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第1章『俺の召喚獣だけレベルアップする/雪ん子の章』
第24話 悪意には罰を
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【《悪の手先》雪ん子】 レベル;Ⅱ
雪ん子が、人の悪意を吸収し、ルトナウムによって変質させられた姿。人を殺す喜びに目覚め、殺戮に心を踊らせている
その本質は、"冷たい息をかけて、人を殺す"という雪女の性質に近付いている
(※)召喚を行った召喚士よりもレベルが高い召喚獣です。強制送還・絶対命令順守が効きません
===== ===== =====
「《アァ……主……。殺サセテ、モットいっぱい殺サセテっ!
ソレガだめナラ、主を殺サセテよッ!》」
今、俺の目の前でそう叫ぶのは、俺の召喚獣……いや、その枷を外した、ただの化け物娘である。
俺は自分が召喚した召喚獣ならば、どんな状態だって送還できるし、どんな命令だって従わせることができる。
ただし、それは俺よりも下の召喚獣だけ。
今の雪ん子はレベルアップにより、その枷が完全に取り外された状態にある。
俺とのパスが取り外されつつある、そういう状況。
この《木こりが暮らす水辺》にいる、魔物の1体になりつつある。
つまり彼女は、今やただの魔物……。
【召喚士】でろくな戦闘力がないザコの俺と、【剣士】としての力を兼ね備えるレベルⅡの魔物。
「(絶望的な状況だ)」
幸運なことに、まだ《主》と呼んでいるだけあって、完全には切れてないようだが----。
俺は一度、アイツが死んだ時に、ただの召喚獣だと思って、どうせ再召喚できるからと軽く考えていた。
----その事を怨みとして思っていたら?
「(俺はアイツに、殺されるかもしれん)」
ザシュッ!!
……ぽとん。
「----ッ!!」
どうしようかと悩んでいると、いきなり手の方に熱い感覚がしてくる。そして、伝わってくる消失感……。
ゆーっくり、視線を下へと落としていくと、地面に"落ちてあった"のは、俺の右手。
ぽとり、と、まるで最初から地面に落ちていた小石のように、気付いたらそこに落ちていた。
そして、俺の手からは、等価交換とでも言うべきか、右手の、今まで確かにあったそこに、なかった。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」
手がっ! 手が! 俺の右手がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!
俺は慌てて、右手にポーションをかける。
幽鬼対策として、すぐに回復効果のあるポーションを数個用意していたのだ。
まさか、雪ん子の攻撃に使うとは思っても見なかったがな。
ポーションの回復効果により、まるで逆再生でもするかのように、俺の右手が再生された。
握ったりしてみると、俺の意思通りに動くが、それでも右手が斬り落とされたという事実は、俺の脳裏に恐怖として刻み込まれていた。
「《ツイ手持チ無沙汰で、やっちゃイマシタ♡ デも、主だって、私が殺サレた時、そんなに心配してなカッタし! おあいこって、事で♡》」
ついっ?! つい、だと?!
そんな、《手元に食べ物があったから、お腹は空いてないけど食べました》、とでも言うべきような感覚で、俺の右手を落としたのか?!
そんな手持ち無沙汰なんかで、俺は手を切り落とされたのか?!
それに、おあいこだと?!
別に俺が殺した訳じゃないし、ただ心配してなかったっていう感情論だけで!!
それだけの理由で、俺は手を失っても、「そうか、仕方ないよね~」って受け流さなければならんのか!?
「ふざ、けんなっ!」
俺はそう言って、武器を残った左手で怒りを込めて握りしめ、【優しい木こりの鞭】を彼女の顔に叩きつけていた。
===== ===== =====
【《悪の手先》雪ん子】に 【優しい木こりの鞭】による 攻撃
【《悪の手先》雪ん子】に ダメージは 与えられません
===== ===== =====
「ははっ……やっぱりそうかよ」
だよな……これが職業の差、ってヤツだ。
ダンジョンの中では、どんなに大人数で攻撃しようともダメージが通らなければどれだけ数がいても無意味だし、たった1人の1発でも強力ならばそれで片が付く。
----弱肉強食。
《弱》いヤツの《肉》を、《強》いヤツが《食》らう。
俺には、この雪ん子を倒すだけの力がない。弱いヤツだ。
そんな弱いヤツは、強ーい雪ん子様に殺されるだけ。
「(ダンジョンの敵とかの情報は集めに集めまくっているが、まさか死因が自分が召喚した召喚獣だなんて、笑えやしない。
自分が設置した地雷を踏みぬいて死ぬくらい、間抜けな死に方だ)」
今の俺の攻撃だって、彼女にして見れば、ただダメージもない鞭で頬を撫でられたくらいで----。
「《ヒィっ! ごっ、ごめんナサイっ!》」
「……あーん?」
と思ったのだが、雪ん子はその場にうずくまっていた。
俺の攻撃に対し、ビクビクとビクついて、その場に蹲っていたのだ。
俺の指を、俺に気付かれないくらいに容易く斬り落とせるだけの力を持つ彼女が、だ。
「(なんだ、俺はただ鞭で叩いただけなのに……)」
この【優しい木こりの鞭】、叩いた相手に命令を与えるだけの代物であり、強敵にここまでの特攻(※1)を与える代物ではなかったはずだが?
「ん? 鞭?」
俺はもう一度、鞭の情報を確認する。
===== ===== =====
【優しい木こりの鞭】……使役している魔物や召喚獣に対し、効果を発揮する木製の鞭。職人が手作業でやすりを行ってくれた想いは、相手にもきっと伝わるだろう
効果;使役している魔物や召喚獣に命令できる。命令を実行する際、使用者の戦闘能力の一部が加味される
===== ===== =====
「(もしや、この効果の部分ではなく、上の説明の部分だろうか?)」
"想いは、相手にもきっと伝わるだろう"の部分だが、もしやこれが、職人の想いなんかじゃなく、俺自身の想いも、だったらどうだ?
もしかしてスケルトン軍団達は、鞭を通して俺の戦闘能力の一部だけではなく、想いまで伝わっていたのだろうか?
それによって、奴らは俺の意思、つまりは命令を粛々と受諾していたのだろうか?
雪ん子が恐怖して怯えているのは、鞭による物理的ダメージよりも、鞭を通して伝わってくる、俺の怒りなんじゃないだろうか?
「《デモ、モット殺シタクて……悪意ガ……身体の奥カラ、沸き上ガッテ……》」
----だったら、この鞭でだったら。
今もなお、俺に対して、懲りずに攻撃を仕掛けようとうずうずしているコイツに、おしおき出来るんじゃないだろうか?
「そうだよな、お仕置きしても良いよな? なにせ俺は、右手を切られたんだし」
「《主? エット、鞭を手にシテ近寄ッテ……》」
そうして、俺は何回も、彼女に俺が主だと刻み付けた。
メッセージウインドウがダメージはないと言いながらも、1発1発ごとに怯えが増す彼女に刻み付けるように。
自分が悪いことをしたのだと、抑え込むように。
俺は何度も、彼女に鞭によって刻み込ませていた。
そうして、その回数が20を越える頃には、雪ん子は完全に支配下に置かれていた。
「《うぅ……ごっ、ごめんなさいです。これ以上、そんな事をしないですよ。ですので、許して欲しいですよ》」
===== ===== =====
【《悪の手先》雪ん子】 レベル;Ⅱ+11
個体レベル;11
装備職業;悪の剣士
攻撃力;F+11→E+6
属性攻撃力;E+2→E+17
防御力;F+11→E+6
素早さ;F+12→E+7
賢さ;D+26→D+41
固有スキル;【氷結の申し子】;全ての攻撃に対し、氷属性を付与する
;【悪の申し子】;全ての攻撃に対し、悪属性を付与する
後天スキル;【剣技】;剣などの武器を持つ時、強力な技を発動する
;【嗜虐性】;相手を痛がらせるほど、ステータスが上昇する
;【殺意の目】;敵の弱点を瞬時に見抜くが、殺人衝動が起きるようになる
;【忠実なる奴隷】;主に逆らわなくなる。また、主の命令を受けると戦闘能力が上昇する
スキル【凶悪なる締め付け】を獲得しました
【凶悪なる締め付け】……使役している召喚獣や魔物を、暴力などで支配した際に得られるスキル。善属性の配下の戦闘能力が大幅に下がり、悪属性の配下の戦闘能力が大幅に上がる
===== ===== =====
俺も新たなスキルを得て、さらには雪ん子の戦力も上がった。
賢さが上がった影響か、かなり流ちょうにしゃべれるようになったし。
右手を斬られたにしては、十分すぎる成果だろう。
いや、斬られた右手は今でも痛いけどっ!
一応、幽鬼タケシ・ハザマにダメージを受けると思って用意していたポーションとかで、治したけど?!
それでも、むちゃくちゃ痛いけど?!
「さて、これが問題だな」
俺は次の問題を考える。
雪ん子が入手してきた、幽鬼タケシ・ハザマのドロップアイテムについてである。
「これが、ルトナウム……」
雪ん子をおかしくさせた、諸悪の根源たる謎鉱物。
そのルトナウムを手にしようとすると、俺の目の前に、こんなメッセージウインドウが現れるのであった。
===== ===== =====
【ルトナウム】 素材アイテム
別次元にあるとされる、高純度のエネルギーと繋がる"扉"の性質を持つ人工物質。燃やすことでエネルギーの一部を取り出すことができ、扉を全開にするまではこの物質は減少することも、消えることもない
生物の傷口から侵入し、別次元のエネルギーを与えて、変化を促す
>ルトナウムを消費することで スキル【召喚 レベルアップ可能】のスキルレベルを、ⅠからⅡに出来ます
レベルアップしますか? はい/いいえ
===== ===== =====
(※1)特攻
特定の種類の敵に対して、一撃死とも思えるくらいの大ダメージを与える効果の事。特殊攻撃、特別攻撃の略称ともされており、同じ種類の魔物を何百、何千と倒すとスキルとして手に入るんじゃないかと言われている
スキルとしての名称は【〇〇スレイヤー】や【〇〇キラー】となっており、"〇〇"に入る言葉に対しての特攻である(例;ゴブリンに対しての特攻スキルなら、【ゴブリンスレイヤー】や【ゴブリンキラー】など)
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