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らぶてぃ5
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「頭がくらくらする」
汗ばんだ髪を手櫛で整えて、あたしは乱れた制服のボタンを閉じていく。終わったのに、あそこにまだ、先生のあれが入っている感じがした。
終わった後は、いつもこんな感じだった。
「風邪か?」
「そうかも。看病してくれるの?」
「ばーか」
しゃあと音が鳴り、先生の罵り声と共に準備室のカーテンが開かれる。差し込む眩さにあたしは手で影を作って目を凝らす。うおー、目が痛い。
開けたのは当然、先生だ。
「知恵熱じゃないのか?」
「違うもん」
あたしの苦しみを気にもせず、先生は窓を少しだけ開けて、自分の席へと歩いていく。先生が真横を通り過ぎようとして、ふとその手があたしのおでこに触れた。
ほえ?
一瞬、意識が飛んだ。
「熱はなさそうだな」
先生が笑い、あたしの頭をぽん、と撫でるように叩いて通り過ぎていく。そのまま通り過ぎる先生の後姿を、あたしは振り返る事ができなかった。
うー。
不意打ちは照れるからやめて。
「もしかして、寝不足かな」
「眠れずに一人で処理でもしたのか?」
あたしの呟きに先生が嘲笑う。顔がかぁと赤くなる。適当な事言わないでと言い返そうにも、図星なので無視だ。先生の真似だ。先生も、あたしの無視には寛大だった。
あたしは頬を膨らませて、不貞腐れる。
何となく面白くない。そう思いながら、先生の背中を見て、あたしは俯く。身体に残る濃い先生の匂いを嗅ぎながら、胸がときめく、自分を感じた。
女子高生のあたしと、美術教師である先生との関係を、周りは何と言うだろう。恋人同士と言ってくれるだろうか。
ただの遊びだと思われるのだろうか。
「勉強しすぎなんだろ」
「昨日はあんまりしてないって」
「それで高得点取れるなら大したもんだ」
あたしの呟きに、先生が肩を揺らして笑ってくる。
リボンを直してくれる優しさは嬉しいけれど、先生の冷たい目線は、えっちの最中もそうでない時もあんまり変わらない。
先生の考えは、いつも分からない。
している時は、ちょっと分かった気になれる。
それも最中の一緒になっている数分の間だけなんだけど。
している時だけ理解できるのも、なんだかなーと思うけれど、全てがわからないよりはいいと思う。
「塾は行ってないんだろう?」
「家で勉強してるだけだよ?」
先生に尋ねられ、「優等生だな」と言われて、あたしはほっぺを膨らませる。先生に優等生と言われるのは何か嫌だ。足首に引っかかったパンツを履き直しながら、あたしは先生を睨んで、べーと舌を出した。
先生は準備室の机に戻り、あたしの舌出し犯行を涼しい顔で見守っている。
怒ればいいのに、先生はあたしの子供じみた仕草を気にしない。
むしろ大人な態度でそれを眺めて、失笑する。
今だってそうだ。手に持ったノートをぱたぱたと自分に向けて扇いでいるあたりが、何かあたしをナめてる。
いらいらする。
あたしの苛立ちが止まらない。
