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それから、ジョルジュとアカデミー音楽祭に向けて曲を選び、一緒に練習するようになった。そしていつの間にか、私までつられて軽口をたたく関係になっていた。
彼は勉学も優秀だ。授業で分からないことを、すぐ彼に聞けるのも、とても助かった。夏休み明け初めのテストは、首席のナディアには及ばないものの、学年十番以内に入ることができた。
ある日の放課後、音楽室に向かおうと教室を出ると、レイモン殿下がいた。待っていたのか、私を見るなり話しかけてきた。
「おい、ソフィ。今回の成績は良かったじゃないか。いい心がけだ。ただ最近少し派手過ぎるのではないか?私は派手にしろとは言っていない。」
私の宝石たっぷりのヘアアクセサリーを指さしながら、彼は言う。教室の前で待ち伏せしていたかと思ったら一体なんだ。私たちの婚約は既に解消されている。殿下に成績や容姿のことを注意される筋合いはない。
「レイモン殿下、成績のご心配ありがとうございます。妃教育が無くなったおかげで、アカデミーの勉強をする時間がしっかりとれているのです。皇妃さまに言われて地味にする必要もなくなりましたし、ヘアアレンジを楽しませて頂いております。それと私との婚約は破棄されているので、今後はラルカンジュ侯爵令嬢とお呼び下さい。」
「妃教育が学業を圧迫するほど忙しいという報告は受けていない。言い訳はよせ。だが私は寛大だ。お前にも挽回のチャンスを与えてやる。今度、皇妃主催のお茶会が皇宮である。私のパートナーとして参加しろ。」
残念ながら、殿下の瞳の色のドレスは全て処分した。どうして今更彼の隣に立たないといけないのか。しかも皇妃主催のお茶会……。私はもうあの人の顔すら見たくない。後ろから、ジョルジュがすっと現れた。
「レイモン殿下。どうしたんですか?怖い顔しちゃって。ソフィは僕と、アカデミー音楽祭に一緒に出場するんで、練習が忙しいんですよ。それにそのお茶会、ソフィのパートナーだったら、僕がします。」
したり顔でジョルジュが話しかける。殿下にまでこの調子だとは思わなかった。隣国の子爵令息に軽口を叩かれて、殿下も怒るかと思ってひやひやしたけれど、案外そこは冷静だった。
「ジョルジュ、君には関係ない。」
「だから、関係あるって言ってんの。」
「レイモン殿下、婚約者を失格になった身で、皇妃さまに合わせる顔もございません。お茶会への参加は固辞させて頂きます。」
「じゃあ、そういう訳で!」
「おい、戯れが過ぎるぞ。」
ジョルジュが私の肩を抱き寄せた。それを何とも悔しそうな顔で、レイモン殿下が見ていた。そのまま私たちはヴァイオリンを持って、音楽室に急ぐことにした。
「さっきはありがとう。でも殿下の言う通り、お戯れが過ぎるわ。離して頂戴。」
「ああ、ごめん。このくらいすれば、相手も諦めるかと思って。」
「それにしても、自分から婚約破棄したくせに、一体何のつもりなのかしら。挽回のチャンスなんていらないわ。もううんざり。」
「はは。レイモン殿下は『覆水盆に返らず』って、ことわざを知らないのかね?」
それからしばらく、殿下の悪口で盛り上がった。他人の成績をどうこう言うくせに今回の成績は私に負けていたこと、ヴァイオリンも下手くそなこと。
「そういえば、前から気になっていたんだけど、ソフィのヴァイオリンって、あまり高価なものじゃないよね?」
ジョルジュは音楽大国からの留学生というだけあって、高価なヴィオラを弾いている。その音の響き方を考えると、おそらく国宝クラスの名器だ。
「そうなのよね。気に入ってはいるんだけど、もともと本格的にやるつもりじゃなかったから。」
「僕のヴィオラとのバランスを考えると、音楽祭では同じクラスの楽器を使った方が良い。ちょっと待ってて、いいのがあるんだ。」
彼は走って、寮の自室に戻っていった。
「お待たせ。これ貸すから、使ってみてよ。」
そう言って渡されたケースを開けると、見るからに高そうなヴァイオリンが一挺入っていた。まさかと思ってケースをよく見る。
「これもしかして、エスポワール王国の国宝になっているヴァイオリン・ジュピターじゃない?」
「ご名答。」
