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恋とレシーブと7
しおりを挟む「あぁ、ぁあっ、っぅ、っ」
彼の腰が前後に動く度に、私の思考は掻き回されていく。頭の中から英単語が一つ消え、代わりに彼の体温が刻まれていく。忘れた単語は覚え直せばいい。喉の奥から腑抜けた自分の声が、声にならない甘い猫なで声に変わり漏れ、喉が渇いて、彼の唇と唾液を貪る。
雄の唾液が喉を過ぎて胃に流れて、体内に収まっていく。膣の中に納まった彼の猛りの熱が下から子宮に流れて、上から下から愛されたい。そんな欲望が思考を染め上げる。
私、エッチで、最低過ぎると思う。正直、いつフラれるか、考えるだけで恐ろしい。
恭介君はいつも部活ばかりなので、あまり遊びに行ったりはしない。帰りは出来るだけチャンスを見て、一緒に帰れるように図書委員会に入った。けれど彼はそれ以上に遅いことが大半で、こうやって長い時間二人きりになれる時間はあまりない。
幾度かの快感の渦の中、私は彼と一緒に、少しの痛みと、たくさんの快楽の果てで笑顔になった。
「おっきい背中だね」
待ちに待った愛の営みという名の全てを終えて、私は制服から私服に着替えた。恭介君はもちろん制服のままだった。私はそんな彼の背中に体を預ける。一度行為をしたあとだと大胆になれるから不思議だ。
「もう少しスマートな男の方が格好いいんじゃないか? がっしり系とか流行らないだろ」
「やめてよー、今そんな話しないで」
口調が甘えたになるのは許して欲しいです。今はちょっと、乙女状態。
「ごめん。ふと思っただけ」
「大丈夫だよ。私、この背中とか、腕とか好きだもん」
クッションの上で胡坐を掻いた恭介君が、私の頭をわしゃわしゃと撫でてくる。この猫を扱うような自然な行動が、たまらなく好きだ。今だけは私のものだ。彼の傍にぎゅうと抱きつくと、彼は自然と私を引き寄せてくれる。今、この瞬間が最高だ。
「明日からまた、部活漬けでごめん」
「ううん。好きだもんね、バレー」
同じ学校、同じ勉強をしていても、案外二人きりの時間は短い。それを知っていて付き合おうと決めたのだ。たとえそれが想像以上に辛い事だったとしても、私はそれに堪えなければいけない。会っている時すら辛くても、堪えなければいけない。
彼はことバレーに関しては何より真摯で正直な男だ。バレーがしたい時は、何があってもしたいという。彼はそういう人だ。
「一年でレギュラーとかすごいよね」
「試合に出させて貰えるのは嬉しいよ。練習試合でもなんでも、試合には出たい。もちろん勝ちたいから、だから練習するんだけど」
一度脱いでいた制服の上着に腕を通しながら、恭介君が立ち上がる。時間はすでに八時を過ぎている。さすがに高校生の男子が女子の家に居ていい時間帯は過ぎている。
恭介君の次の行動を理解した。ちらりと私を見てくる彼の視線が、優しさに満ちていたから、余計にそうなんだと実感する。
手を伸ばして止めたい気持ちを、私は必死に堪えた。
「そろそろ帰るよ」
「うん……」
静かにそう告げられて、私は下唇を噛み締めた。もっと一緒に居たいなあ。そう思いながら、私は彼をバス停まで送ろうとして、けれどいつも、玄関まででと言われてしょげる。わかっているのだ、夜道は危ないと思ってくれる彼の思考は。
でも、やっぱり一緒に居たい。
「はぁ……」
一人になった部屋で、私は勉強道具を机に取り出して深呼吸する。今日は宿題なんてないので、やるとしても予習だろう。けれどさっきまで居た彼の温もりは当然体に残っていて、今一つ勉強する気持ちにはなれなかった。保健体育も今は不要です。身をもって経験したので大丈夫です。
椅子から立ち上がりベッドへ転がる。勉強は明日からにしよう。そう思いながら寝転んで、くんと匂いを嗅ぐ。漂う少し官能的な香りに、よくないなと部屋の窓を開けた。思い出してアロマのスイッチを止める。
そうして夜空を眺めながら、私はふと、彼を好きになったきっかけの事を思い返してみたりした。思い返して、思いに耽る。
……。
…………。
●●●
「えー、バレーなんてやれないって」
「じゃああたしと変わる? バトミントンだけど」
それは学校の球技大会の話、五月の初旬。
入学して早々にできた友達、由紀子に持ち掛けられた提案に一瞬迷いながら、私はすぐに首を振った。
「いや、そっちの方がもっと苦手だよ。二人でしょう? 相手の子に悪い」
「バレーだって六人でしょ?」
うちの学校は球技大会の開催が他高よりも早いらしい。そんな中、何かに参加しなければいけないわけで、バレーだったら六人もいれば一人くらい下手な子が居ても何とかなる、気がする。少し気が引けたけれど、バトミントンよりはマシだと思った。
参加する競技を決めた次の授業は体育だった。私たちはそれぞれの球技が行われる場所へと集まった。体育館はバスケに取られたらしく、バレーは運動場だった。
「なあ? やっぱり授業終わったあと練習すんの?」
「うん?」
「さあ、やだなぁ、それ」
球技大会の割り振りが決まった日、運動場に集まった私たちは、何というかやる気あんまりないなーと言った雰囲気のメンバーだった。
正直、ほっとした。
サッカー部の滝君はともかく、あとは帰宅部だったり文芸部だったりして、正直これでバレーとかできるんだろうかと疑いたくなるメンバーだった。人数は五人、たぶんもう一人誰かが来るんだろうけれど、それだけじゃ何も変わらないに違いない。
とりあえず、一回戦敗退でさっさと終わるならそれでもいい。余った時間は勉強でもしていよう。そんなことを考えていたら、遠くからバレーボールを持った男子がやってきた。
雰囲気は特に平凡で、ただ少し、歩幅が広い男子だった。
「悪い、遅くなった」
「お、葉山もバレーか」
颯爽と現れた彼が、私たちに向かってにぃと、明るい笑みを浮かばせた。
それこそが彼、バレー部一年、葉山恭介その人だ。
《続く》
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