部屋に充満する絵の具の匂いが、あたしの怒りを和らげてくる。気持ちが落ち着く。と、先生を懲らしめる名案を思いついた。
「セックスし過ぎると馬鹿になるらしいぞ」
「へー」
ふいに先生が知識を振りまく。どうでもよかった。
眼鏡を中指で押し上げ、呆れた顔でそう教えてくれた先生が、あたしを品定めでもするかのように下から上へと視線を移す。銀縁の眼鏡が、太陽の光に当たってきらきらと光っていた。先生が目を細めている。
そうですよね、太陽が眩しいんだよね、と苦笑う。
チャンスだ。
あたしは全ての着衣を終えて机から降りる。スカートのポケットから、あれを取り出して背中に隠す。
先生は気付いていない。
あたしの体重で、床がみしりと鳴った。
「もう馬鹿なお前には関係ないけどな」
「先生、眼鏡貸して」
「話聞けよ」
先生があたしを馬鹿にする。構わず先生に近付き、手を伸ばした。
二人の距離は近くて、先生は眉間に皺を寄せてあたしを睨む。何かを警戒する様子に、あたしは構わず、出した左手を引っ込めない。
あたしの右手は、背中の後ろにある。
先生が短く溜息を吐いた。あたしはそのまま、先生が立ち上がり、眼鏡を外しながらあたしの元にやってきてくれる。
後ろ手で親指を操作する。見なくても、大体分かる操作手順。
「目、悪くなったのか?」
「ううん」
先生が眉間に皺を寄せて、あたしの左手に眼鏡を置いてくれた瞬間に、あたしは右手を前に出して、親指を押した。
ぱしゃ。
携帯の、カメラ機能が音を上げた。
「っ、おい」
「てへ」
先生が呻く。
あたしがにいと口元を緩めて笑う。
「渡せ」
先生が吐き捨て、あたしから携帯を奪おうとする。
それをあたしは、後ろに逃げて避けた。先生が固まり、舌打ちをした。あたしを見下している先生の視線が、ちょっと恥ずかしそうに見えた。
「何がしたいんだ、お前は」
「せんせの眼鏡なし写真を撮りたかっただけです」
あたしのいきなり過ぎる行動に、先生は露骨に嫌な顔をした。写真、撮られるの嫌いなんだよね、先生って。
わかっていて、あたしはやった。
やってやった。
しっかりと保存する。念の為、コピーして別フォルダにも保存した。前に一度、先生に消された事があるんだ。あれはショックだった。本気泣きした。
「誰の許可を得て写真なんて……」
「彼女の特権」
あたしは胸を張り、先生を呆れさせた。先生が突然「あ」なんて言って額縁を指差してきて、それをあたしが見た途端に先生の手が携帯を狙う。
しかし残念、奪えなかった。
あたしの方が反射神経はいいのだ。
《続く》
汗ばんだ髪を手櫛で整えて、あたしは乱れた制服のボタンを閉じていく。終わったのに、あそこにまだ、先生のあれが入っている感じがした。
終わった後は、いつもこんな感じだった。
「風邪か?」
「そうかも。看病してくれるの?」
「ばーか」
しゃあと音が鳴り、先生の罵り声と共に準備室のカーテンが開かれる。差し込む眩さにあたしは手で影を作って目を凝らす。うおー、目が痛い。
開けたのは当然、先生だ。
「知恵熱じゃないのか?」
「違うもん」
あたしの苦しみを気にもせず、先生は窓を少しだけ開けて、自分の席へと歩いていく。先生が真横を通り過ぎようとして、ふとその手があたしのおでこに触れた。
ほえ?
