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女勇者、青の力を試す。
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"【混色】の魔王"という力を用いて、女勇者の2本の尻尾のうちの1本を青く染め上げた。しかし、狐尻尾の1本だけを染め上げるつもりだったのだが、どう言う訳か彼女の右眼まで黄色から青色へと変わってしまったのだが、これに関してはこの能力が未だにどう言う能力なのかがまだ分かって来ていないのでどうしてこうなるかが分かってないのだけれども。
「――――なにか身体に変化はないか?」
俺がそう聞いて見ると、彼女は手を握ったり離したり。それから尻尾を揺らしたり。狐耳を「どんな感じかなぁ~?」と風に流されるようにしたり。
そんな風にして自分の身体の異変や不調を感じているようだったが、「特になんともないですね」とさも当たり前のように声を発していた。
「けれども、なんかステータスには変化があるようですね」
彼女はそう言って、俺に対して自身のステータスを見せて来た。
=====
名前;ソラハ・テンジョウイン
職業;【勇者】 【妖狐】の勇者 青の者
保有スキル;獣化 魔術の才能 雷魔術 探知 《魔術カスタム》 《青の力》
筋力;E
耐久力;F
敏捷性;B
魔力;S++
=====
見せて貰ったステータスには明らかに今青色を塗った効果で現れたと思われる、"青の者"という称号と《青の力》というスキルが増えていた。
「その"青の者"と《青の力》について、説明はないのか?」
俺の場合、説明が欲しいなぁと思っていると勝手にステータスさんの方から説明があったのだけれども、それでも"【混色】の魔王"という力についての説明が不十分であったからこうやって配下のマッチョスライム達ではなくて、トラップを使って捕まえた女勇者さんに実験を試みた。
しかし、彼女の場合はどうなんだろうと聞いてみたんだけれども、彼女は「そうですね……」と考え込んだ後にステータスの説明を見せてくれた。
=====
青の者
……【混色】の力によって、青色を加えられたもの。青色の力を使える事が出来る。
《青の力》
……"青"をイメージした力。放つ物の流れを遅くする事が出来る。
=====
「……《青の力》のこの説明では、ちょっと使い勝手や意味が分からないな」
放つ物の流れを遅くするというこの意味では、使い勝手やスキルの必要性が分からないな。わざわざスピードを遅くする意味って、いったい何なのだろうか……?
けれども、どうやら女勇者――――ソラハはそのスキルの意味を理解したようで、「良いですか?」と何故かすっごく嬉しそうな顔でこちらを見ていた。
「まず、あそこに大木がありますよね? それに対して雷魔術の初級魔術、ライトニングを使うと――――」
そう言ってソラハが右手からか細い雷光がチョコンッと出ると、それは目にも止まらぬ速度で目の前の大木にぶつかる。雷は大木を少し焦がした程度の、ちょっとした焼け跡を残して消えていた。
「まぁ、最弱の初級魔術ならばこれくらいだろうな」
雷魔術の初級魔術ライトニング。
相手を痺れさせる、魔物使役をさせる時に良く用いられる雷の初歩的な魔法。その本当に初歩的な魔法で、大木を焦がすほどの能力なのは素直に凄いと思う。
「そして青の力を用いて同じ技を使うと――――」
そう言って今度もまた、彼女は同じようにして雷の初級魔術ライトニングを放つ。しかし今度のライトニングは先程の物とは違う点がいくつもあった。
まず、さきほどの雷は目にも止まらぬ速さであったが今度はその雷が青く纏われている事まではっきり見える程度にまでその速度が落ちており、しかしその雷は奥へ進めば進むほどその大きさが増していた。そして最初に見せた時は小指の先程度の大きさだった雷は、大木の半分くらいの大きさまで増して大木を"貫いて"いた。
ゆっくりと、焼け落ちた木の根元を軸にして大木はそのまま地面に傾いて横たわる。
「……凄い威力だな」
「速度を遅める代わりに、威力と大きさを増す《青の力》。私の雷の魔術は速度が売りなので、これは凄い事ですよ!」
何故か尻尾を大きく揺らして興奮していることを示すソラハ。
と言うか、先程手に入れたばかりのスキルをまるで長年自分が持っていたスキルのように使いこなしている。スキルによってはどう言うスキルなのかも分からず、それでも自分の新しく得たスキルを使って見たくて、試しに使って見たが発動しなかったり、逆に怪我をしたという場合もある。そして、仕方なく使って見てそのまま死んでしまったという場合もある。それは流石に言い過ぎだが、スキルの使用と言うのはそれだけ難しい。
