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魔王(仮)と、黄色のお相手。
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「「ここは異世界。強き者、力ある者のみが正しい世界なんだろう?
――――それならば、こんな凄い能力を手に入れた俺こそが正義だろう?」」
雲の中から現れた、気味が悪い巨大な化け物。
身体から生える無数の腕や手、それから足。
牙がむき出しの大きな口。
背中から生える大量の短刀や弓矢を持った人間の上半身。
(……少なくともあの姿は、勇者ではないだろう)
――――勇者なんかよりかは、むしろ俺達魔族に近いだろう。
あんな醜悪な生き物と一緒にされるのは、ごめんこうむりたい所ではあるけれども。
「「お前らをぶっ倒して、エルフなんかより凄い経験値を手に入れて成長しちゃうよぉ~ん!」」
大きな口からたらんと涎を出して、化け物の身体から生えている幾人かの身体の上半身は手にしている弓矢をこちらに向けていた。そしてばんっ、と弦を大きく張ると、そのまま弓矢を射っていた。
「ひっ、ひぃっ!」
ソラハ・テンジョウインは怯えながら、そのまま樹の後ろに隠れる。
俺も同じく、彼女とは別の樹の後ろに隠れる。
怪物から出ている数多もの上半身が弓矢がそのまま射る。樹木の幹を貫くようにして、怪物の放つ弓矢は俺のすぐ横を通り抜けていた。
あと数センチずれていればどうなっていたかは分からない、そんな弓矢を俺は横目で見ていた。
(や、やべぇ……当たってたら、ヤバかっただろう)
弓矢自体に特殊な細工がされている訳ではない。
確かに弓矢の先端は鋭く磨かれてはいるが、それだって許容の範囲内である。
今、敵は鋭い弓矢を射っただけ。普通に考えれば、この弓矢で木の幹を貫くのは無理だという但し書きの説明が付随するが、それでも相手の異常性は十分に理解した。
身体と一緒にある上半身に気を取られるが、本当に重要なのはその身体。
彼の身体……と言って良いのか分からないが、あの上半身はどう考えても戦闘慣れした人間のものではない。
先程、弓矢を引く際に彼の腕は本来、身体の構造的に伸びない位置まで腕が伸びきっていた。
それから考えるに、あの腕……もしくは身体全体になにか細工があると考えるべきだ。
「どちらにせよ、ともかくどうにかしないとなぁ……」
ソラハさんはあんな感じで、なおかつササの姿も見えない。
うちに残された戦力は後はスライム達だけ……なんだが……。
「ぷっ、ぷるるぅ! (かかってこいよぉ!)」
「ぷるぅ! (ビビってるんじゃねぇ!)」
「ぽにょぽにょっ! (やってやるぜぇ!)」
威勢は良い、別に退こうとしている訳でもない。
ただ、お前らが殴っても、別に相手にダメージになってる感じが一切ないんだが! そう、立ち向かってくれてても、相手にされてなければ意味はないのだ。
まったくダメージになってないし……。
あいつら、完全にメシア……いや、怪物から無視されてるじゃないか。相手にされてないじゃん。
「俺が行こうにもなぁ……」
俺のステータスは以下の通り。
=====
名前;マスティス・タウスト
職業;元ダンジョンマスター 【混色】の魔王 魔王(仮)
保有スキル;魔物使役 剣術Lv.2 猛毒耐性 混色能力
評価;D-(最大Sー最低F)
=====
正直言って、化け物と対峙するような感じではない。
それなのにも関わらず、今残っている戦力じゃなぁ……。
「ソラハさんっ! や、やってくれないか!」
「やっ、やってみます!」
そう言って彼女は青いオーラを纏った雷を作り出すと、そのまま化け物勇者に向かって放つ。
青い力の影響を受け、雷にしてはかなり襲いながらも、その雷は着実に大きさを増して、化け物勇者へと向かっていた。
「「デカい雷だねぇ! でも、そーいうのは俺には通用しないのだぁ!」」
そう言うと、化け物勇者の身体の中でも一番大きい口。身体の真ん中につけられた、あの巨体の半分以上もある口がくちゃくちゃと動き始める。
くちゃくちゃ、くちゃくちゃ。
――――ぺっ!
