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第219話 騙し合いの2人【障害物競走対決配信】(1)
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~~エアクラフ・ハンドラ~~
----魔法魔道具【競争会場】を使った、第1回戦。
対戦者はハンドラ商会一の健脚にして、仕入れ担当本部長であるこの私、エアクラフ・ハンドラ。そしてドラスト商会の協力者である錬金術師ススリアの作ったゴーレムであるイプシロンちゃん。この両名による、一対一のガチンコ対決。
試合内容は、この私考案の10000m障害物競走。お互いに障害物となる罠を置きあい、相手の妨害をしつつ行う、妨害を前提とした障害物競走であった。
イプシロンちゃんが提案してきた障害物の個数は、4つ。
だから私がイプシロンちゃんのコースに設置できる障害物の個数も4つ----4つもあれば、十分だ。
私は、魔女スタダムに作ってもらった魔法魔道具【遊泳用水球】を置いて行く。これは水属性の下級魔法、【ウォーターボール】を魔道具化したもので、1mほどの水の球を固定して置いて置ける魔道具だ。本来の用途としては、即席のプールとして使う代物である。
スタダム自身には、『この夏の暑い日を涼しく楽しめるための魔道具』として作らせた魔道具である。まさかスタダムも、こんなレースの障害物として使われるとは思っても見なかった事だろう。
この【遊泳用水球】を1000m毎、4カ所に設置する。
その位置取りをして設置し終わったのが、ちょうど1時間ぴったしの所。イプシロンちゃんはそれよりも10分ほど速く終えたらしく、彼女がどういう障害物を置いたのかは分からなかったが、この勝負、既に私の勝ちは決定したも同然だ。
「では、イプシロンよ! 互いに全力で相手を邪魔し合いつつ、レースに興じようではないか!」
「荒波のレース展開という事ですね! 受けて立つ!」
イプシロンちゃんとそう互いに宣誓をした私達は、そのままスタート位置につく。
そして、公平を期すために、ドラスト商会が今回の抗争のために呼び込んだ、私達ハンドラ商会と何ら関係のない一冒険者にスタートの号令をお願いする。
「位置について----よーい!」
緊張の一瞬、私とイプシロンちゃんは、スタートの号令を聞き逃さないように、全力で集中する。
「----どんっ!!」
号令が鳴ると共に、障害物競争が始まった。
先に飛び出したのは、イプシロンちゃんの方だった。彼女の走り----いや、回転は凄まじかった。
イプシロンちゃんの足の下からいきなり高速で回転する車輪のようなモノが現れ、そのまま高速でレース場を疾走し始めたのである。これは障害物競争であるが、単に速さを競う対決である。
心の広いこちらとしては、あちらのあの戦法を認めてあげようじゃないか。
「(だから、こちらのこの戦法も認めてくれ!)」
私はそう言って、イプシロンちゃんのコースに踏み入れた。
そう、これこそがこのレースにおける必勝法!
相手がどんな障害物を仕掛けているのかが分からないのならば、確実にどんな障害物を仕掛けているかが分かり切っている相手のコースを走れば良い!
ズルいって?
確かに私は相手のコースを走っているかもしれないが、これは相手の進路を妨害しようという、そういう意図を持った妨害行為である。
初めに言っておいたはずだ。
----『これは、妨害ありのレース』である、と。
そして、私の狙いは、あの水の球、【遊泳用水球】の中に入る事。
トビウオの魚人族である私が、最高速度で飛べる距離は、およそ1km----そう、ちょうど【遊泳用水球】に空けた間隔である。水から飛び出て1km飛ぶ速さは、私の感覚だとおよそ10秒。時速3600kmという、超高速で、私はその区間を飛びぬける。
あの4つの【遊泳用水球】は、入った瞬間、超加速することが決定しているボーナスゾーン。
あそこに入った瞬間、こちらの勝利が確定しているようなモノだ。
「(しかも、流石に最高速は無理でも、その半分くらいの速度なら10kmだろうが、100kmだろうが、私は出せるんだよな。これが)」
初めのボーナス地点である1000m地点に行くまでに、およそ50秒。
1個目のボーナスゾーンから、4個目のボーナスゾーンまで、およそ30秒。
4000m地点から、最高速度の半分である時速1800kmで飛んだとしたら、ゴールである10000m地点までかかるタイムは----ざっと、1分42秒。2分切りの、高速ラップである。
いくらイプシロンちゃんのタイヤが速いと言っても、所詮はそれだけ。元々は養殖用のゴーレムが出せる速度など、私のトップスピードには敵わない!
それどころか、もう既に私の方が彼女を追い越し、もう最初の【遊泳用水球】が見えて来た。
「(----勝った!)」
私はそう思って、【遊泳用水球】へと飛び込み----
----がんっ!!
「~~っ!!」
何故か、岩に激突してしまっていたのだった。
「アーハッハハハ! どうだ見たか、我が蛇型魔道具【石蛇女の眼】による、石化光線の威力は! こちらのコースに入って来た時点で、その【遊泳用水球】を使って勝利するという戦法は見えていた!
