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2.私の前世

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東京丸の内
某有名メーカー勤務
ブランドスーツに身を包み33歳の大谷香織は今日も眉間に皺を寄せてとてつもない勢いでパソコンをカチカチカチカチ

「か・・課長、この資料の確認お願いします・・・」
ビクビクしている部下から書類を受け取り一瞬で目を通し
「まず提出締め切り1日オーバーですね。そして、5、8ページの数字が違うのと、14ページはロジックが成り立ってません。見直しを。2時間後にまた再提出でお願いします。」
怒りも見せず淡々と答えた。

ひそひそ・・・
「また大谷課長厳しいなー。」「仕事はすごいんだけど、サイボーグみたいだよなぁ」「独身だよね?だろうけど」「会社と結婚してるってかんじだよねー」

香織心の声
『くっそー!聞こえてんのよー!仕事に私情を持ち込まないのは当然でしょうが!』

私は、幼い時に両親が離婚し、母親に育てられた。母は学もなく、パートを複数掛け持ちしながら私を大変苦労して育ててくれた。
母の口癖は「男に頼らず生きることができる、強い女性になりなさい」だった。
その影響もあって、がむしゃらに勉強して一流企業に入社した。

母を楽にさせたいという思いも強かった。
そのおかげもあって、若くして管理職になって会社でも認められて、母からもとても喜んでくれた。

結婚?恋愛?そんなもの見向きもせず突き進んでいた。
そんな矢先に、母が癌で亡くなった。
私は生きる目的を失ったような気分だった。
趣味もなく友達もほぼいない、彼氏ももってのほかの状態で、本当に一人で立っていかなくてはいけなくなった。
より一層仕事人間になって、あだ名はサイボーグだ。。。。


あの日は雨だった。ミスの多い部下のケアに付き合って帰りが遅くなって、コンビニでビールとつまみを買って帰宅中。
濡れそぼった猫が赤信号の横断歩道に飛び出した。
「危ない!」
トラックが向かってきているのが見えて、咄嗟に私は飛び出した。トラックが来るまでに猫を抱きかかえ戻ってが可能な距離に思えたが、疲れていたのか読み間違えて、そのまま猫は救えたが自分は死んでしまったようだ。

なんかあっけないなぁ。。。何のために生きてたんだろう私。。

母が最後旅立つ時に私にかけた言葉が頭をよぎる
「香織、あなたは本当に立派な娘。だけど、大切な人と大切な時間を過ごすという幸せをもっと教えてあげたかった。。。ごめんね。香織、自分の人生を生きて。」
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