だからこそ俺は、見た事も聞いた事もないこのスキルを実験のために彼女と契約しようとしたくらいなのだから。
もしかして、スキルの使い方もあらかじめ頭の中に入って来ると言うスキルなのかも知れない。
それだったら凄いが、だったらなんで色を塗る側のこちらにも説明がなかったのだろうと疑問を浮かべていた。
まぁ、最悪の……使ったら死亡するという類のスキルではないみたいで安心した。ホッとした。
そう言えば、彼女の能力にはもう1つ、少しだけ気になるスキルがあった。
「なぁ、ソラハさん? その、《魔術カスタム》というスキルがあったはずだが、あれはどういうスキルなんだ?」
「ソラハ、で構いませんよ。
えっと……あれっ? これもスキルの説明が出ていますね……」
と、そう言って親切にも彼女は《魔術カスタム》の方も見せてくれた。
=====
《魔術カスタム》
……神から貰ったユニークスキルの1つ。あらゆる魔術に対して別の属性を付与する事が出来る。付与できる属性は炎、水、雷、風、毒、光、闇、氷。
=====
「これも……組み合わせれば、あるいは」
そう言って彼女が出した今度の雷には全体に青い光を纏われているのは変わらなかったが、雷自体の色が緑色に変わっていた。そんな不思議な雷は別の大木へと先程のように進めば進むほどその大きさが増しており、大木を押し倒す。
と、同時に森の奥へと吹っ飛ばしていた。
「今度は雷魔術を《魔術カスタム》を用いて風の属性を付与してみましたが、これの場合は雷自体の色を変化させるみたいですね。これはこれで、分かりやすくて良いですね」
「なるほど……」
これは大きな進歩であると言える。彼女の《魔術カスタム》という力の能力を知れたのは嬉しいが、それ以上に嬉しかったのはこの《魔術カスタム》のスキルの説明のところにあった。
"神から貰ったユニークスキル"、つまり彼女のように勇者とは自分だけの固有スキル、ユニークスキルを持ているという事だ。
(下手に勇者と関わり合いになりたくないなぁ……。それにこの森の中に留まり続けるのもあまりよろしくないしな)
この森は、俺が元々治めていたダンジョンの近く。つまりは俺の元上司の魔王……【大足】の魔王ジョルグジョルグ様の領地である。
あまり、あのジョルグジョルグ様は俺にダンジョンマスターとしての仕事をやらせて、休日を全然くれなかったし、その上給料も良いとは言えなかった。なのに求めて来るのは結果、結果、結果ばかり。それも物凄い高い水準の、そんなの無理じゃないと言わんばかりの高すぎる達成不可能な目標。
正直に言えば俺の中ではトラウマレベルの存在だし、だから関わり合いになりたくはないし、それに敵対するのも嫌だ。いや、あの魔王ならば最悪の場合、俺を勇者と戦うための捨て駒にするかもしれない。
自分は城の中にてふんぞり返って魔王としての生活を満喫し、俺を門番のように配置して勇者が着たら戦わせる。
……うん、なんともまぁあの魔王様ならばあり得そうな話ではないか。
もしかして今回の【妖狐】の勇者ソラハ・テンジョウインの方も俺の方に来るように仕向けたのかもしれない。そう考えれば、さっきのデブ勇者も。
(他の領地に行くのもそこを治めてる魔王と会って筋道立てないといけないし、そもそもなにか厄介な事に巻き込まれる可能性の方が高い)
俺の称号は、魔王(仮)。魔王として勇者と戦うという義務はあれども、直属の部下はこちらで用意しなければならないし、その上領地もない。
そんな俺はカッコなしの、本物の魔王様達にとっては、自分を襲ってくる勇者と戦わせる道具として利用してくるだろう。
俺はもう、働きたくない。
ダンジョンマスターとして立派かどうかは分からないが、それでも仕事はしっかりとして来たつもりである。そんな俺が、やっと面倒な立場から解放されたのにまたしても面倒な立場を押し付けられるのは御免こうむりたい。
出来れば、どこかの島か山か。ともかく他の魔王が領地として治めてないような場所で、ひっそりとダンジョンもどきの洞窟を作って隠れて余生を暮らしたい。他の者からして見れば寂しい生き方にも見えるのかもしれないが、俺としては勇者もなにも襲って来ない、ただただ平穏で平和な毎日を送りたい。
どこがどの魔王の領地かは知らないけれども、魔王もなにも資源がないような島や、行くのに大変な山などを領地として治めたりはしてないだろう。全てがそうだとは言えないだろうが、絶対にまだいくつかは残ってるはずだ。そこを自分の終の棲家として送るのは悪くないんじゃないだろうか?
