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第253話 審査員が気になります配信
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「では、これよりコ・ラホ領の料理大会を開催させていただきます、よぉ~!」
司会役の女性が大きい声で宣言すると共に、ベータちゃんを始めとした20人の参加者が「おぉ~!」と勢いの良い歓声を出していた。
めちゃくちゃ盛り上がっているなぁ~、と私は感じていた。
私としては、コ・ラホ領という小さな領地でやっている程度の、公式配信されていない少し遅れた料理大会だと思っていたのだが、この盛り上がりを見るとどうやら違うようである。
そんな事を考えていると、司会役の女性が慣れた様子で進行を始める。
「毎度おなじみコ・ラホ領料理大会! 今大会には20名の参加者が参加を表明してくださいました、よぉ~!
それでは、今回の料理大会を厳重に審査して頂く、愛すべき審査員の3人をご紹介しましょう!」
司会役の女性の紹介によって、3人の審査員が紹介され始める。
「まず1人目は、コ・ラホ領料理大会5連覇中のチャンピオン! 錬金術師のメキスさんです!
そのあまりの勝利っぷりに『お前出たら勝利するから出るの辞めろや』と言われ、今大会から審査員になられました、彼女の審査は果たしてどうなるんでしょうかぁ、よぉ! それでは、メキスさん、一言お願いします」
『私の名はメキス。出禁にされて審査員になった、ただの錬金術師』
「続いて2人目の紹介です。今大会の出資者にして、優勝賞品でもありますギルド長! 王都商工組合長のゼニスキーさんです!
毎度素晴らしい着眼点と的確なアドバイスによりまして、出場者の皆様の料理の腕がぐんぐん伸びているのを感じます、よぉ! さて、今回はどれだけ素晴らしいアドバイスコメントが出るのか注目です」
『どうも、ゼニスキーです。遂に解説役として呼ばれているとバラされました。来年から出資を見送るか検討中です』
「すいません。ツブア領主様が泣いて謝罪に伺いますので、あとで行かせていただきます。無論、この司会も全力で謝罪しに行きます、よぉ」
「さて、最後の1人。3人目の紹介と参ります。コ・ラホ領といえばコラホ焼き! その中でもゴーレムや錬金術にも出せない独自性を武器に戦っております、陶芸家の【ナカマモト】名人です。
ナカマモト様には今大会のトロフィーの製作をお願いしております。焼き物とは思えない、柔らかくも形を整える、柔軟性のある焼き物! 壊れにくい焼き物という独特な質感を手にするのは誰なのかぁ、よぉ~」
『どうも、ナカマモトです。今日は楽しみじゃのぉ~』
ナカマモト名人の紹介が終わると、司会役の女性さんはベータちゃんを始めとした出場者の紹介を始めていた。
恐らく今大会で注目して欲しいポイントとしては、この20名の出場者の紹介を聞いて欲しいのだろう。司会役の女性さんの紹介にも、物凄い熱量を感じる。
しかし私はそんな事よりも、ナカマモト名人の紹介が気になっていた。
「(錬金術にも出せない独自性、柔軟性のある焼き物……壊れにくい焼き物だって?)」
それは、非常に興味深い。
錬金術によって付与できる数には、限界がある。
しかしながら、錬金術に頼らずに、焼き物に対して、柔軟性を与えられて、壊れにくい焼き物にしたと聞くと、出来る事が圧倒的に増える。
土を固めて焼く以上、柔軟性の欠片もない姿となるあの焼き物に、どうやって柔軟性を施したのかは気になるが、柔軟性を与えれば、確かに壊れにくい焼き物は出来るだろう。
焼き物の弱点の1つである壊れやすさが解消されているとは、興味深い。
本来であれば焼き物の壊れやすさを保護するために付与を1つ消費しなければならないが、今のナカマモト名人の紹介を聞くと、その壊れにくい部分に割くリソースが減る。
つまり、その分に使っていた錬金術の付与を、別の事に応用できるという事だ。
なにが良いだろう? 色々と発想が膨らんでくる。
保温性を高める事で、温度が下げにくい湯飲みとか?
あるいは温度の適温性を高めて、常に一定の温度になる茶碗とか?
もしくは新しい武器とかどうだろう? 陶器の武器とか、作って見たら案外面白いかもしれない。
「(世の中にはやっぱりいるもんだな、"職人"って奴が)」
前世の知識では、AI技術によって、モノ作りは格段に進歩した。
人間の勘という曖昧な数値ではなく、科学的に基づいた確かな数値によって、モノ作りは格段に進歩した。
しかし、そんな世界であっても、職人様の技術力でしか表現できない世界と言うのが存在する。
どんなにAIが、この世界で言う所の錬金術が進歩したとしても、一流の職人の腕と言うのはあるもんだなぁ。
ナカマモト名人の、"柔軟性のある、壊れにくい焼き物"というのも是非とも見てみたい。
そして、それを再現してみたい。矛盾しているようだが、一流の職人でしか出来ない技術というのもあると思っているが、それをゴーレムなどで再現したいと思うのも、私達錬金術師という職人の性質ってやつだ。
職人は、ゴーレムや錬金術などでは出来ない技術力を身に着ける。
錬金術師は、再現できないとされた職人の技術をゴーレムや錬金術で再現する。
……まぁ、ともかく、是非ともそのナカマモト名人の技術と言うのは拝見したい所である。
そのためにも、まずはベータちゃんに勝ってもらおう。彼女が勝てば、その縁で審査員をしているナカマモト名人とお近づきに慣れるに違いないのだから。
司会役の女性が大きい声で宣言すると共に、ベータちゃんを始めとした20人の参加者が「おぉ~!」と勢いの良い歓声を出していた。
めちゃくちゃ盛り上がっているなぁ~、と私は感じていた。
私としては、コ・ラホ領という小さな領地でやっている程度の、公式配信されていない少し遅れた料理大会だと思っていたのだが、この盛り上がりを見るとどうやら違うようである。
そんな事を考えていると、司会役の女性が慣れた様子で進行を始める。
「毎度おなじみコ・ラホ領料理大会! 今大会には20名の参加者が参加を表明してくださいました、よぉ~!
