3 / 4
俺達は⋯生き残る!
しおりを挟む
俺達は、あちこちで響く
何かを破壊するような音や、
爆発音が轟く会場内を出口に向かって
人混みに阻まれながら必死に走った。
既に出口付近には多くの人影が見えたが、
突然、そこに人々の悲鳴や叫び声が
木霊する。
「ぐああああああああっ!」
「ぎゃーーーっ!」「いやーーーっやめてー」
「た、たすけ、!ゲフッ、、!」
何が起きてるのかわからない俺達は、
思わず、立ち尽くし互いに顔を見合わせる。
すると次の瞬間、俺達の前を覆っていた
人の壁が、まるで海が割れるかのように、
中心から左右に亀裂が入り、
そのまま出口から俺達の方向に向かって
大きく割れていく、出口に何かいる!
"その" 存在を認め、人々が恐怖で
逃げ出したのだ。
"死" を撒き散らす存在から⋯
そして、、
人々が逃げ出した後、
俺達がそこで見たものは⋯⋯⋯!
「ナ、何あれ、」「嘘だろ⋯⋯」
「ど、ど、ど、どうしよ」
「こ、こんな事が⋯⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯。神様⋯⋯」
俺は、後ずさりながら震える声で
口にする
「ば、化物⋯⋯⋯⋯!」
そうだ!
そこにいたのは紛れもない化物だった。
二足歩行で一見人に近い姿をしてるが、
身長は2メートルを超え、体中長い体毛に
覆われている。腰からは尻尾のような
物が生えており、それをまるで、
牛が自身の周りを飛ぶ、ハエを
払うかのように、左右に打払っている。
筋肉質な両の腕の先には、
小柄の生き物など容易く引き裂けるような
鋭い鉤爪を備えている。
頭には曲がりくねった巨大なツノが見える、
TVでも、図鑑でも、ネットでも
こんな奴は見たことがない!
⋯⋯いや、ゲームやファンタジー漫画等に
出てくる人々から恐れられ、忌むべき存在
そう、さっき俺が口にした
まさに、化物と呼ばれる存在だった。
恐怖でおかしくなりそうな頭をフルに
使って何か解決策はないかと考えたが、
逃げる以外の選択肢が浮かばない
(そうだ、逃げよう)しかし、出口は
例の化物に塞がれてるし、左右に逃げた
他の人達の方からも叫び声が聴こえている。
建物の中は? いや、だめだ!
さっきの爆発の後を見ると火が燃えている!
建物に引火したらしい、紅く燃える炎が
勢いよくあがっている。
それに、中に逃げても
化け物が入ってくれば、逃げ場がない!
そうなれば、袋のネズミだ!
なんとかしなきゃ、でもどうされば?
俺は幾度も襲い来る危機に、思考が
パンクしたように自問自答を繰り返す
と、背後でバサッという羽ばたく
ような音が聞こえ、直後悲鳴があがった
「きゃあああああああーーーーっ!」
あの声は綾桜!
俺が振り返ると、最後尾にいた綾桜の前には
石像のような肌に、顔は口元が
大きく引き裂かれ、禍々しい笑みを浮かべた
怪人が立っていた!背にはコウモリのような
翼が生えている。
そして奴の身体には、何か⋯⋯
ドス黒い気流のようなものが
纏わりつくように覆い尽くしていた。
な、なんだこいつは!こんな奴まで⋯
この姿はまるで⋯⋯
「が、ガーゴイル」亮太が血を吐くような
声で呟いた。
(ガーゴイル、そうだ!前に亮太の家で
ゲームの後、妖怪やら悪魔の話をしてた時
アイツが話してくれた異形の存在
それが⋯ガーゴイル)そういえば、
俺も知っている。ゲームや
ファンタジーの中では割と聞く名だ。
でも、まさか、そいつが目の前に
現れるなんて!
にわかには信じがたいがこれは現実だ!
現実に奴は俺達の目の前にいる!