最もその終の棲家で一緒に送るのが、このマッチョスライム達だけじゃあまりにも汗臭いので他にも色々と準備は必要だろうが。
「さて、と。それじゃあ約束を果たすとするか」
俺はそう言ってまだ《青の力》を使って色々と検証をしていた彼女と向き合う。彼女は先程自分がサインした書類を俺が持っていたのを見て、ピクリとその狐耳を立てた。まるでちょっとばかり怯えているかのように。
「えっと、マスティス……さん? ちょっとお話が――――」
「だいじょうぶ、このまま別れたりはしないから」
このまま書類を破ってはいさよなら、そんなのでは流石に悪すぎる。だから、彼女には地図を書いてあげる事にした。確かこの近くには獣人を受け入れてくれる親切な村があったはずだ。その近くまで行くための地図である。これさえあれば、無事に辿り着けるだろうし、後の事は彼女自身の問題である。
彼女のために書いてあげたその地図を、何故か彼女は受け取る事を躊躇していた。一体どうして――――
「ぷるっ!?」
「すらっ?!」
と、そんな事を思っていると少し離れた位置でスクワットをしていた俺の配下のスライム達が突然スクワットを止めて、腕立て伏せを始めた。
なにかに気付いたらしいのだが、だったら腕立て伏せじゃなくて警戒した際の行動をしろよと思っていたのだが、どうやらあれが彼らなりの警戒した際の行動らしい。
……無言で目の前を見つめながらも、ただひたすら腕立て伏せを続けるマッチョな青い男達。どう見たとしても異常な光景である事は確かである。
でも、なにが起こったんだと思っていると、ソラハさんも気づいたらしくて俺の後ろを、スライム達と同じ方を見ていた。
後ろ、と思うとそこには
「シャー!!」
――――なにかいきり立っている様子の大きな蜘蛛魔物が居た。
「あー、そうだね」
さっきから大木倒しまくってたからね、あんたの巣も破壊しちゃってたのね。
でも、どうやらごめんなさいで済ませられる話ではないみたいである。
「――――なにか身体に変化はないか?」
俺がそう聞いて見ると、彼女は手を握ったり離したり。それから尻尾を揺らしたり。狐耳を「どんな感じかなぁ~?」と風に流されるようにしたり。
そんな風にして自分の身体の異変や不調を感じているようだったが、「特になんともないですね」とさも当たり前のように声を発していた。
「けれども、なんかステータスには変化があるようですね」
彼女はそう言って、俺に対して自身のステータスを見せて来た。
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名前;ソラハ・テンジョウイン
職業;【勇者】 【妖狐】の勇者 青の者
保有スキル;獣化 魔術の才能 雷魔術 探知 《魔術カスタム》 《青の力》
筋力;E
耐久力;F
敏捷性;B
魔力;S++
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見せて貰ったステータスには明らかに今青色を塗った効果で現れたと思われる、"青の者"という称号と《青の力》というスキルが増えていた。
「その"青の者"と《青の力》について、説明はないのか?」
俺の場合、説明が欲しいなぁと思っていると勝手にステータスさんの方から説明があったのだけれども、それでも"【混色】の魔王"という力についての説明が不十分であったからこうやって配下のマッチョスライム達ではなくて、トラップを使って捕まえた女勇者さんに実験を試みた。
しかし、彼女の場合はどうなんだろうと聞いてみたんだけれども、彼女は「そうですね……」と考え込んだ後にステータスの説明を見せてくれた。
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青の者
……【混色】の力によって、青色を加えられたもの。青色の力を使える事が出来る。
《青の力》
……"青"をイメージした力。放つ物の流れを遅くする事が出来る。
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「……《青の力》のこの説明では、ちょっと使い勝手や意味が分からないな」
放つ物の流れを遅くするというこの意味では、使い勝手やスキルの必要性が分からないな。わざわざスピードを遅くする意味って、いったい何なのだろうか……?
けれども、どうやら女勇者――――ソラハはそのスキルの意味を理解したようで、「良いですか?」と何故かすっごく嬉しそうな顔でこちらを見ていた。
「まず、あそこに大木がありますよね? それに対して雷魔術の初級魔術、ライトニングを使うと――――」
そう言ってソラハが右手からか細い雷光がチョコンッと出ると、それは目にも止まらぬ速度で目の前の大木にぶつかる。雷は大木を少し焦がした程度の、ちょっとした焼け跡を残して消えていた。
「まぁ、最弱の初級魔術ならばこれくらいだろうな」
雷魔術の初級魔術ライトニング。
相手を痺れさせる、魔物使役をさせる時に良く用いられる雷の初歩的な魔法。その本当に初歩的な魔法で、大木を焦がすほどの能力なのは素直に凄いと思う。
「そして青の力を用いて同じ技を使うと――――」
そう言って今度もまた、彼女は同じようにして雷の初級魔術ライトニングを放つ。しかし今度のライトニングは先程の物とは違う点がいくつもあった。
まず、さきほどの雷は目にも止まらぬ速さであったが今度はその雷が青く纏われている事まではっきり見える程度にまでその速度が落ちており、しかしその雷は奥へ進めば進むほどその大きさが増していた。そして最初に見せた時は小指の先程度の大きさだった雷は、大木の半分くらいの大きさまで増して大木を"貫いて"いた。
ゆっくりと、焼け落ちた木の根元を軸にして大木はそのまま地面に傾いて横たわる。
「……凄い威力だな」
「速度を遅める代わりに、威力と大きさを増す《青の力》。私の雷の魔術は速度が売りなので、これは凄い事ですよ!」
何故か尻尾を大きく揺らして興奮していることを示すソラハ。
と言うか、先程手に入れたばかりのスキルをまるで長年自分が持っていたスキルのように使いこなしている。スキルによってはどう言うスキルなのかも分からず、それでも自分の新しく得たスキルを使って見たくて、試しに使って見たが発動しなかったり、逆に怪我をしたという場合もある。そして、仕方なく使って見てそのまま死んでしまったという場合もある。それは流石に言い過ぎだが、スキルの使用と言うのはそれだけ難しい。
だからこそ俺は、見た事も聞いた事もないこのスキルを実験のために彼女と契約しようとしたくらいなのだから。
もしかして、スキルの使い方もあらかじめ頭の中に入って来ると言うスキルなのかも知れない。
それだったら凄いが、だったらなんで色を塗る側のこちらにも説明がなかったのだろうと疑問を浮かべていた。
まぁ、最悪の……使ったら死亡するという類のスキルではないみたいで安心した。ホッとした。
そう言えば、彼女の能力にはもう1つ、少しだけ気になるスキルがあった。
「なぁ、ソラハさん? その、《魔術カスタム》というスキルがあったはずだが、あれはどういうスキルなんだ?」
「ソラハ、で構いませんよ。
えっと……あれっ? これもスキルの説明が出ていますね……」
と、そう言って親切にも彼女は《魔術カスタム》の方も見せてくれた。
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《魔術カスタム》
……神から貰ったユニークスキルの1つ。あらゆる魔術に対して別の属性を付与する事が出来る。付与できる属性は炎、水、雷、風、毒、光、闇、氷。
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「これも……組み合わせれば、あるいは」
そう言って彼女が出した今度の雷には全体に青い光を纏われているのは変わらなかったが、雷自体の色が緑色に変わっていた。そんな不思議な雷は別の大木へと先程のように進めば進むほどその大きさが増しており、大木を押し倒す。
と、同時に森の奥へと吹っ飛ばしていた。
「今度は雷魔術を《魔術カスタム》を用いて風の属性を付与してみましたが、これの場合は雷自体の色を変化させるみたいですね。これはこれで、分かりやすくて良いですね」
「なるほど……」
これは大きな進歩であると言える。彼女の《魔術カスタム》という力の能力を知れたのは嬉しいが、それ以上に嬉しかったのはこの《魔術カスタム》のスキルの説明のところにあった。
"神から貰ったユニークスキル"、つまり彼女のように勇者とは自分だけの固有スキル、ユニークスキルを持ているという事だ。
(下手に勇者と関わり合いになりたくないなぁ……。それにこの森の中に留まり続けるのもあまりよろしくないしな)
