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波打ち際の幽かな戀 ー今なら素直に気持ちを伝えられるのに外伝ー
外伝ー12 神様も知らない恋のお話
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「万次郎はこの歌がどこで詠まれたのか、知っているかしら?」
「えっ。その、竜田川って言っているくらいだから、竜田川に行った時じゃないのかな」
「ふふふ。純粋ね」
「……馬鹿にしている?」
「そんなことないわ。実際に足を運んで呼ばれた歌だってあるのだから、間違いではないわ。だけど、この歌は少し別の事情があるの」
ゆりさんはピンと立てた人差し指を振って見せた。
もったいぶっているのだろう。ここは冷静に、と頭では考えても視線は正直で答えを求めて、ゆりさんの奇麗な顔に真っ直ぐ注いでしまっていた。
「さて、これは古典のお勉強でもあるのだけれど、業平様の恋人だったと言われる人で有名な方は分かる?」
「確か、藤原高子だよね」
「そう。やっぱり万次郎は賢いのね」
そう言うとゆりさんは微笑みながらぼくの頭を撫でる真似をする。
どこかくすぐったくて僕はにかみつつも、真似だけで触れはくれないゆりさんの手を僕はもどかしく見上げていた。
「その高子様の部屋にはね、紅く染まった落ち葉が流れる竜田川を描いた屏風があったと言われているの」
「へー、屏風かあ……え。それって」
「そう。この和歌はね、業平様が高子様の部屋で屏風を見ながら高子様に向けて読まれた歌だと言われているの」
小学生が親友に世界の秘密を打ち明けるかのように、わくわくした表情で言い切ったゆりさん。対して僕は、その言葉の意味に驚き目を丸くさせていた。
現代だって平安時代だって恋人の部屋に行く理由にさほど変わりはないのだろう。
そんな状況で詠まれた歌を好きだってゆりさんに行ってしまった僕。
思春期真っ盛りの僕には恥ずかしい以外の感情は出てこず、顔を赤らめるばかりだった。
対してゆりさんはと言えば、気にしていないのか、それともこの手の話に慣れているのか平然と続きの説明を始めた。
「神代も聞かない。それはつまり神様も知らないということ。竜田川は業平様の心。そして唐紅は業平様が高子様に抱いている感情。そして、水くくるとはがその想いの大きさを表しているの」
「つまり神様も知らないくらい、私はその……あなたを愛していますってことなのかな」
愛している。何て中学生の僕にはどうしても気恥ずかしく、少し口ごもってしまったけれど、ゆりさんは笑いながら頷いて僕の言葉を肯定してくれた。
「あくまでも私が調べた上での個人的な解釈だから、人によっては違うって言われるかもしれないけれどね。でも、物語を読む人がそれぞれ違う感想を持つように、和歌の捉え方だってそれぞれ違って良いと思うの」
「奥が深いんだね、和歌って」
「ええ。とても」
まだまだ大木の枝先。数百枚ある葉っぱの中のたった一枚くらいしか僕は理解が出来ていないのだと思う。
だけど、それでも自分の好きなことを知ってもらえたことに大きな満足を得られたのだろう、ゆりさんは僕に今日一番の笑顔を見せてくれた。
「えっ。その、竜田川って言っているくらいだから、竜田川に行った時じゃないのかな」
「ふふふ。純粋ね」
「……馬鹿にしている?」
「そんなことないわ。実際に足を運んで呼ばれた歌だってあるのだから、間違いではないわ。だけど、この歌は少し別の事情があるの」
ゆりさんはピンと立てた人差し指を振って見せた。
もったいぶっているのだろう。ここは冷静に、と頭では考えても視線は正直で答えを求めて、ゆりさんの奇麗な顔に真っ直ぐ注いでしまっていた。
「さて、これは古典のお勉強でもあるのだけれど、業平様の恋人だったと言われる人で有名な方は分かる?」
「確か、藤原高子だよね」
「そう。やっぱり万次郎は賢いのね」
そう言うとゆりさんは微笑みながらぼくの頭を撫でる真似をする。
どこかくすぐったくて僕はにかみつつも、真似だけで触れはくれないゆりさんの手を僕はもどかしく見上げていた。
「その高子様の部屋にはね、紅く染まった落ち葉が流れる竜田川を描いた屏風があったと言われているの」
「へー、屏風かあ……え。それって」
「そう。この和歌はね、業平様が高子様の部屋で屏風を見ながら高子様に向けて読まれた歌だと言われているの」
小学生が親友に世界の秘密を打ち明けるかのように、わくわくした表情で言い切ったゆりさん。対して僕は、その言葉の意味に驚き目を丸くさせていた。
現代だって平安時代だって恋人の部屋に行く理由にさほど変わりはないのだろう。
そんな状況で詠まれた歌を好きだってゆりさんに行ってしまった僕。
思春期真っ盛りの僕には恥ずかしい以外の感情は出てこず、顔を赤らめるばかりだった。
対してゆりさんはと言えば、気にしていないのか、それともこの手の話に慣れているのか平然と続きの説明を始めた。
「神代も聞かない。それはつまり神様も知らないということ。竜田川は業平様の心。そして唐紅は業平様が高子様に抱いている感情。そして、水くくるとはがその想いの大きさを表しているの」
「つまり神様も知らないくらい、私はその……あなたを愛していますってことなのかな」
愛している。何て中学生の僕にはどうしても気恥ずかしく、少し口ごもってしまったけれど、ゆりさんは笑いながら頷いて僕の言葉を肯定してくれた。
「あくまでも私が調べた上での個人的な解釈だから、人によっては違うって言われるかもしれないけれどね。でも、物語を読む人がそれぞれ違う感想を持つように、和歌の捉え方だってそれぞれ違って良いと思うの」
「奥が深いんだね、和歌って」
「ええ。とても」
まだまだ大木の枝先。数百枚ある葉っぱの中のたった一枚くらいしか僕は理解が出来ていないのだと思う。
だけど、それでも自分の好きなことを知ってもらえたことに大きな満足を得られたのだろう、ゆりさんは僕に今日一番の笑顔を見せてくれた。
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