それでは、今回の料理大会を厳重に審査して頂く、愛すべき審査員の3人をご紹介しましょう!」
司会役の女性の紹介によって、3人の審査員が紹介され始める。
「まず1人目は、コ・ラホ領料理大会5連覇中のチャンピオン! 錬金術師のメキスさんです!
そのあまりの勝利っぷりに『お前出たら勝利するから出るの辞めろや』と言われ、今大会から審査員になられました、彼女の審査は果たしてどうなるんでしょうかぁ、よぉ! それでは、メキスさん、一言お願いします」
『私の名はメキス。出禁にされて審査員になった、ただの錬金術師』
「続いて2人目の紹介です。今大会の出資者にして、優勝賞品でもありますギルド長! 王都商工組合長のゼニスキーさんです!
毎度素晴らしい着眼点と的確なアドバイスによりまして、出場者の皆様の料理の腕がぐんぐん伸びているのを感じます、よぉ! さて、今回はどれだけ素晴らしいアドバイスコメントが出るのか注目です」
『どうも、ゼニスキーです。遂に解説役として呼ばれているとバラされました。来年から出資を見送るか検討中です』
「すいません。ツブア領主様が泣いて謝罪に伺いますので、あとで行かせていただきます。無論、この司会も全力で謝罪しに行きます、よぉ」
「さて、最後の1人。3人目の紹介と参ります。コ・ラホ領といえばコラホ焼き! その中でもゴーレムや錬金術にも出せない独自性を武器に戦っております、陶芸家の【ナカマモト】名人です。
ナカマモト様には今大会のトロフィーの製作をお願いしております。焼き物とは思えない、柔らかくも形を整える、柔軟性のある焼き物! 壊れにくい焼き物という独特な質感を手にするのは誰なのかぁ、よぉ~」
『どうも、ナカマモトです。今日は楽しみじゃのぉ~』
ナカマモト名人の紹介が終わると、司会役の女性さんはベータちゃんを始めとした出場者の紹介を始めていた。
恐らく今大会で注目して欲しいポイントとしては、この20名の出場者の紹介を聞いて欲しいのだろう。司会役の女性さんの紹介にも、物凄い熱量を感じる。
しかし私はそんな事よりも、ナカマモト名人の紹介が気になっていた。
「(錬金術にも出せない独自性、柔軟性のある焼き物……壊れにくい焼き物だって?)」
それは、非常に興味深い。
錬金術によって付与できる数には、限界がある。
しかしながら、錬金術に頼らずに、焼き物に対して、柔軟性を与えられて、壊れにくい焼き物にしたと聞くと、出来る事が圧倒的に増える。
土を固めて焼く以上、柔軟性の欠片もない姿となるあの焼き物に、どうやって柔軟性を施したのかは気になるが、柔軟性を与えれば、確かに壊れにくい焼き物は出来るだろう。
焼き物の弱点の1つである壊れやすさが解消されているとは、興味深い。
本来であれば焼き物の壊れやすさを保護するために付与を1つ消費しなければならないが、今のナカマモト名人の紹介を聞くと、その壊れにくい部分に割くリソースが減る。
つまり、その分に使っていた錬金術の付与を、別の事に応用できるという事だ。
なにが良いだろう? 色々と発想が膨らんでくる。
保温性を高める事で、温度が下げにくい湯飲みとか?
あるいは温度の適温性を高めて、常に一定の温度になる茶碗とか?
もしくは新しい武器とかどうだろう? 陶器の武器とか、作って見たら案外面白いかもしれない。
「(世の中にはやっぱりいるもんだな、"職人"って奴が)」
前世の知識では、AI技術によって、モノ作りは格段に進歩した。
人間の勘という曖昧な数値ではなく、科学的に基づいた確かな数値によって、モノ作りは格段に進歩した。
しかし、そんな世界であっても、職人様の技術力でしか表現できない世界と言うのが存在する。
どんなにAIが、この世界で言う所の錬金術が進歩したとしても、一流の職人の腕と言うのはあるもんだなぁ。
ナカマモト名人の、"柔軟性のある、壊れにくい焼き物"というのも是非とも見てみたい。
そして、それを再現してみたい。矛盾しているようだが、一流の職人でしか出来ない技術というのもあると思っているが、それをゴーレムなどで再現したいと思うのも、私達錬金術師という職人の性質ってやつだ。
職人は、ゴーレムや錬金術などでは出来ない技術力を身に着ける。
錬金術師は、再現できないとされた職人の技術をゴーレムや錬金術で再現する。
……まぁ、ともかく、是非ともそのナカマモト名人の技術と言うのは拝見したい所である。
そのためにも、まずはベータちゃんに勝ってもらおう。彼女が勝てば、その縁で審査員をしているナカマモト名人とお近づきに慣れるに違いないのだから。
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