223 / 459
第223話 邪推する2回戦裏【合戦勝負配信】
しおりを挟む
----ハンドラ商会との第2回戦。
戦う相手は、ハンドラ商会の開発担当本部長の紫髪エルフ、ハイブリ・ハンドラ。
見た目と肩書きからして、知識方面に自信大ありな彼女。クイズなどの知識を問う戦いでは不利だと感じたドラスト商会側は、こちら側が勝負の内容を決められるということで、合戦勝負を希望した。
合戦勝負のルールを説明すると、複数人同士の対決を前提としたチーム戦である。
勝負する競技者は、頭の上に帽子を被り、その帽子を取られて、相手陣地に置かれると負けになる。いわゆる、騎馬戦の発展形と言ったら分かりやすいでしょう。
帽子を取られてもその帽子が相手陣地に運ばれる前に取り返せば、そのまま試合に出ても良い。また、帽子を取られても、味方の帽子であれば被る事で試合に出る事も出来る。
要は、相手の帽子を奪って、相手をリタイアさせるという試合方式だ。
これは確実に、ドラスト商会有利だろう。
なにせ、相手側の選手はハイブリただ1人、対してこちらはスコティッシュさんと傭兵10人を含めた11人。相手のハイブリは帽子を取られたらほぼ敗北確定なのに対して、こちらは誰か1人でも帽子を取れば良いだけ。
「明らかにこちらが有利と言えるな」
「マスター・ススリア、少しよろしいッスか?」
これはこちらの勝利は確実かなと思って見ていたら、アレイスターに呼び止められた。その後ろにはシガラキ代表、それにまだ戦っていないハンドラ商会所属の人材担当監査役ディゼル・ハンドラの姿があった。
シガラキ代表とならともかく、対戦相手のディゼルとかいうクマ獣人も一緒とか、どうした事だろう?
「どうした、アレイスター? それにシガラキさんと……」
「ディゼルで構いませんよ、ススリアさん。実は私達3人は和平をお願いしたく話し合っていたのです」
「和平……?」
聞くところによると、この【競争会場】を使った足止め作戦に対し、ディゼル自身はあまり乗り気ではないらしい。彼女は魔女スタダムを勧誘した張本人ではあるが、それはあくまでもハンドラ商会のさらなる発展のために勧誘しただけで、今回のような全面戦争は乗り気ではない、との事。
「敵側である私が言うのもなんですが、3人とも、それに会長もいつもと様子が違うように見えまして。いつもだったら、たとえ腹黒い一面を抱えていても、舌戦をするのが、我らがシベリア会長なのですが」
「腹黒い一面、という部分には賛同するんだ……」
ともかく、ディゼルが魔女スタダムを勧誘するために、シュンカトウ共和国を離れている数日の間に、シベリア会長、そしてこの場にいる3人がやけに好戦的になったという事だ。
「ですので、もしや会長を初めとして、皆さん誰かに操られているのではないかなって」
「なるほど。洗脳か」
表立って、ディゼルは他の皆に「間違っているかも」という事は出来ない。
もし洗脳されていなければ、商会の方針に従えないとして追い出される危険もある。それに、会長も操られているのならばその洗脳能力者は商会本部に深く入り込んでいる可能性が高い。だからこそ、ディゼルは従う振りをして、このような対決に参戦したという訳だ。
「私は魔女スタダムさんと相談して、この魔法魔道具【競争会場】に出された仕様を、少し変更させてもらったのです」
「本来であればこの空間内は外との時間の流れが10倍くらい遅くなっていて、それでも時間を稼ぐつもりだったらしい」
10倍……つまりこちらでの10分が、外の世界だと100分----およそ1時間40分という事になる。
