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第四章 夏休みは忙しい
4. 東京帰還
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北海道最終日――東京に戻る日に、新千歳空港で最後に札幌味噌ラーメンをすすって、私の夏休みの一大イベント『北海道』はフィナーレを迎えた。帰りはパパと飛行機に乗って羽田へ。今日からママは美容院をお店ごとお休みにしている。
「パパ、あかねー!」
出口でママが手を振っている。ママに荷物を預け、家路についた。
「ああ、我が家だ。落ち着く~。」
「ふふふ。買ってすぐに異動になっちゃったから、ほとんど住んでないじゃない?」
ママが笑いながら言う。
「本当ひどい会社だよ。シャワー浴びてくる。」
パパが風呂場に消えていった。
「じゃあ、私は夕飯の準備しちゃおうっと。あかねは早く荷解きしちゃいなさい。」
「はーい」
あ、そうだ。東京着いたって、高倉くんにメッセージしよう。そういえば、札幌に行ってからは毎日、高倉くんとメッセージアプリでやり取りしている。たわいもない会話も多いけど、それが心地良かった。
『そめやん、こんど近くの神社で夏祭りあるやん』
『あるね。結構出店が出るから楽しいよ』
『一緒に行かへん?』
『行く!!』
――もしかして、高倉くんと二人で夏祭り!?少し前のめりに返事をしてしまった。
パパもお風呂から出て来て、夕飯の時間だ。
今日のメニューはママ特製・グリーンカレー。ママはエスニック料理が得意なのだ。スパイシーなのに、なんか爽やかで食べやすい。ご飯はちゃんとジャスミンライスだ。
「ママのグリーンカレーは世界で一番うまいよ。」
「パパ、大袈裟ね。」
「ママ、大袈裟じゃないよ。宇宙一おいしいよ。」
「あかね、まで。」
「そうだ!高倉くんが地元の夏祭りに一緒に行かないかって!」
「ああ、あのカワイイ男の子ね。よかったじゃない。――あ!そうだ。あかね、その子にコスメにたくさん買ってもらってたわよね?」
そう、原宿のドラッグストアでコスメ一式、高倉くんが買ってくれた。ええんやって笑ってたけど、申し訳ない気持ちは残っている。
「うちの美容院で無料で浴衣着付けて上げるわよ。あかねの分とまとめて。」
ママが頼もしく笑った。ママの美容院は、浴衣の貸し出しと着付けもやっている。でも、花火大会とお祭りの前は毎年とても忙しい。
「ママ、忙しくないの?大丈夫?」
「今年はなぜだか夏祭りの日の予約がいつもより少ないのよ。それにこれから増えたとしても、あかねたち二人くらい一瞬で着付けられるわよ。」
「ありがとう、ママ!高倉くんにも聞いてみる!」
「――え、ちょっと待って。まさか、この前あかねが言っていた高倉くんって子、あかねの彼氏なの?」
話を聞いていたパパが少し不服そうな顔をして、首を突っ込んで来た。
「友達かな?私まだ『好き』とか『恋』とかよく分からないし。もしかして、クエスチョニングってやつかも。」
「覚えたての言葉を簡単に使わない。」
「そうだね。それこそ夏祭りで高倉くんのこと『好き』になるかもしれないしね。」
「……ああいえば、こういう。まったく誰に似たんだが。」
「多分、パパだわ。」
ママが即答して、思わず笑ってしまった。
――ああ、こんな楽しい夕飯が毎日続けばいいのに。週が明ける前にまたパパが札幌に帰っちゃうのが、寂しくてしょうがない。
食事の後、高倉くんに浴衣の件でメッセージを送った。女の子の浴衣を着てみたいと思ってたけど、自分では着られないし、頼める人もいないし、諦めていたって。バニーホップのパメラが目をきらきらさせているスタンプが添えられていた。私も高倉くんのカワイイを後押しできるのがうれしかった。
「パパ、あかねー!」
出口でママが手を振っている。ママに荷物を預け、家路についた。
「ああ、我が家だ。落ち着く~。」
「ふふふ。買ってすぐに異動になっちゃったから、ほとんど住んでないじゃない?」
ママが笑いながら言う。
「本当ひどい会社だよ。シャワー浴びてくる。」
パパが風呂場に消えていった。
「じゃあ、私は夕飯の準備しちゃおうっと。あかねは早く荷解きしちゃいなさい。」
「はーい」
あ、そうだ。東京着いたって、高倉くんにメッセージしよう。そういえば、札幌に行ってからは毎日、高倉くんとメッセージアプリでやり取りしている。たわいもない会話も多いけど、それが心地良かった。
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今日のメニューはママ特製・グリーンカレー。ママはエスニック料理が得意なのだ。スパイシーなのに、なんか爽やかで食べやすい。ご飯はちゃんとジャスミンライスだ。
「ママのグリーンカレーは世界で一番うまいよ。」
「パパ、大袈裟ね。」
「ママ、大袈裟じゃないよ。宇宙一おいしいよ。」
「あかね、まで。」
「そうだ!高倉くんが地元の夏祭りに一緒に行かないかって!」
「ああ、あのカワイイ男の子ね。よかったじゃない。――あ!そうだ。あかね、その子にコスメにたくさん買ってもらってたわよね?」
そう、原宿のドラッグストアでコスメ一式、高倉くんが買ってくれた。ええんやって笑ってたけど、申し訳ない気持ちは残っている。
「うちの美容院で無料で浴衣着付けて上げるわよ。あかねの分とまとめて。」
ママが頼もしく笑った。ママの美容院は、浴衣の貸し出しと着付けもやっている。でも、花火大会とお祭りの前は毎年とても忙しい。
「ママ、忙しくないの?大丈夫?」
「今年はなぜだか夏祭りの日の予約がいつもより少ないのよ。それにこれから増えたとしても、あかねたち二人くらい一瞬で着付けられるわよ。」
「ありがとう、ママ!高倉くんにも聞いてみる!」
「――え、ちょっと待って。まさか、この前あかねが言っていた高倉くんって子、あかねの彼氏なの?」
話を聞いていたパパが少し不服そうな顔をして、首を突っ込んで来た。
「友達かな?私まだ『好き』とか『恋』とかよく分からないし。もしかして、クエスチョニングってやつかも。」
「覚えたての言葉を簡単に使わない。」
「そうだね。それこそ夏祭りで高倉くんのこと『好き』になるかもしれないしね。」
「……ああいえば、こういう。まったく誰に似たんだが。」
「多分、パパだわ。」
ママが即答して、思わず笑ってしまった。
――ああ、こんな楽しい夕飯が毎日続けばいいのに。週が明ける前にまたパパが札幌に帰っちゃうのが、寂しくてしょうがない。
食事の後、高倉くんに浴衣の件でメッセージを送った。女の子の浴衣を着てみたいと思ってたけど、自分では着られないし、頼める人もいないし、諦めていたって。バニーホップのパメラが目をきらきらさせているスタンプが添えられていた。私も高倉くんのカワイイを後押しできるのがうれしかった。
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