生きる世界と冒険譚

逃亡の集落

　「あいつは本気で俺たちを殺しにきてる...！　急いで馬車を出すんだ...！」
　リカルの指示を聞き馬車に急いで荷物を詰めると急いで馬車に乗り込む、フェイルの遺体は馬車には乗せられず、フォルトはフェイルの遺体を墓地の棺桶に急いで入れ、別れも言えなかった。

　ウィリアムはただ呆然と失った右足を見ていた。
　「ウィリアム、しっかりしろ...行くところがあるかだけ教えろ、ないなら俺たちで決める」
　ヒューズの言葉にウィリアムはゆっくり顔を上げる。
　「北の方...ホライドに向かってくれ...詳しい場所は落ち着いたら話すから...」
　「...わかった、ホライドの方だな」
　ヒューズはリカルに行き先を伝えると馬を走らせる。
　
　「ホライドか...あそこは冬は死ぬほど寒いからな...途中にある村で衣類を買うか...」
　「ホライドは人があまりいないと聞きますがどうしてなんですかね？」
　結衣がリカルに聞く。
　「ホライドはリライプルでも開拓がまだ進んでないんだ、モンスターが多く、あと100年ほどは掛かるだろう」
　リカルの話を聞き結衣は銃の手入れを始める。
　「フォルトは大丈夫か？」
　ヒューズがフォルトに話しかけるとフォルトは涙を拭う。
　「まずはウィリアムさんが戦うとしたら義足が必要だと思います、模倣の力...があるんですよね、その力で足を動かすことはできないでしょうか？」
　(接合部を曲げるよう作れば全く同じに機能はできる) 
　「曲げる部分をしっかりと作ったりすれば元の足のように動ける」
　「そうですか、できればシードルで作れればよかったのですが...ホライドは人が少ないと言いましたが国などはありますか？」
　「ないな、作るとして小さな集落の職人にでも作ってもらうか」
　「それなら私が作りましょうか？」
　声を上げたのは結衣だった。
　「そうか、結衣はファラル出身だったな、だが作れるのか？」
　ヒューズの問いに結衣は目をキラキラさせながら首を縦に振る。
　「もちろん！　むしろ前よりもすごい強くしてあげますよ！」
　「ああ....それはありがたいな...」
　ウィリアムは力無く返事をする。
　「ですが鍛冶場が必要になりますね...鉄もないですしね」
　「じゃあどちらにしろ村を探すのが前提か」
　そうしてウィリアム達は村を出ることにした。

　
　4日後
　「村が見えましたよ！！」
　フォルトの目に映ったのは大樹の森のなかに立ち上がる煙とポツポツと見える家々であった、皆にそのことを報告すると鎧を纏うか
　「前回もこんなことあったからな...一応警戒しておくか...」
　

　しかし拍子抜けであった、村は平和であり脅威となるものは別になかった。
　「おや？　旅人の方かな？」
　ちょうど家から出てきたであろう老人がウィリアム達に話しかける。
　「はい、実は私達は旅の途中なのですが...足を負傷してしまい...」
　ウィリアムが足を見せると老人はギョッとするがすぐににこやかな笑顔に戻る。
　「それはそれは...また大変ですな、何もない村ではありますがどうぞゆっくりしてください、わしはここの村長みたいなものでね」
　村長の言葉にウィリアム達は甘えることにした。
　「すみません、どこかに鍛冶屋や製鉄所のような場所はありませんかね？」
　「ああ、それでは案内しよう...！」
　そうして老人に案内してもらい鍛冶屋へと着いた。
　「どうしたんだよ、じいちゃん？」
　そこにいた青年が村長に声をかける
　「おお、すまんのお、旅の方がの、この...ウィリアムさんの義足をつくりたいらしくてな、手伝ってやってはくれんか？」
　「ああ、いいぜ」
　青年は快く引き受け、村長が去るとウィリアム達に話しかける。
　「よろしくな、俺はロルフ、ここで鍛冶屋をやってるんだ、鍛冶場を貸してやる、素材も使っていいが...俺の仕事を手伝ってくれねえか？」
　青年の言葉に結衣は首を縦に振る。
　「もちろんです、しばらくの間お願いします」