だからこそ! レース内の私に設置した【石蛇女の眼】で、無効化させてもらったぞ! 石で頭を痛めている間に、お先に~!」
そう高らかに笑って、イプシロンちゃんは頭を痛めている私の横を、すーっと通って行ったのであった。
----魔法魔道具【競争会場】を使った、第1回戦。
対戦者はハンドラ商会一の健脚にして、仕入れ担当本部長であるこの私、エアクラフ・ハンドラ。そしてドラスト商会の協力者である錬金術師ススリアの作ったゴーレムであるイプシロンちゃん。この両名による、一対一のガチンコ対決。
試合内容は、この私考案の10000m障害物競走。お互いに障害物となる罠を置きあい、相手の妨害をしつつ行う、妨害を前提とした障害物競走であった。
イプシロンちゃんが提案してきた障害物の個数は、4つ。
だから私がイプシロンちゃんのコースに設置できる障害物の個数も4つ----4つもあれば、十分だ。
私は、魔女スタダムに作ってもらった魔法魔道具【遊泳用水球】を置いて行く。これは水属性の下級魔法、【ウォーターボール】を魔道具化したもので、1mほどの水の球を固定して置いて置ける魔道具だ。本来の用途としては、即席のプールとして使う代物である。
スタダム自身には、『この夏の暑い日を涼しく楽しめるための魔道具』として作らせた魔道具である。まさかスタダムも、こんなレースの障害物として使われるとは思っても見なかった事だろう。
この【遊泳用水球】を1000m毎、4カ所に設置する。
その位置取りをして設置し終わったのが、ちょうど1時間ぴったしの所。イプシロンちゃんはそれよりも10分ほど速く終えたらしく、彼女がどういう障害物を置いたのかは分からなかったが、この勝負、既に私の勝ちは決定したも同然だ。
「では、イプシロンよ! 互いに全力で相手を邪魔し合いつつ、レースに興じようではないか!」
「荒波のレース展開という事ですね! 受けて立つ!」
イプシロンちゃんとそう互いに宣誓をした私達は、そのままスタート位置につく。
そして、公平を期すために、ドラスト商会が今回の抗争のために呼び込んだ、私達ハンドラ商会と何ら関係のない一冒険者にスタートの号令をお願いする。
「位置について----よーい!」
緊張の一瞬、私とイプシロンちゃんは、スタートの号令を聞き逃さないように、全力で集中する。
「----どんっ!!」
号令が鳴ると共に、障害物競争が始まった。
先に飛び出したのは、イプシロンちゃんの方だった。彼女の走り----いや、回転は凄まじかった。
イプシロンちゃんの足の下からいきなり高速で回転する車輪のようなモノが現れ、そのまま高速でレース場を疾走し始めたのである。これは障害物競争であるが、単に速さを競う対決である。
心の広いこちらとしては、あちらのあの戦法を認めてあげようじゃないか。
「(だから、こちらのこの戦法も認めてくれ!)」
私はそう言って、イプシロンちゃんのコースに踏み入れた。
そう、これこそがこのレースにおける必勝法!
相手がどんな障害物を仕掛けているのかが分からないのならば、確実にどんな障害物を仕掛けているかが分かり切っている相手のコースを走れば良い!
ズルいって?
確かに私は相手のコースを走っているかもしれないが、これは相手の進路を妨害しようという、そういう意図を持った妨害行為である。
初めに言っておいたはずだ。
----『これは、妨害ありのレース』である、と。
そして、私の狙いは、あの水の球、【遊泳用水球】の中に入る事。
トビウオの魚人族である私が、最高速度で飛べる距離は、およそ1km----そう、ちょうど【遊泳用水球】に空けた間隔である。水から飛び出て1km飛ぶ速さは、私の感覚だとおよそ10秒。時速3600kmという、超高速で、私はその区間を飛びぬける。
あの4つの【遊泳用水球】は、入った瞬間、超加速することが決定しているボーナスゾーン。
あそこに入った瞬間、こちらの勝利が確定しているようなモノだ。
「(しかも、流石に最高速は無理でも、その半分くらいの速度なら10kmだろうが、100kmだろうが、私は出せるんだよな。これが)」
初めのボーナス地点である1000m地点に行くまでに、およそ50秒。
1個目のボーナスゾーンから、4個目のボーナスゾーンまで、およそ30秒。
4000m地点から、最高速度の半分である時速1800kmで飛んだとしたら、ゴールである10000m地点までかかるタイムは----ざっと、1分42秒。2分切りの、高速ラップである。
いくらイプシロンちゃんのタイヤが速いと言っても、所詮はそれだけ。元々は養殖用のゴーレムが出せる速度など、私のトップスピードには敵わない!
それどころか、もう既に私の方が彼女を追い越し、もう最初の【遊泳用水球】が見えて来た。
「(----勝った!)」
私はそう思って、【遊泳用水球】へと飛び込み----
----がんっ!!
「~~っ!!」
何故か、岩に激突してしまっていたのだった。
「アーハッハハハ! どうだ見たか、我が蛇型魔道具【石蛇女の眼】による、石化光線の威力は! こちらのコースに入って来た時点で、その【遊泳用水球】を使って勝利するという戦法は見えていた!
だからこそ! レース内の私に設置した【石蛇女の眼】で、無効化させてもらったぞ! 石で頭を痛めている間に、お先に~!」
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