1人ずつ戦う4回戦方式で、この時間の遅さで、かなりの時間が稼げただろう。
それを、ディゼルは1/10に、こっそりと仕様を変更するようにお願いした。これで、こちらでの10分は、外の世界ではたったの1分----時間が逆に速く流れるようにしてくれたとの事。
「そいつは、ありがたい事だね」
私としては軽い手伝いのつもりで来ているので、そんなに長い拘束は勘弁だったため、実にありがたい処置である。
「あぁ。私もその話を聞き、いつも憎たらしくも商売に熱心なシベリアらしくないと思ったんだ」
と、シガラキ代表もそう答える。
「商会に携わっている者として、最も蔑ろにしてはいけない物が2つある。それは、お客様との『信頼』と、平等にしか与えられない『時間』の2つだ。
ここにいる皆は、他の者とは比べようがない重要な役職の者達。そんな者達を足止めとはいえ、長時間拘束するのは『時間』を気にする商人にしては可笑しい。ましてや、他の幹部もその事に気付いているはずだ」
誰も文句を言わずに戦っていることが不自然すぎると、この3人は考えている。
「なので、私はハンドラ商会の未来のため、この対決を出来る限り早く終わらせたく、今のうちに早く終わり、なおかつお互いに傷つかないように済むよう交渉をしているのです」
「私はこのディゼルの言葉を信用して、この戦いのうちから戦いを考えておこうと思っているのだ」
「私は、付き添いッス!」
なるほど、結構大がかりな話になっているんだな~。
そんな事を考えつつ、私はハイブリとの戦いを見ようとして----
「さぁ、このエルフのハイブリの戦法をお見せいたしましょう!」
----ガキンッ! ガキンガキンンッッ!!
巨大人型ロボットに乗った、ハイブリの姿がそこにはあった。
「おぉ! 実に甘い! これは新食感、素晴らしい味です!」
「続いて、煮物をご賞味くださいませ。新しい船出を感じますよ」
「----おーっ! おおおおおっ、甘い! 甘味が、身体を駆け巡るぅぅぅぅ~!!」
戦う相手は、ハンドラ商会の開発担当本部長の紫髪エルフ、ハイブリ・ハンドラ。
見た目と肩書きからして、知識方面に自信大ありな彼女。クイズなどの知識を問う戦いでは不利だと感じたドラスト商会側は、こちら側が勝負の内容を決められるということで、合戦勝負を希望した。
合戦勝負のルールを説明すると、複数人同士の対決を前提としたチーム戦である。
勝負する競技者は、頭の上に帽子を被り、その帽子を取られて、相手陣地に置かれると負けになる。いわゆる、騎馬戦の発展形と言ったら分かりやすいでしょう。
帽子を取られてもその帽子が相手陣地に運ばれる前に取り返せば、そのまま試合に出ても良い。また、帽子を取られても、味方の帽子であれば被る事で試合に出る事も出来る。
要は、相手の帽子を奪って、相手をリタイアさせるという試合方式だ。
これは確実に、ドラスト商会有利だろう。
なにせ、相手側の選手はハイブリただ1人、対してこちらはスコティッシュさんと傭兵10人を含めた11人。相手のハイブリは帽子を取られたらほぼ敗北確定なのに対して、こちらは誰か1人でも帽子を取れば良いだけ。
「明らかにこちらが有利と言えるな」
「マスター・ススリア、少しよろしいッスか?」
これはこちらの勝利は確実かなと思って見ていたら、アレイスターに呼び止められた。その後ろにはシガラキ代表、それにまだ戦っていないハンドラ商会所属の人材担当監査役ディゼル・ハンドラの姿があった。
シガラキ代表とならともかく、対戦相手のディゼルとかいうクマ獣人も一緒とか、どうした事だろう?
