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波打ち際の幽かな戀 ー今なら素直に気持ちを伝えられるのに外伝ー
外伝ー13 君に歌を送る日
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魅力的なゆりさんの笑顔。対して僕の顔はと言えば、夕日を隠す雲のようだった。
「すごいよね。言葉はずっと今の方が多いはずなのに、和歌で想いを伝えていた昔の方がずっと気持ちが伝えられていたなんて」
「そうかしら?」
「うん、そうだよ。今の方がずっと言葉に出来ないことが多いかな」
言葉が出辛い環境か、それとも適切な言葉が思いつかない自分の頭か、どちらが悪いのかは分からないけれど、壊れたチャックのように口が開かない。
それがいつの間にか当たり前になっていて、それが嫌で、僕はここへ来たのだ。
「っ!」
いつの間にか僕の眼頭に熱いものが溜まっていた。
僕は慌てて拭き取り取り繕うけれど、ゆりさんにバレてしまっていたのか、下がった眉尻が僕の方を向いていた。
「その、あまり気分の良い話ではなかったかしら?」
「ち、違うんだ! ……ただ、羨ましいって思っただけで」
涙の理由にしては少し違和感のある答えになってしまったけれど、羨ましいという思いは本当だった。
心に残る言葉はいつだって言えないまま。
言えたなら、息を吸うことだって簡単に出来るはずなんだ。
「それなら、もし万次郎が誰かに想いを伝えたい時、上手く言葉にできなかったら、和歌を送ると良いわ」
溢れる涙を必死に手の平で受け止める僕の頬に、ゆりさんは触れる間際で手を止めた。その触れようとした手をまるでなかったかのように背中に隠し、照れたように笑い僕に提案をした。
「和歌を?」
「ええ。和歌は比喩を用いている分、遠回りに伝えられていると思うかもしれないけれど、たった三十一文字の中に、会いたいも寂しいも。ましてや愛しているも全てが詰まっているのよ。そんな恋文(らぶれたー)は他にないわ。だから、和歌を送ってあげてね」
告白したい相手なんていないし、何より想定していた想いとはかけ離れていた。だから、受け取る僕には困惑が広がっているのだけれど、こうも無邪気に念押しをされてしまっては、その気になってしまうもの。
だけど、
「僕は上手く和歌を作る自信はないかな」
言葉選びのセンスだけは、勉強の才でどうにか出来るものではないと思う。だから、どうしても和歌を作る自信が浮かびあがってこない。
そんなためらいがち僕に対し、ゆりさんは溢れる自信を分け与えるように言った。
「大丈夫よ。先人たちが残してくれた和歌があるわ。その和歌をね、万次郎なりにアレンジすれば良いの」
「アレンジって、しても良いのかな?」
「もちろんよ。大切なのは、万次郎が伝えたい想いがその歌に込められたかどうか」
「僕の気持ち」
「ふふふ。万次郎がどんな歌を作るのか、楽しみだわ」
まるで僕がいつか和歌を作ることが決まっているかのように言う、ゆりさん。
そんなゆりさんは分かっているのだろうか。
僕の作った和歌を君が読む時。それは僕が誰かに告白した時だってことを。
そして、その歌をゆりさんが聞いているって言うことは……。
「ん? どうしたの、万次郎」
「何でもないよ。ちょっとだけ考え事してただけ」
ゆりさんの横顔を見つめていたことがばれてしまい、僕は慌てて訂正に入った。
「やっぱり、和歌を作ることはないかもって、考えてた」
「ええ! それは酷いわ、万次郎」
僕のいけずな返答に、ゆりさんは初めて目尻を下げて僕を見つめた。
初めて見られた表情に内心喜びつつも、ゆりさんに機嫌を戻してもらおうと僕は、「冗談だよ」と言って笑ってみせた。
……でもね、ゆりさん。もしゆりさんが言うように、僕が和歌を送る日が来たのなら。
その時は君に送りたいって、ちょっとだけ考えたんだ。