この森は、俺が元々治めていたダンジョンの近く。つまりは俺の元上司の魔王……【大足】の魔王ジョルグジョルグ様の領地である。
あまり、あのジョルグジョルグ様は俺にダンジョンマスターとしての仕事をやらせて、休日を全然くれなかったし、その上給料も良いとは言えなかった。なのに求めて来るのは結果、結果、結果ばかり。それも物凄い高い水準の、そんなの無理じゃないと言わんばかりの高すぎる達成不可能な目標。
正直に言えば俺の中ではトラウマレベルの存在だし、だから関わり合いになりたくはないし、それに敵対するのも嫌だ。いや、あの魔王ならば最悪の場合、俺を勇者と戦うための捨て駒にするかもしれない。
自分は城の中にてふんぞり返って魔王としての生活を満喫し、俺を門番のように配置して勇者が着たら戦わせる。
……うん、なんともまぁあの魔王様ならばあり得そうな話ではないか。
もしかして今回の【妖狐】の勇者ソラハ・テンジョウインの方も俺の方に来るように仕向けたのかもしれない。そう考えれば、さっきのデブ勇者も。
(他の領地に行くのもそこを治めてる魔王と会って筋道立てないといけないし、そもそもなにか厄介な事に巻き込まれる可能性の方が高い)
俺の称号は、魔王(仮)。魔王として勇者と戦うという義務はあれども、直属の部下はこちらで用意しなければならないし、その上領地もない。
そんな俺はカッコなしの、本物の魔王様達にとっては、自分を襲ってくる勇者と戦わせる道具として利用してくるだろう。
俺はもう、働きたくない。
ダンジョンマスターとして立派かどうかは分からないが、それでも仕事はしっかりとして来たつもりである。そんな俺が、やっと面倒な立場から解放されたのにまたしても面倒な立場を押し付けられるのは御免こうむりたい。
出来れば、どこかの島か山か。ともかく他の魔王が領地として治めてないような場所で、ひっそりとダンジョンもどきの洞窟を作って隠れて余生を暮らしたい。他の者からして見れば寂しい生き方にも見えるのかもしれないが、俺としては勇者もなにも襲って来ない、ただただ平穏で平和な毎日を送りたい。
どこがどの魔王の領地かは知らないけれども、魔王もなにも資源がないような島や、行くのに大変な山などを領地として治めたりはしてないだろう。全てがそうだとは言えないだろうが、絶対にまだいくつかは残ってるはずだ。そこを自分の終の棲家として送るのは悪くないんじゃないだろうか?
最もその終の棲家で一緒に送るのが、このマッチョスライム達だけじゃあまりにも汗臭いので他にも色々と準備は必要だろうが。
「さて、と。それじゃあ約束を果たすとするか」
俺はそう言ってまだ《青の力》を使って色々と検証をしていた彼女と向き合う。彼女は先程自分がサインした書類を俺が持っていたのを見て、ピクリとその狐耳を立てた。まるでちょっとばかり怯えているかのように。
「えっと、マスティス……さん? ちょっとお話が――――」
「だいじょうぶ、このまま別れたりはしないから」
このまま書類を破ってはいさよなら、そんなのでは流石に悪すぎる。だから、彼女には地図を書いてあげる事にした。確かこの近くには獣人を受け入れてくれる親切な村があったはずだ。その近くまで行くための地図である。これさえあれば、無事に辿り着けるだろうし、後の事は彼女自身の問題である。
彼女のために書いてあげたその地図を、何故か彼女は受け取る事を躊躇していた。一体どうして――――
「ぷるっ!?」
「すらっ?!」
と、そんな事を思っていると少し離れた位置でスクワットをしていた俺の配下のスライム達が突然スクワットを止めて、腕立て伏せを始めた。
なにかに気付いたらしいのだが、だったら腕立て伏せじゃなくて警戒した際の行動をしろよと思っていたのだが、どうやらあれが彼らなりの警戒した際の行動らしい。
……無言で目の前を見つめながらも、ただひたすら腕立て伏せを続けるマッチョな青い男達。どう見たとしても異常な光景である事は確かである。
でも、なにが起こったんだと思っていると、ソラハさんも気づいたらしくて俺の後ろを、スライム達と同じ方を見ていた。
後ろ、と思うとそこには
「シャー!!」
――――なにかいきり立っている様子の大きな蜘蛛魔物が居た。
「あー、そうだね」
さっきから大木倒しまくってたからね、あんたの巣も破壊しちゃってたのね。
でも、どうやらごめんなさいで済ませられる話ではないみたいである。
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