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魔王、情報を共有させる。
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「やぁやぁやぁ、いきなり呼び出しちゃってごめんだねぇ」
【大足】の魔王ジョルグジョルグさまによって、ミライトリスの村長の家へと案内される俺達。ちなみにササはあの後、重症者達の傷を治すために俺らとは別行動を取っている。
だからこの場に居るのは俺とソラハさん、マッチョスライム達。
それと向き合うのは魔王ジョルグジョルグとその部下である金属鎧の大男……恐らくは、ジョルグジョルグの直属の部下と言った所だろうか。雰囲気からしてみても、「お前らなんて一撃で殺すぜ」という威圧を漂わせている。
(あの剣士を怒らせてはいけないな、絶対に……。怒らせたら、こちらが一瞬で刈られる)
今までこの大男の剣士には、一度もお目にかかった事はなかった。
俺とジョルグジョルグさまの関係はさして短くはないが、それでもここまで露骨な護衛は初めてである。今まで見た事があるのは、えっと……
・コンビのインプ2人組
……赤い髪と青い髪の2人組の小悪魔魔物。
さして強くはないんだけれども、片方が逃げている間にもう片方がちまちまと攻撃して来るので相手にするのがうざい。
・宙に浮かぶマーメイド
……水の球に入ってぷかぷかと浮かんでいる、人魚の魔物さん。
常におっとりしていて話もハキハキと、水を操る魔法なはずなのに自分の入っている水ごと攻撃に利用するからなんだか物理攻撃のようになってしまう。
・フレイムエレファント
……炎を纏った象の魔物。
今挙げた中では一番強く、どっしりとしている。
けれどもいつも鼻歌を歌っている、変な魔物。
と言うよりも今までの護衛は、悪魔でも彼女の周囲を固めるという感じであった。
今から行う話の雰囲気を良くしようとしている感じの護衛だった。
というか、話の種になるような面白護衛ばかりだった。
実際、彼らが戦闘を行ったところを俺はほとんど見ておらず、どちらかと言えば話を柔かい方向に進める、場の雰囲気を和ませるような護衛達だった。
実際、ジョルグジョルグ様の【大足】の力があれば、護衛に頼らずとも人間の一個師団程度ならば軽く殲滅できるので、そこまで強い護衛が必要なかったのだろう。
――――けれども今回の護衛は違う。
今までのとは違い、本当の意味で相手を倒すために連れて来たタイプ。
という事は、こんな護衛を出すというほどに今の状況はまずいという事だろうか。
それは恐らく、ミライトリスのエルフ達が怪我を追っている事と大きく関わっている事だろう。
この元上司からどんな事を言われるのかと、しっかりと心に刻み込んで構えていると……ごほん、と一呼吸おいてからジョルグジョルグさまは言葉を告げ始める。
「実はこの辺りの地域に、大量の勇者が召喚されたのですよ。
先程もね、【粘着爆弾】の勇者タロウ・タイナカとか、【アメンボ】の勇者シンハ・ミズハリとかが攻めて来ちゃったからさ、仕方なくうちの兵士を使って助けたんだけれどもねぇ。
その時に自爆技を使われてそのせいでこの村のエルフ達が重傷。最悪だよ、まさか自爆するなんてさ」
「……それで、本題はいかがなんでしょうか?」
もし仮にそれで話が終わるのならば、ジョルグジョルグさまはわざわざ俺をこの村に呼ばなかっただろうし、いつもとは違うようなこんな強そうな護衛も用意しなかっただろう。
怪我をしたから治療を手伝えとは言っても、今回はササが役立っただけであって、俺が役立ったわけではない。
俺が治療に秀でている訳ではないのは、ジョルグジョルグさまだって良くご存じのはずだ。
――――だから、問題はそこではない。
「いやー、あいかわらずタウくんはつまらないねぇ~。話をする前から1人でサクサクと事業を進めてくれるのは長所ではあるけれども、勝手にサクサクと進めるのは良くないねぇ~。そこはマイナスだよ。
物事には話す内容に応じて順序立ててやると言う事があってだねぇ~、それをきちんと理解した上で話すというのがぁ~……」
(相変わらず、長くなりそうだ)
と、元上司のいつもの長話を聞きながら、いつもの事だと諦める俺。
元上司の一番の十八番、《ホウレンソウ》。