一瞬、意識が飛んだ。
「熱はなさそうだな」
先生が笑い、あたしの頭をぽん、と撫でるように叩いて通り過ぎていく。そのまま通り過ぎる先生の後姿を、あたしは振り返る事ができなかった。
うー。
不意打ちは照れるからやめて。
「もしかして、寝不足かな」
「眠れずに一人で処理でもしたのか?」
あたしの呟きに先生が嘲笑う。顔がかぁと赤くなる。適当な事言わないでと言い返そうにも、図星なので無視だ。先生の真似だ。先生も、あたしの無視には寛大だった。
あたしは頬を膨らませて、不貞腐れる。
何となく面白くない。そう思いながら、先生の背中を見て、あたしは俯く。身体に残る濃い先生の匂いを嗅ぎながら、胸がときめく、自分を感じた。
女子高生のあたしと、美術教師である先生との関係を、周りは何と言うだろう。恋人同士と言ってくれるだろうか。
ただの遊びだと思われるのだろうか。
「勉強しすぎなんだろ」
「昨日はあんまりしてないって」
「それで高得点取れるなら大したもんだ」
あたしの呟きに、先生が肩を揺らして笑ってくる。
リボンを直してくれる優しさは嬉しいけれど、先生の冷たい目線は、えっちの最中もそうでない時もあんまり変わらない。
先生の考えは、いつも分からない。
している時は、ちょっと分かった気になれる。
それも最中の一緒になっている数分の間だけなんだけど。
している時だけ理解できるのも、なんだかなーと思うけれど、全てがわからないよりはいいと思う。
「塾は行ってないんだろう?」
「家で勉強してるだけだよ?」
先生に尋ねられ、「優等生だな」と言われて、あたしはほっぺを膨らませる。先生に優等生と言われるのは何か嫌だ。足首に引っかかったパンツを履き直しながら、あたしは先生を睨んで、べーと舌を出した。
先生は準備室の机に戻り、あたしの舌出し犯行を涼しい顔で見守っている。
怒ればいいのに、先生はあたしの子供じみた仕草を気にしない。
むしろ大人な態度でそれを眺めて、失笑する。
今だってそうだ。手に持ったノートをぱたぱたと自分に向けて扇いでいるあたりが、何かあたしをナめてる。
いらいらする。
あたしの苛立ちが止まらない。
部屋に充満する絵の具の匂いが、あたしの怒りを和らげてくる。気持ちが落ち着く。と、先生を懲らしめる名案を思いついた。
「セックスし過ぎると馬鹿になるらしいぞ」
「へー」
ふいに先生が知識を振りまく。どうでもよかった。
眼鏡を中指で押し上げ、呆れた顔でそう教えてくれた先生が、あたしを品定めでもするかのように下から上へと視線を移す。銀縁の眼鏡が、太陽の光に当たってきらきらと光っていた。先生が目を細めている。
そうですよね、太陽が眩しいんだよね、と苦笑う。
チャンスだ。
あたしは全ての着衣を終えて机から降りる。スカートのポケットから、あれを取り出して背中に隠す。
先生は気付いていない。
あたしの体重で、床がみしりと鳴った。
「もう馬鹿なお前には関係ないけどな」
「先生、眼鏡貸して」
「話聞けよ」
先生があたしを馬鹿にする。構わず先生に近付き、手を伸ばした。
二人の距離は近くて、先生は眉間に皺を寄せてあたしを睨む。何かを警戒する様子に、あたしは構わず、出した左手を引っ込めない。
あたしの右手は、背中の後ろにある。
先生が短く溜息を吐いた。あたしはそのまま、先生が立ち上がり、眼鏡を外しながらあたしの元にやってきてくれる。
後ろ手で親指を操作する。見なくても、大体分かる操作手順。
「目、悪くなったのか?」
「ううん」
先生が眉間に皺を寄せて、あたしの左手に眼鏡を置いてくれた瞬間に、あたしは右手を前に出して、親指を押した。
ぱしゃ。
携帯の、カメラ機能が音を上げた。
「っ、おい」
「てへ」
先生が呻く。
あたしがにいと口元を緩めて笑う。
「渡せ」
先生が吐き捨て、あたしから携帯を奪おうとする。
それをあたしは、後ろに逃げて避けた。先生が固まり、舌打ちをした。あたしを見下している先生の視線が、ちょっと恥ずかしそうに見えた。
「何がしたいんだ、お前は」
「せんせの眼鏡なし写真を撮りたかっただけです」
あたしのいきなり過ぎる行動に、先生は露骨に嫌な顔をした。写真、撮られるの嫌いなんだよね、先生って。
わかっていて、あたしはやった。
やってやった。
しっかりと保存する。念の為、コピーして別フォルダにも保存した。前に一度、先生に消された事があるんだ。あれはショックだった。本気泣きした。
「誰の許可を得て写真なんて……」
「彼女の特権」
あたしは胸を張り、先生を呆れさせた。先生が突然「あ」なんて言って額縁を指差してきて、それをあたしが見た途端に先生の手が携帯を狙う。
しかし残念、奪えなかった。
あたしの方が反射神経はいいのだ。
《続く》
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