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これからも続くいつもの日常
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ぽかぽかと明るい陽射しが降り注ぐ中庭。爽やかな風が優しく吹き抜けていく。
そこに緑の騎士服を纏ったニーレ・カーシュと、魔導研究課のオーリア・スレインが歩きながら話していた。
「結局、『花祝紋』って何なの?」
「女神の祝福と言われていますね。離れていても繋がりがわかるとされていますが、当人たちは特別な能力を授かったという感じはないようです。ただ、隊長はそもそもヤバい人なので、想い人の居場所がわかるようですが」
その言葉にオーリア・スレインが眉をひそめた。
「あらやだ、怖いわね」
「それに女神の祝福を詳しく知っている人は、すでにこの世にはいないでしょうし、おとぎ話自体がどこかで曲解された可能性もありますからね。あの二人に『花祝紋』が現れたのは、女神のご意思というより、彼を自分のものにしたい一念で『花祝紋』が浮き出てきたのかもしれません。想い人への執着の度合いが尋常ではありませんから」
「そうよね。『花祝紋』はアイツの執念で浮かび上がったのかもね。ディルカさんは私が男だってことも全然気づいていないし。上官っていうだけで、アイツに睨まれるのって面白いけど、牽制しすぎだと思うのよ。まぁ、アイツがいなかったら手は出していたかもしれないけど」
ディルカの上長であるオーリア・スレインは女装癖のある男で、ディルカは彼を女性だと信じて疑っていない。
「やめてくださいよ! とばっちりを被るのは私なんですからね?」
怯える素振りをするニーレ・カーシュに、オーリア・スレインはフンと鼻で笑った。
「いやぁねぇ、そんなこと……多分しないわよ。バレないように懐柔するもの」
「隊長の分身がポコポコ誕生しているんですから、この話も聞かれているかもしれませんよ」
キョロキョロと辺りを見回すニーレ・カーシュに、オーリア・スレインは堪えきれず声を上げて笑った。
「あははは、ポコポコって、鶏じゃないんだから! まぁ、間違ってないわ……。やっぱり関わるとろくな目に遭わないってことね」
かつて城内では、暗殺や情報収集、策略が蔓延し、多くの間者が暗躍していた。こうした脅威を撃退するために、城は過酷な状況に直面していた。
各部隊長は蒼の部隊の隊員として密かに過重労働を課されていたが、人員が充実してきたことで、状況は落ち着きを取り戻している。
これが一時的な平和であっても、ここでしっかりとした人材を育成し、魔導具のさらなる開発と成長が進めば、人に頼ることなく次のステップへと繋げる施策を打ち出すことができるだろう。
◆
「ミハエル、紫の髪の子と緑の髪の子が僕について回ってくるんだけど……」
ディルカはソファでゆったりと本を読んでいるミハエルに困惑した表情で声をかけた。
「今、シロとクロは別の任務に行っているからね。少しすれば戻ってくるよ」
ミハエルは優しげな表情でディルカを宥めながら、幸せそうに微笑んだ。
「あーあ、あのだらしない表情。みっともないね」
ミハエルの分身である緑の髪の男がぼやいた。
「まあ、仕方ないよ。あの人にとってディルカさんは特別な存在だし、シロとクロはディルカさんにとって特別な存在なんだから」
紫の髪の男が肩をすくめながら言った。
「え、ディルカさんにとって隊長は特別じゃないの?」
驚いたように眉を上げ、紫の髪の男を見つめた。
「そんなわけないでしょ」
緑の髪の男は小さく笑った。
「だよね」
それに応えるように笑みを浮かべる。
二人は生ぬるい視線を交わしながら、今日も和やかに過ごしていた。
Fin
そこに緑の騎士服を纏ったニーレ・カーシュと、魔導研究課のオーリア・スレインが歩きながら話していた。
「結局、『花祝紋』って何なの?」
「女神の祝福と言われていますね。離れていても繋がりがわかるとされていますが、当人たちは特別な能力を授かったという感じはないようです。ただ、隊長はそもそもヤバい人なので、想い人の居場所がわかるようですが」
その言葉にオーリア・スレインが眉をひそめた。
「あらやだ、怖いわね」
「それに女神の祝福を詳しく知っている人は、すでにこの世にはいないでしょうし、おとぎ話自体がどこかで曲解された可能性もありますからね。あの二人に『花祝紋』が現れたのは、女神のご意思というより、彼を自分のものにしたい一念で『花祝紋』が浮き出てきたのかもしれません。想い人への執着の度合いが尋常ではありませんから」
「そうよね。『花祝紋』はアイツの執念で浮かび上がったのかもね。ディルカさんは私が男だってことも全然気づいていないし。上官っていうだけで、アイツに睨まれるのって面白いけど、牽制しすぎだと思うのよ。まぁ、アイツがいなかったら手は出していたかもしれないけど」
ディルカの上長であるオーリア・スレインは女装癖のある男で、ディルカは彼を女性だと信じて疑っていない。
「やめてくださいよ! とばっちりを被るのは私なんですからね?」
怯える素振りをするニーレ・カーシュに、オーリア・スレインはフンと鼻で笑った。
「いやぁねぇ、そんなこと……多分しないわよ。バレないように懐柔するもの」
「隊長の分身がポコポコ誕生しているんですから、この話も聞かれているかもしれませんよ」
キョロキョロと辺りを見回すニーレ・カーシュに、オーリア・スレインは堪えきれず声を上げて笑った。
「あははは、ポコポコって、鶏じゃないんだから! まぁ、間違ってないわ……。やっぱり関わるとろくな目に遭わないってことね」
かつて城内では、暗殺や情報収集、策略が蔓延し、多くの間者が暗躍していた。こうした脅威を撃退するために、城は過酷な状況に直面していた。
各部隊長は蒼の部隊の隊員として密かに過重労働を課されていたが、人員が充実してきたことで、状況は落ち着きを取り戻している。
これが一時的な平和であっても、ここでしっかりとした人材を育成し、魔導具のさらなる開発と成長が進めば、人に頼ることなく次のステップへと繋げる施策を打ち出すことができるだろう。
◆
「ミハエル、紫の髪の子と緑の髪の子が僕について回ってくるんだけど……」
ディルカはソファでゆったりと本を読んでいるミハエルに困惑した表情で声をかけた。
「今、シロとクロは別の任務に行っているからね。少しすれば戻ってくるよ」
ミハエルは優しげな表情でディルカを宥めながら、幸せそうに微笑んだ。
「あーあ、あのだらしない表情。みっともないね」
ミハエルの分身である緑の髪の男がぼやいた。
「まあ、仕方ないよ。あの人にとってディルカさんは特別な存在だし、シロとクロはディルカさんにとって特別な存在なんだから」
紫の髪の男が肩をすくめながら言った。
「え、ディルカさんにとって隊長は特別じゃないの?」
驚いたように眉を上げ、紫の髪の男を見つめた。
「そんなわけないでしょ」
緑の髪の男は小さく笑った。
「だよね」
それに応えるように笑みを浮かべる。
二人は生ぬるい視線を交わしながら、今日も和やかに過ごしていた。
Fin
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さて、ご質問いただきました件ですが、
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だよね(そりゃぁ、そうだよね!あんなにポコポコ……!)心の声
ですので、緑髪の男もわかっていて会話をしているというなんとも意地の悪い……、いえ、二人(ミハエルとディルカ)を羨ましいと思う気持ちが溢れ出てしまっている会話になります。
ミハエルはディルカに愛されているというのが答えになります。
こちらで、ご質問の答えになっておりますと幸いです。
今後ともよろしくお願いいたします(*^^*)
野犬猫兄