異界から来た勇者によって伝えられた、上司と部下との報告・連絡・相談なる戦術にとても感銘を受けたらしく、ジョルグジョルグさまはそれを部下であるダンジョンマスターや護衛達とのコミュニケーションを大事にしている。
だが、その報告・連絡・相談が長い。ほんとーに、異様に長いのだ。
ある者は言った、「ジョルグジョルグさまは長命で有名なエルフであるから、それ故に我々にとっては長く感じる事もジョルグジョルグさまにとっては些細な会話程度なのだ」と。
勿論、エルフは長命だが、そこまで話は長くない。
またある者は言った、「ジョルグジョルグさまは他者との交流を大事にされているお方、故に1人1人の時間を大切にされている。だから長くなってしまうのだ」と。
その者はうっかりジョルグジョルグさまのおやつを食べてしまって以来、行方知れずとなった。
……とまぁ、色々と彼女が何故話が長いのかという説明に対してちゃんとした説明はないんだけれども――――結論としては、とにかくジョルグジョルグさまは話は異常に長いという事なのである。
「……と言う訳で、ボクとしてはどうにかこのミライトリスを救いたい訳なんだよ。
魔王とは言ってもさ、元々この村で生まれた者としては自分の生まれた村が危機的状況に陥ってるならば助けたいと思うのは当然ですよね。自分の村が襲われてるなら、なんとかしなくちゃねぇ~。
けれども、こちらとしてもまずは村の防衛をしなくちゃいけなくてさぁ。
下手に人員を増やそうという訳にはいかないし、どれだけの力を持っているかは分からないから報酬も決め兼ねていて。けれども誰かがやらなくちゃいけないしねぇ、それなのにこちらからは人員が出せないし……」
じーっ、と何故かこちらに視線を強く向けて来るジョルグジョルグさま。
多分、頷いて欲しいという事なのだろうけれどもここで下手に頷いてはいけない。なにせ、けっこう気が遠くなるほどの話の中でジョルグジョルグさまは確かに――――
「――――えっとえと、話だけでも聞いたらどうかと思いますよ?」
――――けれども、そんな事を知らない者が居る。俺と一緒に来たソラハ・テンジョウイン。
彼女は長い話に飽き飽きしていたらしく、また目の前の護衛の圧力にびびっていたのか、とにかく彼女はこの長い話を止めたかったのだろう。
(俺だって、その意見には同意する。だが、ジョルグジョルグさまに対してその対応は――――)
「うんうん、そうだよねぇ~。それが普通の対応だよね。
じゃあ、事情を説明するね。後、説明を聞いたんだから、ちゃんと対応しといてよねぇ~」
「うぇっ……!?」
驚いているソラハではあるが、俺としては「なんてことをしてくれたんだ」とそれだけの気持ちでいっぱいだった。
長い、ながーい、ジョルグジョルグさまのお話。
そこでジョルグジョルグさまは話しの流れの中でこう言っていたのだ。
"話を聞いたら手伝ってくれるよね"。
"事情を説明したら、手伝ってくれるよね"。
"それなのにこちらからは人員が出せないし"。
つまり、事情を知った場合、強制的に手伝わされると言う事なのである。
長い話で退屈になるような話術を合わせて、その中で頷いたり了承したりしたら絶対に厄介事を押し付けられる。
これこそ、ジョルグジョルグさまが『ホウレンソウ』を知って思いついた手段。
――――「あれ、言ってなかったっけ?」なのである。
……了承してしまったからには仕方がない。
俺自身ではないにしても、彼女は俺の部下という形でここに入ってる。
それに、この状況で断ったりなんかしたら何をされる事になるやら……。
「とりあえず、君と戦ってほしい奴は2人。
1人目は【ジャック】の勇者メシア・キリサキと名乗っていましたねぇ。
とにかく、刃物を振り回している危ない男だとエルフさん達は言ってたなぁ。刃物には気をつけてね」
2人、か。案外もっと沢山対処されるかと思ってたから、少ないと感じた。
ソラハさんはと言うと、「ジャック……切り裂き……もしかして切り裂きジャック?」などとぶつくさと言っていたが、これはスルーして良いだろう。
「……で、問題はその2人目。
そもそも君達を呼ぼうと思ったのは、そいつが君達……タウくんに深く関係しているからさ」
「俺に、ですか?」
誰だろうと、頭の中にある程度該当する者を思い浮かべて行く。
ダンジョンマスターの際に雇っていた魔族や魔物?
それとも、ダンジョンに侵入してきた冒険者の生き残り?
――――いったい、誰だろう?