「いやぁ こないで⋯」
目に涙を浮かべ、尻餅をついた綾桜は
恐怖に引き攣った表情でガチガチと
震えている。
どうやら完全に腰が抜けて、
立てなくなってしまっているようだ。
そんなに綾桜を助けようと聖羅が駆け寄り
肩を抱きかかえるが、目の前の怪物は
そんな事には構わずに襲い掛かる!
危ない!
俺は我に返り、ガーゴイルがその鋭い爪を
振りかぶったのを見て、俺は咄嗟に
2人を庇うように奴の前に立つ!
それは半ば無意識だったが、身体が
動いてしまったんだ⋯
俺は右手に母さんからもらった
お守りを祈るような気持ちで
握りしめていた⋯⋯⋯⋯⋯が、しかし
あ、だめだこれ⋯⋯
俺は死ぬんだと本能的に悟った。
諦めたわけでも、覚悟を決めたのでもない
言うなれば、わかってしまったんだ。
直後、俺の頭上に降ってくるであろう
奴の凶爪を見て⋯⋯⋯
これは、どうしようもない現実なんだ⋯
(ごめん、母さん
お土産わたせなかったな⋯⋯。)
俺は恐怖のあまり感覚が麻痺したのか
心の中が真っ白になり、不思議と
怖くなかった。
それどころか、それはまるでこれから
母の腕に抱かれた赤子が、眠りにつくような
そんなリラックスした感覚だった。
そして⋯⋯
それとは裏腹に全身の感覚は冴え渡り、
奴の爪が外側から内に向かって、
俺に狙いを定めるように、
何処からどう切り裂こうとしてるのか、
その軌跡がはっきりと解る。
そして俺の身体が、
眩しい光に包まれ、俺以外の
周りの景色が緩やかに
歪んでいくような⋯
それはまるで⋯
過ぎ去っていく時間の流れの中に
俺だけが立ち尽くし、濁流のように
過ぎ去ってゆく時間が、
俺の目に映るような⋯
そんな⋯⋯奇妙な感覚の中で俺は⋯
「これは⋯走馬灯なのか⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯? い、いや違う!
瞬間、何故か奴の動きがまるで
スローモーションのようになっていた。
な、なんだ⋯⋯⋯⋯⋯⋯これ?
「⋯⋯⋯⋯け⋯⋯⋯⋯ろ」?
何か?聞こえ⋯⋯⋯⋯。
「避けろ!奴の横に回り込め!」
俺は、奴が振り下ろす死の鎌のような
攻撃を既のところで躱していた。
続けて、俺の心に力強い言葉が、
お守りを掴んでいる俺の右手から
波動となって流れ込んでくる!
「そうだ!そのまま右手に、
我に汝の気を集中させろ!」
そ、そんなこと言われても
どうしたら⋯⋯⋯
「汝の、汝が心に思い描く
力とはなんだ⋯⋯⋯
汝の心の力はなんだ⋯
汝が敵を倒すために求める力とは!」
右手から伝わる揺るぎない波動
それに応えるように⋯⋯
「俺は⋯⋯⋯」
「俺は⋯⋯⋯⋯⋯!
俺や、俺の周りにいる大切な人達、
俺の仲間や家族を⋯⋯⋯傷つける
奴が許せない!」
「俺が大切にしてる人達を
守るんだぁーーーーーーーーーーー!」
俺の右手が周囲を全て覆い尽くすような
純白光を放つ!
禍々しい色を全て消し去らんとする
ような光の中で⋯
波動がまた俺に語りかける⋯⋯
「ほお、これは珍しい
光の力か⋯⋯⋯しかも、これほど⋯!
まだ、年若い小僧であるのにな⋯⋯
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯面白い、気に入ったぞ!
小僧!」
「小僧じゃない!」
「よかろう ではヌシよ
汝が身の内に秘める力は大したものだ
しかし、
いくら強力な力を持っておっても、
それだけではどうしょうもない」
「力を行使するための技術!
つまりなんのスキルもない
今のお前が、それだけで
奴を倒すことはできまい」
「ど、どうすればいい?」
「だから⋯今は我が力を貸そう」
「しかしヌシよ! 我が力を行使するには
汝の助力が必要だ!我と契約を交わせ!」
「我にヌシと契約をする為の
名をつけよ!
そしてヌシよ!我に汝の名を告げるがいい
それで契約は成立する!」
「わ、わかった⋯⋯
他に方法があるわけじゃないし」
(な、名前⋯名前⋯⋯⋯)
僅か⋯⋯俺は思案し、
(前に父さんが言っていた⋯⋯よし!)
「お、お前の名は⋯⋯」
「フィロス!お前は⋯⋯フィロスだ!
頼むぜ!、相棒⋯!
⋯俺は蓮也⋯⋯天神蓮也だ!」
「良かろう!
我はフィロス、ヌシは蓮也!
我等は共に戦い、共に歩む!
我はヌシを守り、ヌシは我に助力せよ!」
「な、なんか分からんがわかった!」
「契約は成立したぞ!」
「ヌシよ、まずは目の前の敵を倒すぞ」
「さっき、自身の右手に力を集中させた
感覚は覚えておるか?」
「あ、ああ⋯⋯なんとなくだけど⋯」
「今一度やってみせよ
ヌシの力を行使するための術式は
我が描いてやる」
俺は言われるがまま
右手に意識を集中し、全身の力を
集めるように力を込めた。
「よーし、いいぞヌシよ
奴を倒すために我が描いた術式は
雷だ ヌシの邪を滅する光を
雷光に変え、奴に滅びの鉄槌を下すぞ!」
「よく狙えよ⋯そして心の中で
技の発動を(トリガーをひけ!)命じよ!」
「いまだ!⋯⋯⋯⋯撃て!」
「おおおおおあぁぁーいけェーーー!」
ガガガガガーーーーーーーン!
刹那、凄まじい雷光が俺の右手から
繰り出され、目の前に立つガーゴイルを
貫いた!そして、奴の身体を縦横無尽に
駆け巡る!
直後、奴の身体を走り抜けた雷光の
形に亀裂が入り、バラバラと音を立てて
砕けてゆく!
崩れ落ちると奴の身体は粉々になり
灰と化して跡形もなく消え去る。
ーーーーーットン
ん?奴の灰の中に何か落ちて⋯⋯
「や、やった⋯⋯⋯うっ!」
俺は身体の力が急激に抜け、
立っていられずに思わずしゃがみ込む
一瞬気を失いそうになったが、
なんとか持ち堪えた。
「初めてのことで無理もないが
力を込めすぎだ!」
フィロスは、やや呆れた声で言葉を続ける
「一度毎にそれでは、身が持たぬぞ
今少し力を抑えよ 余力を持て」
「そ、そんなこと言われてもさ
わからないよ⋯」
精根尽き果てた感じだ⋯⋯
俺はまだ立ち上がれずにいた
「疲労が酷いようだな
しかし、それは我も同じだ」
「?」
「お前の力を行使する為に、
我もかなりの力を使ってしまった
このままでは、我は消滅するだろう」
と⋯不意に!
フィロスの本体に埋め込まれている
石が崩壊の音を響かせる
ピシッ!!
紫の石が更に亀裂を広げている!
「ま、マジかよ! どうすればいい?
何とかならないのか?」
「さっき敵を倒した後を見てみろ
そこに魔石が転がってるはずだ」
「魔石!
また、よく聞くワードだな」
「ほう⋯⋯魔石を知ってるのか?」
「い、いや見たことはないけどさ⋯」
「と、とにかく魔石だな!」
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯これか?
俺はガーゴイルを倒した場所から
青く輝く小石大の結晶を拾い上げる。
これが⋯魔石
「これで、いいのか?これが魔石か?」
「そうだ、すまぬがヌシよ
その魔石を我のそばに⋯」響く言葉が
小さくなってきている!急がないと⋯
「これでいいか?」俺はフィロスに
魔石を近づけた⋯⋯
次の瞬間、魔石の中に燃えるような
光が灯り、揺らめく炎のように、
魔石内部に燃え広がる
「ま、魔石が!」
魔石内の炎は、内部から魔石を
焼き尽くすように自身を内包する本体ごと
掻き消すように消え去り、
入れ替わるようにフィロスの中の石が
輝き出す、「ヒビが!」
輝きの中で、石全体に広がろうとしていた
ヒビが、癒されるように修復していく。
輝きがおさまると、すっかりヒビがなくなり
輝きを増した石が現れる。
「ふう⋯危ないところであった」
「た、大丈夫なのか?」
「うむ、もう問題ない 久しぶりに
魔力を吸収することができた。
ヌシよ、礼を言う」
「え⋯と、俺は何がなんだか⋯」
「ヌシよ、様々疑問はあろうが⋯
混乱するのは後にせよ⋯
今はまだ、すべきことがあろう」
は⋯⋯⋯そうだ!みんなは?
皆の方を振り返ると
皆、放心したように呆気にとられている
無理もない⋯僅かな間にこんな⋯
そうだ、
ガーゴイルの前に立ち塞がり、
奴を倒し、魔石を使ってフィロスを
癒やすまで、ほんの数分⋯
しかし、その間に通常では考えられない
体験をしたんだ⋯
「お、おいレン いったい何が⋯」
「レン君、大丈夫なの?」
「レン君⋯⋯う、ひっく、あり⋯
ありが⋯と⋯怖かった⋯⋯」
「だ、大丈夫なのか、助かったのか?」
それぞれの言葉を発しながら、
互いの無事を喜び合うが⋯⋯⋯
俺は⋯皆に宣言する!
「まだだ、まずはここを脱出しよう!
皆で無事に帰るんだ、
俺達は、生き残るぞ!」
何かを破壊するような音や、
爆発音が轟く会場内を出口に向かって
人混みに阻まれながら必死に走った。
既に出口付近には多くの人影が見えたが、
突然、そこに人々の悲鳴や叫び声が
木霊する。
「ぐああああああああっ!」
「ぎゃーーーっ!」「いやーーーっやめてー」
「た、たすけ、!ゲフッ、、!」
何が起きてるのかわからない俺達は、
思わず、立ち尽くし互いに顔を見合わせる。
すると次の瞬間、俺達の前を覆っていた
人の壁が、まるで海が割れるかのように、
中心から左右に亀裂が入り、
そのまま出口から俺達の方向に向かって
大きく割れていく、出口に何かいる!
"その" 存在を認め、人々が恐怖で
逃げ出したのだ。
"死" を撒き散らす存在から⋯
そして、、
人々が逃げ出した後、
俺達がそこで見たものは⋯⋯⋯!
「ナ、何あれ、」「嘘だろ⋯⋯」
「ど、ど、ど、どうしよ」
「こ、こんな事が⋯⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯。神様⋯⋯」
俺は、後ずさりながら震える声で
口にする
「ば、化物⋯⋯⋯⋯!」
そうだ!
そこにいたのは紛れもない化物だった。
二足歩行で一見人に近い姿をしてるが、
身長は2メートルを超え、体中長い体毛に
覆われている。腰からは尻尾のような
物が生えており、それをまるで、
牛が自身の周りを飛ぶ、ハエを
払うかのように、左右に打払っている。
筋肉質な両の腕の先には、
小柄の生き物など容易く引き裂けるような
鋭い鉤爪を備えている。
頭には曲がりくねった巨大なツノが見える、
TVでも、図鑑でも、ネットでも
こんな奴は見たことがない!
⋯⋯いや、ゲームやファンタジー漫画等に
出てくる人々から恐れられ、忌むべき存在
そう、さっき俺が口にした
まさに、化物と呼ばれる存在だった。
恐怖でおかしくなりそうな頭をフルに
使って何か解決策はないかと考えたが、
逃げる以外の選択肢が浮かばない
(そうだ、逃げよう)しかし、出口は
例の化物に塞がれてるし、左右に逃げた
他の人達の方からも叫び声が聴こえている。
建物の中は? いや、だめだ!
さっきの爆発の後を見ると火が燃えている!
建物に引火したらしい、紅く燃える炎が
勢いよくあがっている。
それに、中に逃げても
化け物が入ってくれば、逃げ場がない!
そうなれば、袋のネズミだ!
なんとかしなきゃ、でもどうされば?
俺は幾度も襲い来る危機に、思考が
パンクしたように自問自答を繰り返す
と、背後でバサッという羽ばたく
ような音が聞こえ、直後悲鳴があがった
「きゃあああああああーーーーっ!」
あの声は綾桜!
俺が振り返ると、最後尾にいた綾桜の前には
石像のような肌に、顔は口元が
大きく引き裂かれ、禍々しい笑みを浮かべた
怪人が立っていた!背にはコウモリのような
翼が生えている。
そして奴の身体には、何か⋯⋯
ドス黒い気流のようなものが
纏わりつくように覆い尽くしていた。
な、なんだこいつは!こんな奴まで⋯
この姿はまるで⋯⋯
「が、ガーゴイル」亮太が血を吐くような
声で呟いた。
(ガーゴイル、そうだ!前に亮太の家で
ゲームの後、妖怪やら悪魔の話をしてた時
アイツが話してくれた異形の存在
それが⋯ガーゴイル)そういえば、
俺も知っている。ゲームや
ファンタジーの中では割と聞く名だ。
でも、まさか、そいつが目の前に
現れるなんて!
にわかには信じがたいがこれは現実だ!
現実に奴は俺達の目の前にいる!
「いやぁ こないで⋯」
目に涙を浮かべ、尻餅をついた綾桜は
恐怖に引き攣った表情でガチガチと
震えている。
どうやら完全に腰が抜けて、
立てなくなってしまっているようだ。
そんなに綾桜を助けようと聖羅が駆け寄り
肩を抱きかかえるが、目の前の怪物は
そんな事には構わずに襲い掛かる!
危ない!
俺は我に返り、ガーゴイルがその鋭い爪を
振りかぶったのを見て、俺は咄嗟に
2人を庇うように奴の前に立つ!
それは半ば無意識だったが、身体が
動いてしまったんだ⋯
俺は右手に母さんからもらった
お守りを祈るような気持ちで
握りしめていた⋯⋯⋯⋯⋯が、しかし
あ、だめだこれ⋯⋯
俺は死ぬんだと本能的に悟った。
諦めたわけでも、覚悟を決めたのでもない
言うなれば、わかってしまったんだ。
直後、俺の頭上に降ってくるであろう
奴の凶爪を見て⋯⋯⋯
これは、どうしようもない現実なんだ⋯
(ごめん、母さん
お土産わたせなかったな⋯⋯。)
俺は恐怖のあまり感覚が麻痺したのか
心の中が真っ白になり、不思議と
怖くなかった。
それどころか、それはまるでこれから
母の腕に抱かれた赤子が、眠りにつくような
そんなリラックスした感覚だった。
そして⋯⋯
それとは裏腹に全身の感覚は冴え渡り、
奴の爪が外側から内に向かって、
俺に狙いを定めるように、
何処からどう切り裂こうとしてるのか、
その軌跡がはっきりと解る。
そして俺の身体が、
眩しい光に包まれ、俺以外の
周りの景色が緩やかに
歪んでいくような⋯
それはまるで⋯
過ぎ去っていく時間の流れの中に
俺だけが立ち尽くし、濁流のように
過ぎ去ってゆく時間が、
俺の目に映るような⋯
そんな⋯⋯奇妙な感覚の中で俺は⋯
「これは⋯走馬灯なのか⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯? い、いや違う!
瞬間、何故か奴の動きがまるで
スローモーションのようになっていた。
な、なんだ⋯⋯⋯⋯⋯⋯これ?
「⋯⋯⋯⋯け⋯⋯⋯⋯ろ」?
