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第6話 血肉の花弁【栞】Ⅱ
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「プロデューサー……ちょっとこの部屋電気付けません? それに……窓も開けていいですか? その……空気が」
部屋に入るなり、栞は表情を曇らせる。
夜だというのに部屋の電気は全て切れており、真っ暗と言ってもいい状態。更にこの部屋では人間を2人も解体し、加工している。相応の悪臭が蔓延している。
「ああ……でも、電機は付けないほうがいいんじゃないか」
俺は純粋な忠告として、栞に言った。
それでも栞は不安なのか、電気を探して暗い部屋の中をうろついている。
「え……、きゃ……なに? 何か踏んだ……?」
すると栞はいきなり動きを止めた。
何か得体の知れない物を踏みつけた栞は、完全に固まっていた。
「散らかっているからな、仕方ない……電気を付けよう」
俺は部屋の電気を付ける。
部屋の中が蛍光灯の明かりで満たされると同時に、栞の顔から血の気が引いていく。
自分の踏みつけた物の姿を目にして。
「えっ……なに……これ」
栞は自分の踏みつけた物から足を恐る恐る退ける。
それは、マネキンでも人形でもない、確かに数日前までは一緒に過ごしていた……里香だった肉塊だった。
「ア……ぁ……」
栞は叫ぶことはせず、ただ腰を抜かして声にもならない音を喉で鳴らしているだけだ。
目の前の真に、脳の処理が追いついていないのだ。
「おいおい、そんな腰を抜かすなよ。里香が驚くだろう」
「プロデューサー……これ」
「同じ事務所の仲間をコレ扱いか……俺はプロデューサーとして悲しいよ。お前の仲間だろう」
その仲間だった里香は、今やただの骸だ。
手足が切り落とされ、顔は無数の切り傷で原型を留めていないような死体を、仲間と思えと言うのも酷かもしれないが。
「う……うあっ……うええ……」
栞は里香の死体から目を背けると、そのまま耐えきれずに嘔吐する。
「おいおい、アイドルがゲロは無いだろう。お前も、まだまだアイドルとしての自覚がないな」
「いや……里香ちゃん、なんで……」
俺の言葉には耳を貸さず、栞は口元を抑えながら涙を流している。
なぜ、なんでこんな惨い事態に陥っているのか、栞には理解できないだろう。
だからこそ、俺は栞に教えてやらねばならないと思った。俺の最後で最大のプロデュースを。
「プロデュースさ。里香はアイドルとしては未熟で、救いようのない女だった。だが、そんな里香にも俺は役割を与えた……一輪の美しい花を咲かせるための、血肉の花弁としてその肉体と命を捧げる役目を」
「花……? 花弁? 何言ってるんですか……」
栞は俺の言葉が一切理解できないようだった。
「心配するな。お前にもちゃんと役割はある」
だが、理解する必要はない。
栞の役目は、その肉体と命を捧げる事のみなのだから。
俺は机の上にあった灰皿を持ち、栞に少しずつ近づいていく。
「こ、来ないで……死に……こんな風に死にたくない」
「栞、お前は聞き分けの良い子だ。それはプロデューサーの俺が一番よく知っている。だから、俺を信じてくれ。なるべくお前のその身体を傷付けたくない。その恵まれた肉体……特にその豊満な胸と腰回りはお前の最大の魅力だ。その肉体は花弁としての役割に十分に相応しい」
元グラビアアイドルというだけあって栞の肉体は彫刻の様に美しかった。
特にその豊満な胸と腰回りは、絵画に描かれた女神のような素晴らしい造形。
「やめて……許して、私まだ死にたくない……」
「すまないがこれはもう運命なんだ。お前は血肉の花弁として、真衣という花を咲かせるための糧となる」
