俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政

文字の大きさ
199 / 354
第5章『夏だ! 海だ! 千山鯉だぁ~!/雪ん子の座を奪いし召喚獣・千山鯉の章』

第189話(真名編) 千山鯉、真実

しおりを挟む
 鯉が何故、滝を昇るのか?
 それは、滝を昇り切った者だけが、龍となるからだ。

 鯉は、龍になる夢を見て、滝を昇る。
 途中で諦めた者が単なる魚である鯉となり、諦めずに昇りきった者だけが龍となって龍が住まう世界へ、旅立つことが出来る。

 千山鯉は、その中間----どっちつかずの姿である。

 滝を昇ることを諦めずに達成し、魚ではない。
 龍に住まう世界に旅立たなかったので、龍ではない。

 魚でも、龍でもない、その2つの性質を持つ者----それが千山鯉。


 ----と、言われている・・・・・・


 実は、魔王シルガによって【リ・セット】される前の世界では、千山鯉は、召喚獣ではなかった。
 理由は、あまりにも伝承が弱かったから。

 千山鯉は「仙境異聞」という書物に出てくる妖怪であり、作者である江戸時代の思想家、平田篤胤が、その千山鯉を見たという証言を基に記されている。
 しかし、その見たという証言をしている者が、寅吉と呼ばれる少年である。

 そう、「俺、実は天狗の世界に行ってんたぜ? 凄いだろ、マジでww」と語る、一歩間違えればほら吹き少年でお馴染みの、天狗小僧の寅吉である。

 逆を言えば、この寅吉という少年が見たことしか、千山鯉を見たと証言する書物がない。
 探せばあるのかもしれないが、少なくとも雪女----その子供たる雪ん子の伝承から比べると、あまりにも千山鯉という伝承は少なく、そして弱かった。

 そして、そんな、本来であれば召喚獣として呼び出せない、弱々しい伝承の千山鯉。
 そんな千山鯉を、召喚獣として冴島渉へ渡したのは、誰であるか?

 それは勿論、こんな世界に作り替えた魔王シルガではあるが、千山鯉にとっては違う。

 ----神様、である。

 雪ん子の代役として、神様が特別措置として召喚させてくれた召喚獣。
 それが、千山鯉。

 彼女は、神様に深く、とても深く、感謝している。
 なにせ、敬愛する主様に出会え、なにより召喚獣として生きられた事に、千山鯉は深く感謝しているのである。


 だから、彼女は主様を救うために、死ぬことを選んだ。敗北を選択した。
 あの《ウグイス嬢》黒鬼を倒すには、千山鯉の半古代龍魔法と、あの防御力を打ち破る【オーバーロード】の力が不可欠であったからだ。

 しかしながら、千山鯉には、【オーバーロード】の力を得ることは出来ないだろうと、直感で理解した。

 【オーバーロード】の力を得るのに必要なのは、世の理不尽を呪うだけの想い---つまりは、神様を強く憎むこと。
 雪ん子の代役として呼び出された千山鯉には、性質としては【オーバーロード】の力を得る素質があった。

 ----しかしながら、千山鯉に神様を呪う事は出来なかった。
 それは、自分が召喚できたのは、神様がいなければ出来なかったから。

 彼女は、確かに代役である。
 雪ん子の代わりとして召喚されただけの、ただの代替物。

 しかしながら、その想いは確かに本物であった。
 千山鯉は消えながらも、確かに願っていた。

 ----どうか、主様が、冴島渉様に幸運が訪れますように、と。

 そこに代役だとか、代替物だとか、そういうのはなく。
 彼女の想いは、確かに本物であった----。



(※)千山鯉せんざんり
 本来は召喚獣として召喚するにはあまりに伝承が弱いのだが、神様が特別措置を与えてくれたおかげで、召喚された召喚獣。種族としては、魚などの鳥獣族とドラゴン族の2つを両方持っている
 魚系統の召喚獣や魔物などと同じく、水の中でも自由に呼吸と移動が出来る【水棲】、さらには深海やマグマ近くの水などの水温に適応するための【炎属性無効化】を持つ。また、龍としての性質も兼ね備えているためか、【ドラゴン・パワー】という全ての攻撃に対してドラゴン族の強力な一撃を与える事もできる
 雪ん子の、重すぎるくらいの主人への愛と共に、雪ん子に負けないレベルのステータスやスキルも兼ね備えている。また【魔法少女】による無限に近い魔力精製と、圧倒的な火力を誇る【古代龍魔法】を得意とする

 偽物として、代役として生まれた彼女は、本物へと力を託す
 主様を守るため、その想いだけは本物であったに違いない
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

異世界帰りのハーレム王

ぬんまる兄貴
ファンタジー
俺、飯田雷丸。どこにでもいる普通の高校生……だったはずが、気づいたら異世界に召喚されて魔王を倒してた。すごいだろ?いや、自分でもびっくりしてる。異世界で魔王討伐なんて人生のピークじゃねぇか?でも、そのピークのまま現実世界に帰ってきたわけだ。 で、戻ってきたら、日常生活が平和に戻ると思うだろ?甘かったねぇ。何か知らんけど、妖怪とか悪魔とか幽霊とか、そんなのが普通に見えるようになっちまったんだよ!なんだこれ、チート能力の延長線上か?それとも人生ハードモードのお知らせか? 異世界で魔王を倒した俺が、今度は地球で恋と戦いとボールを転がす!最高にアツいハーレムバトル、開幕! 異世界帰りのハーレム王 朝7:00/夜21:00に各サイトで毎日更新中!

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

処理中です...