そんな事を考えていると、今までずっと黙っていた護衛の剣士が口を開く。
「主殿から言う必要もあるまい。
……そいつは【鉄格子】の魔王(仮)、ファンデス・ノトシクスと名乗っていた。
そう、お前と同じ魔王(仮)。しかも"ファンデス"と言うのはお前が、お前がダンジョンマスターになった時に初めて殺した冒険者の男の名前だっただろう?」
【大足】の魔王ジョルグジョルグさまによって、ミライトリスの村長の家へと案内される俺達。ちなみにササはあの後、重症者達の傷を治すために俺らとは別行動を取っている。
だからこの場に居るのは俺とソラハさん、マッチョスライム達。
それと向き合うのは魔王ジョルグジョルグとその部下である金属鎧の大男……恐らくは、ジョルグジョルグの直属の部下と言った所だろうか。雰囲気からしてみても、「お前らなんて一撃で殺すぜ」という威圧を漂わせている。
(あの剣士を怒らせてはいけないな、絶対に……。怒らせたら、こちらが一瞬で刈られる)
今までこの大男の剣士には、一度もお目にかかった事はなかった。
俺とジョルグジョルグさまの関係はさして短くはないが、それでもここまで露骨な護衛は初めてである。今まで見た事があるのは、えっと……
・コンビのインプ2人組
……赤い髪と青い髪の2人組の小悪魔魔物。
さして強くはないんだけれども、片方が逃げている間にもう片方がちまちまと攻撃して来るので相手にするのがうざい。
・宙に浮かぶマーメイド
……水の球に入ってぷかぷかと浮かんでいる、人魚の魔物さん。
常におっとりしていて話もハキハキと、水を操る魔法なはずなのに自分の入っている水ごと攻撃に利用するからなんだか物理攻撃のようになってしまう。
・フレイムエレファント
……炎を纏った象の魔物。
今挙げた中では一番強く、どっしりとしている。
けれどもいつも鼻歌を歌っている、変な魔物。
と言うよりも今までの護衛は、悪魔でも彼女の周囲を固めるという感じであった。
今から行う話の雰囲気を良くしようとしている感じの護衛だった。
というか、話の種になるような面白護衛ばかりだった。
実際、彼らが戦闘を行ったところを俺はほとんど見ておらず、どちらかと言えば話を柔かい方向に進める、場の雰囲気を和ませるような護衛達だった。
実際、ジョルグジョルグ様の【大足】の力があれば、護衛に頼らずとも人間の一個師団程度ならば軽く殲滅できるので、そこまで強い護衛が必要なかったのだろう。
――――けれども今回の護衛は違う。
今までのとは違い、本当の意味で相手を倒すために連れて来たタイプ。
という事は、こんな護衛を出すというほどに今の状況はまずいという事だろうか。
それは恐らく、ミライトリスのエルフ達が怪我を追っている事と大きく関わっている事だろう。
この元上司からどんな事を言われるのかと、しっかりと心に刻み込んで構えていると……ごほん、と一呼吸おいてからジョルグジョルグさまは言葉を告げ始める。
「実はこの辺りの地域に、大量の勇者が召喚されたのですよ。
先程もね、【粘着爆弾】の勇者タロウ・タイナカとか、【アメンボ】の勇者シンハ・ミズハリとかが攻めて来ちゃったからさ、仕方なくうちの兵士を使って助けたんだけれどもねぇ。
その時に自爆技を使われてそのせいでこの村のエルフ達が重傷。最悪だよ、まさか自爆するなんてさ」
「……それで、本題はいかがなんでしょうか?」
もし仮にそれで話が終わるのならば、ジョルグジョルグさまはわざわざ俺をこの村に呼ばなかっただろうし、いつもとは違うようなこんな強そうな護衛も用意しなかっただろう。
怪我をしたから治療を手伝えとは言っても、今回はササが役立っただけであって、俺が役立ったわけではない。
俺が治療に秀でている訳ではないのは、ジョルグジョルグさまだって良くご存じのはずだ。
――――だから、問題はそこではない。
「いやー、あいかわらずタウくんはつまらないねぇ~。話をする前から1人でサクサクと事業を進めてくれるのは長所ではあるけれども、勝手にサクサクと進めるのは良くないねぇ~。そこはマイナスだよ。
物事には話す内容に応じて順序立ててやると言う事があってだねぇ~、それをきちんと理解した上で話すというのがぁ~……」
(相変わらず、長くなりそうだ)
と、元上司のいつもの長話を聞きながら、いつもの事だと諦める俺。
元上司の一番の十八番、《ホウレンソウ》。
異界から来た勇者によって伝えられた、上司と部下との報告・連絡・相談なる戦術にとても感銘を受けたらしく、ジョルグジョルグさまはそれを部下であるダンジョンマスターや護衛達とのコミュニケーションを大事にしている。
だが、その報告・連絡・相談が長い。ほんとーに、異様に長いのだ。
