やらかし夫夫(ふうふ)、番(つがい)になる

スメラギ

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やらかしたアルファのお話し…

01

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 俺は愛する者を失った…。まだ、高校に上がりたての頃の話だ。『運命』だった。「高校を卒業してから直ぐの発情期には番いたいね」なんて話をしていた相手であった。
 年齢なども考慮され…せめて高校を卒業して就職し、収入が安定してから番うようにと、自分の両親や相手の両親に口を酸っぱくして言われていたので、高校を卒業して番おうと約束していた。

 その日が待ち遠しかった。しかし、そんな日は永遠に訪れない事となってしまった…。

 「お土産は何が良い?」
 「それは任せるよ。あぁ、俺が一緒に行けない事が悔やまれる…。くれぐれも・・・・・気をつけてな。」
 「結婚したら沢山、いろんな場所に行こうね。番うまでの我慢だよ。」
 「あぁ、そうだな。でも…心配だな…。」
 「もう、相変わらず心配性ねぇ。大丈夫だよ。ママやパパと一緒だし!ちゃんと大志たいしに連絡もするから!!」
 「分かった…。」
 「お土産、期待しててね!!それじゃあ、搭乗時間が来ちゃったから一度、切るね。あっちに着いたらまた連絡するから!」

 という会話が最期となった。彼女は家族旅行の為に飛行機に乗ったのだが…その飛行機が墜落してしまった。
 搭乗者全員が犠牲になるという悲惨な事故だった。彼女だけでなく義両親になるはずだった彼らも例外なく逝ってしまった。

 廃人のようになった俺は両親に連れられてアルファ専門の精神科に通院する事となった。

 酷い時には閉鎖病棟で入院する事にもなったりした。

 情緒不安定で暴れたりもしたが、その度に鎮静剤を投薬され終始、意識が混濁していたらしい。入退院を繰り返した。

 その後、他にもいろいろとあったが…、周囲の支えもあって恋人を亡くしてから4年後の夏…
 少しだけ状態の落ち着いた俺は周りからのすすめもあり、高卒認定試験を受ける事になった。

 番うはずだった相手を亡くした俺は高校に通う事が困難だと判断した両親により、高校を中退させられていたのだ…。

 コレを機にあの日に止まってしまっていた俺の時間がゆっくりではあるが再び動き始めた。

 高卒認定試験に無事合格してから、さらに1年が経った頃…
 神無月かんなづき 弘樹ひろきが代表をしている会社への就職が決まった。
 最初は地元にある支社に居て頑張っていたが、業績が評価されたのか…
 本社への異動の話があがり、両親からの強い・・すすめもあり、俺は住み慣れた実家を離れ、馴染んでいた生活を手放し、知らぬ土地で1人暮らしをする事になった。

 両親は引っ越しの手伝いをしてくれたが、荷物整理をした直後に帰ってしまい連絡のみの関係になっていた…。

 何となく思うところはあったものの、気に留める暇もなく、強制的に今、自分が置かれている状況に適応する必要があった。
 いきなり変わった環境に徐々に慣れていくー…なんてできるはずもなく、心に余裕を持つ暇なんてなく、言われるがままに仕事をした。

 俺は何年経っても埋まる気配のないポッカリと空いた心の中をナニかでムリヤリにでも埋めようと、少しでも仕事量や内容に慣れてしまおうと我武者羅がむしゃらに頑張った…

 支社に居た時とは違い、仕事量も多くなり、仕事の質も支社にて任されていた内容より責任のある重い物へと変わっていた。

 慣れない環境にストレスも感じていた…その矢先に…

 俺は生まれてから何度目かの入院をする事となる…。過労が祟り倒れて救急車で運ばれた。
 
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