『二流』と言われて婚約破棄されたので、ざまぁしてやります!

志熊みゅう

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 音楽祭が終わっても、私たちは音楽室を借りて一緒に練習した。どちらから誘ったというわけでもないが、これで終わりにするのは惜しかった。ある日、ジョルジュが少し思いつめたように言った。

「僕さ、二年生が終わったら、国に戻ることが決まったんだ。」

「え!?どうして急に。」

 何度も曲を弾く中で思い浮かべていた光景が現実になる。胸が張り裂けそうだ。目に涙があふれ出す。

「家族の事情でね。そんな顔しないでよ。それで、もし君が良ければなんだけど、うちの国に来ない?ほら交換留学生として。」

 エスポワール語は、妃教育で嫌というほど勉強したから、母国語と同じように話すことができる。けれど、留学なんて考えたこともなかった。

「え、でも確か、アカデミーからの推薦を取るのって、すごく大変なのよ。今年は学年主席のナディア嬢が出すって噂だし。彼女、外交官になりたいんですって。」

「もちろん成績も考慮されるけど、それだけじゃない。君の場合はアカデミー音楽祭で金賞をとったし、音楽の勉強をしたいって、志願書に書けばかなり有利なはずだ。」

「そうかしら?」

「勉強は俺が教えるし、頑張ろうよ。」

「分かったわ。」

 まず交換留学制度に申し込みたい旨を父に手紙で許可を取った。大好きなヴァイオリンを本場でもっと勉強したいと。父からは少し心配だが、頑張りなさいと返事が来た。

 それから、ヴァイオリンの練習をしたり、図書館で一緒に勉強したり、ジョルジュとはさらに仲良くなった。いつしか、父が見つけてきた相手と結婚するよりも、彼と一緒になれたらどんなに幸せだろうと思うようになった。

 ある日、二人で図書館に向かって廊下を歩いていると、レイモン殿下とすれ違った。

「おい、どうしてヴァイオリンが弾けるって言わなかったんだ。あれだけ上手く弾けるなら、ピアノが弾けないことを馬鹿になんかしなかったのに。」

「皇宮にはちゃんとコンクールで優勝したと申し出ていたはずです。それでも、ヴァイオリンは殿下の担当だから、別の楽器を練習するように、亡くなった皇太后さまの代わりにピアノを弾くようにと言ってこられたのは皇宮側です。」

「そ、そうだったのか。すまなかった。」

「すまないと思うなら、もう話しかけないで下さい。今だって多くの人たちに見られて恥ずかしい思いをしているのです。」

「だってよ、レイモン殿下。じゃあね。」

 にこやかに手を振るジョルジュをレイモン殿下が悔しそうに睨んだ。
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