大きな口から吐き出されたのは、あいつの身体だった。
顔、身体、腕、足。全てが付けられた、だけれども人形のような印象しか感じられないその身体は、ソラハさんが出した雷を受けて、そのまま爆発する。
爆発して、黒焦げになったあいつの身体はくちゃり、と鈍い音と共に地面に激突した。
「ひぃっ! め、めぇ!」
コロコロと転がって来た敵の目、それを見てソラハさんはさらにビクビクと怖がる。
動かないとは言え、黒焦げになった眼は、どうやらあまり戦闘慣れしていない彼女には酷だったらしい。
「「奥儀、自分身代わり!
俺は自分の身体を制限なく、いくらでも、何体でも、生み出す事が出来る! その能力さえあれば、いかに凄い能力であろうとも、自分の身体で止めてやるよぉ!」」
「くっ……! 化け物め……」
考え方が危なすぎる。
いくら大丈夫だとは言え、自分の身体そのものを盾にする発想を平気でやってのける精神性。
それについては、敵ながら尊敬する。俺はあんな身体になりたいとは思えない。あんな方法を取りたいとは思えない。
――――いや、そんな狂った精神だからこそ、あんな怪物に見える身体を作り上げたのかも知れないが。
「……【スラッシュ】!」
サッと近寄り、剣で化け物の身体を斬る。斬ると共に血がタラァと流れ、血が地面へと落ちるよりも先にボコッと新たな顔が現れてこちらにニヤリと睨み付けていた。
「「「ひひっ! 今のは、剣技か何か? 蚊か、なにかかと思った――――ぜっ!」」」
そして、ぶくぶくと肥大化した気味の悪いメシアの巨体。その巨体の上から生える何人もの上半身がこちらに弓を構え、俺に向かって一斉に弓矢を放っていた。
放たれた弓矢は真っ直ぐに俺の身体へと、二、三本の弓矢が深々と刺さっていた。
「くっ……!」
「「「まっだ、まだ、イッくよぉ~!」」」
今度は弓矢なんかではなく、自慢の巨体をそのままこちらへと踏みつぶさんと向かって来ていた。
――――踏まれる?!
そう思った瞬間、俺の周囲をメシアの巨体ごと青いオーラが包み込む。
青いオーラに包まれると、途端にメシアの巨体の動きが目に見えて遅くなる。
「――――マスティスさん!」
ゆらりゆらり、と遅れながらもこちらへと着実に向かって来るメシアの巨体。
逃げようとしようとするも、俺の身体も青い力の影響なのか、ゆっくりとしか動けない。
そんな中、俺を連れ出したのはソラハさん。
メシアの巨体で踏みつぶされない所まで移動すると、「大丈夫ですか?」と声をかけて来る。
「……【青の力】、か。便利だな、本当に」
物を遅くする力。
物体の速度を純粋に遅くする力と言うのは、それだけでも十分に強力な能力だ。
「……えっと、マスティスさん。あの魔王さんに助けを求めるのは、ダメ、なんでしょうか?」
「ジョルグジョルグさまに、か」
確かにジョルグジョルグさま、【大足】の魔王さまなら、この程度の危機なんて余裕で対処出来るだろう。
いくら、自分の身体を無限に増やせる能力と言っても、無敵じゃない。
ここで逃げて、その結果としてコイツがジョルグジョルグさまの元へと向かえば、恐らくはジョルグジョルグさまの力によってコイツは倒されるだろう。
そう。今、俺がすべきなのはこの場を切り抜ける事。逃げ延びる事。
そうして、後でジョルグジョルグさまに謝って――――
(いや、違うな)
確かに今まではそれで良かった。
けれども、今はそうではいかない。
折角、魔王さまから離れて独立してのんびり過ごしたいと思っているのに、その魔王さまに助けを求めてたら意味がない。
そうなったら恐らく、"癖"になる。
もし厄介な問題が起きれば上に任せる、そして彼らが用意する仕事をこなす日々。
それじゃ、前と何も変わらない。
クビになる前と一緒じゃないか……。
「いっ、いやだ!」
これ以上、面倒に関わりたくない!
あんな生活、望んでしたいと思っているのか!
嫌だ、嫌だ嫌だ、嫌だっ!
(俺は(仮)とは言え、一応は魔王。それなのに、いつまでも逃げ続けるのはどうなんだ? 俺?)
