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第五章 恋愛は謎解きよりも難しい
10. 告白
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閉会式が終わると、片付けだ。写真部の展示をしていた家庭科室に向かう。高倉くんが意を決したように言った。
「そめやん、このあとちょっとええか?」
「うん?なになに、改まって。」
そのまま高倉くんに連れられて、体育館裏に行った。そういえば、初めて女装の話を打ち明けられた時も、体育館裏で話したな。
「そめやんが、誰かのことを恋愛として『好き』って思うんが、まだピンときてへんって、姉ちゃんから聞いてん。」
高倉くんのお姉さんの杏さんとは、夏休みが始まってすぐ、ファミレスで会った。高倉くんの学校での様子を聞かれて、色々答えて、最後お姉さんは納得してくれて、それでなぜか恋バナをした。好きな人のタイプを聞かれて、人を『好き』になったことがないから分からないって答えたっけ。
「でも俺は、そめやん――いや、あかねのこと」
――風が少し吹いて、木の葉が舞った。これって、まさかもしかして……
「あかねのこと、ほんまに好きやねん。もちろん、恋愛として。」
え!?うそでしょ。びっくりしちゃって、どうしたらいいか分からない。胸の鼓動もバクバクと早く脈打って、顔も真っ赤になった。
「俺、不登校やったこともあるし、東京に引っ越してきて、正直めっちゃドキドキしててんけど、隣の席でいろいろ気ぃ使ってくれたんがうれしかった。それにな、こんなに同じもん見て『カワイイ』とか『好き』って言うてくれるん、あかねだけやねん。」
混乱していたら、「あかねには、ほんまに俺のこと好きになってほしいから、返事はいつでもええよ」と言われた。でも変に意識しちゃって、片付けも集中できなかった。
学校の門を出てから家までの道のり、足元の影だけが伸びていく。空は茜色に染まっていて、私の心の中だけが、ぐちゃぐちゃだった。家に帰っても、気持ちはずっと上の空で。玄関をくぐってすぐ、ベッドに倒れこんだ。
「あかね~!夕飯出来たわよ。」
今日の夕飯はピーマンの肉詰め。多分お弁当のハンバーグの挽肉の余りで作ったんだろう。
「あかね、どうしたの?ぼーっとしちゃって。」
「ママ……どうしよう。……私、高倉くんに告白された。」
「あら、よかったじゃない!……えっ?……あかね、あれだけ毎日高倉くん、高倉くんって言ってて、もしかして高倉くんのこと好きじゃなかったの?」
首をぶんぶんと振った。
「とっても尊敬している。自分の好きなものをはっきり『好き』って言えるところとか、好きなことを突き詰めているところとか。でも、恋愛的な『好き』がまだよく分からなくて。答えは待ってくれるって言ってくれたから……今は返事を保留にしてる。」
「うふふ。ママ、恋とか愛とか徐々に2人で育んでいくものだと思うわよ。そんなに尊敬しているなら付き合ってみたら?」
「でもとりあえず付き合うって、『好き』って気持ちを誰よりも大事にしている高倉くんに対しては失礼だと思うの。」
「あかねは変なところ真面目なのね。」
部屋に戻って、スマホが震えた。メッセージアプリの通知。――高倉くんだ!
それからいつも通り、高倉くんとメッセージのやりとりをした。告白されたばかりなのに、まだ答えを保留にしているのに、何ごともなかったみたいにメッセージが続いて――なんだか、ちょっとだけ拍子抜けしてしまった。それでも、変わらずそばにいてくれる安心感がうれしかった。最後は『おやすみ』のスタンプをいつも通り送った。
でも、頭の中はどうしても整理できなくて、なんだか答えの見えない数式みたいだった。
「そめやん、このあとちょっとええか?」
「うん?なになに、改まって。」
そのまま高倉くんに連れられて、体育館裏に行った。そういえば、初めて女装の話を打ち明けられた時も、体育館裏で話したな。
「そめやんが、誰かのことを恋愛として『好き』って思うんが、まだピンときてへんって、姉ちゃんから聞いてん。」
高倉くんのお姉さんの杏さんとは、夏休みが始まってすぐ、ファミレスで会った。高倉くんの学校での様子を聞かれて、色々答えて、最後お姉さんは納得してくれて、それでなぜか恋バナをした。好きな人のタイプを聞かれて、人を『好き』になったことがないから分からないって答えたっけ。
「でも俺は、そめやん――いや、あかねのこと」
――風が少し吹いて、木の葉が舞った。これって、まさかもしかして……
「あかねのこと、ほんまに好きやねん。もちろん、恋愛として。」
え!?うそでしょ。びっくりしちゃって、どうしたらいいか分からない。胸の鼓動もバクバクと早く脈打って、顔も真っ赤になった。
「俺、不登校やったこともあるし、東京に引っ越してきて、正直めっちゃドキドキしててんけど、隣の席でいろいろ気ぃ使ってくれたんがうれしかった。それにな、こんなに同じもん見て『カワイイ』とか『好き』って言うてくれるん、あかねだけやねん。」
混乱していたら、「あかねには、ほんまに俺のこと好きになってほしいから、返事はいつでもええよ」と言われた。でも変に意識しちゃって、片付けも集中できなかった。
学校の門を出てから家までの道のり、足元の影だけが伸びていく。空は茜色に染まっていて、私の心の中だけが、ぐちゃぐちゃだった。家に帰っても、気持ちはずっと上の空で。玄関をくぐってすぐ、ベッドに倒れこんだ。
「あかね~!夕飯出来たわよ。」
今日の夕飯はピーマンの肉詰め。多分お弁当のハンバーグの挽肉の余りで作ったんだろう。
「あかね、どうしたの?ぼーっとしちゃって。」
「ママ……どうしよう。……私、高倉くんに告白された。」
「あら、よかったじゃない!……えっ?……あかね、あれだけ毎日高倉くん、高倉くんって言ってて、もしかして高倉くんのこと好きじゃなかったの?」
首をぶんぶんと振った。
「とっても尊敬している。自分の好きなものをはっきり『好き』って言えるところとか、好きなことを突き詰めているところとか。でも、恋愛的な『好き』がまだよく分からなくて。答えは待ってくれるって言ってくれたから……今は返事を保留にしてる。」
「うふふ。ママ、恋とか愛とか徐々に2人で育んでいくものだと思うわよ。そんなに尊敬しているなら付き合ってみたら?」
「でもとりあえず付き合うって、『好き』って気持ちを誰よりも大事にしている高倉くんに対しては失礼だと思うの。」
「あかねは変なところ真面目なのね。」
部屋に戻って、スマホが震えた。メッセージアプリの通知。――高倉くんだ!
それからいつも通り、高倉くんとメッセージのやりとりをした。告白されたばかりなのに、まだ答えを保留にしているのに、何ごともなかったみたいにメッセージが続いて――なんだか、ちょっとだけ拍子抜けしてしまった。それでも、変わらずそばにいてくれる安心感がうれしかった。最後は『おやすみ』のスタンプをいつも通り送った。
でも、頭の中はどうしても整理できなくて、なんだか答えの見えない数式みたいだった。
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