鬼畜の城-昭和残酷惨劇録-

柘榴

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第12話 少女

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 あれは、新たな『池田昭和建設』として始動してからかれこれ半年ほどが経過した頃です。あれから私は池田と共に沢山の悪事を働き、金を稼いでいました。表向きの業務はもちろん、やくざの鷲尾から斡旋される詐欺、薬物、売春……そして表に出せない死体の解体など、裏の仕事も毎日のようにこなす事を余儀なくされたのです。 
 しかし、私の感覚はとっくに麻痺していたのか、不思議とここから逃げ出そうとも次第に思わなくなりました。
 池田の言う通り、生き残るためには半端な悪ではなく、『完璧な悪』に至らなければなりません。それができなければ、私は池田と共に半端な犯罪者として滅ぶことは明白でした。
 そのためにも、現状では池田に協力し、生き残るために最善を尽くすしかありませんでした。

 けれど、その頃には私の中で今までとは違った感情も芽生え始めていました。
 それは、喜びです。自分が『完璧な悪』として悪事を重ねるたびに、以前のような『己の空虚さ』を感じることが少なくなっていたが、喜びとなっていたのです。
 池田 雄一は、何の目標も無く、ただ生きていた私に『悪』としての生き方を与えてくれたのもまた事実だったのです。

 そしてその頃、私は一人の少女と出会うことになります。
 その少女は私にとって『完璧な悪』とは対極にある『半端者』の末路を示してくれることとなります。
 その末路を知る事で、私の『完璧な悪』への憧れは強固なものとなり、それは呪縛として私の心を満たす事となります。

「おう雄一、今日は仕事持ってきたで」
 鷲尾が訪ねて来たのは、私が仕事にも悪事にも慣れ始めた矢先でした。事務作業と同じで、悪事も人殺しも解体も慣れてしまえばただの作業です、何も感じませんでした。
「ん? またバラさなきゃならん死体出たんですか、相変わらずよう人が死ぬ組やなぁ」
 鷲尾に頼まれて組員の死体も何度か解体した事もありました。なにやら表には出せない死体なようで、小遣い稼ぎに鷲尾さんから引き受けていたのですが、この日の依頼は違っていました。
「ちゃうわ阿保。正確にはお前に対しての仕事やない、そこの嬢ちゃんに頼みたい仕事や。お前は人殺しの才能はあってもそれ以外はなにもあらへん。人には向き不向きがあるからの」
 やくざの鷲尾からも池田の『完璧な悪』は評価されていました。やくざの界隈でも、池田ほどの残虐性と覚悟を持った人材はなかなか見つからないそうでした。
 なので、鷲尾が池田ではなく私を指名した時には大変驚きました。
「『女同士』の方が今回は都合良いねん。なぁに難しい事なんかあらへん、殺して解体しろなんて野暮な仕事やない。儂のお抱えの娼館の餓鬼の面倒見てくれればそれでええんや」
 その日、鷲尾が持ってきた依頼、は鷲尾が属する組が経営する娼館で働く少女の教育係を引き受けててほしいとのことでした。
 要するに、子守です。私のような悪党に、子守を頼みに来たのです。
「その餓鬼な、顔も身体もええ具合なんやけどなんちゅうか感情が無いねん。ほんで、客も人形相手みたいで気味悪いって指名もされへん。ほんでそのことで儂や店の連中が殴りつけても表情一つ変えん気味の悪い餓鬼なんや」
 その少女は天涯孤独の戦争孤児で、身を売ることでしか生きることを知りませんでした。けれど、その心は閉ざされ、とうに感情は殺されていたのです。
 鷲尾の依頼は、その人形のような少女に『心を植え付けろ』との事でした。
「まぁ、暴力じゃ解決せぇへん事もあるってことですわな。ええですよ、うちの恵子が受けましょ」
 池田は鷲尾の依頼を快諾し、私はその少女の教育係を任されることとなったのです。

 そして、その少女との出会いが私を更に来るわせ、『完璧な悪』『悪の極み』へと至るにあたる重要な経験となるのです。
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