戦いたくはない、それは事実。
だからと言って、負けたい訳ではない。
俺が目指しているのは、平穏な生活。それなのに、こうやってビクビクしながら、「勇者来ないかな~、来なければ良いな~」はまっぴらだ。
いざとなった時、こうして逃げ惑っているのはごめんである。
こうなった時に対抗出来る戦力、それがあるだけでも安心。
備えあれば、憂いなし。
(――――一応、方法はあるにはある)
試してはいないが、恐らく可能なはずだ。
……いや、可能であってほしい。お願いします、となにかに祈りたいような気持だけど。
人間……いや、魔族もそう簡単には変われないね。
あんなに息巻いても、結局は出来るかどうかビクついている。
=====
名前;マスティス・タウスト
職業;元ダンジョンマスター 【混色】の魔王 魔王(仮)
保有スキル;魔物使役 剣術Lv.2 猛毒耐性 混色能力
評価;D-(最大Sー最低F)
【混色】の魔王
……【混色】を司る魔王。あらゆるものに色を付け加える事ができる。色によって得られる能力が違ってくる。
【レベル1】
・配下の魔物に色を付け加える事が出来る。
・使える色は【赤】、【青】、【黄】。
=====
俺の能力は、"配下の魔物に色を付け加える事が出来る"と書かれている。
――――だが、そもそも配下とはなんだ?
自分の下の者、つまりは自分が"こいつは自分の意思に従ったり、助けてくれるんじゃないか?"と思う者だと思う。
マッチョスライム達は指示に従って、穴を掘ってくれた。
ソラハさんは契約に同意してくれた、今も助けてくれた。
ササは……まぁ、一応着いて来てくれてるし……。
じゃあ、これならどうだ?
「自分の意思に従う者……それの原典……」
俺は、混色能力を用いて黄色の筆を出す。
赤はササに。
青はソラハさんに。
そして、黄色は"ソレ"に。
「俺の指示に従うのが配下だと仮定したら……"俺が動かす俺自身の身体"だって、行ける!」
俺は、躊躇うことなく、ステータス画面に黄色い筆をぶち当てる。
上手くいくかは分からない、けれどもその時だけは上手く行く事を信じて。
=====
【混色】の魔王 レベル1の条件を"満たしました"。
【混色】の魔王 マスティス・タウストに対して能力を使用できます
……能力の使用を確認
……Error
……能力の使用が途中で停止しました
……仮想領域化で、能力のインストールを再開
……及び、能力の対象を一部変更
……【混色】の魔王のステータスに、【黄の力】をインストールします
=====
――――そして、俺の視界が黄色一色に染まった。
――――それならば、こんな凄い能力を手に入れた俺こそが正義だろう?」」
雲の中から現れた、気味が悪い巨大な化け物。
身体から生える無数の腕や手、それから足。
牙がむき出しの大きな口。
背中から生える大量の短刀や弓矢を持った人間の上半身。
(……少なくともあの姿は、勇者ではないだろう)
――――勇者なんかよりかは、むしろ俺達魔族に近いだろう。
あんな醜悪な生き物と一緒にされるのは、ごめんこうむりたい所ではあるけれども。
「「お前らをぶっ倒して、エルフなんかより凄い経験値を手に入れて成長しちゃうよぉ~ん!」」
大きな口からたらんと涎を出して、化け物の身体から生えている幾人かの身体の上半身は手にしている弓矢をこちらに向けていた。そしてばんっ、と弦を大きく張ると、そのまま弓矢を射っていた。
「ひっ、ひぃっ!」
ソラハ・テンジョウインは怯えながら、そのまま樹の後ろに隠れる。
俺も同じく、彼女とは別の樹の後ろに隠れる。
怪物から出ている数多もの上半身が弓矢がそのまま射る。樹木の幹を貫くようにして、怪物の放つ弓矢は俺のすぐ横を通り抜けていた。
あと数センチずれていればどうなっていたかは分からない、そんな弓矢を俺は横目で見ていた。
(や、やべぇ……当たってたら、ヤバかっただろう)
弓矢自体に特殊な細工がされている訳ではない。
確かに弓矢の先端は鋭く磨かれてはいるが、それだって許容の範囲内である。
今、敵は鋭い弓矢を射っただけ。普通に考えれば、この弓矢で木の幹を貫くのは無理だという但し書きの説明が付随するが、それでも相手の異常性は十分に理解した。
