生きる世界と冒険譚

空間の精霊

　「ウィリアム、人が死ぬのは仕方がないことだ、被害はかなり少なくできたと思う、だから気にするなとは言わないが...あまり気を負うなよ」
　ヒューズはウィリアムに肩を貸しながら声をかけるがウィリアムは力無く返事をすることしかできない、サムもまた親友であったロイが遺体すら残らず消えてしまい消沈している、そんな冷たい空気がある中、ウィリアムは口を開く。
　
　「そういえば...マークさん...俺はあなたに話さないといけないことがあるんだ」
　「どうした？」
　「俺が旅してるのは、とある神を布教するためなんだ」
　「そうなのか？　すげえな」
　ウィリアムの言葉にマークは驚きながら答える。
　「その神の名はミメーシスって言ってな、模倣を得意とする神なんだ...」
　そう言った瞬間にマークは手を顎にやる。
　「ほお....じゃあつまりお前は俺の敵ってわけだな？」
　「あんた何言ってんだ...こんな時に冗談は...」
　次の瞬間マークは空に指をなぞる。
　「みんな逃げろ！！」
　ウィリアムが叫び皆がマークと距離をとった瞬間だった。
　マークを中心に地面が割れ、全員に鉛がのしかかったような感覚が襲う。
　「ぐう....これは...」
　ウィリアムが疑問を口にするとマークはにこやかに答える。　
　「まあ理不尽だし教えてやるぜ？　俺は空間の精霊と契約した人間だ！」
　
　「ミメーシス！！」
　ウィリアムがミメーシスが出る
　「もっと早くミメーシスを出すべきだったよ...マークの前で起こしてれば...」
　(ほう、空間の精霊か、奴の能力はなかなか面白いからな)
　「そんなことはいい、能力を教えてくれ」
　(やつの能力は名の通り空間を操る能力だ、まあおそらく重力しか操れないだろうがな)
　「重力？　重力ってなんだ？」
　(物は地面に向かって落ちるだろう、それが使える)
　「よくわかんねえけどなんとなくわかった、でもなんでそんなことが...？　空間だったらテレポートとかじゃねえのかよ...」
　(空間の歪みが重力の正体だ、空間を一時的に歪めることができる、気をつけろ)
　「でたらめかよ...」
　
　「おらよ！」
　マークはウィリアムを蹴り上げる、しかし重力でウィリアムは重力によりすぐに地面に叩きつけられる。
　「ファイア！」
　結衣が銃を撃つが、マークが手をかざすと銃弾が突然渦を巻き破裂し、フォルトの頬をかする。
　頬が吹き飛び、フォルトの歯がまろび出る、痛々しい光景に目を背けたくなる。
　
　「思ったよりも弱いね君たち！」
　ウィリアムは剣で叩き切ろうとするが剣が一瞬で変形しグチャグチャになる、ウィリアムは次の武器を備えようとした瞬間にマークはウィリアムの右足を掴む。
　「ぐ....離せ！！」
　ウィリアムが拳を固めマークを殴ろうとした時だった、ウィリアムの足がぐちゃぐちゃに変形する。
　「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛！！！」
　骨が折れ、肉が引きちぎれる感覚、ウィリアムの耳が裂けるような声が辺りに響くがマークはそのままウィリアムの足を引きちぎった。
　「これで動けねえだろ？」
　リカルがマークの後ろをとるがマークの回し蹴りがリカルの剣を叩き折る。
　
　リカルは煙幕弾を取り出すと辺り一体に撒き散らす。
　「くそっ....逃げるぞ！」

　「おいおい興醒めだなぁ」
　マークが指をなぞろうとした時だった、サムがマークに飛びつく。
　「やらせねえぞ！　絶対に！」
　死に物狂いでサムはマークの腕を押さえるがマークは頭突きで腕の拘束を取ると顔を掴む。
　「かっこいいねえ」
　サムの体が顔へと圧縮され、辺りに血と肉の霰が降る。
　
　そうして煙幕が晴れると既に皆消えていた。
　「やれやれ、逃げられちゃったか」
　マークはあくびをすると外に出ることとした。