けた。いや、見ないで。そんな気持ちに先生はさせる。空気が薄くて呼吸が荒くなる。
 返事ができなくて、あたしは顔を横に逸らした。

《続く》
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