「どうした、アレイスター? それにシガラキさんと……」
「ディゼルで構いませんよ、ススリアさん。実は私達3人は和平をお願いしたく話し合っていたのです」
「和平……?」
聞くところによると、この【競争会場】を使った足止め作戦に対し、ディゼル自身はあまり乗り気ではないらしい。彼女は魔女スタダムを勧誘した張本人ではあるが、それはあくまでもハンドラ商会のさらなる発展のために勧誘しただけで、今回のような全面戦争は乗り気ではない、との事。
「敵側である私が言うのもなんですが、3人とも、それに会長もいつもと様子が違うように見えまして。いつもだったら、たとえ腹黒い一面を抱えていても、舌戦をするのが、我らがシベリア会長なのですが」
「腹黒い一面、という部分には賛同するんだ……」
ともかく、ディゼルが魔女スタダムを勧誘するために、シュンカトウ共和国を離れている数日の間に、シベリア会長、そしてこの場にいる3人がやけに好戦的になったという事だ。
「ですので、もしや会長を初めとして、皆さん誰かに操られているのではないかなって」
「なるほど。洗脳か」
表立って、ディゼルは他の皆に「間違っているかも」という事は出来ない。
もし洗脳されていなければ、商会の方針に従えないとして追い出される危険もある。それに、会長も操られているのならばその洗脳能力者は商会本部に深く入り込んでいる可能性が高い。だからこそ、ディゼルは従う振りをして、このような対決に参戦したという訳だ。
「私は魔女スタダムさんと相談して、この魔法魔道具【競争会場】に出された仕様を、少し変更させてもらったのです」
「本来であればこの空間内は外との時間の流れが10倍くらい遅くなっていて、それでも時間を稼ぐつもりだったらしい」
10倍……つまりこちらでの10分が、外の世界だと100分----およそ1時間40分という事になる。
1人ずつ戦う4回戦方式で、この時間の遅さで、かなりの時間が稼げただろう。
それを、ディゼルは1/10に、こっそりと仕様を変更するようにお願いした。これで、こちらでの10分は、外の世界ではたったの1分----時間が逆に速く流れるようにしてくれたとの事。
「そいつは、ありがたい事だね」
私としては軽い手伝いのつもりで来ているので、そんなに長い拘束は勘弁だったため、実にありがたい処置である。
「あぁ。私もその話を聞き、いつも憎たらしくも商売に熱心なシベリアらしくないと思ったんだ」
と、シガラキ代表もそう答える。
「商会に携わっている者として、最も蔑ろにしてはいけない物が2つある。それは、お客様との『信頼』と、平等にしか与えられない『時間』の2つだ。
ここにいる皆は、他の者とは比べようがない重要な役職の者達。そんな者達を足止めとはいえ、長時間拘束するのは『時間』を気にする商人にしては可笑しい。ましてや、他の幹部もその事に気付いているはずだ」
誰も文句を言わずに戦っていることが不自然すぎると、この3人は考えている。
「なので、私はハンドラ商会の未来のため、この対決を出来る限り早く終わらせたく、今のうちに早く終わり、なおかつお互いに傷つかないように済むよう交渉をしているのです」
「私はこのディゼルの言葉を信用して、この戦いのうちから戦いを考えておこうと思っているのだ」
「私は、付き添いッス!」
なるほど、結構大がかりな話になっているんだな~。
そんな事を考えつつ、私はハイブリとの戦いを見ようとして----
「さぁ、このエルフのハイブリの戦法をお見せいたしましょう!」
----ガキンッ! ガキンガキンンッッ!!
巨大人型ロボットに乗った、ハイブリの姿がそこにはあった。
「おぉ! 実に甘い! これは新食感、素晴らしい味です!」
「続いて、煮物をご賞味くださいませ。新しい船出を感じますよ」
「----おーっ! おおおおおっ、甘い! 甘味が、身体を駆け巡るぅぅぅぅ~!!」
0
あなたにおすすめの小説
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。
名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。
男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…
アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。
そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!
田舎おじさんのダンジョン民宿へようこそ!〜元社畜の俺は、民宿と配信で全国初のダンジョン観光地化を目指します!〜
咲月ねむと
ファンタジー
東京での社畜生活に心身ともに疲れ果てた主人公・田中雄介(38歳)が、故郷の北海道、留咲萌町に帰郷。両親が遺したダンジョン付きの古民家を改装し、「ダンジョン民宿」として開業。偶然訪れた人気配信者との出会いをきっかけに、最初の客を迎え、民宿経営の第一歩を踏み出す。
笑えて、心温かくなるダンジョン物語。
※この小説はフィクションです。
実在の人物、団体などとは関係ありません。
日本を舞台に繰り広げますが、架空の地名、建造物が物語には登場します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる