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第1話
モニター番号009
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「……失礼します。本日、被験者として伺いました。高峯です」
都内にある私立バイオメカニクス研究所。無機質な自動ドアをくぐり、研究モニターの高峯(27)は震える指先で受付票を差し出した。
エリート街道を歩んできた彼にとって、この場所は最後の希望だった。
「勃起不全、および性愛感情の欠落……。重症ですね」
背後からかけられた声は、凍てつくように冷たかった。振り返ると、そこには一人の女が立っていた。膝下まである長い白衣のボタンを上まで几帳面に留め、野暮ったい黒縁眼鏡をかけた女性。髪は高い位置で隙なくまとめられ、露わになったうなじが、冷房の効いた室内で不気味なほど白く光っている。
「担当の佐藤です。こちらへ、第3検査室へ」
彼女——佐藤凛(32)は、高峯の顔も見ずに歩き出した。カツカツと硬い音を立てるハイヒールの響きが、高峯の心臓を無意味に急かせる。
第3検査室は、窓のない密室だった。中央には医療用のリクライニングチェアが鎮座し、周囲には用途のわからないモニターやセンサーが並んでいる。
「上着を脱いで、そこに横になって」
「あの……本当に、これで治るんでしょうか。今まで病院にも行きましたが、原因不明で」
高峯は、自信のなさを象徴するように肩をすぼめてシャツを脱いだ。佐藤は手元のタブレットに目を落としたまま、事務的に告げる。
「既存の医療は、あなたの『心』を診ようとした。けれど、私の研究は違います。あなたの『五感』を物理的に再構築し、本能を強制起動させます。」
彼女がようやく眼鏡の奥の瞳を向けた。それは検体を観察する、冷徹な理系の目だ。
「さあ、まずは現状の確認(チェック)から始めましょう。ズボンと下着を脱いで。」
「えっ……ここで、ですか?」
「言ったはずです、私は研究員だと。私を『女』として見る必要はありません。あなたはただのデータ、私はそれを収集するデバイス。……それとも、一生その『使い物にならない棒』を抱えて生きていくのですか?」
その淡々とした、しかし鋭い言葉の暴力に、高峯は喉を鳴らした。羞恥に顔を染めながら、彼は促されるままに下半身を晒す。無機質な照明の下、彼の一部は、持ち主の絶望を体現するように力なく横たわっていた。
佐藤は表情一つ変えず、手袋をはめることもなく、素手の指先を伸ばした。
「……体温、やや低い。外部刺激に対する反応、皆無」
冷たい指先が、高峯の肌に触れる。
驚くほど指先が細い。そして、その動きには一切の慈悲がなかった。
慈しむような愛撫ではない。どこに神経が通っているかを確認するような、執拗で、事務的で、逃げ場のない「探索」。
「くっ……」
「声を上げても構いませんよ。それも貴重な聴覚データですから」
佐藤はわずかに身を乗り出した。
その瞬間、白衣の隙間から、石鹸の香りと共に「女」の熱が微かに漂った。
ふと見上げると、屈んだ彼女の白衣の襟元から、キツめのキャミソールに押し込められた圧倒的なボリュームの胸が、視界の端に突き刺さる。
(……デカい……。いや、何を考えてるんだ俺は)
「高峯さん。今、心拍数が0.5%上がりましたね」
佐藤の唇が、わずかに弧を描いたように見えた。それは、獲物を見つけた捕食者のような、不気味で艶やかな笑みだった。
「安心してください。あなたの『不能』、私が徹底的に、完膚無きまでに治療して差し上げます。……覚悟はいいですね?」
これが、地獄のような快楽に溺れる10日間の、始まりだった。
都内にある私立バイオメカニクス研究所。無機質な自動ドアをくぐり、研究モニターの高峯(27)は震える指先で受付票を差し出した。
エリート街道を歩んできた彼にとって、この場所は最後の希望だった。
「勃起不全、および性愛感情の欠落……。重症ですね」
背後からかけられた声は、凍てつくように冷たかった。振り返ると、そこには一人の女が立っていた。膝下まである長い白衣のボタンを上まで几帳面に留め、野暮ったい黒縁眼鏡をかけた女性。髪は高い位置で隙なくまとめられ、露わになったうなじが、冷房の効いた室内で不気味なほど白く光っている。
「担当の佐藤です。こちらへ、第3検査室へ」
彼女——佐藤凛(32)は、高峯の顔も見ずに歩き出した。カツカツと硬い音を立てるハイヒールの響きが、高峯の心臓を無意味に急かせる。
第3検査室は、窓のない密室だった。中央には医療用のリクライニングチェアが鎮座し、周囲には用途のわからないモニターやセンサーが並んでいる。
「上着を脱いで、そこに横になって」
「あの……本当に、これで治るんでしょうか。今まで病院にも行きましたが、原因不明で」
高峯は、自信のなさを象徴するように肩をすぼめてシャツを脱いだ。佐藤は手元のタブレットに目を落としたまま、事務的に告げる。
「既存の医療は、あなたの『心』を診ようとした。けれど、私の研究は違います。あなたの『五感』を物理的に再構築し、本能を強制起動させます。」
彼女がようやく眼鏡の奥の瞳を向けた。それは検体を観察する、冷徹な理系の目だ。
「さあ、まずは現状の確認(チェック)から始めましょう。ズボンと下着を脱いで。」
「えっ……ここで、ですか?」
「言ったはずです、私は研究員だと。私を『女』として見る必要はありません。あなたはただのデータ、私はそれを収集するデバイス。……それとも、一生その『使い物にならない棒』を抱えて生きていくのですか?」
その淡々とした、しかし鋭い言葉の暴力に、高峯は喉を鳴らした。羞恥に顔を染めながら、彼は促されるままに下半身を晒す。無機質な照明の下、彼の一部は、持ち主の絶望を体現するように力なく横たわっていた。
佐藤は表情一つ変えず、手袋をはめることもなく、素手の指先を伸ばした。
「……体温、やや低い。外部刺激に対する反応、皆無」
冷たい指先が、高峯の肌に触れる。
驚くほど指先が細い。そして、その動きには一切の慈悲がなかった。
慈しむような愛撫ではない。どこに神経が通っているかを確認するような、執拗で、事務的で、逃げ場のない「探索」。
「くっ……」
「声を上げても構いませんよ。それも貴重な聴覚データですから」
佐藤はわずかに身を乗り出した。
その瞬間、白衣の隙間から、石鹸の香りと共に「女」の熱が微かに漂った。
ふと見上げると、屈んだ彼女の白衣の襟元から、キツめのキャミソールに押し込められた圧倒的なボリュームの胸が、視界の端に突き刺さる。
(……デカい……。いや、何を考えてるんだ俺は)
「高峯さん。今、心拍数が0.5%上がりましたね」
佐藤の唇が、わずかに弧を描いたように見えた。それは、獲物を見つけた捕食者のような、不気味で艶やかな笑みだった。
「安心してください。あなたの『不能』、私が徹底的に、完膚無きまでに治療して差し上げます。……覚悟はいいですね?」
これが、地獄のような快楽に溺れる10日間の、始まりだった。
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