鬼畜の城-昭和残酷惨劇録-

柘榴

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第2話 罠

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 それから小一時間ほどでしょうか。私は狂ったように話し続けました。見ず知らずの男に今までの半生、自身の考え、悩み……男の巧みな話術と酒の勢いで私は自らの情報を無意識のうちに垂れ流していました。 
「ずっと、子供の頃から頑張ってきて……なのに、なのに私……っ、全然駄目で、不器用で、中身の無い空虚な人間なんです」
「そうかそうか。青森からたった一人で大阪、心細かったやろ。辛いことも、苦しいこともあったやろ。けど、お嬢ちゃんはこうしてここまで懸命に生きとる。それは誰にも否定できない事実や、自信持ち? おじさんが保証したる」
 男はただ私を肯定し、優しく慰めてくれるだけでした。けれど、それがたまらなく心地よかったのです。説教でもなく、ただ自分を全肯定してくれる男が心地よくて仕方が無かったのです。
「早く独り立ちして、田舎の両親を楽させるんだなんていき込んで飛び出してきたのに……このザマ。私……半端者なんです」
「そんなことないで。その気持ちに嘘偽りがないんなら、きっとうまくいく。頑張っている人間はきっと報われる! 嬢ちゃんのその気持ちは、半端者なんかやないで」
 私の分の酒を注ぎながら男は優しく言いました。こんな綺麗ごとのような言葉でも、この男が言うとなんだか現実的に聞こえたのです。
 
 それからも、店が閉まる直前まで私と男は談笑を続けました。大阪に来てから、こんなにも心が安らいだのはこの日が初めてだったと思います。
 自分の事を認めてくれた初めての人が、私にとってこの池田 雄一だったのです。
「あーあ……おじさんみたいな人が、上司だったらよかったのに」
 酔いが極限まで回った私は、無意識のうちに口走っていました。
ありのままの私を認めてくれた……この池田が上司なら、と心の底からの言葉だったと思います。
「なんだ、じゃあ儂のトコで、働いてみるか? もし、良ければの話やけど」
 その言葉に対し、池田は愛らしい笑顔でそう言いました。
 大阪に単身で出てきて、初めてこんな親切な大人と出会えた。その喜びに浸っていた当時の私は、知る余地も無かったのです。池田の、この人の皮の下に潜む絶対的な悪意と狂気を。
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