「すごいよね。言葉はずっと今の方が多いはずなのに、和歌で想いを伝えていた昔の方がずっと気持ちが伝えられていたなんて」
「そうかしら?」
「うん、そうだよ。今の方がずっと言葉に出来ないことが多いかな」
言葉が出辛い環境か、それとも適切な言葉が思いつかない自分の頭か、どちらが悪いのかは分からないけれど、壊れたチャックのように口が開かない。
それがいつの間にか当たり前になっていて、それが嫌で、僕はここへ来たのだ。
「っ!」
いつの間にか僕の眼頭に熱いものが溜まっていた。
僕は慌てて拭き取り取り繕うけれど、ゆりさんにバレてしまっていたのか、下がった眉尻が僕の方を向いていた。
「その、あまり気分の良い話ではなかったかしら?」
「ち、違うんだ! ……ただ、羨ましいって思っただけで」
涙の理由にしては少し違和感のある答えになってしまったけれど、羨ましいという思いは本当だった。
心に残る言葉はいつだって言えないまま。
言えたなら、息を吸うことだって簡単に出来るはずなんだ。
「それなら、もし万次郎が誰かに想いを伝えたい時、上手く言葉にできなかったら、和歌を送ると良いわ」
溢れる涙を必死に手の平で受け止める僕の頬に、ゆりさんは触れる間際で手を止めた。その触れようとした手をまるでなかったかのように背中に隠し、照れたように笑い僕に提案をした。
「和歌を?」
「ええ。和歌は比喩を用いている分、遠回りに伝えられていると思うかもしれないけれど、たった三十一文字の中に、会いたいも寂しいも。ましてや愛しているも全てが詰まっているのよ。そんな恋文(らぶれたー)は他にないわ。だから、和歌を送ってあげてね」
告白したい相手なんていないし、何より想定していた想いとはかけ離れていた。だから、受け取る僕には困惑が広がっているのだけれど、こうも無邪気に念押しをされてしまっては、その気になってしまうもの。
だけど、
「僕は上手く和歌を作る自信はないかな」
言葉選びのセンスだけは、勉強の才でどうにか出来るものではないと思う。だから、どうしても和歌を作る自信が浮かびあがってこない。
そんなためらいがち僕に対し、ゆりさんは溢れる自信を分け与えるように言った。
「大丈夫よ。先人たちが残してくれた和歌があるわ。その和歌をね、万次郎なりにアレンジすれば良いの」
「アレンジって、しても良いのかな?」
「もちろんよ。大切なのは、万次郎が伝えたい想いがその歌に込められたかどうか」
「僕の気持ち」
「ふふふ。万次郎がどんな歌を作るのか、楽しみだわ」
まるで僕がいつか和歌を作ることが決まっているかのように言う、ゆりさん。
そんなゆりさんは分かっているのだろうか。
僕の作った和歌を君が読む時。それは僕が誰かに告白した時だってことを。
そして、その歌をゆりさんが聞いているって言うことは……。
「ん? どうしたの、万次郎」
「何でもないよ。ちょっとだけ考え事してただけ」
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「やっぱり、和歌を作ることはないかもって、考えてた」
「ええ! それは酷いわ、万次郎」
僕のいけずな返答に、ゆりさんは初めて目尻を下げて僕を見つめた。
初めて見られた表情に内心喜びつつも、ゆりさんに機嫌を戻してもらおうと僕は、「冗談だよ」と言って笑ってみせた。
……でもね、ゆりさん。もしゆりさんが言うように、僕が和歌を送る日が来たのなら。
その時は君に送りたいって、ちょっとだけ考えたんだ。
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こんにちは。またはこんばんは。在原です。
再びの感想、ありがとうございます。とても嬉しいです。
土居原先生を好きですか! 嬉しいです。めっちゃニヤニヤします。
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