配信スローライフをしてたら、相方のゴーレムがアップをはじめたようです

摂政

文字の大きさ
156 / 458

第156話 スコティッシュさんと、ジュールについて話そう配信

しおりを挟む
「ではこちらの、魔道具【ワッフルメーカー】の設計図。買わせていただきます、ニャ」
「はい、ではこちらを」

 いつものように、私は魔道具【ワッフルメーカー】の設計図を、ドラスト商会のスコティッシュさんに売り払った。いつも設計図をドラスト商会に販売譲渡している私だが、今回の設計図に関しては、いつもよりお安めに販売しておいた。
 というのも、魔道具【ワッフルメーカー】の需要は、さほどないと判断したから。

 この魔道具、"フライパンを2つくっつける事"。そして"特徴的な格子状になるように凹凸をつける事"の2つをクリアすれば、ある程度似たような魔道具を作る事は出来る。
 ある程度の錬金術師としての知識、そして私の配信を見れば、設計図なしでも魔道具【ワッフルメーカー】を作る事は簡単に出来るだろう。

 それに、【ワッフルメーカー】自体の需要もあまりない。
 この魔道具はワッフル作成に特化しすぎているから、他のお菓子に流用出来ない。ワッフル自体も、他のお菓子と比べると然程需要が高いとは言えないし、汎用性があるとも言えない。

「だから遠慮なく、この金額で了承してくださいね」
「ニャーハハハッ! 確かにこれはさほど大きな取引に使えそうにない、ニャア。正直な話、盟主様の命でなければもう少し考えさせてもらっていた、ニャアね」

 ……御用商人も、大変なんだな。うん。

「そういえば、ドラスト商会に納品したジュールはどんな感じですか?」

 ジュールとは、私がドラスト商会の頼みで納品した、【アルファ・ゴーレムサポートシステム】搭載のゴーレムである。
 ドラスト商会の食堂でいまは働いている、ラーメン魂に満ちたゴーレムであり、以前まえに聞いた話だとすると、かなり多くの人間にジュールが作っているラーメンは愛されているんだとか。

「(ただ、最近どうしているのかについては、まったく話を聞いてたんだけど)」

 一応、【アルファ・ゴーレムサポートシステム】に中継しているから、ベータちゃんやガンマちゃんに聞けば自然と情報を把握できるんだが、それで把握できるのは、あくまでもジュール視点の話。
 別の人からの話というのは、やっぱり合った方が良いと思うからね。

 私がそう聞くと、スコティッシュさんは汗をタラ―ッと流し始める。なんか、すっごく話し辛い雰囲気を出しているんだけど……。

「(えっ、なに? ジュールってば、商人さんにそう思われるようなナニカをしているの?)」

 私は「なにかやらかしましたか、うちのジュールが?」と聞く。
 既にドラスト商会に納品済みとはいえ、ジュールはうちの商品。商品に問題があったのなら、アフターサービスとかで対処するのは、錬金術師として当然の反応である。


「いえっ……その、実は……ラーメンで国が分かれる事態になりまして」


「えっ? 国が?」

 どういう事かと話を聞くと、うちのジュールちゃんが作ったラーメンは国中をあげて、大ヒット。その売り上げで、ドラスト商会は食堂部門でかなりの黒字になったらしい。

 ----問題はその後。

 ジュールが作るラーメンが好きな連中が増えると、彼らは「ラーメンが好き。その中でも特にこの味が好き!」という話に発展し、それが商会規模の大問題に発展しているのだとか。
 ラーメンが流行った影響で、「自分は塩味派」だの、「私は味噌味しか認めない」だの、自分の好きな味が一番という派閥が出来てしまった。そして、同じ味が好きな者同士だけで組むようになり、ドラスト商会内でも5つ近くの派閥が出来てしまい、正直、困っているんだとか。

「"この商品を売るには、この商人がいると便利~"みたいなのも、派閥が出来てからは頼み辛くなりました、ニャ。果ては、ドラゴンと味が好みが違うという理由だけで、ドラゴンに乗れなくなってしまった者も居まして……」
「ドラゴンですら魅了しちゃったか、うちのドラゴン……」

 ともかく、うちのジュールのラーメンがあまりに旨すぎるせいで、シュンカトウ共和国が大変になっているんだとか。

「(ラーメン一強がマズかったか……)」

 ドラスト商会の、食堂の利用率を少し上げる程度という問題であったから、ラーメンしかメニューがないという方向でいたんだけれども、まさかラーメンでそんな風になるとは思いもしなかったなぁ……。

「なんとか、なったりします、ニャ?」
「今すぐは無理ですかね……ジュールはラーメン特化で作ってますので」

 魔道具【ワッフルメーカー】と一緒だ。初めから『〇〇を作る事に特化』という形で作っているので、後から別の機能を追加するとかがし辛いんだよね……。
 そもそも、ラーメン作り以外をするように向いていないというか。そういう風に作っていないというか。いまさら、ラーメン以外を作るように改造するのは無理というか。

「そのために、今日はうちのシガラキ代表からお願いがありまして----」
「そのお願いって、まさか……」

 私が身構えていると、スコティッシュさんからこう提案されたのだった。


「----新しい、ジュールさんの代わりとなる料理用ゴーレムを作って欲しいんだ、ニャア」


 ……えっと、ジュールを作る時点でかなり考えたので、それはかなり難題だな。うん。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

田舎おじさんのダンジョン民宿へようこそ!〜元社畜の俺は、民宿と配信で全国初のダンジョン観光地化を目指します!〜

咲月ねむと
ファンタジー
東京での社畜生活に心身ともに疲れ果てた主人公・田中雄介(38歳)が、故郷の北海道、留咲萌町に帰郷。両親が遺したダンジョン付きの古民家を改装し、「ダンジョン民宿」として開業。偶然訪れた人気配信者との出会いをきっかけに、最初の客を迎え、民宿経営の第一歩を踏み出す。 笑えて、心温かくなるダンジョン物語。 ※この小説はフィクションです。 実在の人物、団体などとは関係ありません。 日本を舞台に繰り広げますが、架空の地名、建造物が物語には登場します。

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...