やらかし夫夫（ふうふ）、番（つがい）になる

やらかしたアルファのお話し…

03

　
　療養中も２人は頻繁に様子を見に来てくれていた。結翔ゆいとに至っては夫婦揃って来てくれたりもした。
　ちなみに支社から本社へと移動してきていた俺は会社が手配してくれた部屋を借りている。

　実家は県外にある為、両親は頻繁にこちらへ来る事はない…。

　何となく自分が厄介者扱いされているんじゃないのかと思わなくもなかったが…

　今まで迷惑をかけてしまっている手前…何も言う事はできないし、気が引けた…。
　そう…『運命』と引き裂かれたあの日から両親と俺の間には見えない壁ができ始めていたのだ。

　その証拠にこちらへの干渉は一切なく…
　両親からの連絡は皆無。弟からの自慢メールは来る。付け足すと弟もまたアルファとして生まれた。

　一度、使い物にならなくなった俺とは違うー…という自負から俺を見下しているという事がよく分かる内容だった。

　藤本さんと結翔ゆいとの２人からは「気にするな」と言われている。

　弟アレはまだあの・・絶望を知らない…。

　俺は一度、この世の地獄を見たような気さえする…。弟の心ない言葉など可愛いものである。
　心配してくれている２人には申し訳ないが…、弟の声は街中の雑踏程度にしか聞こえていない。

　両親もあの・・絶望を知らない…。故に『運命』を失ったアルファの絶望を理解する事はできないだろう…。

　まぁ…あの・・絶望を理解しないにこした事はないのだが…。

　なにはともあれ、俺は実家の意向で没交渉となった。その後、俺は子宝に恵まれなかったというか…生物学上、授かる事が不可能である夫夫ふうふの家へ養子として出た。『神門みかど』という家である。

　俺は『神門みかど 大志たいし』となった。養子へ出た父方の方と特別養子縁組をした。

　両親は喜んで俺を養子へと出した…。

　ちなみに、夫夫ふうふとは言っても結婚をしているわけではない。
　どちらも男性のベータである。それも、結構、『上層』に位置するベータであり、『鬼』と呼ばれる存在との繋がりもある。

　由緒正しい家柄の『神門みかど家』。その長男であり、『神門みかど家』を築いた創設者である。
　『鬼』により『神門みかど』の姓を賜ったくらいに『鬼』と親密な関係にあるベータであった事が分かる。

　俺はその男の籍に入った。

　生みの親である人たちとは今後一切、関わらないー…というのを条件に養子になったし…あちらもコチラへの干渉は一切しない、関わらないというのを条件に、生みの親が提示してきた金を払っているらしい…。

　現場には『鬼』が同席していた。
　ちなみにそのお金の受け渡しの時に俺は席を外していたので詳細は知らされていなかった。

　その時の音声も映像もあり、なんならちゃんとした書類も制作してある。親しい『鬼』が保管しているようだ。

　元両親となった彼らは目の上のたんこぶが居なくなったのか嬉しかったのか…自分たちの言い値が突如として懐に入ったのが嬉しかったのか…上機嫌で帰って行ったのは印象に残っている。
　
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