「渡し方が気安すぎよ。でもどうして、王家所有の国宝をあなたが持っているの?そもそも国外に持ち出しちゃいけないんじゃない?」
「あはは、なんでだろうね。でも許可は取ってあるから大丈夫。とにかく君に貸すから、音楽祭ではこれを使って。せっかくなら金賞も取りたいし。」
ジョルジュが笑いながら言った。どう考えても軽く笑って渡せる代物ではないのだが。
「あ、ありがとう。ちょっと緊張するけど、大切に使わせてもらうわ。」
「ソフィのヴァイオリンの腕前は、その国宝に匹敵するものだから安心して。ただ少し演奏が優等生すぎるというか、もっと感情を込めた方が人の心に響くと思う。例えば今回選んだ曲は、戦争で遠くに旅立つ恋人を想う曲だから、彼の無事を想う気持ち、離れ離れになる悲しさ、そういう気持ちが入るともっといいよね。」
感情か。――これは自領でヴァイオリンを習っている時にも指摘されたことがある。でも、私は激情というものを持ち合わせていないから、これが案外難しいのだ。
「昔から指摘されているけど、なかなかうまく表現できなくて。」
「ソフィは好きな人とかいないの?その人を思い浮かべて、離れ離れになることを想像して。ほら胸が締め付けられるでしょう?それを音にぶつけるんだ。」
「好きな人――そうね。元婚約者のことは恋愛的な意味では好きではなかったから、難しいかもしれないわ。」
「じゃあ、僕のことを考えて。ほら、僕がある日突然留学は終わり、もう国に帰ります、って言ったら少しは悲しいでしょう?」
「ふふ何それ。――でも確かに寂しいわね。こうしていつも変わらず接してくれるのは、あなたくらいだもの。激情というほどでもないけど。」
「でしょでしょ。じゃあ、もう一回弾いてみよう。」
それから何度も練習した。二人の奏でる弦の響きが合わさりあい、一つの音楽を奏でていく。そして隣国に帰っていく彼を思い浮かべる。一緒に音楽を奏でることはもうない。何度も演奏していると胸が締め付けられるような思いに駆られるようになった。その思いが弦を引く指先に乗る。
「だいぶいいよ!この調子だ。」
そんな風に毎日練習を積み重ねていくことで、少しずつ彼のことを特別に思うようになっていった。
彼は勉学も優秀だ。授業で分からないことを、すぐ彼に聞けるのも、とても助かった。夏休み明け初めのテストは、首席のナディアには及ばないものの、学年十番以内に入ることができた。
ある日の放課後、音楽室に向かおうと教室を出ると、レイモン殿下がいた。待っていたのか、私を見るなり話しかけてきた。
「おい、ソフィ。今回の成績は良かったじゃないか。いい心がけだ。ただ最近少し派手過ぎるのではないか?私は派手にしろとは言っていない。」
私の宝石たっぷりのヘアアクセサリーを指さしながら、彼は言う。教室の前で待ち伏せしていたかと思ったら一体なんだ。私たちの婚約は既に解消されている。殿下に成績や容姿のことを注意される筋合いはない。
「レイモン殿下、成績のご心配ありがとうございます。妃教育が無くなったおかげで、アカデミーの勉強をする時間がしっかりとれているのです。皇妃さまに言われて地味にする必要もなくなりましたし、ヘアアレンジを楽しませて頂いております。それと私との婚約は破棄されているので、今後はラルカンジュ侯爵令嬢とお呼び下さい。」
「妃教育が学業を圧迫するほど忙しいという報告は受けていない。言い訳はよせ。だが私は寛大だ。お前にも挽回のチャンスを与えてやる。今度、皇妃主催のお茶会が皇宮である。私のパートナーとして参加しろ。」
残念ながら、殿下の瞳の色のドレスは全て処分した。どうして今更彼の隣に立たないといけないのか。しかも皇妃主催のお茶会……。私はもうあの人の顔すら見たくない。後ろから、ジョルジュがすっと現れた。
「レイモン殿下。どうしたんですか?怖い顔しちゃって。ソフィは僕と、アカデミー音楽祭に一緒に出場するんで、練習が忙しいんですよ。それにそのお茶会、ソフィのパートナーだったら、僕がします。」
したり顔でジョルジュが話しかける。殿下にまでこの調子だとは思わなかった。隣国の子爵令息に軽口を叩かれて、殿下も怒るかと思ってひやひやしたけれど、案外そこは冷静だった。
「ジョルジュ、君には関係ない。」
「だから、関係あるって言ってんの。」
「レイモン殿下、婚約者を失格になった身で、皇妃さまに合わせる顔もございません。お茶会への参加は固辞させて頂きます。」
「じゃあ、そういう訳で!」
「おい、戯れが過ぎるぞ。」
ジョルジュが私の肩を抱き寄せた。それを何とも悔しそうな顔で、レイモン殿下が見ていた。そのまま私たちはヴァイオリンを持って、音楽室に急ぐことにした。
「さっきはありがとう。でも殿下の言う通り、お戯れが過ぎるわ。離して頂戴。」
「ああ、ごめん。このくらいすれば、相手も諦めるかと思って。」
「それにしても、自分から婚約破棄したくせに、一体何のつもりなのかしら。挽回のチャンスなんていらないわ。もううんざり。」
「はは。レイモン殿下は『覆水盆に返らず』って、ことわざを知らないのかね?」
それからしばらく、殿下の悪口で盛り上がった。他人の成績をどうこう言うくせに今回の成績は私に負けていたこと、ヴァイオリンも下手くそなこと。
「そういえば、前から気になっていたんだけど、ソフィのヴァイオリンって、あまり高価なものじゃないよね?」
ジョルジュは音楽大国からの留学生というだけあって、高価なヴィオラを弾いている。その音の響き方を考えると、おそらく国宝クラスの名器だ。
「そうなのよね。気に入ってはいるんだけど、もともと本格的にやるつもりじゃなかったから。」
「僕のヴィオラとのバランスを考えると、音楽祭では同じクラスの楽器を使った方が良い。ちょっと待ってて、いいのがあるんだ。」
彼は走って、寮の自室に戻っていった。
「お待たせ。これ貸すから、使ってみてよ。」
そう言って渡されたケースを開けると、見るからに高そうなヴァイオリンが一挺入っていた。まさかと思ってケースをよく見る。
「これもしかして、エスポワール王国の国宝になっているヴァイオリン・ジュピターじゃない?」
「ご名答。」
「渡し方が気安すぎよ。でもどうして、王家所有の国宝をあなたが持っているの?そもそも国外に持ち出しちゃいけないんじゃない?」
「あはは、なんでだろうね。でも許可は取ってあるから大丈夫。とにかく君に貸すから、音楽祭ではこれを使って。せっかくなら金賞も取りたいし。」
ジョルジュが笑いながら言った。どう考えても軽く笑って渡せる代物ではないのだが。
「あ、ありがとう。ちょっと緊張するけど、大切に使わせてもらうわ。」
「ソフィのヴァイオリンの腕前は、その国宝に匹敵するものだから安心して。ただ少し演奏が優等生すぎるというか、もっと感情を込めた方が人の心に響くと思う。例えば今回選んだ曲は、戦争で遠くに旅立つ恋人を想う曲だから、彼の無事を想う気持ち、離れ離れになる悲しさ、そういう気持ちが入るともっといいよね。」
感情か。――これは自領でヴァイオリンを習っている時にも指摘されたことがある。でも、私は激情というものを持ち合わせていないから、これが案外難しいのだ。
「昔から指摘されているけど、なかなかうまく表現できなくて。」
「ソフィは好きな人とかいないの?その人を思い浮かべて、離れ離れになることを想像して。ほら胸が締め付けられるでしょう?それを音にぶつけるんだ。」
「好きな人――そうね。元婚約者のことは恋愛的な意味では好きではなかったから、難しいかもしれないわ。」
「じゃあ、僕のことを考えて。ほら、僕がある日突然留学は終わり、もう国に帰ります、って言ったら少しは悲しいでしょう?」
「ふふ何それ。――でも確かに寂しいわね。こうしていつも変わらず接してくれるのは、あなたくらいだもの。激情というほどでもないけど。」
「でしょでしょ。じゃあ、もう一回弾いてみよう。」
それから何度も練習した。二人の奏でる弦の響きが合わさりあい、一つの音楽を奏でていく。そして隣国に帰っていく彼を思い浮かべる。一緒に音楽を奏でることはもうない。何度も演奏していると胸が締め付けられるような思いに駆られるようになった。その思いが弦を引く指先に乗る。
「だいぶいいよ!この調子だ。」
そんな風に毎日練習を積み重ねていくことで、少しずつ彼のことを特別に思うようになっていった。
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