「真衣さんを……悪く言ったことは、謝りますっ……あれは、里香ちゃんが勝手に……」
「おいおい、俺が怒ってこんなことをしたと思っているのか? 馬鹿な。これはあくまでプロデュースだ。俺がお前たちアイドルを輝かせるために行動することに、理由が必要か?」
俺は感情でこんなことをしているのではなく、責任の下でこのプロデュースを実行している。そして、真衣を輝かせる義務が俺にはある。
俺は、自分の役割を全うしようと努めているだけなのだ。
そして、容赦なく栞の頭部に灰皿を振り下ろす。
「いや……っ、いやあああああああ!」
湧き上がる痛覚と恐怖に、栞は泣き叫ぶ。
「確かにお前のその豊満な肉体は俺のプロデュース対象だ。だが、それ以外のパーツは対象外なんだ。つまり、そこに転がってるゴミと同じって事だ」
俺は里香の骸に見つめながら冷たく告げる。
お前たちはあくまで花弁、パーツの一部だ。お前たち自身に価値など存在しない。
ただ、無心で目の前の少女の顔を殴りつけ、絶命させる事だけに専念した。
「っが……あ……ぁ……っ……」
もはや栞は声すら上げることもできず、遠のく意識の中で涙を流す事しかしなかった。
彼女に罪は無い。ただ、真衣の開花に必要だと判断されただけ。
彼女を殺すことに、それ以上の理由は必要なかった。
「光栄に思え、お前たち花弁はやがて真衣と1つとなる。唯一無二の高尚な存在となり、世界中の人間の記憶に留まる。お前も里香も、その尊い犠牲者として名を連ねることになるだろうからな」
もはや俺の声は栞には聞こえていないだろう。
ただ、俺は彼女への最大限の感謝と尊敬の念を込めて、最後に灰皿を彼女の顔面に叩きつけ、殺した。
「やはり、人間など皮膚が破れ肉が抉れてしまえば、皆醜いものだな」
もはや俺の知る栞の顔では無かった。
血と痣と涙が混雑した、醜い顔。
人間など酷く脆い生き物だ。簡単に壊れ、簡単に忘却されて滅ぶ。
だが、真衣……俺はお前を滅ぼさせはしない。お前の存在を……俺を滅ばすわけにはいかない。
部屋に入るなり、栞は表情を曇らせる。
夜だというのに部屋の電気は全て切れており、真っ暗と言ってもいい状態。更にこの部屋では人間を2人も解体し、加工している。相応の悪臭が蔓延している。
「ああ……でも、電機は付けないほうがいいんじゃないか」
俺は純粋な忠告として、栞に言った。
それでも栞は不安なのか、電気を探して暗い部屋の中をうろついている。
「え……、きゃ……なに? 何か踏んだ……?」
すると栞はいきなり動きを止めた。
何か得体の知れない物を踏みつけた栞は、完全に固まっていた。
「散らかっているからな、仕方ない……電気を付けよう」
俺は部屋の電気を付ける。
部屋の中が蛍光灯の明かりで満たされると同時に、栞の顔から血の気が引いていく。
自分の踏みつけた物の姿を目にして。
「えっ……なに……これ」
栞は自分の踏みつけた物から足を恐る恐る退ける。
それは、マネキンでも人形でもない、確かに数日前までは一緒に過ごしていた……里香だった肉塊だった。
「ア……ぁ……」
栞は叫ぶことはせず、ただ腰を抜かして声にもならない音を喉で鳴らしているだけだ。
目の前の真に、脳の処理が追いついていないのだ。
「おいおい、そんな腰を抜かすなよ。里香が驚くだろう」
「プロデューサー……これ」
「同じ事務所の仲間をコレ扱いか……俺はプロデューサーとして悲しいよ。お前の仲間だろう」
その仲間だった里香は、今やただの骸だ。
手足が切り落とされ、顔は無数の切り傷で原型を留めていないような死体を、仲間と思えと言うのも酷かもしれないが。
「う……うあっ……うええ……」
栞は里香の死体から目を背けると、そのまま耐えきれずに嘔吐する。
「おいおい、アイドルがゲロは無いだろう。お前も、まだまだアイドルとしての自覚がないな」
「いや……里香ちゃん、なんで……」
俺の言葉には耳を貸さず、栞は口元を抑えながら涙を流している。
なぜ、なんでこんな惨い事態に陥っているのか、栞には理解できないだろう。
だからこそ、俺は栞に教えてやらねばならないと思った。俺の最後で最大のプロデュースを。
「プロデュースさ。里香はアイドルとしては未熟で、救いようのない女だった。だが、そんな里香にも俺は役割を与えた……一輪の美しい花を咲かせるための、血肉の花弁としてその肉体と命を捧げる役目を」
「花……? 花弁? 何言ってるんですか……」
栞は俺の言葉が一切理解できないようだった。
「心配するな。お前にもちゃんと役割はある」
だが、理解する必要はない。
栞の役目は、その肉体と命を捧げる事のみなのだから。
俺は机の上にあった灰皿を持ち、栞に少しずつ近づいていく。
「こ、来ないで……死に……こんな風に死にたくない」
「栞、お前は聞き分けの良い子だ。それはプロデューサーの俺が一番よく知っている。だから、俺を信じてくれ。なるべくお前のその身体を傷付けたくない。その恵まれた肉体……特にその豊満な胸と腰回りはお前の最大の魅力だ。その肉体は花弁としての役割に十分に相応しい」
元グラビアアイドルというだけあって栞の肉体は彫刻の様に美しかった。
特にその豊満な胸と腰回りは、絵画に描かれた女神のような素晴らしい造形。
「やめて……許して、私まだ死にたくない……」
「すまないがこれはもう運命なんだ。お前は血肉の花弁として、真衣という花を咲かせるための糧となる」
「真衣さんを……悪く言ったことは、謝りますっ……あれは、里香ちゃんが勝手に……」
「おいおい、俺が怒ってこんなことをしたと思っているのか? 馬鹿な。これはあくまでプロデュースだ。俺がお前たちアイドルを輝かせるために行動することに、理由が必要か?」
俺は感情でこんなことをしているのではなく、責任の下でこのプロデュースを実行している。そして、真衣を輝かせる義務が俺にはある。
俺は、自分の役割を全うしようと努めているだけなのだ。
そして、容赦なく栞の頭部に灰皿を振り下ろす。
「いや……っ、いやあああああああ!」
湧き上がる痛覚と恐怖に、栞は泣き叫ぶ。
「確かにお前のその豊満な肉体は俺のプロデュース対象だ。だが、それ以外のパーツは対象外なんだ。つまり、そこに転がってるゴミと同じって事だ」
俺は里香の骸に見つめながら冷たく告げる。
お前たちはあくまで花弁、パーツの一部だ。お前たち自身に価値など存在しない。
ただ、無心で目の前の少女の顔を殴りつけ、絶命させる事だけに専念した。
「っが……あ……ぁ……っ……」
もはや栞は声すら上げることもできず、遠のく意識の中で涙を流す事しかしなかった。
彼女に罪は無い。ただ、真衣の開花に必要だと判断されただけ。
彼女を殺すことに、それ以上の理由は必要なかった。
「光栄に思え、お前たち花弁はやがて真衣と1つとなる。唯一無二の高尚な存在となり、世界中の人間の記憶に留まる。お前も里香も、その尊い犠牲者として名を連ねることになるだろうからな」
もはや俺の声は栞には聞こえていないだろう。
ただ、俺は彼女への最大限の感謝と尊敬の念を込めて、最後に灰皿を彼女の顔面に叩きつけ、殺した。
「やはり、人間など皮膚が破れ肉が抉れてしまえば、皆醜いものだな」
もはや俺の知る栞の顔では無かった。
血と痣と涙が混雑した、醜い顔。
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