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第2話
触覚――反応閾値の測定
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「……っ。さ、佐藤さん、それは」
「動かないで。電極の数値がブレます」
検査室の照明がわずかに落とされ、高峯の視界には、タブレットを手にした佐藤凛のシルエットだけが浮かび上がっていた。
リクライニングチェアに固定された高峯の肌に、冷たい潤滑ジェルが塗布される。
「本日のメニューは、皮膚感覚の閾値(いきち)測定。つまり、あなたがどの程度の刺激で、どの神経を覚醒させるかの調査です」
佐藤はそう言いながら、着ていた白衣の第一ボタンを、迷いなく外した。
それだけで、閉ざされていたはずの「女」の領域が、ふわりと解放される。
白衣の隙間からのぞくのは、繊細な黒レースのキャミソール。そして、そこから溢れんばかりの、圧倒的な質感を伴ったIカップの曲線。
「な……何を」
「効率化のためです。私の体温や、視覚的な情報を含めた複合刺激の方が、データが取りやすい。……ほうら、心拍数がさらに10上がりました」
佐藤はクスクスと、しかし温度のない声で笑う。
彼女は椅子を引き寄せ、高峯の股間に顔を近づけた。眼鏡の縁に指をかけ、ずらした視線がじっと彼の一部を見つめる。
「まずは、最末端から」
細い指先が、彼の先端に触れた。
それは愛撫というにはあまりに淡白で、けれど正確に、敏感なスポットだけをなぞっていく。
「ひ……あっ」
「感度は悪くないようですね。脳が『性的興奮』を拒絶していても、脊髄反射は生きている。……でも、まだ足りない」
佐藤はさらに身を乗り出した。
その拍子に、彼女の豊かな胸が、高峯の膝に柔らかく押し当てられる。
白衣の下、ミニスカートから伸びた彼女の脚。黒パンストに包まれた太ももが、ガーターベルトの金具とともに鈍く光った。
「高峯さん。今のあなたの状態を、医学的に表現してください」
「そんなの……わ、わかりません」
「嘘をつかないで。今、私の指が触れている場所が熱いのか、それとも、私の胸が当たっている場所が気になるのか。……言葉にできないなら、もっと『直接的』に教えるしかありませんね」
佐藤は、高峯のペニスを根元からぎゅっと握り締めた。
事務的なはずの彼女の瞳に、不意にサディスティックな悦びが宿る。
「くっ、あ、あああ!」
「いい声。でも、まだ『彼』は俯いたまま。……面白いわ、高峯さん。あなたの絶望を、私が一つずつ快感に書き換えてあげる」
彼女は眼鏡を完全に外し、デスクに置いた。
露わになった素顔は、研究員としての仮面が剥がれ、一人の「女」としての毒を孕んでいた。
「さあ、実験を続けましょう。次は……少し痛みを混ぜますよ?」
高峯の理性は、彼女の指先ひとつで、いとも容易く蹂躙され始めていた。
「……あ、く……っ、佐藤、さん……もう……」
実験開始から数時間。第3検査室には、高峯の荒い吐息と、佐藤が操作するタブレットの電子音だけが虚しく響いていた。
高峯の体は、執拗な指先の愛撫と、時折肌を叩く微弱な電流刺激によって、経験したことのない疲弊と微かな昂ぶりに支配されていた。
佐藤凛は、乱れた後れ毛を耳にかけ、冷徹な瞳でモニターを見つめる。
「今日のノルマはここまで。……残念ながら、中枢への覚醒信号は確認できましたが、完全な『自立(勃起)』には至りませんでしたね」
彼女は事務的に告げると、高峯を拘束していたベルトを一本ずつ外していく。解放された腕は力なく垂れ下がり、高峯はリクライニングチェアの上で泥のように沈んでいた。
「はぁ……はぁ……。すみません、結局……俺、ダメで……」
「謝る必要はありません。これは実験です。今日は『物理的刺激』だけではあなたの脳の防壁を崩せないことが分かった。それだけで十分な収穫です」
佐藤は立ち上がり、脱ぎ捨てていた白衣を羽織った。
しかし、ボタンは外されたまま。歩くたびに、白衣の裾から黒パンストに包まれたしなやかな脚と、ガーターベルトが覗く。
彼女は着替えようとする高峯のそばに寄り、耳元で低く囁いた。
「ですが、高峯さん。あなたの肌……私の指が触れるたびに、細かく震えていましたよ。体は、あなたの言葉よりもずっと正直に『女』を求めている」
高峯が顔を上げると、至近距離に佐藤のノーメイクに近い、けれど艶やかな素顔があった。
「明日からは、もっと多角的に攻めます。……今夜は、私の指の感触を思い出しながら、一人で復習(イメージトレーニング)でもしておいてください。まあ、あなたには無理かもしれませんが」
楠木のような、微かな冷ややかさを含んだ彼女の言葉。
佐藤はそのまま、一度も振り返ることなく検査室を後にした。
一人残された高峯は、震える手でズボンを履きながら、自分の肌に残る「冷たい指先」の感触が、いつまでも消えないことに気づいていた。
完治への希望よりも、明日への底知れぬ恐怖と、それを上回る「期待」が、彼の胸をざわつかせていた。
【実験初日:触覚測定・終了】
【被験者の状態:微かな神経覚醒を認めるが、自立には至らず】
「動かないで。電極の数値がブレます」
検査室の照明がわずかに落とされ、高峯の視界には、タブレットを手にした佐藤凛のシルエットだけが浮かび上がっていた。
リクライニングチェアに固定された高峯の肌に、冷たい潤滑ジェルが塗布される。
「本日のメニューは、皮膚感覚の閾値(いきち)測定。つまり、あなたがどの程度の刺激で、どの神経を覚醒させるかの調査です」
佐藤はそう言いながら、着ていた白衣の第一ボタンを、迷いなく外した。
それだけで、閉ざされていたはずの「女」の領域が、ふわりと解放される。
白衣の隙間からのぞくのは、繊細な黒レースのキャミソール。そして、そこから溢れんばかりの、圧倒的な質感を伴ったIカップの曲線。
「な……何を」
「効率化のためです。私の体温や、視覚的な情報を含めた複合刺激の方が、データが取りやすい。……ほうら、心拍数がさらに10上がりました」
佐藤はクスクスと、しかし温度のない声で笑う。
彼女は椅子を引き寄せ、高峯の股間に顔を近づけた。眼鏡の縁に指をかけ、ずらした視線がじっと彼の一部を見つめる。
「まずは、最末端から」
細い指先が、彼の先端に触れた。
それは愛撫というにはあまりに淡白で、けれど正確に、敏感なスポットだけをなぞっていく。
「ひ……あっ」
「感度は悪くないようですね。脳が『性的興奮』を拒絶していても、脊髄反射は生きている。……でも、まだ足りない」
佐藤はさらに身を乗り出した。
その拍子に、彼女の豊かな胸が、高峯の膝に柔らかく押し当てられる。
白衣の下、ミニスカートから伸びた彼女の脚。黒パンストに包まれた太ももが、ガーターベルトの金具とともに鈍く光った。
「高峯さん。今のあなたの状態を、医学的に表現してください」
「そんなの……わ、わかりません」
「嘘をつかないで。今、私の指が触れている場所が熱いのか、それとも、私の胸が当たっている場所が気になるのか。……言葉にできないなら、もっと『直接的』に教えるしかありませんね」
佐藤は、高峯のペニスを根元からぎゅっと握り締めた。
事務的なはずの彼女の瞳に、不意にサディスティックな悦びが宿る。
「くっ、あ、あああ!」
「いい声。でも、まだ『彼』は俯いたまま。……面白いわ、高峯さん。あなたの絶望を、私が一つずつ快感に書き換えてあげる」
彼女は眼鏡を完全に外し、デスクに置いた。
露わになった素顔は、研究員としての仮面が剥がれ、一人の「女」としての毒を孕んでいた。
「さあ、実験を続けましょう。次は……少し痛みを混ぜますよ?」
高峯の理性は、彼女の指先ひとつで、いとも容易く蹂躙され始めていた。
「……あ、く……っ、佐藤、さん……もう……」
実験開始から数時間。第3検査室には、高峯の荒い吐息と、佐藤が操作するタブレットの電子音だけが虚しく響いていた。
高峯の体は、執拗な指先の愛撫と、時折肌を叩く微弱な電流刺激によって、経験したことのない疲弊と微かな昂ぶりに支配されていた。
佐藤凛は、乱れた後れ毛を耳にかけ、冷徹な瞳でモニターを見つめる。
「今日のノルマはここまで。……残念ながら、中枢への覚醒信号は確認できましたが、完全な『自立(勃起)』には至りませんでしたね」
彼女は事務的に告げると、高峯を拘束していたベルトを一本ずつ外していく。解放された腕は力なく垂れ下がり、高峯はリクライニングチェアの上で泥のように沈んでいた。
「はぁ……はぁ……。すみません、結局……俺、ダメで……」
「謝る必要はありません。これは実験です。今日は『物理的刺激』だけではあなたの脳の防壁を崩せないことが分かった。それだけで十分な収穫です」
佐藤は立ち上がり、脱ぎ捨てていた白衣を羽織った。
しかし、ボタンは外されたまま。歩くたびに、白衣の裾から黒パンストに包まれたしなやかな脚と、ガーターベルトが覗く。
彼女は着替えようとする高峯のそばに寄り、耳元で低く囁いた。
「ですが、高峯さん。あなたの肌……私の指が触れるたびに、細かく震えていましたよ。体は、あなたの言葉よりもずっと正直に『女』を求めている」
高峯が顔を上げると、至近距離に佐藤のノーメイクに近い、けれど艶やかな素顔があった。
「明日からは、もっと多角的に攻めます。……今夜は、私の指の感触を思い出しながら、一人で復習(イメージトレーニング)でもしておいてください。まあ、あなたには無理かもしれませんが」
楠木のような、微かな冷ややかさを含んだ彼女の言葉。
佐藤はそのまま、一度も振り返ることなく検査室を後にした。
一人残された高峯は、震える手でズボンを履きながら、自分の肌に残る「冷たい指先」の感触が、いつまでも消えないことに気づいていた。
完治への希望よりも、明日への底知れぬ恐怖と、それを上回る「期待」が、彼の胸をざわつかせていた。
【実験初日:触覚測定・終了】
【被験者の状態:微かな神経覚醒を認めるが、自立には至らず】
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