ある者は言った、「ジョルグジョルグさまは長命で有名なエルフであるから、それ故に我々にとっては長く感じる事もジョルグジョルグさまにとっては些細な会話程度なのだ」と。
勿論、エルフは長命だが、そこまで話は長くない。
またある者は言った、「ジョルグジョルグさまは他者との交流を大事にされているお方、故に1人1人の時間を大切にされている。だから長くなってしまうのだ」と。
その者はうっかりジョルグジョルグさまのおやつを食べてしまって以来、行方知れずとなった。
……とまぁ、色々と彼女が何故話が長いのかという説明に対してちゃんとした説明はないんだけれども――――結論としては、とにかくジョルグジョルグさまは話は異常に長いという事なのである。
「……と言う訳で、ボクとしてはどうにかこのミライトリスを救いたい訳なんだよ。
魔王とは言ってもさ、元々この村で生まれた者としては自分の生まれた村が危機的状況に陥ってるならば助けたいと思うのは当然ですよね。自分の村が襲われてるなら、なんとかしなくちゃねぇ~。
けれども、こちらとしてもまずは村の防衛をしなくちゃいけなくてさぁ。
下手に人員を増やそうという訳にはいかないし、どれだけの力を持っているかは分からないから報酬も決め兼ねていて。けれども誰かがやらなくちゃいけないしねぇ、それなのにこちらからは人員が出せないし……」
じーっ、と何故かこちらに視線を強く向けて来るジョルグジョルグさま。
多分、頷いて欲しいという事なのだろうけれどもここで下手に頷いてはいけない。なにせ、けっこう気が遠くなるほどの話の中でジョルグジョルグさまは確かに――――
「――――えっとえと、話だけでも聞いたらどうかと思いますよ?」
――――けれども、そんな事を知らない者が居る。俺と一緒に来たソラハ・テンジョウイン。
彼女は長い話に飽き飽きしていたらしく、また目の前の護衛の圧力にびびっていたのか、とにかく彼女はこの長い話を止めたかったのだろう。
(俺だって、その意見には同意する。だが、ジョルグジョルグさまに対してその対応は――――)
「うんうん、そうだよねぇ~。それが普通の対応だよね。
じゃあ、事情を説明するね。後、説明を聞いたんだから、ちゃんと対応しといてよねぇ~」
「うぇっ……!?」
驚いているソラハではあるが、俺としては「なんてことをしてくれたんだ」とそれだけの気持ちでいっぱいだった。
長い、ながーい、ジョルグジョルグさまのお話。
そこでジョルグジョルグさまは話しの流れの中でこう言っていたのだ。
"話を聞いたら手伝ってくれるよね"。
"事情を説明したら、手伝ってくれるよね"。
"それなのにこちらからは人員が出せないし"。
つまり、事情を知った場合、強制的に手伝わされると言う事なのである。
長い話で退屈になるような話術を合わせて、その中で頷いたり了承したりしたら絶対に厄介事を押し付けられる。
これこそ、ジョルグジョルグさまが『ホウレンソウ』を知って思いついた手段。
――――「あれ、言ってなかったっけ?」なのである。
……了承してしまったからには仕方がない。
俺自身ではないにしても、彼女は俺の部下という形でここに入ってる。
それに、この状況で断ったりなんかしたら何をされる事になるやら……。
「とりあえず、君と戦ってほしい奴は2人。
1人目は【ジャック】の勇者メシア・キリサキと名乗っていましたねぇ。
とにかく、刃物を振り回している危ない男だとエルフさん達は言ってたなぁ。刃物には気をつけてね」
2人、か。案外もっと沢山対処されるかと思ってたから、少ないと感じた。
ソラハさんはと言うと、「ジャック……切り裂き……もしかして切り裂きジャック?」などとぶつくさと言っていたが、これはスルーして良いだろう。
「……で、問題はその2人目。
そもそも君達を呼ぼうと思ったのは、そいつが君達……タウくんに深く関係しているからさ」
「俺に、ですか?」
誰だろうと、頭の中にある程度該当する者を思い浮かべて行く。
ダンジョンマスターの際に雇っていた魔族や魔物?
それとも、ダンジョンに侵入してきた冒険者の生き残り?
――――いったい、誰だろう?
そんな事を考えていると、今までずっと黙っていた護衛の剣士が口を開く。
「主殿から言う必要もあるまい。
……そいつは【鉄格子】の魔王(仮)、ファンデス・ノトシクスと名乗っていた。
そう、お前と同じ魔王(仮)。しかも"ファンデス"と言うのはお前が、お前がダンジョンマスターになった時に初めて殺した冒険者の男の名前だっただろう?」
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