生きる世界と冒険譚

山田浩輔

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真偽のスライム

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 「そんじゃ俺とヒューズで偵察か」
 ウィリアムは武器を持つとヒューズと共に奥に進んでいく。
 歩いていくが見つかるのはアンデットのみ、交代制でゆっくりと進んでいくが古代ダンジョンというには拍子抜けであった。
 「まあ古いってだけでまあなんとかなるくらいだったな~」
 ウィリアムは少し気が抜け話す。
 「意外とそこまで大変じゃないですね、トラップに気をつけること以外はそこまではないですね」
 今のところ苦戦はしていない、アンデットの知能が低いこともあり善戦し続けている。
 
 「そういえばでっかい扉が奥にあったんだけどあそこが宝物庫じゃないかしら?」
 「じゃあどうせだしみんなで行くか!」
 そうして四人で大扉へと向かう。

 「うわ~真っ暗!」
 「油断はするな、何があるかわかったもんじゃない」
 ヒューズは耳を立てて警戒をしつつゆっくり扉を開ける。
 扉の奥は真っ暗であったが壁にある松明が手前から奥に一気に灯り部屋が明るくなる、そして地面にはウヨウヨと動くスライムが大量にいた。
 「え...スライム?」
 最弱モンスターであるスライムが奥にいたことに驚きながらもナイフを取り出し1匹ずつ中の核を刺して倒す。
 さっきまでより明らかに弱く、少し驚きもする。
 「なんか、本当に簡単だったな」
 とりあえず無心で核を潰して回っていく。
 「まあ危険なことがなくてよかったじゃないですか」
 全員が策を練らずウィリアムのナイフを使って潰していく。
 「これってもしかして奥に宝とかも大した物じゃないんじゃない?」
 「さあな、まあここまで弱いとあまり期待は....」
 ヒューズはあるものを目にして叫ぶ
 「フォルト! 避けろ!」
 急に言われ避けるより先にヒューズの方を見てしまう。
 フォルトの後ろにいたのはヒューズと同じ体格、同じ武器を再現した、スライムであった。
 「フォルト、かがめ!」
 ウィリアムが叫ぶと同時にナイフを飛ばしヒューズの形をしたスライムの首元に当たり一瞬だが動きが止まる、フォルトが急いで離れ武器を取り出す。
 「おい、スライムもどんどん人型になってくぞ!?」
 周りにスライムは縦に伸びだんだんとなんとなくウィリアムやフェイルやフォルトなどの見た目に近づいていく。
 「なるほどね、さしずめコピースライムってところかしら?」
 人形となったスライムは自らの体を硬質化させ同じ武器を作るとこちらに襲ってくる。
 拙い剣撃で、油断しなければ当たらないがヒューズのスライムだけは受け止めることができない。
 「ヒューズはすまんが出来るだけヒューズ型のやつを相手してくれ!」
 「わかった...」
 ヒューズはこちらに走りさっきまで相手にしていたヒューズ型を相手してもらう。
 「フォルトさん! 電撃でなんとかできる!?」
 「わかりました!、少し離れてください!」
 全員がフォルトから離れるとフォルトは地面に手をつく。
 「放電!!」
 フェイルの髪からバチバチと音が鳴り白い稲妻が現れる。
 フォルトの周りにいたスライムは一気に電が全身に廻って
 (しかしおかしい....フェイル型は魔法を使わないしフォルト型は電撃なんか撃たない...だったら全員ヒューズだった方が....)
 そんなことを考えながらも1匹1匹ずつ倒していく、スライムの核は基本心臓部にある、つまりアンデットと大して変わらないのだ。

 そうして心臓部分にある核を刺して倒して行く。
 「ウィリアム! 後ろ!」
 フェイルの声にウィリアムは後ろに盾を構える、しかし後ろには誰もいなかった。
 「おい! 誰もいねえじゃ——」
 左腕をナイフで斬られ痛みが走る。 
 「痛ってえええええ!!」
 「ちょっと.....それ.....」
 フェイルが恐怖を露わにした。
 ウィリアムが前を向くとそこにはスライムの原型など残ってない全く同じ見た目のフェイルであった。

 周りを見るとほかのスライムもどんどん同じ姿になっていった。
 「フォルト! 武器をしまえ!」
 「え!? なぜこのタイミングで!?」
 「違うフォルト! それは敵だ!」
 「フェイル! 俺が時間を稼ぐから爆裂系の魔法を!」
 「ウィリアム! ナイフを貸せ!」
 四人の声が入り混じり誰が誰なのかわからない、戦線が維持できず段々と目が回る。
 「ファイアボルト!」
 フェイル?がウィリアムに魔法を放ちマントの端が焦げる
 「おい! 俺は本物だぞ!」
 「もう誰が誰だかわからないじゃない!」
 今喋ってる相手が本物かまるでわからない、このままではお互いで殺し合い全滅なんてのもあり得る、誰を攻撃すればいいのか、指示もまともに行き届かない、本当にこの状況はまずい。
 「みんな! 自分と同じ姿のやつとだけ戦え!」
 言っては見たものの敵はそんなに優しくない、理想の戦いなどできず結局違うやつと戦い、斬りつけることができない。
 
 (一体どうすれば....このままでは絶対に負ける....これはいけるか?)
 登録証に指を当てると四人の胸ポケットにある登録証が赤く光りだす。
 「この光を頼りにしろ! 光ってない奴が敵だ!!」 
 そう言ってみるが声が届いているかわからない、指示がまともにできないことの辛さをウィリアムは実感しつつ敵を斬りつけていく。
 

 そうして戦いを続けて6時間ほどが経過した。
 「ようやく.....終わった........」
 全員が疲弊し全身の至る所から血が出て激痛の中戦闘を繰り広げ続け、ウィリアム達は限界に達しようとしていた。
 「全員無事か?」
 ヒューズが疲れた声で皆に無事かどうかを確認する。
 「まあ....大丈夫.....です....」
 「私.....肋骨が多分折れた....」
 「俺は右腕が動かん.....きっつ....」
 「とりあえず....包帯とポーションつけとけ」
 ヒューズに渡され傷口にポーションを掛けると包帯を上に巻いて痛みを和らげる。
 「よっこいしょっと...」
 ウィリアムは起き上がると少しきつそうにして起きあがろうとするフェイルに手を貸す。
 「あ....ごめん....」
 若干放心状態になりながらもフェイルはウィリアムの手を取り立ち上がる。
 「そんじゃ開けてくれ」
 ウィリアムが猫背になりながらヒューズに言うとヒューズは扉をゆっくり開ける。
 
  「おお!」
 中には金貨袋と金で装飾をされた食器や宝石などがたくさんあった。
 「これが宝物庫...初めて見ました...」
 フォルトは開いた口が塞がらずただ周りの光景に驚いていた。
 ウィリアムは金貨を手に掬っては上に投げて遊んでいた。
 ヒューズは耳を立て敵がいないのを確認しつつゆっくり進み、フェイルは大きな宝石に見惚れていた。
 「すげえなこれ! 俺たち金持ちなるんじゃね!?」
 ウィリアムは興奮して金貨の山の上にダイブする。 
 「あ、ちょっと待ってすげえ痛い......」
 金貨が服の中に入り、服を裏返して金貨を出すと奥に駆け足で進む。
 
 そして最奥に見つけたのは、少しボロボロな小さい宝箱であった。
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