何か?聞こえ⋯⋯⋯⋯。
「避けろ!奴の横に回り込め!」
俺は、奴が振り下ろす死の鎌のような
攻撃を既のところで躱していた。
続けて、俺の心に力強い言葉が、
お守りを掴んでいる俺の右手から
波動となって流れ込んでくる!
「そうだ!そのまま右手に、
我に汝の気を集中させろ!」
そ、そんなこと言われても
どうしたら⋯⋯⋯
「汝の、汝が心に思い描く
力とはなんだ⋯⋯⋯
汝の心の力はなんだ⋯
汝が敵を倒すために求める力とは!」
右手から伝わる揺るぎない波動
それに応えるように⋯⋯
「俺は⋯⋯⋯」
「俺は⋯⋯⋯⋯⋯!
俺や、俺の周りにいる大切な人達、
俺の仲間や家族を⋯⋯⋯傷つける
奴が許せない!」
「俺が大切にしてる人達を
守るんだぁーーーーーーーーーーー!」
俺の右手が周囲を全て覆い尽くすような
純白光を放つ!
禍々しい色を全て消し去らんとする
ような光の中で⋯
波動がまた俺に語りかける⋯⋯
「ほお、これは珍しい
光の力か⋯⋯⋯しかも、これほど⋯!
まだ、年若い小僧であるのにな⋯⋯
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯面白い、気に入ったぞ!
小僧!」
「小僧じゃない!」
「よかろう ではヌシよ
汝が身の内に秘める力は大したものだ
しかし、
いくら強力な力を持っておっても、
それだけではどうしょうもない」
「力を行使するための技術!
つまりなんのスキルもない
今のお前が、それだけで
奴を倒すことはできまい」
「ど、どうすればいい?」
「だから⋯今は我が力を貸そう」
「しかしヌシよ! 我が力を行使するには
汝の助力が必要だ!我と契約を交わせ!」
「我にヌシと契約をする為の
名をつけよ!
そしてヌシよ!我に汝の名を告げるがいい
それで契約は成立する!」
「わ、わかった⋯⋯
他に方法があるわけじゃないし」
(な、名前⋯名前⋯⋯⋯)
僅か⋯⋯俺は思案し、
(前に父さんが言っていた⋯⋯よし!)
「お、お前の名は⋯⋯」
「フィロス!お前は⋯⋯フィロスだ!
頼むぜ!、相棒⋯!
⋯俺は蓮也⋯⋯天神蓮也だ!」
「良かろう!
我はフィロス、ヌシは蓮也!
我等は共に戦い、共に歩む!
我はヌシを守り、ヌシは我に助力せよ!」
「な、なんか分からんがわかった!」
「契約は成立したぞ!」
「ヌシよ、まずは目の前の敵を倒すぞ」
「さっき、自身の右手に力を集中させた
感覚は覚えておるか?」
「あ、ああ⋯⋯なんとなくだけど⋯」
「今一度やってみせよ
ヌシの力を行使するための術式は
我が描いてやる」
俺は言われるがまま
右手に意識を集中し、全身の力を
集めるように力を込めた。
「よーし、いいぞヌシよ
奴を倒すために我が描いた術式は
雷だ ヌシの邪を滅する光を
雷光に変え、奴に滅びの鉄槌を下すぞ!」
「よく狙えよ⋯そして心の中で
技の発動を(トリガーをひけ!)命じよ!」
「いまだ!⋯⋯⋯⋯撃て!」
「おおおおおあぁぁーいけェーーー!」
ガガガガガーーーーーーーン!
刹那、凄まじい雷光が俺の右手から
繰り出され、目の前に立つガーゴイルを
貫いた!そして、奴の身体を縦横無尽に
駆け巡る!
直後、奴の身体を走り抜けた雷光の
形に亀裂が入り、バラバラと音を立てて
砕けてゆく!
