4 / 28
やらかしたオメガのお話し…
01
しおりを挟む乾いた音に少し遅れて僕の頬に痛みが走る…。アルファ至上主義者でもある父からの平手打ちを受けたのだと遅れて理解した。
ちなみに母はアルファの女性だ。その母親は冷めきった目で僕を見ている。二人の兄は成人しており、長男は神無月 崇陽様の父親の会社へ入社している。
次男もまた部署は違えど同じ会社に入社している。ちなみに今は居ない。
付け足すと、崇陽様が立ち上げた会社の面接は落ちたらしい…。『滑り止め』程度に面接を受けに行ったらしい…。
兄達曰く『面接を受けに行ってやっただけありがたいと思え』という事らしい。
態度にソレが出ていたのか…その場で不採用が決まったのだと憤っていたのも記憶にある…。
「貴様はっ!!なんて事をしてくれたんだ!!」
という言葉に現実へと引き戻された。ヒステリックに叫ぶ父親の顔に余裕はない…それはそうだろう。
僕はあの神無月 崇陽の逆鱗に触れ、怒りを買った…。
僕は1度、家に帰された。着替などのちょっとした荷物を纏めて出てこいと言われている。
崇陽様の側近である冬樹 和人様が手配した部下が家の外で待っている。
これ以上、崇陽様の機嫌を損ねるのは僕も避けたい…。
あの威圧フェロモンが未だに僕を蝕んでいる。父親に叩かれた痛みよりもあの時の恐怖の方が遥かに勝っている。
内側から底知れぬ恐怖が湧き上がったのは初めてだった。それと同時に本能が…頭が…理解した。
あのオメガに触れるべきではなかったのだと…。侮った結果、取り返しのつかない事になった。
僕の思いに気づかない父親はさらにヒステリックに叫び…僕は足止めを食らう…。
痺れを切らしたのか…玄関の扉が開いた音がした。
これには両親共に気づいたようで、父親は『教養のなっていないゴミが…』などと呟きながら、眉を吊り上げ怒りを露わにして客人を怒鳴りつけに行ってしまった。
が、青い顔をして直ぐにリビングへと戻ってきた。その後ろには裏社会に君臨しているように見える強面の男がついてきている。
「義輝の命により迎えに来た。神無月の者から連絡がきているはずだが?」
「か、んな…づき…さ、ま?」
なんて喉がカラカラなのか掠れた声で言葉を紡いでいる父親を見たのは初めてだった…。
「あぁ、崇陽の方だ。」
そう言ってサングラス越しに切れ長の鋭い目をさらに細める。
「義輝は時間をムダにされるのを凄く嫌う。」
「っ…我々の上司は崇陽様ではない。それにー…義輝という者も知らない!」
という父親の言葉に周りの空気が一変した。僕には分からなかったが…父と母がその場に崩れ落ちた。
「言葉には気をつけろ…おい。そこのオメガ…何をとろとろしている。さっさと必要な物を持ってこい。これ以上、待たせるな…」
低くドスの利いた声でそう言われた僕は弾かれたように顔を上げると、慌ててリビングを出て自室に向かった。
逆らってはいけない気がした…。
*
1
あなたにおすすめの小説
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募するお話に、真紀ちゃん(攻)視点を追加して、倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる
七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。
だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。
そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。
唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。
優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。
穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。
――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。
《完結》僕の彼氏は僕のことを好きじゃないⅠ
MITARASI_
BL
彼氏に愛されているはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。
「好き」と言ってほしくて、でも返ってくるのは沈黙ばかり。
揺れる心を支えてくれたのは、ずっと隣にいた幼なじみだった――。
不器用な彼氏とのすれ違い、そして幼なじみの静かな想い。
すべてを失ったときに初めて気づく、本当に欲しかった温もりとは。
切なくて、やさしくて、最後には救いに包まれる救済BLストーリー。
続編執筆中
寂しいを分け与えた
こじらせた処女
BL
いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。
昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。
【完結】弟を幸せにする唯一のルートを探すため、兄は何度も『やり直す』
バナナ男さん
BL
優秀な騎士の家系である伯爵家の【クレパス家】に生まれた<グレイ>は、容姿、実力、共に恵まれず、常に平均以上が取れない事から両親に冷たく扱われて育った。 そんなある日、父が気まぐれに手を出した娼婦が生んだ子供、腹違いの弟<ルーカス>が家にやってくる。 その生まれから弟は自分以上に両親にも使用人達にも冷たく扱われ、グレイは初めて『褒められる』という行為を知る。 それに恐怖を感じつつ、グレイはルーカスに接触を試みるも「金に困った事がないお坊ちゃんが!」と手酷く拒絶されてしまい……。 最初ツンツン、のちヤンデレ執着に変化する美形の弟✕平凡な兄です。兄弟、ヤンデレなので、地雷の方はご注意下さいm(__)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる