生きる世界と冒険譚

山田浩輔

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少年と戦い

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 彼女に会ったのは15年ほど前だった。
 寒い中、彼女は俺を救ってくれた。
 「あら、いい感じの子がいるじゃないの?」
 俺を救ったのはパトリシアだった、奴隷商人に運ばれる最中、奴隷目当てだったのだろうか、馬車を襲い主従媒体を一瞬で壊して殺した。
 
 俺は顔を上げると手を引き上げて言った。
 「私と一緒に来ない?」
 その言葉は俺にとって自由を手に入れたような、そんな気分になった。
 「う、うん!」
 「君の名前は?」
 「僕の名前は...ハイド!」
 「よろしくね? ハイドくん」
 
 戦闘訓練をさせられ始めて、いや...ずっと前から気づいてはいたがあくまで俺がジート人だから拾ったのだろう、しかしそれでもパトリシアに褒めてもらった時は嬉しかった、だから努力をした。
 パトリシアの目は常に怪しげだった、俺にとっては魅力的に見えたんだ、しかし俺が襲うのを拒むのを見ると俺を護衛として使うようになった、冒険者や傭兵などを殺し、褒めてもらった、パトリシアが21歳の時に彼女は頭領の座を与えられた、俺はなんだかとても誇らしくて、けれど少し淋しくもあった。
 俺は負けるわけにはいかない、例え俺がそうなる可能性があったとしても、俺ができる恩返しをしたい、そう思った。

____________________________________________________________

 「ロイ! 弓を構えたまま待機してろ! 俺が先制を取るからお前は隙をつけ!」
 サムとレオンが走り男の腹部に斧を振る。
 ハイドはそれに対して雷鎖剣の鎖で緩和しようとするが衝撃を吸収できず腹部に切り傷はつかなかったが重みがもろに伝わる。 

 「ぐ....」
 ずっと両手に負荷を与えられながら防戦一方では体力が持たない、ゆっくりと体力を消費し続け鉛のような重みもハイドにのしかかる。
 
 「サム!」
 掛け声に合わせてサムは右腕に剣を刺す。
 守りきれずにハイドの腕に剣が突き刺さるが歯で剣を抜くとダニエルの首元に刃を突きつける。
 サムとレオンの動きが止まりロイは弓を下ろす。
 何も言われてはいないが脅しであるのは理解できる、ハイドはゆっくりと後ろに下がる。
 そして3歩ほど後ろに歩いた時だった。
 ダニエルが目を見開き叫ぶ。
 「マーカス! その黒いのを引っ張れ!!」
 「うおらあ!」
 入り口からマーカスが引っ張るのはフォルトの結ばれた長い髪であった。
 ダニエルは身体を強く揺すりハイドが体勢を崩し、それと同時に剣がダニエルの首を貫通する。
 後ろに尻餅をついた瞬間にレオンが頭に目掛けて斧を振り下ろし、絶命させた。
 「あ.......が..........あ.........」
 

 

 もしも神がいるのならば、パトリシアだけは生き延びさせてほしい
 
 ハイドは既に叶わぬ願いを残しながら逝った。

 

 「ダニエル....すまない......」
 レオンはダニエルの亡骸から剣を引き抜くと、ダニエルの死体を担ぐ
 「まだフォルトはなんとかなるかもしれない! すぐに救護に回せ!」
 「「わかった!」」
 ロイとサムはフォルトを外に運ぶ。
 レオンはハイドの死体を蹴り飛ばすと、言った。
 「地獄に堕ちろ」

 

____________________________________________________________

 「フォルト! 大丈夫!? 起きて!」
 フェイルはフォルトを揺するが起きない、結衣がフェイルを止めながらなんとか諭すが、冷静にはならない。
 全身に包帯が巻かれ、意識も戻らない、全身打撲、骨もいくつか折れているだろう、重症である。

 「俺の心配はないのかねえ...」
 掠れた声でウィリアムはフェイルに向かっていうとフェイルはため息をつきながらも
 「そうね...アンタも重症だしね...頑張ったわね」
 と軽く労う。
 「お、おう」
 軽くではあったがフェイルが労ったことに一瞬戸惑いを覚える。
 
 「すまん、俺はちょっと用があるからちょっと抜ける」
 そう言ってヒューズはフランクの元へ向かう。

 「フランク...」
 ヒューズがフランクに話しかけるとニカニカとした顔で返す。
 「なんだい? 獣人のお方!」
 「ショールが死んだ」
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