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吸血鬼妹、待ち構える
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「さぁ、今日がダンジョンの強さ自慢ですね、すね。サンブレッド」
今日は提案者であるマスティス・タウストとの、ダンジョンの《強さ自慢》の日である。この戦いの成果によって、今後のマスティスとの扱いが、取り分が変わってくるために、極めて重要な戦いである。
「えぇ、分かっています。姉様。
今回はこの前来たマスティスに与えたゴーレムが、私達のダンジョンにどこまで戦えるかを試すという話でしたよね」
今回の強さ自慢のメインは、マスティス・タウストの育成力がどこまでかを見極める事。ただそれ一点のみを見る戦いである。それが故に今回は変則的な強さ自慢という形になっている。
相手が使えるのは、マスティスに渡したゴーレムのみ。一応は低レベルの回復術死も用意しといたのだが、要らないと突き返されてしまった。
それに対して、こちらは全5戦でゴーレムを戦えないようにしなければならない。そのうちの1戦はダンジョンマスターであるサンブレッドが行うという事なので、後の4戦でどれだけそのゴーレムの戦力を削れるかというのが肝となってくる。
一応はその4戦の組み合わせは、サンブレッドが決めたらしいのだが、その組み合わせは姉であるニパンから見ても中々に酷いと言わせるようなものだった。
1戦目、吸血鬼キャスター。火・水・雷などの魔術を極めた魔術師タイプで、様々な魔法によって相手を倒す。魔法に耐性のない場合、この1戦だけで倒されてしまうだろう。
2戦目、吸血鬼ファイター。吸血鬼ながら対吸血鬼様に開発されたという《人狼殲滅拳》なる武闘術で挑んでおり、普通のゴーレム程度の装甲なら一撃で粉砕される。たとえ初戦のキャスターに敗けないほどの魔法耐性があったとしてもここで死んでしまうのは明確である。
3戦目、吸血鬼アサシン。防御力に自信がない代わりに、一発当たれば勝利は確実なほどの殺傷力の高さを誇る。敏捷性、つまりは素早さが早いのでゴーレムなどの鈍重な魔物との相性は悪い。
4戦目、吸血鬼パラディン。防御力が高く、殴ったら逆に相手の方が参ってしまう事も多い、我らが壁役の要的存在。
そして5戦目の大将、吸血鬼サンブレッド・ブラッドレイ。
魔法耐性がなければ、1戦目のキャスターに翻弄され。
頑丈でなければ、2戦目のファイターに殴られ。
敏捷性に対処できなければ、3戦目のアサシンに殺され。
攻撃力がなければ、4戦目のパラディンを倒せず。
そして決定打がなければ、5戦目のサンブレッドには敵わない。
正直なところ、1体のゴーレムでは突破することなど不可能な布陣。我がダンジョンの最強戦力といっても過言ではない布陣を、たった1体のゴーレムをどう強化しても勝ち目はないだろう。
「(もし仮に、この布陣を突破できるゴーレムをこの短時間で用意されたら‐‐‐‐認めるしかないでしょうね、うね。サンブレッドも。
さぁ、見せてくれ、くれ。そこまで語る、あなたの強さというものを、のを!)」
どういうゴーレムを作って来たのか。
ニパンは観客として存分に楽しませてもらう構えである。
☆
ゴーレムを用いた、マスティス・タウストの《強さ自慢》。
マスティスがゴーレムをダンジョンに投入したと聞き、最初の間担当の吸血鬼キャスターは杖を強く握りしめながら、ゴーレムが来るのを待ち構えていた。
「(ニパン様とサンブレッド様からは油断なく、容赦なくって言われているけれども、どんなに頑張ったって元がゴーレムでしょ? それだったら別に油断していても負けはしないはずよ)」
吸血鬼は魔族の中でも、上位種と呼ばれる強力な種族。一方で相手はただの鉄の塊。
どれだけ分解点検したと言っても、所詮は人形ごときが吸血鬼様と相手になるとは思えなかった。
「まぁ、用心に越したことはありませんが、それでも負けはしませんでしょう」
うんうんと頷いていると、「おーいっ!」と奥の方から声が聞こえてくる。振り返るとそこには吸血鬼ファイター、吸血鬼アサシン、吸血鬼パラディンの姿があった。つまりは吸血鬼キャスターの奥に控えている3人の姿だった。
「……ファイター、アサシン、それにパラディンまで。まだゴーレムには負けていませんよ? それなのに3人そろってこちらに来るだなんて、そんなにも私は信じられませんか?」
じとーーーーっ、と睨むような視線で見ていると、ファイターは「良いや良いや、そういう意味ではないんだけれども」とそう答えていた。
「ニパン様とサンブレッド様は、全5戦にてマスティス・タウストの力を推し量るつもりみたいなんですが、それは即ち"全5人にて相手の実力を推し量る"という意味だと思われる。
それならば4人を4戦で消耗させるよりかは、1戦で4人を相手にするのとは変わらないだろう、という事になりまして」
つまりは、今からこの4人でゴーレムを倒そうという話か。
「(……悪くない、ですね)」
吸血鬼キャスターはこくこくと頷いていた。
この4人はお互いに弱点を補強しあっている。
吸血鬼キャスターは魔術師特化だから威力自体は高いのだが、その代わりに魔力量が十全ではないために長期戦には向かない。
吸血鬼ファイターは《人狼殲滅拳》なる拳法にて、一発一発の威力には心許ない代わりに非常に手数が多い。
吸血鬼アサシンは一撃必殺。警戒されている相手の隙を狙うのは非常に難しいが、それが故に集団戦や混戦などに非常に効果を発揮する。
吸血鬼パラディンは非常に硬い装甲が特徴。決定打に欠ける代わりに、かの吸血鬼の装甲を破るのは容易ではない。
1体であろうともゴーレムを倒せるだけの実力を持つ我々が、お互いに協力してゴーレムを倒しにかかるのだ。
これで負けるはずがない。
「よし、分かりました。
我ら吸血鬼最強パーティーにて、かのゴーレムを倒しにまいりましょうぞ!」
《グォォォッォォォォ!》
そうして吸血鬼パーティーの目の前に現れた、マスティスがオーバーホールしたゴーレム。
かのゴーレムは、全身に赤や青、黄色など様々な色が施されているのだが、問題はその3色ではない。
「なんなんだよ、あの黒い顔はっ!?」
攻めてきたゴーレムの顔は、黒一色にて怪物の顔が作り出されていた。
その顔はゴーレムではなく、まさしく、一夜にして国を滅ぼしたと言われているかの伝説の黒龍の顔であった。
今日は提案者であるマスティス・タウストとの、ダンジョンの《強さ自慢》の日である。この戦いの成果によって、今後のマスティスとの扱いが、取り分が変わってくるために、極めて重要な戦いである。
「えぇ、分かっています。姉様。
今回はこの前来たマスティスに与えたゴーレムが、私達のダンジョンにどこまで戦えるかを試すという話でしたよね」
今回の強さ自慢のメインは、マスティス・タウストの育成力がどこまでかを見極める事。ただそれ一点のみを見る戦いである。それが故に今回は変則的な強さ自慢という形になっている。
相手が使えるのは、マスティスに渡したゴーレムのみ。一応は低レベルの回復術死も用意しといたのだが、要らないと突き返されてしまった。
それに対して、こちらは全5戦でゴーレムを戦えないようにしなければならない。そのうちの1戦はダンジョンマスターであるサンブレッドが行うという事なので、後の4戦でどれだけそのゴーレムの戦力を削れるかというのが肝となってくる。
一応はその4戦の組み合わせは、サンブレッドが決めたらしいのだが、その組み合わせは姉であるニパンから見ても中々に酷いと言わせるようなものだった。
1戦目、吸血鬼キャスター。火・水・雷などの魔術を極めた魔術師タイプで、様々な魔法によって相手を倒す。魔法に耐性のない場合、この1戦だけで倒されてしまうだろう。
2戦目、吸血鬼ファイター。吸血鬼ながら対吸血鬼様に開発されたという《人狼殲滅拳》なる武闘術で挑んでおり、普通のゴーレム程度の装甲なら一撃で粉砕される。たとえ初戦のキャスターに敗けないほどの魔法耐性があったとしてもここで死んでしまうのは明確である。
3戦目、吸血鬼アサシン。防御力に自信がない代わりに、一発当たれば勝利は確実なほどの殺傷力の高さを誇る。敏捷性、つまりは素早さが早いのでゴーレムなどの鈍重な魔物との相性は悪い。
4戦目、吸血鬼パラディン。防御力が高く、殴ったら逆に相手の方が参ってしまう事も多い、我らが壁役の要的存在。
そして5戦目の大将、吸血鬼サンブレッド・ブラッドレイ。
魔法耐性がなければ、1戦目のキャスターに翻弄され。
頑丈でなければ、2戦目のファイターに殴られ。
敏捷性に対処できなければ、3戦目のアサシンに殺され。
攻撃力がなければ、4戦目のパラディンを倒せず。
そして決定打がなければ、5戦目のサンブレッドには敵わない。
正直なところ、1体のゴーレムでは突破することなど不可能な布陣。我がダンジョンの最強戦力といっても過言ではない布陣を、たった1体のゴーレムをどう強化しても勝ち目はないだろう。
「(もし仮に、この布陣を突破できるゴーレムをこの短時間で用意されたら‐‐‐‐認めるしかないでしょうね、うね。サンブレッドも。
さぁ、見せてくれ、くれ。そこまで語る、あなたの強さというものを、のを!)」
どういうゴーレムを作って来たのか。
ニパンは観客として存分に楽しませてもらう構えである。
☆
ゴーレムを用いた、マスティス・タウストの《強さ自慢》。
マスティスがゴーレムをダンジョンに投入したと聞き、最初の間担当の吸血鬼キャスターは杖を強く握りしめながら、ゴーレムが来るのを待ち構えていた。
「(ニパン様とサンブレッド様からは油断なく、容赦なくって言われているけれども、どんなに頑張ったって元がゴーレムでしょ? それだったら別に油断していても負けはしないはずよ)」
吸血鬼は魔族の中でも、上位種と呼ばれる強力な種族。一方で相手はただの鉄の塊。
どれだけ分解点検したと言っても、所詮は人形ごときが吸血鬼様と相手になるとは思えなかった。
「まぁ、用心に越したことはありませんが、それでも負けはしませんでしょう」
うんうんと頷いていると、「おーいっ!」と奥の方から声が聞こえてくる。振り返るとそこには吸血鬼ファイター、吸血鬼アサシン、吸血鬼パラディンの姿があった。つまりは吸血鬼キャスターの奥に控えている3人の姿だった。
「……ファイター、アサシン、それにパラディンまで。まだゴーレムには負けていませんよ? それなのに3人そろってこちらに来るだなんて、そんなにも私は信じられませんか?」
じとーーーーっ、と睨むような視線で見ていると、ファイターは「良いや良いや、そういう意味ではないんだけれども」とそう答えていた。
「ニパン様とサンブレッド様は、全5戦にてマスティス・タウストの力を推し量るつもりみたいなんですが、それは即ち"全5人にて相手の実力を推し量る"という意味だと思われる。
それならば4人を4戦で消耗させるよりかは、1戦で4人を相手にするのとは変わらないだろう、という事になりまして」
つまりは、今からこの4人でゴーレムを倒そうという話か。
「(……悪くない、ですね)」
吸血鬼キャスターはこくこくと頷いていた。
この4人はお互いに弱点を補強しあっている。
吸血鬼キャスターは魔術師特化だから威力自体は高いのだが、その代わりに魔力量が十全ではないために長期戦には向かない。
吸血鬼ファイターは《人狼殲滅拳》なる拳法にて、一発一発の威力には心許ない代わりに非常に手数が多い。
吸血鬼アサシンは一撃必殺。警戒されている相手の隙を狙うのは非常に難しいが、それが故に集団戦や混戦などに非常に効果を発揮する。
吸血鬼パラディンは非常に硬い装甲が特徴。決定打に欠ける代わりに、かの吸血鬼の装甲を破るのは容易ではない。
1体であろうともゴーレムを倒せるだけの実力を持つ我々が、お互いに協力してゴーレムを倒しにかかるのだ。
これで負けるはずがない。
「よし、分かりました。
我ら吸血鬼最強パーティーにて、かのゴーレムを倒しにまいりましょうぞ!」
《グォォォッォォォォ!》
そうして吸血鬼パーティーの目の前に現れた、マスティスがオーバーホールしたゴーレム。
かのゴーレムは、全身に赤や青、黄色など様々な色が施されているのだが、問題はその3色ではない。
「なんなんだよ、あの黒い顔はっ!?」
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