生きる世界と冒険譚

山田浩輔

文字の大きさ
71 / 77

第二十二話 培養と廃用

しおりを挟む
 人々が逃げ惑う中、ルーカスは診療所の奥へと進む、人の気配はなく、暗い診療所進む、使われていないのか埃を被った機器、歩くたびにホコリが舞い、足跡を辿り、その先に一つの扉があった。
 扉を開けようとするが、鍵が掛かっており開かない、ルーカスは扉に体当たりをするが開かず、そのまま試行錯誤をするが開かず、ルーカスは溶かした蝋を鍵穴に入れ込むとそれを引き抜く。
 「形は...シンプルだな、それじゃあ....」
 ルーカスは鍵穴に針金を4本差し込むとゆっくりと解錠し始める。
 模倣の力で4本を同時に動かし続けて5分も経つと扉は開く。
 「きたな...」
 ルーカスは扉を開くとその先には見たこともない光景を目にする。
 「なんだ...これ...」
 大量のコードと電子機器、培養液など、さまざまなものがある中で、その奥には巨大なカプセルのようなものに入った竜人がいた。
 
 「おっと、まさかここまで来るとはな...」
 ルーカスの後ろから声をかけられ、振り向くとそこにはイワンがいた。
 「イワン...さん...」
 ルーカスは銃をイワンに向けるとイワンは両手を上げる。
 「待て待て、話を聞け」
 「...いいだろう、聞いてやる」
 ルーカスは銃を下ろすがナイフに手をかける。
 「龍信仰は悪だ、そう思うだろう?」
 「...そうだな」
 イワンは不敵に笑うとカプセルに近づく。
 「これはな、金の成る木だ、こいつは龍人と呼ばれる古来から存在していた種族だ」
 「...そうだとして、何になる」
 「龍信者が持ってる鉱石の正体はこれの硬化した破片だ、龍を信仰するものがなぜ身につけているのか、これが答えだ、そして俺は、別に私欲でこんなことを行なってるわけじゃない、この大陸の人々を豊かで文化的な暮らしをさせる、そのために俺はここまでやってきたんだ」
 「...お前はどっちの味方だ?」
 「もちろんドラゴンは撲滅させる、そしてこの信仰はドラゴンではない、太陽の精霊、へーリオスの力にしか過ぎないんだよ、溶解と放射線を操る、五代精霊の中でも最も強力な精霊だ、俺はな、利用できるものは全て利用する」
 ルーカスはゆっくりと銃を構えると引き金に指をかける。
 「残念だが、俺は龍を滅ぼすことにしか、興味はないんでな」
 「そうか」
 イワンはルーカスに急接近すると手に力を込める。
 「ファイア!」
 ルーカスはイワンの手を最大限警戒しながら銃を撃ち、それと同時に距離をとるが、次の瞬間、巨大な熱球が現れ、その熱気でルーカスの体は燃え上がる。
 「まずい...!」
 ルーカスは急いで部屋から出ると扉を閉め、外へと走る。
 燃え上がる炎を痛みに必死に耐えるが、やがて力尽き、そしてルーカスは目を閉じた。





 ~23年前~
 6歳の頃、俺は普通の家庭に憧れていた、母は優しく、暖かかった、だが父は龍信者であった。
 父は幼い俺によく暴力を振り、その度に母が止め、そして暴力を受けていた。
 

 そうして辛い日々が続いていたが、ある日、俺は感情を止められなくなっていた。
 「俺の言うことは聞けないのかよ!」
 父と母の口論のなか、父が包丁を取り出した。
 その時、俺は父にぶつかり、父は包丁を落とした。
 俺は父に突き飛ばされたが、その時、包丁を手にして、父に向かった。
 この男は生かしてならない、クズで、ゴミで、カスで、そんな人間を処理しなければならないと、正義感すら持って、死ぬような思いをしながら刺した。

 刺した感触、生暖かい血、迸る高揚感、その全てを感じ、目を開けた時、そこには血を流した母がいた。
 どうやら父を庇ったようだ、優しくて、暖かくて、そして愚かだった。
 父はその光景に恐怖したのか、家から走って逃げたが、俺は追おうという気にはならず、母の亡骸に謝り続けていた。
 そうして数日後、父は通り魔に刺され死んだ、嫌いで憎くて、憎悪すべき存在は、呆気なく死んだ、大事な人も、復讐相手も、生きる目的もない、その上で、俺が生きているのは、なぜなのだろうか?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...