身体と一緒にある上半身に気を取られるが、本当に重要なのはその身体。
彼の身体……と言って良いのか分からないが、あの上半身はどう考えても戦闘慣れした人間のものではない。
先程、弓矢を引く際に彼の腕は本来、身体の構造的に伸びない位置まで腕が伸びきっていた。
それから考えるに、あの腕……もしくは身体全体になにか細工があると考えるべきだ。
「どちらにせよ、ともかくどうにかしないとなぁ……」
ソラハさんはあんな感じで、なおかつササの姿も見えない。
うちに残された戦力は後はスライム達だけ……なんだが……。
「ぷっ、ぷるるぅ! (かかってこいよぉ!)」
「ぷるぅ! (ビビってるんじゃねぇ!)」
「ぽにょぽにょっ! (やってやるぜぇ!)」
威勢は良い、別に退こうとしている訳でもない。
ただ、お前らが殴っても、別に相手にダメージになってる感じが一切ないんだが! そう、立ち向かってくれてても、相手にされてなければ意味はないのだ。
まったくダメージになってないし……。
あいつら、完全にメシア……いや、怪物から無視されてるじゃないか。相手にされてないじゃん。
「俺が行こうにもなぁ……」
俺のステータスは以下の通り。
=====
名前;マスティス・タウスト
職業;元ダンジョンマスター 【混色】の魔王 魔王(仮)
保有スキル;魔物使役 剣術Lv.2 猛毒耐性 混色能力
評価;D-(最大Sー最低F)
=====
正直言って、化け物と対峙するような感じではない。
それなのにも関わらず、今残っている戦力じゃなぁ……。
「ソラハさんっ! や、やってくれないか!」
「やっ、やってみます!」
そう言って彼女は青いオーラを纏った雷を作り出すと、そのまま化け物勇者に向かって放つ。
青い力の影響を受け、雷にしてはかなり襲いながらも、その雷は着実に大きさを増して、化け物勇者へと向かっていた。
「「デカい雷だねぇ! でも、そーいうのは俺には通用しないのだぁ!」」
そう言うと、化け物勇者の身体の中でも一番大きい口。身体の真ん中につけられた、あの巨体の半分以上もある口がくちゃくちゃと動き始める。
くちゃくちゃ、くちゃくちゃ。
――――ぺっ!
大きな口から吐き出されたのは、あいつの身体だった。
顔、身体、腕、足。全てが付けられた、だけれども人形のような印象しか感じられないその身体は、ソラハさんが出した雷を受けて、そのまま爆発する。
爆発して、黒焦げになったあいつの身体はくちゃり、と鈍い音と共に地面に激突した。
「ひぃっ! め、めぇ!」
コロコロと転がって来た敵の目、それを見てソラハさんはさらにビクビクと怖がる。
動かないとは言え、黒焦げになった眼は、どうやらあまり戦闘慣れしていない彼女には酷だったらしい。
「「奥儀、自分身代わり!
俺は自分の身体を制限なく、いくらでも、何体でも、生み出す事が出来る! その能力さえあれば、いかに凄い能力であろうとも、自分の身体で止めてやるよぉ!」」
「くっ……! 化け物め……」
考え方が危なすぎる。
いくら大丈夫だとは言え、自分の身体そのものを盾にする発想を平気でやってのける精神性。
それについては、敵ながら尊敬する。俺はあんな身体になりたいとは思えない。あんな方法を取りたいとは思えない。
――――いや、そんな狂った精神だからこそ、あんな怪物に見える身体を作り上げたのかも知れないが。
「……【スラッシュ】!」
サッと近寄り、剣で化け物の身体を斬る。斬ると共に血がタラァと流れ、血が地面へと落ちるよりも先にボコッと新たな顔が現れてこちらにニヤリと睨み付けていた。
「「「ひひっ! 今のは、剣技か何か? 蚊か、なにかかと思った――――ぜっ!」」」
そして、ぶくぶくと肥大化した気味の悪いメシアの巨体。その巨体の上から生える何人もの上半身がこちらに弓を構え、俺に向かって一斉に弓矢を放っていた。
放たれた弓矢は真っ直ぐに俺の身体へと、二、三本の弓矢が深々と刺さっていた。
「くっ……!」
「「「まっだ、まだ、イッくよぉ~!」」」
今度は弓矢なんかではなく、自慢の巨体をそのままこちらへと踏みつぶさんと向かって来ていた。
――――踏まれる?!
そう思った瞬間、俺の周囲をメシアの巨体ごと青いオーラが包み込む。
青いオーラに包まれると、途端にメシアの巨体の動きが目に見えて遅くなる。
「――――マスティスさん!」
ゆらりゆらり、と遅れながらもこちらへと着実に向かって来るメシアの巨体。
逃げようとしようとするも、俺の身体も青い力の影響なのか、ゆっくりとしか動けない。
そんな中、俺を連れ出したのはソラハさん。
メシアの巨体で踏みつぶされない所まで移動すると、「大丈夫ですか?」と声をかけて来る。
「……【青の力】、か。便利だな、本当に」
物を遅くする力。
物体の速度を純粋に遅くする力と言うのは、それだけでも十分に強力な能力だ。
「……えっと、マスティスさん。あの魔王さんに助けを求めるのは、ダメ、なんでしょうか?」
「ジョルグジョルグさまに、か」
確かにジョルグジョルグさま、【大足】の魔王さまなら、この程度の危機なんて余裕で対処出来るだろう。
いくら、自分の身体を無限に増やせる能力と言っても、無敵じゃない。
ここで逃げて、その結果としてコイツがジョルグジョルグさまの元へと向かえば、恐らくはジョルグジョルグさまの力によってコイツは倒されるだろう。
そう。今、俺がすべきなのはこの場を切り抜ける事。逃げ延びる事。
そうして、後でジョルグジョルグさまに謝って――――
(いや、違うな)
確かに今まではそれで良かった。
けれども、今はそうではいかない。
折角、魔王さまから離れて独立してのんびり過ごしたいと思っているのに、その魔王さまに助けを求めてたら意味がない。
そうなったら恐らく、"癖"になる。
もし厄介な問題が起きれば上に任せる、そして彼らが用意する仕事をこなす日々。
それじゃ、前と何も変わらない。
クビになる前と一緒じゃないか……。
「いっ、いやだ!」
これ以上、面倒に関わりたくない!
あんな生活、望んでしたいと思っているのか!
嫌だ、嫌だ嫌だ、嫌だっ!
(俺は(仮)とは言え、一応は魔王。それなのに、いつまでも逃げ続けるのはどうなんだ? 俺?)
戦いたくはない、それは事実。
だからと言って、負けたい訳ではない。
俺が目指しているのは、平穏な生活。それなのに、こうやってビクビクしながら、「勇者来ないかな~、来なければ良いな~」はまっぴらだ。
いざとなった時、こうして逃げ惑っているのはごめんである。
こうなった時に対抗出来る戦力、それがあるだけでも安心。
備えあれば、憂いなし。
(――――一応、方法はあるにはある)
試してはいないが、恐らく可能なはずだ。
……いや、可能であってほしい。お願いします、となにかに祈りたいような気持だけど。
人間……いや、魔族もそう簡単には変われないね。
あんなに息巻いても、結局は出来るかどうかビクついている。
=====
名前;マスティス・タウスト
職業;元ダンジョンマスター 【混色】の魔王 魔王(仮)
保有スキル;魔物使役 剣術Lv.2 猛毒耐性 混色能力
評価;D-(最大Sー最低F)
【混色】の魔王
……【混色】を司る魔王。あらゆるものに色を付け加える事ができる。色によって得られる能力が違ってくる。
【レベル1】
・配下の魔物に色を付け加える事が出来る。
・使える色は【赤】、【青】、【黄】。
=====
俺の能力は、"配下の魔物に色を付け加える事が出来る"と書かれている。
――――だが、そもそも配下とはなんだ?
自分の下の者、つまりは自分が"こいつは自分の意思に従ったり、助けてくれるんじゃないか?"と思う者だと思う。
マッチョスライム達は指示に従って、穴を掘ってくれた。
ソラハさんは契約に同意してくれた、今も助けてくれた。
ササは……まぁ、一応着いて来てくれてるし……。
じゃあ、これならどうだ?
「自分の意思に従う者……それの原典……」
俺は、混色能力を用いて黄色の筆を出す。
赤はササに。
青はソラハさんに。
そして、黄色は"ソレ"に。
「俺の指示に従うのが配下だと仮定したら……"俺が動かす俺自身の身体"だって、行ける!」
俺は、躊躇うことなく、ステータス画面に黄色い筆をぶち当てる。
上手くいくかは分からない、けれどもその時だけは上手く行く事を信じて。
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【混色】の魔王 レベル1の条件を"満たしました"。
【混色】の魔王 マスティス・タウストに対して能力を使用できます
……能力の使用を確認
……Error
……能力の使用が途中で停止しました
……仮想領域化で、能力のインストールを再開
……及び、能力の対象を一部変更
……【混色】の魔王のステータスに、【黄の力】をインストールします
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――――そして、俺の視界が黄色一色に染まった。
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