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翌朝になり、日も登った。ミロを探さないといけない。熱は下がったけど、まだダルさがあった。鼻水が止まらない。重い体を持ち上げて、一階に降りると、兄さんが身支度していた。
「はくしょん。はくしょん。」
「ソニヤ、風邪大丈夫か?ギルドにミロを保護したという冒険者が来ているそうだ。迎えに行ってくる。」
「ああ、良かったー!私も行くわ。」
「お前は寝ていろ。俺が預かってくるから。」
「で、でも。」
兄に言いきられて、一人留守番をしているが、なんだか落ち着かない。ミロが好きなホットミルクでも作ってあげるか。きっと一晩中鳴いて疲れているだろうから。
ミルクをコトコト煮ていると、なんだか外が騒がしい。火を止めて何事だろうと、カーテンの隙間から外の様子を伺う。黒い獣耳に、黒い尻尾――見覚えがあった。間違いない連続殺人鬼『レーヴィ』だ。彼はミロをしっかり抱きかかえて、離そうとしない。兄さんの獣耳が左右に大きく開いて、横にぺたっと倒れている。めちゃくちゃ警戒しているけど、猫獣人の兄さんはレーヴィより頭一つ背が小さい。明らかにレーヴィに押されていた。
「パパ、お家はあそこだよ。」
いつの間にあの男、ミロを懐柔したんだ!?そう思ったけど、ミロとレーヴィは初めて会ったはずなのに、誰がどう見ても親子そのものだった。
「ソニヤに会わせてくれ。ここにいるんだろう?匂いで分かる。彼女は俺の番なんだ。俺が不甲斐ないばかりに逃げられてしまった。でも俺たちの間には多分誤解がある。子どもがいるなら、なおさらちゃんとしたい。」
「ミロを保護してくれて助かった。でも、本当にソニヤは今体調が悪い。とても人に会わせられるような状態ではない。それに君は……。」
「ママ!」
私がカーテンの隙間から覗いていることにミロが気づいたようだ。兄さんではもう埒が明かない。私が行って話すしかない。幸い、鼻が詰まっていて彼の匂いが分からない。冷静でいられると思った。
「ゴホゴホ。兄さん、ミロを迎えに行ってくれてありがとう。」
「ああ、ソニヤ。お前は部屋に戻っていろ。俺がなんとかするから。」
「ママ!森でよく分からなくなって、吠えていたら、パパが助けてくれたんだ。パパも狼だったんだ。」
「うん、そうね。ミロ。」
ミロはレーヴィの腕をすり抜けて、私の胸に飛び込んで来た。自分で噛んでしまったのだろう。腕に噛み傷があった。
「ソニヤ、会いたかった。俺の運命の番。」
問題はこの男だ。運命の番と言っても、所詮一晩だけの関係。匂いさえ感じなければ、何とも思わない。
「今日は、ミロを助けて頂いてありがとうございました。お話は中で伺います。」
「おい、ソニヤ。」
「兄さんも一緒に話を聞いてもらえる?」
「わ、分かった。」
「はくしょん。はくしょん。」
「ソニヤ、風邪大丈夫か?ギルドにミロを保護したという冒険者が来ているそうだ。迎えに行ってくる。」
「ああ、良かったー!私も行くわ。」
「お前は寝ていろ。俺が預かってくるから。」
「で、でも。」
兄に言いきられて、一人留守番をしているが、なんだか落ち着かない。ミロが好きなホットミルクでも作ってあげるか。きっと一晩中鳴いて疲れているだろうから。
ミルクをコトコト煮ていると、なんだか外が騒がしい。火を止めて何事だろうと、カーテンの隙間から外の様子を伺う。黒い獣耳に、黒い尻尾――見覚えがあった。間違いない連続殺人鬼『レーヴィ』だ。彼はミロをしっかり抱きかかえて、離そうとしない。兄さんの獣耳が左右に大きく開いて、横にぺたっと倒れている。めちゃくちゃ警戒しているけど、猫獣人の兄さんはレーヴィより頭一つ背が小さい。明らかにレーヴィに押されていた。
「パパ、お家はあそこだよ。」
いつの間にあの男、ミロを懐柔したんだ!?そう思ったけど、ミロとレーヴィは初めて会ったはずなのに、誰がどう見ても親子そのものだった。
「ソニヤに会わせてくれ。ここにいるんだろう?匂いで分かる。彼女は俺の番なんだ。俺が不甲斐ないばかりに逃げられてしまった。でも俺たちの間には多分誤解がある。子どもがいるなら、なおさらちゃんとしたい。」
「ミロを保護してくれて助かった。でも、本当にソニヤは今体調が悪い。とても人に会わせられるような状態ではない。それに君は……。」
「ママ!」
私がカーテンの隙間から覗いていることにミロが気づいたようだ。兄さんではもう埒が明かない。私が行って話すしかない。幸い、鼻が詰まっていて彼の匂いが分からない。冷静でいられると思った。
「ゴホゴホ。兄さん、ミロを迎えに行ってくれてありがとう。」
「ああ、ソニヤ。お前は部屋に戻っていろ。俺がなんとかするから。」
「ママ!森でよく分からなくなって、吠えていたら、パパが助けてくれたんだ。パパも狼だったんだ。」
「うん、そうね。ミロ。」
ミロはレーヴィの腕をすり抜けて、私の胸に飛び込んで来た。自分で噛んでしまったのだろう。腕に噛み傷があった。
「ソニヤ、会いたかった。俺の運命の番。」
問題はこの男だ。運命の番と言っても、所詮一晩だけの関係。匂いさえ感じなければ、何とも思わない。
「今日は、ミロを助けて頂いてありがとうございました。お話は中で伺います。」
「おい、ソニヤ。」
「兄さんも一緒に話を聞いてもらえる?」
「わ、分かった。」
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