父親令嬢 ~やめて! 人を勝手に父親にしないで! 娘も、母親も要らないから!!~

摂政

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悪逆非道のトラブルメーカー

第30話 エピローグ

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 ----その後の話。

 アトラク・ナクアによる、校舎溶解事件はアイリス王女、そして渦中の人物たるヴェルベーヌ・シャルマン公爵令嬢によって、一応の集束を得た。



 渦中の人物ならぬ、渦中の巨大蜘蛛たるアトラク・ナクアに関しては、アイリス王女様が、偶然・・持っていた勇者お手製の魔道具とやらが役に立った。
 勇者様達の中には道具作成に優れた勇者が数多くおり、その中には変態的(勇者曰く誉め言葉らしい)な技術を持っていて、魔法のような効果を発揮する道具、略して魔道具が王家には数多く保管されている。

 その中の1つに、『身につけた者を強制的にメイド姿に変える』という魔道具があった。
 なんでそんなものを作ったのかは、アイリス王女様にも、無論私なんかにも分かりっこないが、ともかくその魔道具によってアトラク・ナクアは、蜘蛛の特徴を有したメイドになった。
 プラタナス・ザエ辺境伯が狐耳を生やしているかのように、アトラク・ナクアは蜘蛛の脚6本を背中から生やしたメイドさんになったのである。

 アトラク・ナクアは別に、世界を滅ぼしたい欲求に駆られている訳ではない。
 ただ単に、シャルマン様に喜んで欲しい----その方法が、世界の破壊しか知らなかったという、それだけのバケモノであった。

 そして、渦中の人物たるヴェルベーヌ・シャルマン公爵令嬢はと言うと----


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「----助けてくれて、ありがとうございますぅ!」

 バッ、と。

 土下座をしたヴェルベーヌ嬢。


「----え? ナニコレ?」

 
 目を覚ました私は、いきなり土下座しているルームメイト令嬢の姿に呆然としていた。
 いや、なんで目を覚ますと、こうなってるの?

「話は、アイリス王女殿下から聞きました。魔法暴走をしている私を助けるために、来てくださったと」
「あぁ、うん。そうですね」

 アイリス王女からは、このヴェルベーヌ嬢が厄介な魔法、『自分を愛させる魔法』を暴走させてしまったと聞いていた。
 つまり自分で自分を愛しちゃう、ナルシストになっちゃって、それで自分以外が必要ないと思って世界を滅ぼす悪者になっちゃたって。

 なんでナルシストになると、悪者になるのかは、私にはさっぱり分かんないんだけど。

「魔法で困っている人、魔法で助けられる人が助ける。それが貴族としてのあたりまえ、『貴族の流儀ノブレス・オブリージュ』でしょ?」
「のぶれ……なるほど。貴族って、その力で人を助けるべきなんだ」

 「なるほど、なるほど」とメモするヴェルベーヌ嬢。

「そう言えば、なんだけど」
「----? なんですか、カリカ様?」

 え? カリカ?
 なんで男爵令嬢の私、公爵令嬢のヴェルベーヌ嬢が様付けなのかは分からなかったのだが、私は聞きたいことがあった。

「暴走した魔法は、どうなったんでしょう? 私、その辺りを覚えてなくて」

 最後に覚えているのは、彼女をビンタしたことだけだ。

 悪いことをしている子供を止める時は、愛がこもったビンタが一番効く。
 ……ちなみにこれ、実体験だったりする。

 母さん、私が令嬢っぽくない木登りとかすると、むちゃくちゃビンタして説教して来るからなぁ。
 アレを喰らうと、もうやりたくないって、子供ながらに理解できるから、ほんとオススメ。
 ……まぁ、それで懲りなくて怒られてた私が言っても、説得力皆無だったりするかもですが。


「魔法は……制御可能になりました!」


 「宿題は終わらせました!」くらいの、子供みたいなテンションでそう報告してくるヴェルベーヌ嬢。

「そうなんだ、えっとどうやって?」
「なんかこう、『制御可能になれ~』と願ったら自然と」
「…………」

 えっ、雑ぅ?!

 いや、確かにヴェルベーヌ嬢の魔法って『自分を愛させる魔法』、つまりヴェルベーヌ嬢の幸せになるように色々なモノを魅了させてしまう魔法。
 ヴェルベーヌ嬢自身が、幸せになるために、魔法を制御可能にしたいと願えば、そうなるのは自然かもしれない。

 ……なんか釈然としないんだけど。

「学校の方も、なんかこう、制御可能となった魔法で『学校を直したいな~』と思ってたら、まぁ自然と?
 あと、なんかこう、『迷惑をかけた皆にお詫びしたいな~』と思ったら、まぁそれなりに?」
「なんかこう、ですか」
「それとなく、と言った方が良いです?」

 いや、それ、ほとんど意味合い的には一緒だから。

 ……ともかく、ヴェルベーヌ嬢が起こした問題は全て解決。
 つまりは、彼女が『悪役令嬢』となった経緯いきさつの諸々の問題は、全て解決したという訳だ。

 願うだけで叶うだなんて、ほんと凄いよな、その魔法。


「そ、それでなんですけど。カリカ様」
「様付けなのは気になるけど……うん、どうしたの?」

 私がそう言うと、彼女は涙目でウルウルと、懇願するかのように私の手を掴む。

「是非、あの愛がこもったビンタをくださったカリカ様を、お姉様とお呼びしたく!」
「え……?」

 あの、なんで『愛がこもったビンタ』の部分で、めちゃくちゃ頬を赤らめるんです?
 あなた、ドМに目覚めてません?

「でも、カリカ様は家族制度で、父親をやられてるんですよね……アイリス王女殿下からお聞きしました」
「うん、まぁ」

 半ば強制的に。

「という訳で、私もその制度の中にて、お手伝いさせていただきたく!」

 そして、ヴェルベーヌ嬢は私にこう嘆願してきた。


「----お父さんと結婚したい娘ってのも、居ると思うんですけど?!」


 私、それにどう返したら良いか分かんないんだけど……。


 この後、ヴェルベーヌ嬢は正式に家族制度の一員、お父さんと結婚したがる三女となって、私達を困らせる事になるんだけど。

 それはまぁ、また別の話。
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