崩れ落ちると奴の身体は粉々になり
灰と化して跡形もなく消え去る。
ーーーーーットン
ん?奴の灰の中に何か落ちて⋯⋯
「や、やった⋯⋯⋯うっ!」
俺は身体の力が急激に抜け、
立っていられずに思わずしゃがみ込む
一瞬気を失いそうになったが、
なんとか持ち堪えた。
「初めてのことで無理もないが
力を込めすぎだ!」
フィロスは、やや呆れた声で言葉を続ける
「一度毎にそれでは、身が持たぬぞ
今少し力を抑えよ 余力を持て」
「そ、そんなこと言われてもさ
わからないよ⋯」
精根尽き果てた感じだ⋯⋯
俺はまだ立ち上がれずにいた
「疲労が酷いようだな
しかし、それは我も同じだ」
「?」
「お前の力を行使する為に、
我もかなりの力を使ってしまった
このままでは、我は消滅するだろう」
と⋯不意に!
フィロスの本体に埋め込まれている
石が崩壊の音を響かせる
ピシッ!!
紫の石が更に亀裂を広げている!
「ま、マジかよ! どうすればいい?
何とかならないのか?」
「さっき敵を倒した後を見てみろ
そこに魔石が転がってるはずだ」
「魔石!
また、よく聞くワードだな」
「ほう⋯⋯魔石を知ってるのか?」
「い、いや見たことはないけどさ⋯」
「と、とにかく魔石だな!」
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯これか?
俺はガーゴイルを倒した場所から
青く輝く小石大の結晶を拾い上げる。
これが⋯魔石
「これで、いいのか?これが魔石か?」
「そうだ、すまぬがヌシよ
その魔石を我のそばに⋯」響く言葉が
小さくなってきている!急がないと⋯
「これでいいか?」俺はフィロスに
魔石を近づけた⋯⋯
次の瞬間、魔石の中に燃えるような
光が灯り、揺らめく炎のように、
魔石内部に燃え広がる
「ま、魔石が!」
魔石内の炎は、内部から魔石を
焼き尽くすように自身を内包する本体ごと
掻き消すように消え去り、
入れ替わるようにフィロスの中の石が
輝き出す、「ヒビが!」
輝きの中で、石全体に広がろうとしていた
ヒビが、癒されるように修復していく。
輝きがおさまると、すっかりヒビがなくなり
輝きを増した石が現れる。
「ふう⋯危ないところであった」
「た、大丈夫なのか?」
「うむ、もう問題ない 久しぶりに
魔力を吸収することができた。
ヌシよ、礼を言う」
「え⋯と、俺は何がなんだか⋯」
「ヌシよ、様々疑問はあろうが⋯
混乱するのは後にせよ⋯
今はまだ、すべきことがあろう」
は⋯⋯⋯そうだ!みんなは?
皆の方を振り返ると
皆、放心したように呆気にとられている
無理もない⋯僅かな間にこんな⋯
そうだ、
ガーゴイルの前に立ち塞がり、
奴を倒し、魔石を使ってフィロスを
癒やすまで、ほんの数分⋯
しかし、その間に通常では考えられない
体験をしたんだ⋯
「お、おいレン いったい何が⋯」
「レン君、大丈夫なの?」
「レン君⋯⋯う、ひっく、あり⋯
ありが⋯と⋯怖かった⋯⋯」
「だ、大丈夫なのか、助かったのか?」
それぞれの言葉を発しながら、
互いの無事を喜び合うが⋯⋯⋯
俺は⋯皆に宣言する!
「まだだ、まずはここを脱出しよう!
皆で無事に帰るんだ、
俺達は、生き残るぞ!」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
おっさん冒険者のおいしいダンジョン攻略
神崎あら
ファンタジー
冒険者歴20年以上のおっさんは、若い冒険者達のように地位や権威を得るためにダンジョンには行かない。
そう、おっさんは生活のためにダンジョンに行く。
これはそんなおっさんの冒険者ライフを描いた生活記である。
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で
重田いの
ファンタジー
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で、人々の間に静かな困惑が広がる。
魔術師は事態を把握するため使用人に聞き取りを始める。
案外、普段踏まれている側の人々の方が真実を理解しているものである。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる