配信スローライフをしてたら、相方のゴーレムがアップをはじめたようです

摂政

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第278話 ノルカがやられた後の、ドン・デーロについての配信

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 ~~狩猟のドン・デーロ~~

「あうっ?!」

 新生ハンドラ商会が良く見える、建物の屋上。
 魔王ユギーの五本槍である私、狩猟のドン・デーロは痛みを覚えていた。

「うぐわっ!?」

 ズキリッと、【狩猟】の二文字が刻まれた手の形をした仮面に、亀裂ひびが入っていた。その亀裂が入ったのを見て、私はこのゲームの敗北を悟っていた。
 この亀裂は、ノルカ・ブックマンに与えていた【狩猟】の二文字----ひいては、私の分身が消え去ったのを意味するからだ。

「ミリオン商会長の記憶を奪う事----いや、【アルファ・ゴーレムサポートシステム】の魔道具本体から記憶を奪う事には、失敗したようで・す・ね」

 私はそう言うと、パチンっと指を鳴らす。すると、指を鳴らす際に使った手が消えていき、その代わりに仮面に付けられたヒビが消えて行く。

 これは、私が持つ能力の1つである。自分の身体代わりに使っている身体の一部を代償にして、ヒビを消すという能力である。
 自分の、文字通り手足として使っている身体の一部を代償にするのはかなりリスクが高い。しかしそれでも、私にはこのヒビを消しておくべき理由があった。

 なんでこんな能力があるかというと、この仮面こそが狩猟のドン・デーロの本体・・なのである。
 他の、魔王ユギーの五本槍のメンバーは知らないが、少なくとも私の場合、この仮面こそが本体なのだ。自分に、記憶する脳のような部分がないからこそ、ドン・デーロは他者の記憶に固執し、それを現実化できる能力を手に入れたんじゃないかとそう思ってるくらいなのだ。

「ふぅ~。ノルカちゃんはそこそこやってくれると思ってましたが、ダメだったみたいですね」

 シベリア・ハンドラ会長の記憶を探った中で、一番商人に向いていないと思ったのがノルカ・ブックマンである。
 ノルカ・ブックマンは"耳が非常に良い"、さらには"自分の足音を消して移動できる"など、彼女は武闘関係においては非常に強い能力の持ち主だ。しかしながら、ノルカはそのような能力を持っているにしては、あまりに気が弱すぎる。

 彼女には、残念ながら商売としての才能はあまりない。
 彼女にあるのは、このシベリア・ハンドラ会長の記憶にあった【オーラ】を、十二分に使えるだけの武力の才能くらい。

 ノルカ・ブックマンは、この商売の国で生まれ、商売で成功する事しか価値がないと思っている。
 彼女の頭に触れた際に記憶を少し読んだけれども、あの高い武術の才能も、護衛を雇わずに済むくらいにしか考えていなかったみたい。実に勿体ない。あれだけの力があれば、私だったら単騎で王城に乗り込むくらいの作戦を考えていたのに。

 計画が成功し、【アルファ・ゴーレムサポートシステム】の魔道具本体に短刀を突き刺して記憶を奪い取れたとしても、ノルカ・ブックマンは恐らく変わらなかったと思う。
 私が言うのもなんだが、悪魔と契約するような者が、幸せな成功を得られるだなんてあり得ないのだから。

「私の【狩猟】の二文字という洗脳ぶんしんを与え、ようやく決心するくらいで・す・か・ら・ね」

 悪魔と契約するだけの覚悟があるのなら、洗脳なんてせずとも、自分から行くだけの度胸を見せて欲しかった。せっかく、サービスとしてシベリア・ハンドラ会長の記憶を与えてあげたのに。

「まぁ、同じゲームを3回以上仕掛けるのは、魔王ユギー様としても面白く思ってもらえないでしょうからもうしませんがね」

 さて、次はどんなゲームをしよう?

 マージ・マンジ達を巨大化させて複数体召喚して、大陸そのものを牛に変えてみようか?
 それとも、シベリア会長の記憶にあるドラゴンを召喚して、国そのものを火炎で包もうか?
 あるいは、盟主パファーのいる城に潜入して、パファーを実験体にして最強の悪魔へと変えようか?

「なんにせよ、この身体は目立ちす・ぎ・る・ね。それに手も失くしちゃったし」

 ヒビは消したが、その代わりに手を失ってしまった。それに、このシベリア・ハンドラ会長の姿は、もう多くの人に見られてしまったし、別の身体を奪い取るしかないのかもしれない。

「あぁ、ワクワクするなぁ! 今回は女性の身体を奪い取ったし、次は少年の身体を奪い取って、新鮮な気分を味わった方が良いのかも」

 ランラン気分で、どの子にしようかと思っていると、

 ----ザクッ!

「あ・れ?」

 私の、本体である仮面に、雷魔法が突き刺さっていた。
 それはもう見事に、私の本体である仮面は2つに綺麗に分かれ、ヒビを補修する私の能力ですら直せないほど、完璧な一撃であった。

 完全な、致命傷の一撃。
 もうすぐ私は消えるだろう。ここまでやられては、流石の私でもどうしようも出来はしない。

 ----魔王ユギーの五本槍の一員として、色々好き勝手にやって来た。
 魔王ユギー様が喜ぶために、多くの事柄ゲームをやって来た。

 だからその報いとして、やられるのは分かる。
 しかし、それでも納得できないことが、私にはあった。



「なんでお前が、私を殺すんだ! 同じ・・五本槍・・・でしょう・・・・!
 なぁ、ナ----」



 その言葉を、私が言い続ける事は出来なかった。
 本体である仮面の消失に伴い、私はこの世界から消えてしまったのであった。



(※)狩猟のドン・デーロ
 魔王ユギーの五本槍の1人。記憶を司る悪魔であり、この世界で一番『獲物』を美しいと思っており、大きな獲物を狩猟ハンティングした時に快感を感じている
 相手の頭に手を掴むことで記憶から人間やバケモノを召喚する【泥沼から出た過去スワンプ・メモリー】、対象の大きさを変化させて召喚する【歪んだ思い出ディストーションメモリー】などによって、記憶を扱う事に長けている。また記憶を読み取ったり、読み取った記憶を他者へ移すなどの事も可能
 実は、本体は【狩猟】と刻まれた手の形をした仮面。この仮面をつけた死体を、自分の身体として使う事ができており、仮面が無事な限りドン・デーロは生き続ける
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