配信スローライフをしてたら、相方のゴーレムがアップをはじめたようです

摂政

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第309話 赤髪妖精ヴァーミリオンについて配信

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 とりあえず、赤髪妖精を私達は仮称として【ヴァーミリオン】と呼ぶことにした。いつまでも"赤髪妖精"という呼び方は呼びづらいからね。
 ヴァーミリオンという名前で呼ぶことについて赤髪妖精はけっこう反論したのだが、"『部長』や『社長』といった役職みたいなモノ"というとんでも暴論をぶつけたら、意外と素直に受け入れてくれた。そんな役職はないのだが、まぁ、世間知らずな妖精さんだからこそ騙せたというべきか。

『今日から私は赤髪妖精ヴァーミリオンという訳ね、ススリア奴隷王!』
「その役職名で呼ぶのは、止めてくれない? 私、別に奴隷とか使ってないから」

 その後、配信を使って彼女にメイド喫茶についての配信を見せた。こういうのは、素直に説得するよりも、なにか別の方向から攻める方が分かりやすいと思っての判断である。

『なるほど……お店の従業員に"ご主人様"と呼ばせる奇特な店が、異世界にはあったのね!』
「異世界と言うか、同じ世界にね」

 王都セントールに行ったら、普通にあるよ。そういうお店。

『つまり、奴隷ゼータが言ってた"ご主人様"というのは、あくまでもお客様に対して?』
「あー、どちらかというと雇用主に対して?」
『異世界って、本当に凄いわね。私の常識が全く通じないわ』

 『ふむふむ』と、なんか間違った情報を吸収している彼女には悪いが、そろそろ『死の森』へとご帰還願いたい。【ポータル】を使って身体を大きくするとか、そういうのは止めて、普通に帰って欲しい。

『なによ! まさか、妖精には出来ないとか言うつもり?!』
「そういう意味じゃないけど……じゃあ、ちょっと見てて」

 私がそう言ってサッと取り出したるは、うちの養殖担当であるイプシロンちゃん印のお魚。今度養殖しようとしている新作の魚で、なんと骨まで生のまま美味しく食べられるという優れモノだ。
 それをヴァーミリオンに触らせて、普通のお魚である事を確認させる。

『むむっ?! このお魚、骨がないわね?! 作り物かしら?』
「そういう魚だから。ともかく、なんの仕掛けもないから」
『いや、骨がないって----』

 ともかく! 普通のお魚である事を、確認させたっ!

 そして、そのお魚を持って、【ポータル】をくぐらせる。
 すると、私の後ろに、先程の骨なし魚が、一回り大きくなった状態で現れた。

『ほら、見なさい! 私の思った通り、ちゃんと大きく----? 大きく?』

 大きくなったのを見て、自分の考えが間違ってなかったと確信するヴァーミリオン。最初こそ喜んでいたのだが、徐々に困惑していき、そしてトントンっと叩いて。

『これ、中身スッカスカじゃないの?』
「----そうなんだよねー」

 私と同じ結論に達した。

 実は、【スピリッツ】の【ポータル】を使って、希少素材を大きくさせよう作戦は、あの兜がこの赤髪妖精と一緒に戻って来た時に白紙にした。
 そう、【ポータル】を使っての巨大化転送には、欠陥がある事が分かった。

 それは、素材の空洞化だ。
 【ポータル】を使えば確かに大きくなることは大きくなるのだが、それはただ見かけ上だけ。実際の質量はまるで変化しておらず、ただ大きさだけが大きくなったというだけなのだ。

 大きさが2倍になれば、重さは8倍にならないと物理学的にはおかしいのだが、大きさが【ポータル】によって2倍になっても、重さは元の大きさの時と一緒。
 その矛盾の正体は、硬度かたさにあった。大きさが2倍になって返ってきた兜を調べたところ、構造的にとても脆くなっている事が分かったのである。

「風船で例えると分かりやすいかもね。大きく膨らんだように見えても、それはただ空気によって薄く引き伸ばされているだけ、っていう」
『私、風船になりたくないんですけど!』

 いや、だから協力できないって、言ったじゃないですか……。
 兎にも角にも、【スピリッツ】の【ポータル】を使って、希少素材を大きくして量産するという計画は、ものの見事に崩れてしまったのである。なにせ、いくら量は手に入るようになっても、品質が悪くなるのは、錬金術師のプライドとして許せないという。

『うぅ…… ! 奴隷王の癖に、この赤髪妖精ヴァーミリオンに夢を見させて……!』
「勝手にそっちが夢見ただけでしょうに」

 あと、奴隷王と呼ぶのは止めてって、さっき言ったよね? あと、普通にヴァーミリオンだけで良いから。なんか赤髪妖精ヴァーミリオンとフルで聞くと、カードゲームのモンスターみたいに聞こえてくるから止めて欲しい。

『こうなったら、ヤケクソだぁ~! あんた、絶対に私を上級妖精にしなさい! 何がなんでも!』
「勝手にこっちに来たのに、なんて脅しをかけてくるんだか……」

 ともあれ、これしばらくはうちにいるという事だよね?
 だったら----

「ベータちゃん」
「はい、マスター」

 私がパチンと指を鳴らすと、サッとベータちゃんが虫取り網と籠を持って現れる。

『えっ、ちょっと?! その網で、どうする気なのよ』
「生意気な妖精むしを捕まえる。それがいまの私に課せられた任務です」


『ぎゃああああああ! 止めてぇ、振り回さないでぇ! 鬼、悪魔、奴隷王ぅぅぅぅぅ!』


 ----こうして、うちに新たな同居人、赤髪妖精ヴァーミリオンが加わるのでした。
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