(3章完結)今なら素直に気持ちを伝えられるのに

在原正太朗

文字の大きさ
9 / 81
エピソード.1 funny

1-9 作戦実行

しおりを挟む
 蕪木が図書室を出ていってから約一時間後、蕪木と仲直り? するための作戦が決行された。
 作戦はとてもシンプルで図書準備室に蕪木を呼び出すというもの。土居原先生の名義で呼び出せば蕪木も来ずにはいられないだろうし、万が一にも他の生徒が来る心配がないので安心して話せるというのだ。
 もちろん、蕪木がこの作戦を察知していないことが大前提となる。学年主席の蕪木さんのこと、少し頭を回せばバレることも考えられる。
 心配から胸の鼓動が加速していく。しかし、その心配は杞憂きゆうに終わったようだ。

「どうやら、来られましたね」

 自分と向かい合って座っている土居原先生が微笑む。
 律儀にしっかりとドアを三回ノックし、蕪木が準備室の中へと入ってきたのだ。

「土居原先生、用事があると聞いて伺ったのですが……なぜあなたが居るのかしら、本多梅?」
「よ。元気にしているかね、蕪木くん」

 てのひらを見せできるだけ明るく挨拶をしたつもりだったのだが、お気に召さなかったのか、蕪木の眉が吊り上がる。しかし、土居原先生がいる手前カッターを出すわけにもいかない。更には呼び出された以上出ていくわけにもいかず、蕪木は奥歯を噛むばかり。
 ちょっとスカッとしましたね。はい。

「……騙したの?」
「いや、そうじゃなくてだな」
「私が勝手にお節介をやかせていただいたんです」
「土居原先生」

 自分のことを睨みつけ明確に敵意を示した蕪木。しかし、土居原先生の姿を見つけ敵意を下げる。その蕪木に土居原先生は微笑み挨拶をすると、呼び出した目的を話し出した。

「理由は分かりませんが、なにやらけんかをされていたようなので、ちゃんと話す機会が作れたら。と思いまして」
「……心配りは感謝しますが、必要はありません。こんな奴の話は聞く価値もありませんから」
「あらあら。そんなこと言ってはいけませんよ。それに蕪木さんだって、本当は本多さんと気まずくはなりたくないでしょう?」
「…………」

 蕪木は否定するようなそぶりを見せない。それが自分には意外だった。
 たまたま自分の仕事に興味を示したため関わることになっただけで、自分のことは興味がないものとばかり思っていたからだ。
 意外な状況に戸惑う自分に対し、話のペースを握った土居原先生は続けて蕪木に質問をする。

「蕪木さんは、ちゃんと本多さんのお話を聞いたんですか?」
「いえ……ですが、あまりにも話が現実離れしているものですから」
「あらあら。それはもったいなくはないですか」
「もったいない?」
「はい。だって、聞いてみるだけならタダではありませんか」
「タダ……」

 土居原先生のまさかの発言に戸惑っているのだろう、蕪木はそう言って固まってしまう。
 かく言う自分も土居原先生の言葉に戸惑いを隠せないわけだが、この流れなら話すことができるだろう。

「蕪木、土居原先生の言葉を借りて言えば、聞くだけは確かにタダだ。だから、もう一度おれに説明させてくれないか?」
「……ここまで土居原先生にさせておいて聞く気がないと言うのは、あまりにも不義理ね」

 納得はしていないようで蕪木の顔は相変わらず不機嫌さを隠していない。しかし、聞く耳は持ってくれたようで自分の提案を受け入れてくれた。

「ふふふ。では、こちらの椅子へどうぞ。立ち話を続けては疲れますからね」

 自らの作戦が上手くいったことが嬉しかったのか、土居原先生は今日一番の笑顔を見せ、蕪木を自らの隣の椅子へと誘う。
 これで完全に蕪木は逃げられなくなったわけだが。 ……自分がまったく刃が立たなかった蕪木を、こうも簡単に操ってしまうとは。

「…………」

 もしかすると、自分はかなりの策士に助言を受けたのではないだろうか?
 そう思うと急に恐ろしいものに思えてきたが、今はただその作戦に乗っかることにした。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

黒に染まった華を摘む

馬場 蓮実
青春
夏の終わりに転校してきたのは、忘れられない初恋の相手だった——。 高須明希は、人生で“二番目”に好きになった相手——河西栞に密かに想いを寄せている。 「夏休み明けの初日。この席替えで、彼女との距離を縮めたい。話すきっかけがほしい——」 そんな願いを胸に登校したその朝、クラスに一人の転校生がやってくる。 彼女の名は、立石麻美。 昔の面影を残しながらも、まるで別人のような気配をまとう彼女は——明希にとって、忘れられない“初恋の人”だった。 この再会が、静かだった日常に波紋を広げていく。 その日の放課後。 明希は、"性の衝動"に溺れる自身の姿を、麻美に見られてしまう——。 塞がっていた何かが、ゆっくりと崩れはじめる。 そして鬱屈した青春は、想像もしていなかった熱と痛みを帯びて動き出す。 すべてに触れたとき、 明希は何を守り、何を選ぶのか。 光と影が交錯する、“遅れてきた”ひと夏の物語。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

処理中です...